今まで自分が食べていた「家系」的なラーメンって一体何だったのだろう？ : 家系総本山 ラーメン 吉村家

言わずと知れた家系の総本山。1974年に横浜市磯子区の新杉田駅の近くで開店。1999年秋に当地に移転。新杉田で25年、当地でちょうど20年の業暦を刻む。創業者の吉村実氏のインタビューによれば、当地での賃貸借契約も25年で満期を迎えるようで2025年には移転予定とか。(桜木町の『ぴおシティ』がラブコール中だそう。)

まさに20年来の永年の課題店。過去トライしようとしたことは何回かあったが、長蛇の列に挫け、訪問を断念してきた。遂に念願の初訪問。

なぜ今回訪問を決意したかと言えば、ネットに掲載されていた吉村氏のインタビューが印象的だったから。齢70を超えた今でも朝5時からスープの仕込のために調理場に立ち、出汁には生のガラを使い、酒井製麺の特注麺を使い続ける。そのインタビューが熱く、実店舗での品を確かめたくなったのだ。

家系ラーメンは神奈川で生まれ、愛されてきたラーメン。横浜や神奈川のご当地ラーメンと言っていい。

東京には比較的早い時期から、直系もしくは老舗の「家」のつく店で修行した方の独立店が相当数あり、かなり浸透していたが、10年位前までは、埼玉や千葉では、ラーメン好きを除けば「家系」という存在自体が、さほど認知されていなかったと思う。もともとは関東の一部の地域でのみ名の知れたラーメン。関東人の好みを意識した極めて関東的な豚骨醤油ラーメンのはずだが、最近ではエリアを問わず、家系的ラーメンが全国的に増殖している。

ただ結論から書くと、ほとんどのお店は似て非なるもの。特にインスパイア、資本系等のなんちゃって家系とは姿形は似ているが全くの別物だと思う。

麺、スープ、具材全ての面で、総本山を名乗る当店の凄さを実感。

まずスープ。旨みの幹がきちんとあるが、意外にアッサリ。旨みにも油脂にも過剰感や嫌味がなく、胃腸への負担が少ない。食後も全く胃もたれしなかった。家系的ラーメンはこれみよがしの旨みがある店が多いが、印象が大きく異なり、体にスッと入ってきた。ガラ等の素材を吟味されているのだと思う。

また醤油の存在感は特筆物。今回は味の濃さの指定をしなかったが、デフォのスープは単独で飲むのはチトキツイと感じる程。ただ酒井製麺の特注麺や白ご飯とは相性抜群。海苔にスープを絡ませ、白ご飯とともに頂くと口福。

麺は固すぎず、いい具合にシットリしている。モッチリとした適度な歯応えが実に心地いい。

具材も特徴的。チャーシューは薫香がするが、スープの味を邪魔しない。柔らかくジューシー♪

ほうれん草も冷凍でなく、生のものを茹でていると思う。

今まで自分が食べていた「家系」的なラーメンって一体何だったのだろうと目を開かれる感覚。巷に溢れるレプリカと見た目は似ていても各構成要素への拘りにより、全く別物になっている。個人的には遠出をし、長時間待ってでも、食べて損のない品だと思う。

■システム・留意点
・入店前の食券の購入要。
・入店が近づいたら、入口右手すぐの券売機
　で食券を購入。券売機は2台あり。
・食券はプラスチックで色付き。メニュー名
　は記載されていない。
・10名単位で麺茹でし提供。10名単位で
　ガサっとお客さんが入れ替わる。
・行列待ちの人数の割に回転は早い。

■注文の品～価格は税込表示
・チャーシュー麺810円
・玉子60円
・海苔マシ50円
・ライス(漬物付)110円
会計1,030円
・麺固めでオーダー。
・味の濃さと油は普通で注文。

■ラーメンの構成
・麺:酒井製麺の特注麺。
・具:玉子、チャーシュー、ほうれん草、海苔、葱少々。　
・スープ:豚骨醤油＋鶏油。
　旨味、油脂の過剰感はなし。
　体に負担感なく入る。

■卓上の調味料
今回はデフォの味を楽しみたかったので
使用せず。
・ラーメンコショウ
・刻みショウガ
・おろしショウガ
・おろしニンニク
・ニンニクチップ
・白ゴマ
・醤油
・酢
・青唐辛子
・豆板醤
　
＜訪問記録＞
■日時
・2019年11月3日15:03。初訪。
・到着時の行列待ちは100人近く。
・入店は16:08。行列待ち65分。
・1人客は優先的に案内。
　（大人数での訪問の場合、入店により
　　時間がかかる可能性大。）
・提供待ち約5分。
・16:25頃、退店。
・行列待ち人数は到着時とほぼ同数。
・食事時間計82分。

■場所
・横浜駅からの訪問がおススメ。徒歩10分余。

■お店の状況
・調理場前のカウンター24席程。
・入口右手の小上がりにテーブル1卓。
・キャパ30名弱。
・接客自体は普通。
・厨房の男性のうち1人は、お客の個別指定
　(麺の固さ、味の濃さ、油の量)の記憶専担。
　各自の注文を覚え、作り手に口頭で伝達
　していたのが印象的。
・厨房に吉村氏によく似た方がいた。
　息子さんだろうか？
・お冷はセルフ。
・トイレは一番奥の突き当り右手。
・男女共用の洋式個室。

(2019年11月4日)
・レビュー1385件。3.79/マイレビュアー様34件。3.63

＜参考＞家系についての考察
1.家系のカテゴリ
家系のお店のカテゴリは大きく以下の5つ
に大別できると考えている。

(1)新杉田で創業した「吉村家」＆その直系
　直系の代表格は杉田家、はじめ家。
　2019年のインタビューで吉村氏は
　「裏切らないのは杉田家、はじめ家だけ」
　と発言。

　直系に変動があり、環2家、王道家は直系
　から外れ、まつり家、横横家は閉店。

(2)直系のお店での修行経験のある方が独立。
　「家」の屋号を持つお店。
　「本牧家」「六角家」「近藤家」等々。

(3)(1)や(2)の店での修行経験者が独立。
　「家」の屋号を持たないお店。
　例えば大阪の「そらの星」さん等。

(4)(1)や(2)の修行経験がないにも関わらず
　「家」の屋号を名乗るお店。

かつては吉村家の直系や、家系の老舗での
修行者のみが「家」の屋号を名乗り独立
していたはずだが、最近は崩れている。
修行経験のない方が勝手に「家」の屋号を
名乗っているカオス的状況。

(5)上記の何れのカテゴリにも属さないが
　すなわち(1)(2)の店での修行経験もなく、
　屋号に「家」も付けていないが「家系」的
　ベクトルのラーメンを出すお店。

(1)と(2)のみが狭義の「家系」
コアな家系のファンは家系をより限定的に
捉える傾向にある。

(3)～(5)のカテゴリはまさに玉石混交。
特に(4)や(5)は、良く言えば「インスパイア」
だが、家系ラーメン人気にあやかりたいという
バッタもん的お店「なんちゃって」がほとんど。
資本系の家系はほぼ(4)か(5)だと思う。

吉村氏によれば家系的ラーメンの3分の1が真面目
に作っていて、残る3分の1が冷凍物の輸入ガラを
使用、残る3分の1は缶詰(恐らく業務用のスープを
さすと思われる)を使用しているとのこと。

色々書いたが、現状は(1)～(5)のカテゴリの全ての
お店が幅広く「家系」と捉えられている。

実際、食べログレビューを拝見しても「家系」的
ベクトルのラーメンを出すお店は一括りに「家系」
としてレビューされている。

2.「家系的ラーメン」は、そもそもどんなもの？
ラーメンの麺、スープ、タレ、香味油、具材という
構成要素に分けて考えると以下が「典型的」な家系。

・麺
　太目でストレートに近いプリプリ麺
　（吉村家＆直系等では酒井製麺の特注麺を使用。)

・スープ
　ベースは豚骨。関東で生まれた豚骨醤油。
　醤油が前面に出る味つけ。

・タレ：醤油ダレ

・油(鶏油)
　鶏の皮から取った油。低コストで濃厚な味わい
　を演出できる。

・具材
　チャーシュー、ほうれん草、大判の海苔3枚、
　葱少々。

注文時に麺の茹で加減、醤油ダレの量、油の量
の好みを指定可能。