隠れた実力のある料理を探すおもしろさ : チャ～ボン 多福楼 川崎店

川崎駅東口の旧東海道沿いにある中華料理店です。

お店は、入るときに階段を少し下った半地下にあります。昇り階段もあり、こちらを上がっても客席がありますが基本的には宴会用になっています。

以前は、ランチの食べ放題をやっていて、なかなかの人気だったのですが今はやっていません。
メニューは、日本人がイメージする中華料理はひととおりそろえ、また、冬は鍋もやります。
小皿料理も多いので、居酒屋のような利用に適した業態になっているお店です。


いただいたのは、
■石鍋牡蠣のトウチ炒め（９９０円＋税）
牡蠣は大きく、軽く衣をまとわせて味を閉じ込めてあります。基本的な調理技術はしっかりしていますね。
トウチもしっかり入っていて、味もなかなか濃厚ですが、何かが軽く焦げて、香ばしさを通り越して苦いところもありました。ちょっと惜しいです。

■親鶏の丸揚げ（甘酢醤油風味）１羽（９９０円＋税）
鶏の丸揚げに甘酢のソースをかけてあります。ソースはサラサラのもので、甘さが強いですね。
手羽の部分が、まさに手羽先揚げになっています。ここが美味しいです。
ボリュームがあるのですが、ありすぎます。大人４人ぐらいで食べるとちょうどいいですね。４人で分けると１人あたり２５０円程度なので、焼き鳥２本分ぐらいの価格でこれが食べられると思うと、ものすごいお得です。
大人数で飲む人は、頼んだほうがいいですね。間違ってもデートで頼んではいけません。２人で黙々と大きな鶏肉を解体するこになります。

■五目チャーボン（８５０円＋税）
お店の社長は福建省出身とのこと。福建省には『燜麺（メンミェン）』という、長崎ちゃんぽんのルーツとなった麺料理があります。こちらのお店は、「元祖福建式ちゃんぽんを蘇らせ、「チャ～ボン」と命名しました」とのことです。
お店のリニューアルに伴ない屋号にもこの『チャ～ボン』の文字が入っています。まさにお店の看板メニューでしょう。
炒めた中華麺を玉子でとじて、その上に五目あんがかかったものです。近い料理で有名なものとしては、梅蘭のやきそばですね。梅蘭のものは具を麺の中に閉じ込めてありますが、こちらはそれをオープンにした感じです。
食べにくさはありますが、単なる五目やきそばよりも手が込んでいる分の満足感はあります。また、ボリュームはとてもあるので、ランチで食べてもいいでしょう。
これが古典的な福建式ちゃんぽんであるかどうかは疑問ですが、新たな中華料理でお店の名物であることは確かですね。

■鄭ちゃん焼き餃子（３９０円＋税）
豚のカシラ肉を使い、毎日お店で手作りしているというだけあって、なかなかジューシーでレベルの高い餃子です。
安い中華料理店の餃子はラードでごまかしているところもありますが、こちらのものはそうではなく、ちゃんと肉汁が出るものです。いいですね。
お店の社長の名前を料理の名前に入れる自信作で、それにふさわしい味でしょう。
ビールとの相性は良く、「とりあえず、生ビールと餃子」って頼んでも失敗することはありません。

■海老水餃子（３９０円＋税）
海老のすり身の餃子ではなく、焼き餃子のあんにさらに小さな海老を加えたものを茹でて水餃子にしたものです。
そのため、味のベースは似ていますが、皮の包み方も違いますし、茹でたことによる食感の違いもありますね。焼き餃子と水餃子を両方頼んでも１人で１皿食べなければ飽きることもないかと思います。

●生ビール中ジョッキ（４９０円→２９９円＋税）
生ビールがセール中ということでこの価格です。銘柄はサントリーのプレミアムモルツです。甘さがあるので飲兵衛にはあまり好まれない銘柄ですが、この安さは魅力的ですね。居酒屋的な利用にも適しています。


全体的に悪くない印象ですが、社長は福建省出身で、お店を任されている料理人は刀削麺が上手いことからも山西省か河南省の出身でしょう。にもかかわらず、おすすめ料理が麻婆豆腐・担々麺・辛子鶏と四川料理が目立ちます。最近の日本人は中華料理というひとつの料理ジャンルではなく、四川料理・広東料理と地方ごとの特徴を理解しています。ぜひとも、社長や料理人の出身地の料理や得意料理が前面に出るようなメニュー構成にするといいですね。
今のメニューでも、美味しそうな福建料理があるのですが、端に小さく書いてあるだけです。
イシモチ揚げ甘酢かけ（１，４９０円＋税）は、海鮮を得意とする福建料理の真骨頂ですし、福建ベンロー（８５０円＋税）は中華料理マニアの私も知らない料理で興味をそそります。春雨と野菜のスープ（６５０円＋税）もスープを得意とする福建ですからレベルが高いことが予想されますね。
定番の餃子は必ず注文し、シメをチャーボンにするか、刀削麺にするかはお好み次第で決めましょう。そして、その間に食べる料理は、丁寧にメニューを見て隠れた名品を探したいですね。
定番中華料理を食べていれば普通の中華料理店ですが、目を凝らしてメニューを見れば、このお店の実力がわかる美味しい中華料理をいただけるでしょう。