地産地消のこだわりのディナーは食べる価値あり。一方で、宿泊費は以前に比べると相当に値上がりしています。 : 島宿　真里

小豆島にある人気の旅館です。旅館の名前の「真里」は創業した家族の２人の名前からとっているそうです。この旅館は現在のご主人のお母さん（故人）が民宿として始めた宿。
小豆島の田舎の風景が残る場所にあります。部屋から遠くに海は見えますが、周囲には醤油工場の煙突や田舎の民家があります。部屋からの景色は日本の原風景って感じでしょうか。（絶景を臨む宿ではありません）

客室は以前は７部屋でしたが、今年になって８部屋に増え、さらに離れの２部屋の営業を始めました。この「離れ」は敷地内の「離れ」だと思っていたら、車で５分ほどの海岸沿いにあるそうです。現在は食事のために本館まで送迎しているとのこと。この宿は非常に人気の宿で評判もよいのですが、この拡大路線が凶とならないことを祈ります。
将来的には離れでも食事ができるようにするそうですが、そうすると料理人を新たに雇う必要が出てきます。人件費も大きく上がりますし、何よりも現在の評判の高い食のレベルが維持できるのか。
正直、この話を聞いたときに、私は経営の素人ながら、今後が心配になりました。拡大路線で失敗することは一般論としてはよくあることですから。

この宿、改装を繰り返して現在の立派な姿になっていますが、客単価は確実に上がっています。
他の方のレビューを見てもわかるように、以前は人数にもよりますが１泊２食で３万円弱でした。ところが、現在では部屋のタイプや人数、季節にもよりますが、最低でも１泊２食で４万近くします。

食べログにはCPが高いことを褒めるレビューが多いですが、現在の「真里」はCPがそれほど良くは感じられません。１人あたり４万となると、評価のハードルも大きく上がってしまうのです。

決して高級旅館のようなサービスを期待してはいけません。手作りの心の触れ合いを大切する宿って感じでしょうか。とても居心地がよく、アットホームな感じがします。
部屋は広いですね。寝室が別にありベッドなのが私には嬉しいです。細かいところに宿のこだわりが感じられます。（古民家風にしてあるのですが、これは相当お金がかかってると思いますね）
お風呂は部屋風呂の他に貸切風呂（無料）があります。なお、部屋風呂も貸切風呂も温泉とのことですが、あまり温泉は感じられません。

食事はさすが。確かに素晴らしいです。といっても豪華食材が並ぶわけではありません。地元の食材を上手に使い、他ではなかなか食べることができないような料理が食卓に並びます。ある意味、食の上級者向けの宿です。

酒　
柿と柚子のノンアルコールのお酒

菜　
山海の恵み島7種
鰆からすみ、小アジの南蛮漬け、にし貝黄味酢と肝、煮落花生、足赤海老塩湯がき、飯蛸のうま煮、たけのこ芋の胡麻豆腐
味が薄いものから濃いものへと順番に並んでいるのはさすが。

島　生こびき平麺　生そうめん
島の特産。

鮮
島魚（にし貝、すずき、あかばね、真鯛）と畑野菜の盛り鉢
醤油は４種
諸味たれ（木桶から分けてもらった生の諸味に甘味や生姜を加えたもの。独特のとろみが特徴）、二段熟成（１年熟成してできた醤油の中に再び麹を仕込みさらに１年熟成したもの）、生あげ（仕上げの工程の火入れの前のもの。市場には出回らない貴重な醤油）、淡口生揚（低温殺菌と膜濾過を平癒し、発酵をやわらかく止めて生の風味を残した醤油）醤油を比べられるのは貴重な食体験でした。
刺身はどれも地味ですが非常に新鮮で美味しいです。負けないのが野菜の美味しさ。島の契約農家からの野菜とのことです。

焼
讃岐オリーブ牛炙り焼き
合わせ塩、染めおろし、さつまいも、青唐、人参

肴
渡蟹塩湯がき
蕪、ナス、合わせ鉢野菜、いりこ酢
渡蟹は味は非常に美味しいですからね。無言でしゃぶりつきました。

煮
げたの自然薯鍋
レンコン、椎茸、刻み野菜
「げた」とは舌平目のこと。舌平目は軽く炙ってあるのですが、舌平目の旨さが上手に引き出されています。

汁
鯛の潮仕立て

飯
土鍋のオリーブごはん
小豆島肥土山産新米、エクストラヴァージンオリーブオイル（無濾過）
この旅館の名物の１つ。ただし、このメニューは秋から春のみの限定メニュー。ご飯にオリーブって合いますね。

甘
みかんソースのヨーグルトアイス
マーマレード

全部でおよそ２時間を超える料理でした。

建物は増築を繰り返しているので、段差が非常に多いです。２階へはエレベーターなどはなく階段がかなり急なので、足が悪い方がメンバーにいる場合は１階の部屋を取ることをお勧めします。
食事は１階の食堂にて。オープンカウンターもしくは半個室のどちらかとなります。
近くの港までの送迎サービスがあります。事前予約制。時間は決まっています。

小豆島の人気宿の朝食レビューです。朝食も夕食と同様に１階の食堂にて。夜に比べると朝はスタッフの数が少なめです。
夕食も地元の食材を大切にする印象に残るメニューでしたが、朝食はさらに印象に残る素晴らしいメニューでした。和食の朝食としては完璧といってよいと思います。

地元の野菜を中心とした身体に優しいメニューで品数が非常に多いです。さらに、全体的に薄味。
どのメニューも非常に丁寧に作ってあることがわかります。これだけの料理を作るのは本当に大変だと思いますね。固形燃料などインパクト重視の朝食を出す旅館が多いなか、ここはクオリティで勝負しています。

食後はラウンジにてコーヒーがあります。ラウンジには他のお客さんがいたので「部屋にもお持ちします」と言われ、私たちはコーヒーを部屋に運んでもらいました。

小松菜生絞りジュース

サラダ
いりこ節ドレッシング
寄せ豆腐

島の麹屋さんのお味噌汁

ナスの揚げ浸し　鰹節和え　青唐
地魚おろし和え　酢いりこ
人参きんぴら　ゴマまぶし　インゲン
さつまいものとろみ酢ちりめん枝豆
レンコン胡麻クリーム　絹さや
ひろうす
じじき焼きじゃが　糸こんにゃく　パプリカ

さわら柚庵焼き
大根おろし
菜巻き玉子
土鍋のおこげごはん

オリーブ海苔
子持ちきくらげ
ちりめん甘辛煮
諸味みそ

コーヒー

豪華食材やインパクトのある料理ではなく、島の食材を活かし、丁寧に一つ一つ作ってある朝食は、旅人の心まで温めてくれるような料理。
夕食レビューにも書きましたが、真里は今拡大路線を取っています。拡大路線の結果、現在のきめ細かな料理やサービスの質が下がらないことを祈ります。また、この数年で宿泊費も大きく値上がりしています。現在は人数、季節、部屋にもよりますが、１人当たり4万円程度でしょうか。（予約の方はホームページをご覧ください。）
以前のレビューはCPを絶賛するものが多いですが、その頃からは値上がりしているので、現在の真里はCPには過度な期待はしない方がよいでしょう。