かつのクオリティは高くありませんが、居心地の良い定食屋さんです。 : きよし

新型コロナウィルスが人類に大きな試練を投げ掛けていることは、今更言うまでもありませんが、人類が誕生して以降、我々人類は、ウィルスや細菌といった微生物と深く関わり合ってきたと言っていいと思います。
これらは、我々の生活の場のあらゆるところに存在するだけでなく、我々の体内にも存在するので、まさに「共生」という言葉がズバリ当てはまると思います。

その中で病原性を持つ僅かの微生物が、時に「バイ菌」などと呼ばれながら人類に脅威をもたらしてきた歴史があるわけですが、一方で微生物がもたらしてくれる様々なメリットも人類の歴史と共に歩みを進めてきたのも偽らざる事実です。

食べ物との関係で言えば、発酵という技術は、細菌の存在なかりせばあり得なかったわけですし、そんなことを考えていると、マイナス面の影響を遥かに上回るプラスの効用があったということになるのかもしれませんね。

ある人は、新型コロナウィルスについても、少なくともα株の時は、高齢者の命を奪う一方、若者には無症状者が多かったことから、少子化・高齢化の進行に歯止めをかけてくれる面もあるなどと語っておられますが、これもあながち笑い話ではないんですよね。
それくらい、ウィルスの中には人類にとってプラスの影響を与えてくれるものもたくさんあったということです。
ガン細胞と闘うウィルスもあれば、植物に干ばつ耐性や耐熱性を与えるウィルスなど、挙げればキリがないくらいです。
自然界には、理屈だけでは説明できない何らかの意図が働いているのではないかと思われる事象も多々あり、つまりは、"神の見えざる手"というのは経済学の世界だけでなく、例えば微生物と人類の関係においても成り立つのではないかなどと考えたくなりますね。

そういう考えに立つと、日頃の生活もあまりあくせくするのでは無く、自然の摂理に従って、「川の流れのように」或いは「徒然なるままに」過ごすのが正解なのかもしれません。

とある調査によれば、新型コロナ禍の中で、食への志向も健康志向が高まってきているようですが、暴飲暴食をしない範囲で食べたいものを食べたい時に食べる、素材の旬を大切にするというのが、一番理に叶っているのかなとも思いますね。

そんな中、この日の食べ物志向は、旬とは関係無く何故か揚げものを食べたいモードだったので、BM店の中から相鉄本線の星川駅からほど近い当店を試してみることにしました。

当店は、食べログ店舗情報によれば2006年(平成18年)のオープン。
店舗情報や先行レビューからは、いかにも街の個店といった感じを受けるお店なので、もっと歴史があると思っていましたが、意外に新しいお店でした。
それでも、今年＝2021年は、オープンして丸15年目の節目の年ということになりますので、すっかりこの地には定着したお店と見て良さそうですね。
食べログレビューは19件とそれほど盛り上がってはいない感じですが、その割には評点は3.43点と比較的高めです。

当店の場所は星川駅の南口側。
駅を出て目の前にある星川SFビルを左手方向から超えて進み、すぐにある四角を左折して細い路地に入って70〜80m進んだ右手になります。

この日は、オープン時刻の11時半を少し回った時間帯の訪店となりました。
店内は、厨房に面したカウンター席が6席のほか、テーブル3卓12席、小上がり10席が配置されており、全28席のキャパです。
お店は、店主らしき中年の男性と初老の女性の2人で切り盛りされていました。
この男性が創業者だとしたら、結構若くして創業したのかもしれませんね。

その店主さんからカウンター席に座るよう案内されましたので従います。
卓上にはランチメニューと書かれたメニューと、9月のおすすめメニューと書かれたメニューの2種類が置かれています。
それを見ると、ロースかつ御膳@850円、ヒレかつ御膳@890円と、とんかつ専門店価格として見ればなかなかリーズナブルです。
アップグレードメニューの上ロースかつ御膳や上ヒレかつ御膳(共に@1,400円)もありますが、どこかのチェーンみたいな揚げもののコンビネーションメニュー(風月、桔梗、七福、若葉・・)も@1,000円前後でラインナップしています。

かつ丼にするか上ロースかつ御膳にするか迷いましたが、とんかつの実力を試してみることにし、上ロースかつ御膳を注文しました。

待ち時間は7分ほどと、とんかつにしては短かめですが、とんかつの場合は提供のスピーディーさは味に比例しない(むしろ反比例するケースも多い)ので、これだけでは喜べません。

果たして上ロースかつは、正直、これが上ロースなら普通のロースはどんなの？と思われるほど上質感を全く感じません。
厚さは最大で1cm無いくらいの薄いかつなので、高温短時間揚げでも中までしっかり火が通っています。
肉質も決して褒められたものでは無く、肉の下ごしらえの技術云々を語る以前の問題で、さらには衣の活着もイマイチです。
この時点で、上ロースかつを頼んだのは失敗だったと悟りました。
卓上調味料は甘辛2種類のとんかつソースと醤油のみですが、なるほど塩が置いていないのも頷けるかなと。
このとんかつは、塩で食べる気にはならないですよ。

ただ、キャベツはかなりたっぷりの量で、カットはキチンとされていて食べやすかったですし、付け合せのカボチャ煮付けはやや甘めながら私好みの味付けで美味しく、味噌汁もキチンとダシがとられたものでした。
とんかつ専門店として見れば低クオリティかもしれませんが、街の定食屋さんとして見た場合は、接客もとても丁寧で好感が持てましたし、価格帯のリーズナブルさもあって居心地の良いお店という評価が妥当だと思います。

この日は休日だったのですが、退店した12時前には、満席とは言わないまでも、かなり席は埋まってましたので、しっかりと地元民に支持されているお店なんだと思います。

レベルの高いとんかつを求めている方にお勧めできるお店ではありませんが、心地良い雰囲気の中、揚げ物で満腹感を得たいというささやかなニーズは十分に満たしてくれるお店ですね。