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店名 |
香菜軒 寓(こうさいけん ぐう)
|
---|---|
ジャンル | インドカレー、オーガニック、弁当 |
予約・ お問い合わせ |
046-767-6327 |
予約可否 |
予約可 |
住所 |
このお店は「中野区上鷺宮4-17-6」から移転しています。 |
交通手段 |
和田塚駅から696m |
営業時間 |
営業時間・定休日は変更となる場合がございますので、ご来店前に店舗にご確認ください。 |
予算(口コミ集計) |
¥2,000~¥2,999
|
支払い方法 |
カード不可 電子マネー不可 |
席数 |
3席 |
---|---|
個室 |
有 |
貸切 |
不可 |
禁煙・喫煙 |
全席禁煙 |
駐車場 |
無 |
利用シーン |
|
---|---|
サービス | テイクアウト |
公式アカウント | |
オープン日 |
2016年5月26日 |
初投稿者 | |
最近の編集者 |
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1
昔々、25歳で東京を捨てた男の子は相模湾の134号線沿いに流れ着きました。
自分勝手なおばかさん。英語数学はいつも0点の落ちこぼれ。
自分の名前を漢字で書ければ入学できる高校で担任だった新任の女教師は「あんた達、どうして勉強してくれないのよ!」と、テストの度に号泣してくれた。
「先生、ごめんね。」
僕らは心の底から謝ったのだけれども、どうしても授業中は週刊の漫画誌(月曜はジャンプでとかルーティーンがあったらしい。)に心奪われ、学食の後はトイレとか屋上のセブンスターで。
別に自分は悪いなんて思ってもいなかった。
ゴツい先輩やいかつい不良は怖かったし、お金がないと何もできない街で大人になったらどう生きようかといつも悩んでいた。
やりたいことなんてなにもない。
新聞配達とイオンのパートで育ててくれたママンにも文句はない。
だのに、彼はずっと人生を投げやりに過ごしていた。
それでも彼は高校を出て、働いた。
国分寺に最近できたブタヒロって二朗系ラーメン店の近くで。
18時過ぎ、3分くらいの面接後に「じゃあ、今日から働けよ。」と言われ、ピカソで黒いスラックスとワイシャツを買ってもらった。
それからは、らい、ららららい。
都会の外れに巣くう狼と、都会にしがみつく女の子に囲まれて日々を過ごした。
営業終わりはいつもカレー、24時間やっているオレンジの看板に吸い込まれ、夏の明け方にビールで乾杯後かっこんだトマトカレー。
そんな風にして彼はカレーが好きになった。
2
いつまでも月の民ではいられない。
そう思った彼は売上金をいつもの場所へ保管すると明け方の五日市街道をぶっぱなした。
やがて接続した環八を南へ、第三京浜を西へ。
白旗神社の麓を左折し、しばらくすると見えてきた江の島の朝焼け。
まるでトーストの上に溶けだしたバターのような新しい一日に、「今日からはここで暮らそう。」と彼は誓った。
3
住めば都。馴れてしまえばなんてことのない海辺の街でのこと。
求人誌で見かけた会社の営業マンは、テキー働いてうまく日々をやり過ごす術を覚えた。
週末は朝まで藤沢のクラブや茅ヶ崎の盛り場で騒いだ。
そんな時期、彼は彼女に出会った。
4
「お家、湘南台なんでしょ?遠いからいいよ、私はタクシーで帰るから。」
何度目かの夏の終わり、仕事帰り。
宵の口の藤沢駅、台風12号のもたらす豪雨の中をダッシュする彼女を助手席に連れ込んだ後に、鎌倉なら近いから送るよと言った僕に彼女は申し訳なさそうに呟いた。
透き通った肌に大きな瞳、高い鷲鼻に薄い唇。
一目惚れだった。
「この車のエンジンはv8だからさ、鎌倉なんか5分で着くよ!」
鼻息荒く言った彼に、彼女はいたずらっぽく微笑んだ。
それからしばらく、夢のような日々が続いた。
横浜のそごうで働く彼女を、僕は毎晩迎えに行き、帰り道にいろんな話をした。
彼女は長女だが短大しか出ておらず、アメリカの大学に留学している出来のいい妹とこどもの頃から比べられていて、実家にいると息が詰まりそうだったと。
高二の夏に友達から誘われ楽しくて趣味で始めたサーフィンも、「不良のやることだ‼」と弁護士の父親に折られたことも。
「私、ずっと居場所がなかったの。」
片瀬山の信号待ちの途中、そう言った彼女の肩を抱き寄せた。
それから、僕たちはいつも一緒だった。
平日は眠い目を擦りながら二時間弱のおしゃべりに興じ、週末は彼女門限である夜の十時まで目一杯遊んだ。
その頃に彼女からサーフィンも教えてもらった。
ぎこちないパドリングを笑われ、いつまで経ってもボードに立てない僕はイルカのように波をかきわける彼女の傍観者だった。
だのに・・
いつかの土曜日の夜、いつも通り彼女の実家の1ブロック前に車を停めると、降りようとしない彼女が不意に涙声で言った。
「カオルちゃん、いままでありがとう。」
震える声とBGMのノースクラブ。
突然のことに僕はわけもわからず作り笑いを絞りだした。
「こないだね、ほら、風邪気味だからって言った土曜日。」
助手席でポロポロ涙を流しながら話す彼女。
「あの日、実は私お見合いしてたの。お父さんにさんざん怒鳴られてね。」
震える声と震える膝。
夢なら早く覚めてくれと彼は願った。
「それでね、その相手の人と結婚することにやったから、もうカオルちゃんとは会えない・・」
嗚咽に飲み込まれ霞んでいく彼女の語尾。
脳裏をめくるめく楽しかった日々と、突然の告白に声を失った運転席。
5
それから。
失った彼女から逃げるようにして彼は東京へ戻った。
シングルベッドとラジカセしかなかった1LDKの引っ越し、荷物になるからと由比ヶ浜のサーフショップで彼女とキャッキャ言いながら買ったサーフボードは置いたまま。
それから十年。
ようやく独り立ちした彼は、思い出をなぞるように134号線を茅ヶ崎から鎌倉へ流していた。
夏の終わり、BGMはいつかのTLC。
東京へ戻ってからは仕事と好きなカレー屋さん巡りの日々。
彼女が横にいたらと何度も思った、それを打ち殴るようにして駆け抜けたメモリー。
やがてBMWが江の島を抜けて一車線になった頃、彼は不意に彼は練馬から鎌倉へ移住したカレー屋さんのことを思い出した。
そうしてやってきた十年振りの鎌倉。
彼は車は少し離れた場所のコインパーキングに停めてきた。
ポケットに両手を突っ込み、肩で彼女の思い出と風を切って歩く住宅街に見つけた庵。
蔦の這うようなジブリン空間のいりぐちでご主人に「いらっしゃいませ。」と奥へ案内された。
通されたのは小さな古民家。
ひとつのテーブルと木の椅子。
彼はダブルのカレーセットを頼む。
しばらくすると奥さんが鎌倉野菜のお惣菜(おつけもの)を運んできてくれる。
台風一過の午後。
嵐の後の野菜はどこまでも優しい。
それをパクついている折、近くの奥さんがブラリと軒をくぐってくる。
常連さんなのだろう、完全アウェーの彼はスルーしてお店のご夫婦と楽しく談笑。
だか、彼だって寂しくないアピールでなんの通知も来ていないスマホをピコピコ。
すると、乱入してきていた奥さんが「どちらからいらっしゃったんですか?」と不意の質問。
「と、東京です。」
いきなりのクエッション、完全にたじろいた彼。
「へぇ、どうしてここへ?」
そこへ全く動じない奥さまの矢継ぎ早なクエッション。
「仕事の合間に寄ってみたんです。練馬にあった頃、このお店に来たことがあって・・」
うわずった声で答えた彼に、突然厨房にいたご主人の眼孔が降り注いだ。
「そうなんですか!」
俄然、空気がよくなる店内。
しばらくしてやってきたカレー。
ベジ推しのセレクションだったのだが、どこまでも優しく慈悲深いおいしいインド寄りのカレーだった。
やたら激しくスパイスをふってサーカスを楽しませるのではなく、柔らかな刺激で食材を彩る優しいカレー。
毎日食べたくなるような優しいカレーに卓上の辛味パウダーをバンバンかけて彼はスプーンを口へ運んだ。
あっという間の食事。
ホロリと頬を伝った汗、奥さんがご好意でくれた和菓子を一気に頬張ってイオンのを後にした。
何故か?
だってそうだろう、彼は泣いていたのだから。
あの頃の鎌倉を思い出して彼は泣いていたのだから。
プロローグ
いつかの季節に想いを馳せながら、夜の第三京浜で彼は一人ハンドルを握っていた。
甦るのはあの日、彼女の手を引いて飛び出せなかった後悔ばかり。
いつだってダメな自分に嫌気がさすばかり。
だか、港北を越えて東京が間近に迫った時、不意に彼のスマホが震えた。
「久しぶりね、私のこと覚えてる?」
それをハンドル片手に読みながら彼は思った。
いつか、もう少し彼女に誇れる自分になれたら、このメールの返信と共にあの日置いてきぼりにしたサーフボードをまた探してみようと。
いつかの恋は終わったのかもしれないが、オレは終わっていないのだからと。