フツーの釣魚を持ち込んでも豪華に大変身 : 漁や

シロギス、メバル、カサゴ…。お店で買えば今や立派な値段の魚たちだが、普段はこの大きさの魚は自分でさばいて料理しちゃう。だけどプロの手にかかるとどうなるか？そんな着眼点で伺いました。折しも、私の話によく出てくる湘南の釣友が当地を離れる友人のために送別会を開くというので、その宴にも材料提供者として混ぜて頂いちゃったのです。釣りの顛末については、食べログのPCページからしか見られない日記機能に記してます。良かったらご覧ください。

当店の事をもうちょい説明しますと、釣魚の持ち込み調理を積極的に受け入れてくれる体制(有料・要予約)が整っており、だからと先回は大きな魚や高級な魚を持ち込みおすすめすると書いたのでした。さてなじみのある今回の魚たちはどうか！？どういう調理をお願いしたかというと。

シロギス→刺身、天麩羅
メバル・カサゴ→刺身・煮付

とまあいつもわが家でやってるものばかり。そんなに差がつく料理かなあと、他のものを飲み食いしてる間もまんじりともせず待つ。
大カマスの炙り刺があったのに、値段に躊躇してしまった。今にして思えば失敗…。

で、結論から言うと流石の包丁。刺身は歩合もいいし、角が立って美しい。盛りに意匠が凝らされ躍動感が。とりわけ煮付けが素晴らしい。何かひと味格上なのだが、それが何なのかは…。

分かっちゃいるけどおれの完敗。だけと今度釣って来た魚で、どっかマネしてやる。

釣りをしない人には関係ない話だけれども、一発大きな魚や珍しい高級魚が釣れちゃって持ち帰ったはいいが、いざ魚を前にして「ハテ、これってどうしたらいいんだろう？」てなことになったりしませんか？そんな時は、当店のような店に持ち込んで調理してもらう、が正解なのです。決まりきった対応しか許されない大手チェーン店を除けば、だいたいどこの居酒屋でも馴染みになれば持込み調理に応じてくれるものだけれども、こちらは持ち込み調理の料金体系があらかじめ定められていて、積極的に受け入れてくれるところが際立っています。料金については、お店のHPに詳細が記されています。HPにも記載やリンクがありますが、ご主人も釣り人だからということもあって、このようなスタイルの店になっているんですね。尚、持ち込みは所定の時間内に事前連絡必須なので初めにおことわりしておきます。あ、おれは店の人じゃないんだっけ。

12月のある日、湘南の釣友とともに網代のボート釣りに出かけ、少ないながらもカワハギを釣って帰ってきました。大きなものも交じっており、これだと、専門誌によると小売価格で一匹¥3,000にもなるという高級魚なのです。
話はそれますが、関東近郊の海沿いには、手漕ぎボートを1日単位で貸し出してくれる商売がポツポツありまして、これをこぎこぎポイント（魚の棲み家）の真上につけ、魚を釣ることができる、という娯楽が存在するのです。道具や釣り餌を自分で用意しなければならないし、ポイントの選定に難しさはあるのですが、うまいことハマれば美味しい魚がザクザク釣れて、そりゃあもう大満足！エッ、手漕ぎボートなんかで海に漕ぎ出して危なくないのかって？まあ井の頭公園とかよりは波風あるのですが、たいていはこの日の網代のように、三方を山に囲まれた湖のような地形の海で行なうものです。だから大丈夫。よそに釣行記をupしてます。よかったら覗いてみてください→。@niftyつり
話を戻すと、私たちは料理はできなくもないんだけど、せっかく釣れた高級魚、それらしく味わうにはどうしたらいいんだろう、ということになったんですね。帰りの渋滞のさなか、釣友がすでに何度かお世話になっているこちらへ電話して話をつけてくれました。
私は話には聞いていたけれども行くのはこの日が初めてだったので、大いに楽しみに伺いました。カウンター席正面に水槽、釣りの世界の三大ターゲットの一角、シロギスが泳いでいます。カウンター端には趣味の書類。釣魚料理の他に食文化の本など、ちょっと借りて行って読みたいようなものばかりです。
お店の人は私と同世代のご夫婦とそのお嬢さん、という構成と見ましたが合ってるでしょうか。メニューはその日のおオススメに見るべきものがあります。これをよーく観察してみると、1魚種で2〜4種類の料理という構成になっています。刺身、焼き物、揚げ物、煮物、等々その魚にあった調理を選んで味わえるわけですね。どれを頼んでも一級格上の味！新鮮さが際立っています。新鮮な魚をフライなんかにしちゃあもったいないじゃないか、と思う方もいるかもしれませんが、釣り人の間では、釣りたての魚、とくにアジのフライのうまいことはよく知られているのです。フワリとした食感、澄んだ香り。
ついで持ち込みのカワハギ料理たちが運ばれてきました。刺身も煮付けも自分では到底こんな美しくできません。味だけなら負けない、と思いたかったけどやっぱりプロは違う…参りました。
HPにも紹介されていますが、時には知られざる美味な地魚料理が提供されることもあるようなので、先入観なく美味しいものを味わってみたいという方はぜひトライしてみることをお勧めします。例えば地元で穫れるものを挙げれば、ヒメコダイという小魚があります。相模湾の（釣り界の）スター、アマダイ釣りの際に良く掛かる魚なのですが、小魚だし見た目も平凡なこともあってか持ち帰らずカモメにやってしまう人も多いのです。こういう魚をこちらで味わうことができるかもしれません。もちろん、自分で持ち込めば確実です。個人的には天ぷらにすることを勧めます。片瀬港の某釣り船の船長さんは、刺身になさいと言ってました。お試しを。

さてこの同じ魚で多種類の料理というのは、お客には大変楽しみの多いスタイルなのですが、お店にはえらく骨の折れることだと思われます。間違ってるかもしれませんが、これは提供時間が掛かることに現れています。どういうことなのかというと、あらかじめ決められた用途のために下準備ができればできるほど、提供時間は削れるのです。例えば、フライなんかは衣をつけるところまでやっておけば、あとは揚げるだけです。だけど、その同じ材料を刺身にも使いたいならどうか？塩をふっておくことさえもできないのです。それに、おそらくこちらは冷凍品は一切使用していないのでは？ですから、私たちとしてはそこのところは、刺身にも使えるような鮮度の材料でなんでも味わえることの代償と見なければなりません。そもそも、焼き鳥屋のようにちょっと立ち寄って軽く一杯ひっかけて、というような使い方にはハナっから向いてないということになります。この日の私たちのように、その日の出来事を語りながらゆっくり楽しいひと時を過ごす…そんな過ごし方がこの店には合っています。
お店のHPの中で、飼育水槽のシロギスの習性についての画像や動画がありました。個人的にはこの魚の釣りは苦手としておりますので、示唆に富むこのコーナー、大いに参考にしたいと考えています。ただ、こういう小物釣りというのは本来、何十匹、いや100匹とか釣るものだから、それを全部有料調理してもらっちゃうととんでもない金額になってしまうので、やはり冒頭に述べたような場合、地元沖釣り種目で具体的に言うとアマダイ、ヒラメ、タイ、カツオなど大きな魚が釣れたとき、カワハギ、イトヨリ、ホウボウなど繊細な高級魚が釣れた時とにオススメします。