能登・輪島門前の丘に佇む絶景ワイナリー。 : ハイディワイナリー カフェ＆レストラン

これまで氷見のセイズファームと穴水の能登ワインは何度か尋ねたことがあったが、能登半島に「もう一つ」ワイナリーがある、という話を聞いていて、早く行かなければと思っていたところだった。個人的に、能登半島でも特に「さいはて」感が味わえて好きなシーサイドラインは、珠洲の外浦側～輪島～義経の舟隠しあたりにかけての一帯なのだが、そんなエリアの一角、輪島市門前の、海を見下ろす絶景の地に構えたワイナリーだ。

Google先生の先導でたどり着くと、洒落た外観の一角。倉庫の壁面デザインも洒落ているし、ショップやレストランが入る建物も南欧風（そこが能登であることを考えるとミスマッチな気もするが）で洒落ている。醸造スタッフだろうか、醸造所前に車を止めているときちんと会釈してくれる。小さなことだが、大事なことだ。

車を止めているときから「なにやら業界っぽい若者がずいぶん出入りしているな」と思っていたが、ショップの建屋に入ると多くの人が。翌日からのイベントの設営中だという。ショップでワインの説明文に見入っていると、年配の女性が声をかけてくれた。能登の地元のおばちゃん販売員に聞いても表面的な販売説明しか得られないだろう、などと心の中で一瞬思った私だったが、よく見たら、地元っぽくないおばさまだ。話すうちに、実はこちらのワイナリーのオーナーマダム（社長のお母さま）ということがわかり・・・失礼しました。

もともと横浜南部にお住まいだったご一家で、私も割合わかる場所だっただけに立ち話が盛り上がってしまったが、ご子息がワイン造りを目指す中で新潟のあの「カーブドッチ」で修業されたことや、ご主人の出身地である皆月（みなづき）に大規模に葡萄を作付けしていることなどを伺った。能登半島を縦横無尽に走り回る私は無論「皆月」という場所を知っていたのでマダムに「よくご存じで」と言われたが、皆月周辺といえば「間垣の里」としても知られる場所。冬の能登の原風景が見られる地域だ。また雪割草で有名な猿山岬も近く、その絶景は必見、ぜひ訪ねたい場所である。

そして、ワイナリーのある門前（もんぜん）という街は、仏教・曹洞宗の総本山「総持寺祖院（そうじじそいん）」のある街だ。そしてなんと、こちらのワインはその総持寺の御用達に認定されているという。その名は「相承（そうじょう）」。赤白がある。昨今の高僧の方々はグルメのようだ。

マダムに「よかったらカフェもご覧になりませんか？」とご案内いただく。
この日はイベント準備で営業していなかったのだが、歩を進めるとその絶景に一瞬言葉を失った。傍らに薪ストーブが燃えている。
もちろんこの場所が絶景なのは到着して承知していたのだが、やはり建物の建具に切り取られた眺めというのは、心底美しいし、一層迫力を増すのである。私もかつて海を見下ろす三浦半島の丘に住んでいたので、その場所をご存じのマダムと風景の話が弾む。
このカフェで、この場所で醸したワインをいただきながら食事をしたら、さぞかし楽しいひと時を過ごせるだろうなあ、と思った。

この日購入したのは

マスカットベリーA 2015 180ml 720円(税別)
相承 2014 白 750ml 3500円(税別)
ハイディロゼ 2016 2400円(税別)
合計 7149円(税込)

こちらの赤はベリーAが主体のようで、そもそもベリーAがあまり興味のない私は、お試しに小瓶をチョイス。もっとも、山梨県産ワインで昨今ベリーAも舐めたもんじゃない実例が出始めているので、もしかしたらヒットするかも、の期待を込めて。

相承２０１４（白）は、シャルドネ６７％、甲州３３％の見たことのないアサンブラージュで樽熟。これは面白い。ブドウ産地は兵庫と山梨。総持寺の御用達認定品ということもあってチョイス。

ハイディロゼ２０１６はロゼというものの、オレンジ色を帯びた不思議なオーラを放った一本。商品棚の一番端にありながら、私の目をとらえて離さなかった一本だ。セパージュはヤマソービニヨン（山葡萄とカベルネを掛け合わせた日本の品種）。東京でこれを飲んだOLが気に入ってここまで買いに来たという逸話をマダムから聞いたミーハーな私がチョイスしたのは言うまでもない。

まだ葡萄の樹齢が若いし、収量も全量を賄えるほどではないのか、他の産地の原料を使ったワインも多いが、なんといってもこの能登の、しかも外浦側の気候を十分に享受して育った葡萄で醸したワインこそが、ここのワイナリーの、これからの期待である。海を間近に望み、空気も土壌もミネラルを豊富に含んだ土地。能登のどのワイナリーの畑よりも海に近い。また能登で最も晴天率の高いのが輪島西部であり、意外にも葡萄栽培に適した環境のようである。これからが楽しみだ。

まだまだ新しいワイナリーだが、ゆくゆくは特徴ある自社畑の葡萄を使ってナチュールを醸してみたら面白そうだな、と思ったのであった。