海の見える老舗料亭『三春』さん。美味しい料理と素晴らしい景色にお腹と心が満たされます。 : 三春

昭和25年創業の老舗料亭『三春』さんにランチで伺いました。場所はＪＲ日立駅海岸口から徒歩5分のところ。まさに目の前が海、と言う最高のロケーションです。

元々「三春」さんのある辺りは、料亭が何軒もあった華やかな場所だったそうですが、今では「三春」さん一軒だけになってしまったそうです。その「三春」さんも2011.9.11の東日本大震災では大変な被害に遭われたそうで、1年以上もの時間を掛けて復旧させ、2013年に再開を果たしたそうです。大変なご苦労があったんだと思います。

その際に建物の二階を「三春」から「cafe MIHARU」に変え、一階部分のみを「三春」としたようです。食べログの登録でも「三春」と「cafe MIHARU」に分かれていますが、実際は同じ建物となっています。

二階の「cafe MIHARU」は、営業時間が13:00〜18:00、事前予約も必要ありませんが、「三春」はランチ、ディナー共に完全予約制となっており、私も2日前に予約をして伺いました。

三春のランチタイムは11:30〜14:30まで。この日、お店には開店より10分早く入店してしまいましたが、3代目若女将の映理子さんが快く迎えてくださいました。「お食事は普段は一階で召し上がって頂くのですが、お一人様ですし、お天気も良いのでお二階にご案内します」との事。

二階の部屋は「cafe MIHARU」ですが、13時からの営業なので、特別に入れてくれたのだと思います。折角なら眺めのいい二階がいいですからね、大変ありがたいです。

歴史を感じるような急な階段を登ると、窓を開け放った古い畳敷の大部屋があり、畳の上には如何にも昭和を感じるちゃぶ台が2つ、窓際のカウンター型テーブルが１つ、4人掛けのテーブル席も3つ程置かれています。何ともアンティークで雰囲気抜群のお部屋です。

その中で私が案内された席は、4人掛けの大きなテーブル席。しかも真っ直ぐ正面に見えるのは海！なんと最高の席じゃないですか！また、景色も素晴らしいのですが、波の音がとにかく心地良い部屋です。ぼーっと波の音だけ聴いていても心静かに時が過ごせる様な、落ち着いた雰囲気です。癒されますね。

さて、三春さんのランチは、「海 2000円」・「風 3000円」・「凪 4000円」の3コースがあり、予約時に指定しておきます。私は「風 3000円」を事前予約で注文し、当日にはいつもの「キリン零ICHI」@500をお願いしました。ノンアルではありますが、波の音を聴きながらの零ICHI、最高です！贅沢なひとときです。

さて、ランチコース「風」の料理は以下の通りでした。なお、料理は一度にまとめて配膳されるのではなく、順番に少しづつ食べ終わった頃に熱々の出来立てで持ってきてくれます。これも嬉しいですね！

(1) 前菜三品

前菜は、蒸した「さつまいものバター焼き」、「大根と人参と菊の花の酢の物」、「青菜のお浸し」の三品です。恐らくその日その日の仕入れや季節感を取り入れながらメニューは変わるものと思われます。さつまいもは、最近のスィーツの様に甘い焼き芋のような甘さではなく、ごく自然なさつまいもの甘さ。バター風味が何ともいい味で美味しく頂きました。

(2) 胡麻豆腐

自家製の胡麻豆腐ですね。とろっとろに柔らかくて、胡麻の風味がとても濃厚です。真ん中に置かれた生ワサビが味を引き締めています。

(3)茶碗蒸し

熱々出来立ての茶碗蒸し。綺麗な茶碗に入って配膳されました。上品な出汁の味で、ほっこり美味しく頂きました。

(4) 三春の玉子焼き

此方も上品な出汁がたっぷり染み込んだ、奥久慈の卵で作った特製玉子焼き。味付けは甘過ぎず塩っぱ過ぎず、ちょうどいい塩加減で、食感もふっくらと、とても美味しいです。料理人の熟練の技を感じるような玉子焼きです。

(5) そばの実の鴨お仕立

これは初めて食べる料理です。創作料理なんだと思いますが、玄ソバの殻を剥いた「抜き実」を茹で、鴨出汁のそばつゆの餡掛けと混ぜたものと思います。これは斬新です！初めに配膳された時は、熱々の湯気が立って出てきましたが、普通に鴨出汁のそばと同じ香りがします。そばの香りが実によく立ちます。そばの抜き実と鴨出汁の餡をスプーンで食べてみると、まさに啜らない蕎麦です。蕎麦好きには堪らない一品です。

(6)蟹クリームコロッケとひじきの煮物

コロッケのクリームは、割と硬めの食感で濃厚です。ちなみにソースはありませんが、クリーミーな味を楽しむには、ソースは無い方がイイですね。ヒジキはやや大きめで、如何にも海藻らしい自然な味と食感でした。

(7) 三春名物 笹巻きご飯

先代から受け継がれているという、三春の名物料理は、「笹巻きご飯」。2013年茨城デザインセレクション県知事賞を受賞した品です。茨城の銘柄豚である「美麗豚」を三日かけて煮込み、大分どんこ椎茸煮と餅米で包んだものです。元々は鰻を巻いて作っていたそうですが、原料の高騰で映理子さんが試行錯誤を繰り返して完成させたのが、現在の笹巻きご飯だそうです(通販では鰻巻きもあるようです)。ちなみに、震災でお店の営業が出来なかった時に三春を支えたのが、この「笹巻きご飯」だったようです。

実際に頂いてみると、「美麗豚」は豚の角煮のように柔らかく、味のよく染みたこってりした味。そして大分どんこ椎茸は干し椎茸なんですね、椎茸の旨味が半端ない濃厚さです。正直、これ程美味い椎茸は食べた事がありません。茨城の美麗豚と、大分のどんこ椎茸、そして餅米の組み合わせは見事としか言いようがありませんね。

(8)水菓子

コースの締めはさっぱりと「葡萄ゼリーと金柑のデザート」です。ルビーの様な綺麗なゼリーと金柑の黄色がよく映え、美味しく頂きました。

【最後に追加注文のcafeメニュー】

三春さんが掲載されている本に載っていた、cafeメニューの『(愛媛県)宇和島産 新レモンのケーキ』@500を追加でお願いしました。瀬戸内海は国産レモン栽培の発祥の地であり、日本一の生産地です。絶対に美味いに違いないと思って頼みました。

「新レモンのケーキはちょうど始まったばかりなんです。いい時に来られましたね。宇和島の檸檬をたっぷり使っています。」と言われました。全くこの日はめっちゃラッキーが重なる日です。

到着した手作りの新レモンのケーキ。食べてみると、酸っぱい訳ではなく、檸檬の旨みがぎゅっと濃縮されている様な味です。美味すぎる〜〜。

という訳で、約1時間半の充実した時間を三春さんで過ごさせて頂きました。1階でお会計を済ませてから、1階の様子も見ていいですか？とお聞きしたところ、若女将が丁寧に案内をしてくれ、お店を出る時も玄関までお見送りをして下さいました。

先代からの料亭の心遣いは、しっかりと伝承されているんですね。ただ、老舗の料亭とは言っても、とてもカジュアルな雰囲気だし、値段も料亭価格ではありません。

是非また気軽に伺わせて頂きます。
ご馳走様でした〜。