値上げしたら空いていて良いのだが : 中華酒場 風来坊 本店

土曜日の午後1時過ぎ。おミクロンの第7波かとまた感染者が増加に転じた市井の空気は、ともかく呑める時に呑んでおけ！とばかりに、特にアディクトがかった人々は野毛のこのぴおシティ悪魔街に集まってくるようだ。

外からさっと伺うと殆どの店が満席に近い。
休日にも激安ハッピーアワーをぶちかます太陽な某店は待ち行列が発生。
マジかよ？
自分もここが本命で来ておきながら、この店に並んで入店するという美学が理解出来ない。
価値観ではない、アディクトとしての美学である。
並んで無駄にする時間があるのならその時間をアルコホリックの摂取吸収に回せ！

ふぅ…
要するに早く飲みたいのじゃ。
何となく予感がしてフロアどん詰まり風来坊へ。
意外なほど空いている。
午前中オフィス引越し立ち会いでずっと立っていたのでともかく座れるチョイスのここは、以前の立ち飲み形態から座りになっている。
それにしても以前より空いているんだけど…

「3月から後会計になったんですよ」と、慌てて札束をテーブルに積み上げる吾輩に優しくインフォメーションするギャルソン氏。
お、マジか。
とりあえず注文した瓶ビールはあれ？中瓶だよ？
大瓶だったのは記憶違いか…
って、フードメニュー見て京樽！間違えた驚愕！
価格帯が別の店になっとるがな！

麻婆豆腐600円、エビチリ800円って…
それぞれ20%、33%値上げですね。
街中華ならまだ安い部類でも、従来の客からすればほぼ業態変更に近い改定ですな。
ロシアのせいか？(違う)
ウクライナのせいか？(もっと違う)
いや、この店は新たな海に船出したいのだ！
ぴおシティを貴族の集う迎賓館にしたい、のかも。

ともかく前のノリで来店する客の滞在時間が短い！
明らかにサッサと撤退モードになっとる。

吾輩はと言えば、もやしナムル280円、木耳玉子炒め500円を発注。後者は値段相応以上にちょっとプロの技の入った一品。前者は旧価格帯に通じるものだがごく普通の味わいでも、玉子炒めのタレに絡めると結構いける。

結果的には個人的評価として値上げしても受け入れられる範囲だと思うのだが、かつての「かなり安くて楽しくて、結構美味しい」というイメージをどう変えて行くのか。また大手中華チェーンとの差別化をどう維持するのか、空いている店内で寛ぎながら他人事の心配をしていたのでありますた。

ちなみに中瓶でも税込390円はよく考えれば安いんだけどね…

ブルーライン桜木町駅改札出て直ぐの「ぴおシティ」直結エスカレーターに飛び乗れば、あっと言う間にアルコールパラダイス！ぴおシティB2！イャっホホォーイ！
お前は既に終わっている！いや、吾輩終わって候！とか〜治りかけの痛風フットを引き摺って速歩で参上すれば、壊れかけの大脳辺縁系はバシバシ怪電波を受信中である！

とは言え、やはり多少は不摂生への反省もあり、新規開拓ではなく、知ってる店で大人しく、ちょっとだけ飲んで帰ろうかなー、とか。結局は飲むのだけど。
そんでもって、フード選択肢豊富なお気に入り当店。ホッピーと春巻と木耳卵炒め。
ここは本当は大瓶なんだけど今はプリン体がね…とか後ろ向きに考えず、右の頬打たれたら左の頬を差し出すようにプリン体ゼロホッピー！しかもダブルナカなんてアル中殺し仕様でコレってハイオク〜！ソトがほとんど入りません！
ありがたや〜！

春巻は結構普通に美味い。木耳卵はガーリックほか調味が強めチューニング下品味(良い意味で)でツマミ満足度高い。
そして何より、ここは100%イスの店になりました。
混雑時にどう捌いているかは不明だが、ハイカウンター仕様のテーブルはそのままなんであらかじめ引いてあった結界線はあやふやになってたが、とりあえず空いてる時間は何となく適度な間合いで座る達人ソロ客達。
吾輩はこのイス仕様はありだと思うが、店の雰囲気は少し変わった。細かい事だが酒場とはそういうものだろうにゃー。

さて、次行くか(健康に配慮は？)

所謂立ち飲みで、料理が良くてつい来てしまう店はあまりない。かなり高くつくようなそれなりの覚悟が必要なところもあるにはあるが、そうなってくると何で立ち飲む必要があるのか？コスパも含めた気軽さを重視すれば、普通の値段の店は普通に落ち着いて座って味わいたい。さらにそういったハイパフォーマンス立ち飲み？か何かに並んで入店、とか、吾輩のアル中脳では理解出来ない。山と言えば川。乳と言えば尻、というシンプルな世界が好きなのじゃ。

ここは来るたびに次の宿題が増える。今回は、街中華食事メニューで飲む！という事で麻婆豆腐5倍と玉子チャーハン。もう後は悩まない！食って飲んだら帰る！
まず麻婆豆腐が配膳。しばらくジャージャー油ハネする熱い鉄板に乗せての配膳で、はっきり言って食味的には無意味な演出だが、冷食チンや仕込み小皿ラップ取ってハイどうぞ！が常套手段な立ち飲み界(決して否定はしてませんが)においては、気合のサービススタイル。中華街メジャー店の出身だと言う当店シェフの遊び心と、母体であるじぃえんとるまんのライブな鉄板焼きメニューに通じる、いかに制約の中でライブな面白さ、付加価値をつけて行こうという気概を感じる。

まあ、味は普及版四川式という感じではあるが、この価格で都度調理で程よいサイズというのがやはり良い。
玉子チャーハンも都度調理(だよね？)でこの価格サイズ。味わいもパラめのバランスで、単独で良し、麻婆と一緒で良し。

店内では20倍麻婆の注文があり、厨房スタッフが咽せていたが、配膳時には店内に刺激ガスが充満し、これ本当に大丈夫？状態になったのは笑った。ちなみに5倍だと刺激はココイチノーマルレベル。何となくもうちょい上レベルにしたくなるが、このくらいが体調や味わいバランス面で程よいのではと思った。

ここの店のハードルは、入り口近くのグループ客で昼間からいい感じに盛り上がっているあの雰囲気である。
いや、客層は高めなのでそれほど騒がしかったりさないのだが、なんとも皆さま楽しそうでワシらのようなソロ客の居場所があるのか外からは分かりづらい。
だが、ちゃんと店の奥にはソロ用の、かっきり4等分に仕切り線の引かれたテーブルがあるのだ。
まあ、席ではない。立ちだから。

一般に立ちの店では時としてこの一人分のスペースの境界が曖昧になる。それが何となく許容されるのは、こういった店は呑んだくれの上級者中級者がちゃんと周囲の状況をわきまえて立ち位置を工夫したり、店の仕切りに協力したり、時として初心者の同行者をサポートしたり、教育したりしているからである。例えばカウンターだけの混み合った店で、2.3名客が向かい合って横向きに立つのは、背中側の隣客との距離感が狂うためご法度だ。また、本来カウンターに肘を着くことすらマナー違反だと言う(©️新橋竜馬)! 立ってるのがダルけりゃ座りの店に行きなさい！

まあ酒場のマナーなんてどこまでうるさく言うかは、粋と無粋とこれまた境界が微妙だが、ようやく本題に戻ると、この4分割されたテーブルはそう言う酒場でのちょっとした「あるある」トラブルを避けるためには非常に有効と思う。これがあるお陰でなかなかこのセンターラインは超えられないはず…というより自分の神経質さがおかしいのか、周囲の隙を突いてメニューなどの卓上アイテムを中間、中心位置に整えるワタシ。

さて、酒は瓶大が400円と素晴らしい値付けだがその他は大体こんな感じかなと言う濃度、値段。フードは、これが種類も多く量も適当で、味はかなり本格的で驚く。
居酒屋ツマミではなく、街中華でそれなりの値段で出されるものでも、上位レベルだわ。ピータン豆腐、ビーフン炒めなどを頂戴する。提供も、混んでる店内だがなかなか早い。特にドリンクは速攻で出てくる。ここは姉妹店のじぃえんとるまんと同様！流石だ！

なお今回のタイトルはここの店、姉妹店と共通の「客あしらいの巧さ」に思うところがあったためだが、この4分割テーブルに最初から納得して適応出来る初心者は少ないと思う。店の都合で押し込みやがって！と。だが、全てが立ち飲みストに考慮されたシステムには、酔っ払いへの愛情が感じられ、お店の人達のサービスも都内の同ランク店に比べれば淡くも優しく適切…というか、結局は上手くあしらわれているだけなのかも知れませんが。