普通の食生活の中に馴染むケーキ : リリエンベルグ

ザッハトルテ（12cm）、ブルクテアター（2個）を通販で購入。

オーストリア菓子2トップと言えば、ザッハトルテとリンツァー・トルテなんで、まずはこの二つを注文、と思いました。しかし、どちらも通販ではホールのみしかオーダーが出来ないので、同じ材料の小型なブルクテアターにしました。

お店全体の印象を一言で言えば極めて丁寧。

電話のオーダーから配送が成されるまで非常に正確にきめ細かく品質管理、かつ迅速に仕事を為された痕跡がいくつも見て取れます。

まず、オペレーターの方の応対からして顧客に誠意を持ってお菓子を提供しているお店だと垣間見えました（その方のお名前は記録していますがここでは伏せておきます)。

オーダー時にリンツァー・トルテとブルグテアターの材料が同じか、共にヘーゼルナッツで作っているか質問をしました。

「少々、お待ちください」、とそれらがが同じ材料なのか、共にヘーゼルナッツを使用しているのかすぐ確認して下さりました（同じ材料、ヘーゼルナッツ・プードル使用です）。

「では、この度はよろしくお願いします」と私が申しましたら、

大変嬉しそうに「この度はありがとうございます」と返答されました。


届いたザッハトルテとブルクテアターの実食の感想を一言で言えば、日本人によく馴染んだ洋菓子の味わい。

まずはザッハトルテから。
ザッハトルテ本体のザッハマッセは日本のショートケーキのスポンジに近い食感です。チョコレートの風味は割としっかりあります。グラサージュのチョコレート・フォンダンも砂糖の食感がじゃりじゃりしません。チョコレートの風味は強くはありませんがきちんとします。ザッハマッセの上にアプリコットジャムが塗られ、このジャムは酸味が強いです。全ての要素は甘さ控えめになっています。これらを合わせて食べると、杏の酸味とチョコレートの風味により、複雑な甘さが生まれます。

ザッハトルテにお店の但し書きにある通り砂糖ひとつまみのホイップ・クリームを添えると、杏の酸味やチョコレートの鋭い風味がまろやかになります。でも、ザッハマッセが元々チョコレート味のショートケーキみたいなので、より日本のショートケーキっぽくなってしまうと思いました。ちなみに私は生クリーム30ccに対し小さじ4分の1ほどバルヴェニー 12年ダブルウッドを入れました。生クリームの臭みが消えラムより柔らかい甘さの香りになります。お酒が苦手でなければお試しになられても良いかと思います。

お次にブルクテアター。
ナッツの香ばしい香りとほんのり香りチョコレートの風味が楽しめる焼き菓子です。中に薄っすらレッドカラント・ジャムを挟めています。基本のレシピ通りヘーゼルナッツが入っていますが、アーモンドもやや多めに入っているのでナッツの味わいが強調された感じはあまりないです。ただ、粗めに砕いたナッツなので、食感でナッツを強く感じます。レッドカラント・ジャムと粉を増やした方がより食べ応えがあったと私は思いました。


私個人の味覚はドイツ菓子特有の粉の食感の重さや、ヨーロッパの菓子全般に共通する香りが強い物が好みです。私は餡子があまり好きでは無いので好みの影響に多少あるかと思います。

ただ、そういうお菓子は好みがはっきり分かれてしまうと思います。

本場仕様の食感ネチネチで甘さガッツリなザッハマッセのザッハトルテ、ヘーゼルナッツの香りプンプンで粉の食感がドッシリなリンツァー・トルテが平均的な日本人の味覚にウケるのか、と考えるとクエスチョンです（私は其の方が好きですが…)。

お店の立地場所からもその点は見えてきます。もしも、本場仕様で出したければ、お店をもっと田舎にするか、はたまた都内の一等地にするか、どちらかにすると思います。

日本のごく普通の食生活の中に馴染んで美味しく食べられる様に考えられてお菓子を作られていると思います。お菓子そのものは他店との差別化を図ったレシピの改悪をなされていませんし、とても丁寧に作られていますから。

そういうお菓子だと思うので無理に行列してまで買いに行きたいとは私は思いません。

それはリリエンベルグのお菓子の持つ魅力からかけ離れた食べ方の様に私には感じます。普通に買いに行けるのならそれで良いし、それが無理なら取り寄せられるものなら取り寄せる。ハッキリ言えば、札幌円山界隈によくあるお菓子屋の質と大体同じです(あたしゃ、円山までおクルマで1時間もかけて行きたかないよ)。

ただ、シ・サワットの千葉さん曰く本州より南、特に東京やその近辺ではそのくらいのレベルのお菓子でも行列する店でないと殆どの人は買わないし、店として認めないからね、自分の舌だけで感じて気に入った店に好きな時に行って買うというのは関東の人には難しいだろう、と。

最近、食育という言葉がよく出ますが、反面、日本の栄養学は遅れがちで、30年位前に丸元淑生氏の著作に書かれた栄養学の基礎すら分かっていない医師や栄養士が年々増えています。看護師に至っては、お粗末過ぎてブチ切れて説教するのは馬鹿げてるので、笑う事しか出来ないのは札幌の様な田舎の大学病院では日常茶飯事です。

今の日本は外食産業も食材も豊かになりました。でも日常の食事の内容が疎かになっている面もあります。食べる方はもっと普段の食生活を考えて、節度と分別をもって食べるのを求めているお菓子達だと思いました。

私もこれからも出来る範囲で食について真面目に学び続けたいです。