町中華探訪記：目指せ百迷店 ＃８５ 横浜中華街香港路 : 保昌

祝日の月曜日です。

三﨑港から京急で横浜に戻ってきたラッコと裏紀香。大人の遠足の最終段階は中華街に決定。

みなとみらい線で中華街駅まで移動。地上に出て蘇州小路を通り過ぎようとしたところ、♪パラパラパラパンパンパン♪と耳をつん裂くような爆竹音。おまけに後から追いかける火薬の焦げた匂い。

アイヤァ、横浜中華学院の学生さんによる獅子舞やねん。
ウッヒョォ〜、お祭りや！
これはどこのお店も満席か？

はやる心を抑えつつ、第一候補の南奥美食さんにお伺いするも、やはり数組の行列。やはり難しいか？
ここはお祭り日でなくとも常に行列が絶えない\(//∇//)\

慌てて大通りに出ると、いたぁ、別の獅子が一頭。
爆竹の大音響と火薬臭で耳と鼻がまったく利かんやないかい！

ううっ、アカン。
でも楽しい。

慌てて香港路に入り込み、馴染みの保昌さんに向かいます。この狭い路地ならいくらなんでもあのデッカい獅子は入ってこれんやろ、アハッ\(//∇//)\

お店の中に入ると女将さんと目が合います。一瞬の驚きの後、にこやかな笑顔で腰を折る女将。三年ぶりというのに覚えていらっしゃいました。

嬉しいなぁ、やはり家族経営のお店が好き。

紹興酒をボトルでお願いし、数皿を食べ始めたところで、なんだがざわめき始める路地。遠くから次第に近づいてくるのは・・・

♪シャンシャンシャン♪の金属音。
♪ズンドコズンドコズンズンズン♪の重低音。

アイヤァ、来たよ来たよ新手の獅子が！
聞けば今日は台湾の国慶節。街中のお店の八割300軒を五頭で16時から訪問しているとのこと。

在日三世や四世の方も多い筈なのに、自身の背骨と言えるこの文化を守り続ける矜持や、実に良し。

感動しちゃった。

さてさてそれでは本題です。
いただいたお皿は以下の通り。ひとつひとつのコメントは写真欄に記載しておりますので、画像と一緒にお楽しみいただければ幸いです。

獅子の写真もありますよ、アハッ。

そしてご馳走さまでした。


＜まとめ＞
昔々と比べ素材のコストダウン感は否めませんが、でもね、やはりこの家族経営の町中華の素敵な雰囲気は何物にも変えがたい。
通い始めて38年だもん。ハマの楊貴妃と勝手に名付けた大女将はいらっしゃらなかったけど、お店のお孫男子によれば『今夜は家でゆっくりしていますけど、変わらず元気にしていますよ』とのこと。
『昔はツンデレでね、注文するのも怖かったんだよぉ〜』とラッコ。
『アハッ、ツンデレは今も変わんないすね、アハッ』と獅子舞OBのお孫男子。
ええのんかぁ、そんなこと言ってぇ。お年玉をもらえんかもしれんぞぉ〜、アハッ。でもええなぁ、家族って。

＜いただいたお皿＞
カレー牛バラご飯まで辿り着けませんでした。
残念。次回に回しますね。

●レタスの肉包み
●焼餃子
●海老と卵の炒め物
●海鮮塩炒め
●海老マヨネーズ

＜お酒＞
・10年紹興酒：600mlを二人でオンザロック

木曜日の夜です。

今日は十月十日。

横浜中華街では、中華民国国慶日を祝い、獅子舞が通りとお店を練り歩いている筈。これは行かねばなるまい。

それに十月十日と言えば、十、じゅう、ジュウ。
そう。ジュウジュウの日。

皆さんは、その音からどんな料理を想像されるでしょう？

トンカツや天ぷらなどの揚げ物！
うん。なるほど。
でもラッコには、ジュジュジュワァァァァ〜と尾を引くように聞こえます。ちょっと違いますね。

えっ、ステーキなどの鉄板焼き？
フムフムフム。なるへそ。
でもラッコには、ジュウッーーーと単発の破裂音としか思えません。これもちょっと違う。

ジュウジュウ！
それは熱した鍋のお焦げに中華餡を投じた音ぉ〜！

なんだかチコちゃんのような喋りですね。

柔肌の熱き血潮に触れもみで 寂しからずや 道を説く君。
与謝野晶子『みだれ髪』より。

アツアツのお焦げを口にすることもなく、手前味噌な拙いレビューを書いているだけで、それで良いのかい、ラッコさん？
raccostar 『そもそも薄い髪』より。

すいません。
ふざけ過ぎました。

途中から雨脚がひどくなり、獅子舞は中止。
残念、お店の中で獅子を撫でることは叶いませんでした。
でも通りでの写真は収めましたので、最後に添付しますね。

いただいたものは以下の通りです。
全てハーフポーションにしていただきました。


●レタスの肉包み：
合挽肉と揚げ春雨。薬味は白髪ネギと北京ダックと同じ甘だれ。唇の周りを汚すことも厭わず、かぶりつきます。ウンマイ。

●海老マヨネーズ：
通い続けて35年。いささかも変わりない味。確か隠し味はウォッカだった筈

●牛バラ肉の醤油煮：
ネットリとした濃い味。ご飯を呼んじゃうやないか！

●海鮮おこげ：若布スープ付き
塩味でした。昔はオイスターソース味だった記憶が有りますが、牛バラと味が被るのを避けてくれたのかな？

●角ハイボール：

いずれも高級中華では有りませんが、35年間の記憶に勝るものなし。

美味しゅうございました。
そしてご馳走さま。


追記：
楊貴妃のような大ママにはお会い出来ませんでした。
お元気かな（＾◇＾）

祝日のお昼です。

横浜駅で肉ウドンをいただき、完全復活した小デブ。

昨夜は自宅で黒澤映画を観ながら、白を二本も空けてしまいました。塩豆をツマミにモグモグしていると、もうどうにも止まりません。

ヴェネトはイナマのソーヴィニヨンブラン、アオスタのピノグリが、心の空腹を満たしてくれます。

でも，，，、やはり呑み過ぎ。
もう若くは有りません。

一人で部屋に倒れてしまったらどないするんや、なんて小さく悩みながら、家族の温もりを感じたく、こちらにお伺いします。

かれこれ三十数年のお付き合い。横浜中華街を訪れた際のファーストチョイスです。

お昼を過ぎると行列必至なので、十一時過ぎにお店に到着。既にご常連風の老夫婦の方が、のんびりとお皿の一品料理を摘まれております。

小デブがお願いしたのは、牛バラ肉のカレーかけご飯と海老マヨ、角ハイといった品揃え。

えへへ。
お昼から呑んじゃお。小さな罪悪感を感じるけど、人に厳しく自分に甘い小デブ。それにハイボールの酸で昨夜の白を追い出さないとね、なんちゃって。

こちらのカレーかけご飯は、並みのカレー専門店を遥かに凌駕します。さすがカレーレヴェルの高い香港を抱える広東家庭料理の白眉。

海老マヨの爽やかなコッテリ味は隠し味のウォッカの成果。

あーっ、美味しかった。
そしてご馳走さまでした。

日曜日のお昼です。

一ヶ月後の浜松中華遠征を前に、横浜中華街で自主トレ。場所はかれこれ三十数余年通い続ける保昌さん。

浮気の数は両手両足でも足りませんが、何故だが此方に戻ってきてしまう、襟足の美しいお店。

『お前が俺には最後のぉ〜っ、中華』字余り。

山本譲二もどきの小デブは逸る気持ちを抑えつつ、東横線のホームから階段を早足で駆け上がります。

時間は十一時。
この時を逃すと行列は必至。関帝廟通りも人通りがほどほどで、まっすぐ歩くことができました。

路地を入ると、あれっ、隣に新館が出来ています。商売が順調なのは良きかな良きかな。

呼び込みのオネーさんに促され、四人がけのテーブルに座ります。

メニューを開くまでもなく『ニンニクの茎イタね！』と呟くも反応が今ひとつ。

通じていない・・・
新館だから？

『あーっ、あのぉ、此方のオイスターソース炒めでしょうか？』と優しく問いかける好青年。

ガキのように首を横に振る小デブ。

『ニンニクの茎イタだよー。隣で良く食べていたんだけどぉ』と、眼をまん丸にして眉毛を下げる小デブ。

『少々お待ちください。料理長を呼んできます・・・』

ああっ、なんだか大袈裟なことになってしまった。
悪いことしちゃったなぁ、と思い悩んでいると上の階からコック服のオヤジが降りてきます。

目が合いました。
な〜んダァ、久し振りっ！
言葉を交わさなくとも眼で会話。

『出来ますよ！』と一言快諾。あとでメニューを開いたところ無くなっていた・・・

メニューから消えた品を作らせてしまった無体な頑固ジジイ。反省仕切り。今度からちゃんとメニューを確認しないと。

慌てて活車海老の湯通しを追加します。

『あいヤァ、市場に行かせてみるけど、無かったら御免なさい』と料理長、というか店主。

そういえば通りを挟んだ向かい側に魚屋があったな、と気がつきます。

『それまで此方を突いていて下さい』と出されたのが、豆腐ソテーのネギセロリ乗せ。

たまらず角ハイをいただく小デブ。

程なくして『良かった、活、有りました』と店主がやってきます。なんだか嬉しそう。釣られて微笑む小デブ。

『お母様はお元気ですか？』と楊貴妃を気にかける小デブ。『ええ、お陰様で』と店主。

この会話が嬉しい。

次の世代も育っているようですね。横浜中華一族は健在、そして盤石でした。

いただいたものは以下の通りです。
そしてご馳走さまでした。

●活車海老の湯通し：
セロリとネギのみじん切りに五香粉と中華醤油の香り。唐辛子のピリ辛刺激も程よく、車海老の甘さを際立たせます

●牛肉とニンニク茎炒め：
不滅の味。メニューから消えて残念

●五目炒飯：
白菜とワカメのスープ付き。街の中華屋のお値段なのに後を引く美味さ。ピーナッツオイルと花椒塩の香りか？

●豆腐ソテー：
ネギとセロリの微塵乗せ。隠し味が分からない

●角ハイボール：
中華の油に合う

入社したての独身寮で、出身地が同じ横国出身の同期が『ぶちうまい中華があるんじゃけぇ』というので、30年前に訪れました。それ以来のお付き合いです。先代がまだ厨房に立っておられ、今のご主人はまだ見習い中、のころでしょうか。メニューの中身や味付けは変化しましたが、今でも変わらないものがあります。

それは牛肉とニンニクの茎炒め。ランプ肉（たぶん）とマッシュルーム、ネギ、ニンニクの茎、人参などをオイスターソース（たぶん）で炒めたシンプルな味ですが、もうこれだけで満足です。中華街ビールと最強タッグです。お皿に余ったソースはチャーハンを乗せ、あますところなく味わいます。

若いころは、今は亡きかみさんを車に乗せ、ツンデレ系のママさんに会うのも楽しく、月二三回の割合で通いました。
当時はツンデレという言葉はありませんが、まさにぴったりですね。だって愛想がないんだもん。でも懐に入れば素敵な笑顔が待っているんですよ。

二人で七皿から八皿の料理を食べるから、そりゃ、覚えますよね。そのうち、席に座っただけで『茎炒ね！』と言われ、肉団子のソースがピンク色でうまいと言えば『山査子のお菓子を使っているのよ。持っていきない！』と食材を包んでくれるし、『今度一升瓶を持ってきなさい。お店でどの料理にも使っているスープを分けてあげるから…』と言われるようになりました。さすがに一升瓶まで甘えてないですけどね。

海外赴任の時期があり、5年ぶりに訪れたところ、覚えていてくれました。厨房に『茎炒が来たよ』なんて声をかけられ、今のご主人がわざわざ顔を出してくれたり、嬉しくて嬉しくて、思わず涙ぐんでしまいました。
それも数年前ですが、今でもママさんの楊貴妃のような気高さは健在です。
いろいろなグルメ番組にも取り上げられているのは勿論ですが、私個人としてはNHKの新日本風土記の横浜版への出演が心を打たれました。

昔中学生くらいの娘さんが結婚し、子供をもうけ、その子供たちがもう高校生近くなった姿を見ると、30年以上も通えるお店と出会えたのは、何よりの幸せですね。