横浜中華街でのお正月　困ったときの『福満園』 : 福満園 新館

2021年の正月。
私たち家族は母や弟夫婦と共に一昨年亡くなった父に実家への挨拶と墓参りを済ませた後、夕食も外で済ましていこうという事になって横浜中華街にやって来た。

正月３が日に来るのは初めてだが、多くの店が開いていて人通りもそれなりに多かった。
ただこのご時世なので本来はもっと人通りが多いのかな？

今回私たちはここ『福満園 新館』に営業確認と予約をして訪れた。

この店を選んだ理由は「中華街パーキング」の目の前だという事。
高齢な母もいるので人通りの多い場所に連れて行くわけにはいかないからね。

『福満園』は中華街に３店舗、藤沢などそれ以外にも2店舗ほど出店している老舗のひとつ。

私が学生時代から通い詰めている中華街においては、この店は私が求めている中華街ならではの「オンリーワン」の料理を出す店では決してない。

だがこの店は聘珍號や萬珍楼などの高級路線とも、ホテル中華のような「健康優良中国料理」とも違う正統派ながら個性的な料理を出してくれる。

それは、この中華街で働く人たちが多く訪れる事にも表れていると思う。

この店は基本は「四川料理」。
だが本店は「福建料理」、ここ新館は「上海料理」、市場通りの別館は「湖南料理」というように、昔から他の地域の料理のシェフを招聘してやってきている稀な店。

ゆえに、中国のそれぞれの地方の出身者も安心して訪れるようになったのだろう。
特に中華街には同系列の台湾料理も含めて福建料理は少なく、四川料理よりも辛いといわれる湖南料理に至ってはとても貴重だ。

私の中華街でのヒストリーは語りだすとキリがないので過去ログをご参照いただくとして、とにかく代替わりや後継者の問題で小規模優良店がどんどん減って行く中、積極的にメディアに露出して客を集めるような店や、「ホテル中華」の延長線上にあるような店、「食べ放題」で客を呼ぶ「新世代系」の店が幅を利かせている今の中華街の中でも信用できる店のひとつだ。

もちろん、昔の「海員閣」や今なら「興昌」や「愛群」のような個性的な店に行きたいのだが、今回は場所の問題と正月と言う特殊な期間ゆえ安全策でここにした。

ここは元々私たちたちにとっては、混みあっている時や急用の時のための押さえの（先代の『四五六菜館』のような）存在だったのだ。
（『四五六菜館』も代替わりによって見た目や評価は上がったものの私にとっては「優等生的料理」にしか思えなくなった。詳細については『四五六菜館』のログ参照。）
https://tabelog.com/rvwr/000638412/rvwdtl/B321522504/#78577031

そんなこの店は、以前からこの地をベースに商売をしていた華僑の人から教わった店だから信用もしている。

この日の中華街は、まだ閉まっている店もないわけではないが、案の定かなりの人出で、やはり年老いた母を連れて歩くには危険な状態だという予想は当たっていた。
でも、混んでいたのは中華街大通りだけで、関帝廟通りや開港道や南門シルクロードなどは嘘のように閑散としていた。
（食後に弟や息子とデザートを仕入れに行った時に気付いた）

パーキングからそのまま入店すると、まだ時間が早いこともあって半分以下の客の入り。
店の思惑に関係なくソーシャルディスタンスは保たれている。

ここ新館の「上海料理」は私が大好きな「杭州料理」のメニューが多く見られるのが特徴だ。

私たちは正月という解放感も手伝って「フカヒレの姿煮」をひとり1枚という調子に乗ったオーダーでまず店の人を味方につけた。
上海料理らしく上品なスープでフカヒレもさっぱりといただける。

前菜に私の大好きな四川前菜の「雲白肉」。
茹でた薄切りの豚バラ肉に辛いソースをかけてきゅうりと共に食べる。
さほど辛くなくむしろ豚バラの旨みが感じられる。

メイン料理は「エビの塩味炒め」「東坡肉」という「杭州料理」の代表格２品と、この店オリジナルの「スペアリブのガーリック風味パン粉炒め」。
締めにはここ『福満園』の全店共通の名物「黒チャーハン」をいただいた。

「海老の塩味炒め」は「杭州料理」らしく都内のホテルなどで食べるものよりも塩味が濃いもののとてもさっぱりしているといるというのが特徴。

あの毛沢東が愛したという「東坡肉」は、すこしピリッとしたタレと厚切りにされた角煮がとても合っていた。

「ガーリックパン粉風味炒め」はオリジナリティあふれる一品で、スペアリブをガーリックの風味とピリ辛のパン粉とともに食すそれはビールにとても良く合う。

「黒チャーハン」は見た目の濃厚さとは違ってさっぱりした中にコクと中国醤油の塩っぱくない深い味がする優れものだった。

そして、これはここだけの秘密なのだが、ここは塩味の汁そばがとても美味い。
それはかつて横浜に宿泊するといつも妻に内緒で息子たちと夜中にホテルを抜け出し食べに来ていたほどだった。（本店は深夜まで営業している）

「五目そば」か「海老そば」がそれにあたる。
この日は「海老そば」。
さすがに女性陣はもうこの頃には何も食べられないので、いつも通り男性陣だけでいただいた。
スープベースも餡も美味しいその味は、初めて食べたという弟もビックリしていた。

そんなに「スゲー」と驚嘆するほどではないが何気に美味しいこの店の料理に皆も満足したようだった。

「正月」「突然」・・・、この日のこの店はまさにいつものように「困った時の『福満園』」だった。