上質な魚の造り（刺身）など，ウマい酒肴がいい，銘酒居酒屋になりうる　” 瀬戸内家 良ちゃん ” : 瀬戸内家良ちゃん

高松駅近辺でウマい造り（刺身）や酒肴，
ウマい酒を求めて，新規開拓してみます。
駅の南側，西の丸町にある
” 瀬戸内家 良ちゃん ” さん。

外観は創作料理屋さんのような，すきっとした小料理屋的な佇まい。
店内も小ぎれいで清潔感があふれています。

日本酒は凱陣，群馬泉，芳水，綾菊，喜久酔，石鎚，美丈夫など，
香り系は少なく，厳選した純米無濾過生原酒も選んでいます。
芋焼酎はさつま寿，不二才など，
サッポロ赤星があるのにもこだわりも感じました。
香り系日本酒が少ないのも嬉しい限りです。
燗酒はきちんと燗どおこでお燗をしてくれます。

・伊吹島のじゃこおろし
店主自ら観音寺市沖合の伊吹島まで行って選んだ伊吹島ジャコ。
カタクチイワシの名産地なのです。
淡路産や小松島産あたりのちりめんと比べると，
しっかりと乾燥していて色は、黒っぽく見えます。
伊吹のちりめんは，やや固めの方が，
しっかりと乾燥させているので，味がギュッと凝縮されています。
本来の伊吹特有の旨味が出ており，おススメだと思います。

・黄ニラと真鯵つみれの玉子とじ
刺身で食べられる程の鮮度の高い状態のあじの落とし身を使っています。
つみれは自家製で作ると真鯵のおいしさがぜんぜん違います。
「魔法のだんご、それは究極のつみれ」
かんだ瞬間ふわっとやわらかく，口の中いっぱいに
広がるうまみ，栄養満点でしかも低カロリー。
スープ仕立てでダシもよくでていますし，
黄ニラと玉子の相性もバッチリでした。

・トビウオのなめろう
なめろうは、もともと船の上で作られていたといわれる千葉県房総の漁師料理。
新鮮な魚をおろして，みそや香味野菜と一緒にたたき合わせて作ります。
なめらかな舌触りということから，「なめろう」という名前がついたのだとか。
料理らしく豪快にたたいています。
少しずつ口に運んでは，いつまでもお酒が飲みたくなる極上のおつまみです。

トビウオといえば，大海原の上を群れて滑空する姿が目に浮かびます。
運動量が激しいためか脂肪分は少なめですが，
意外にも高タンパク質でヘルシーフードとして人気が高い魚です。
アゴは日本中にいて，しかも大量に獲れるため，
大型でもとても安く手に入ります。
大衆魚の代表の秋刀魚と同じような値段でしょうか。
こんな値段の魚ですから，
それなりの味と思われがちですが，ところがとんでもない。
３枚におろして刺身にすると，それこそ絶品。
アジの刺身より上，鯛よりも上，ヒラメよりも私にとっては上です。
つまり最高の刺身なのです。
山陰や新潟はトビウオが有名ですが，アゴの刺身があれば，
間違いなく一番先に注文します。
そして，場合によっては追加でさらに一匹食べることもあります。　

・ほうれん草のけんちゃん
香川では有名な「まんばのけんちゃん」。
まんばとは高松付近の方言で，
高菜(大からし菜)のことです。
高菜に代えてほうれん草で代用していますが，
けんちゃんとは「けんちん」のことで，
油で炒めた野菜をくずした豆腐と一緒に煮たもののことです。
これもおいしい逸品でした。

・厚焼き玉子と焼き明太子
だし巻き玉子は和食系の居酒屋では切っても切れない間柄。
ふっくら焼き上がり，上品 でやさしい甘さ。
熱々の玉子焼きを，口に頬張ったときにジュワーって来る，
あの出汁と卵の感触はたまりません。
時間をおいてもしっとりおいしいのです。
大根おろしに醤油で肴にもなります。
焼き明太子もいい酒肴でした。

料理は素材を生かした調理方法であり，
特に魚料理は新鮮な魚介を目利きしています。
店主の心づくしのおつまみは，
居酒屋というレベルでは，どれも気の利いたものです。
仕入れや仕込みがきちんとしていることは，
見ているとよくわかります。

群馬泉は一合480円と良心的な価格。
燗の場合は燗どうこで湯煎してくれます。
熱燗やぬる燗もいいものです。
香り系は少なく，無濾過純米生原酒を厳選した日本酒の数々。
酒飲みの心をくすぐる肴の数々です。
いわばワンランク上の居酒屋だと思います。

店主は前田良太さん。
店名はここからきているのでしょうね。
日本酒はこだわっているというか，
これだけ理解しているかたは，
香川県の飲食店でいえば，いくつかを除いて，
なかなかいないと感じました。
利き酒師と称するかたよりも抜きんでています。

スタイリッシュな店内でも，大衆感あふれる雰囲気と手頃な価格，
心づくしのおつまみや一品料理は，まさにホンモノの居酒屋です。
この良き居酒屋は，人を気持ちよく酔わせてくれるのです。
ここには上級者だからこそ，愉しめる奥深い居酒屋道があります。

チェーン店の大手居酒屋ではなく，
ありきたりの個人経営の居酒屋でもない，
「酒場という聖地へ、酒を求め、肴を求めさまよう」
というフレーズでお馴染みの吉田類さんの『酒場放浪記』や，
太田和彦さんの『ふらり旅いい酒いい肴』にも合致する，
探し求めていた銘酒居酒屋ではないでしょうか。

ここもオープンして１年以上経過していますが，
食べログレビューは全くありません。
食べログ香川が見逃している店です。
香川県はうどん県と呼ばれるくらいに，
有名なので，うどん屋さんやラーメン店はともかくも，
地方都市の食べログは，和食店や寿司，居酒屋さんにせよ，
名店が埋もれてる可能性が多分にあります。
地元レビュアーさんの数も少ないですし，
ビジネスや旅行で来た県外レビュアーさんは，
食べログの点数が高いお店ばかりに行きがちになります。
このお店もその典型でしょう。

ごちそうさまでした。