本当の本物のジビエ料理が食べられるお店でいただく常陸秋そばの哀愁。うまさポテンシャル高しの証明だ。 : 手打そば　昇庵

この日はまったくどうなっちゃてるの。久しぶりの何にも予定のない休日。体調不良のためにラーメンを止めて１０日間が経ち、ラーメンに代わって再び日本蕎麦の登場です。食べログでは、レビューＵＰと実生活が１，２ヶ月乖離しているので、全く気づいていないと思いますが、そうなっちゃってます。

そんなわけで、この日２軒の蕎麦屋をまわろうと家を出発。なんとしたことか、予定していた１軒目、２軒目ともに臨時休業。がっかりして３軒目に行きます。ここはＯＫ。とてもおいしい常陸秋そばをいただきました。準備の都合でＵＰは後回し。そのあと、もう１軒ということで茨城県石岡市にやってきました。石岡と言っても町中ではありませんので、本当に田舎の田舎です。

カントリーロードをひた走り。頭の中では、もちろんジョン・デンバーの曲が流れてます。

♪テイクミーホーム　♪カントリーロード

ようやくお店まで辿りつきました。家を出発してどのくらい走ったでしょうか。１５０ｋｍ？２００ｋｍ？お店はカントリーロードから更に奥に入ったところにありました。臨時休業が続いたため、お昼どきはとっくに過ぎてます。お店の庭に着いた時には車は１台もありませんでした。のれんも出てないし。あれ？休み？車から降りてお店のドアを開けますが、施錠されてます。ったく、どうなんよ。

カントリーロード、これはフルーツラインと呼ばれていて、果樹園がたくさんある石岡、千代田地区を走っている道路です。走っていると、手打ちそばの小さな手作りの看板が見えました。しょうがねえ、ここさ、行ってみっぺ。看板にしたがって小さな道に入るとそこは果樹園です。なおも看板に従って進むと行き止まりに蕎麦屋がありました。蕎麦屋のようですが、まわりののぼりには、イノシシ料理って書いてあります。おもしろそう。興奮してきた。

店はプレハブのような作りで、店の横には不用品がごっちゃりと置かれ、ちょっと異様な雰囲気です。お店ののれんには、手打ちそば昇庵と書かれ、のれんの中央にはイノシシのイラストが入ってます。興奮してきました。のれんをくぐって入店。わ～お。田舎の食堂というか、なんか映画のセットのような。壁にはべたべたとメニューが貼られ、スタミナに最高、若イノシシの串焼きなんていうのもあります。正面にはでっかいケモノの皮が壁に張付けてあって、料理される前の生前のお姿なんでしょうか。

ごめんくださ～い。誰もいません。やっぱり映画のセットで、家の裏では田中邦衛が中嶋朋子や吉岡秀隆とお茶を飲みながら休憩しているんでしょうか。入り口にテーブルがふたつ。あとは小上がりが続いていて、イノシシ鍋を食べるにはピッタリの雰囲気。ものがありすぎて雑然としていますが、なんと厨房はきれいに片付いてます。大鍋なんかぴかぴかです。

こんにちは。いつのまにか、お店の人ですね、おばあちゃんが厨房に立ってます。まさか、狸マジック？？

あのお、お蕎麦食べたいのですが、今いいですか？

大丈夫という言葉が返ってきましたので、テーブルの上に置いてある長い年月を経たと思われるメニューを拝見。一品料理では野生イノシシ、ドジョウ、本鴨といった名前が並び、あとでおききしたら、全部ご主人がご自身で捕ってくるものだそうです。まさに、ジビエ料理。蕎麦とうどんのメニューがあって、一番下には、

そばは常陸秋そば、うどんは秋田稲庭うどん

と書かれてます。本格的です。冷たい蕎麦では、自然薯と烏骨鶏の卵がつく特製昇庵そばや特製猪そばや山取りきのこそばや自然薯そば、に興奮しながらも、オーダーしたのはざるそば（６５０円）。本日２枚目となる、常陸秋そばのおいしさを味わいたい。

おかあさんが蕎麦を茹で始めましたので、ちょっと店内アドベンチャーを敢行。奥にあった毛皮は、近くで見るとでっかい。

おかあさん、これ、熊ですか？

はは、八郷には熊いないでしょうよ。

なるほど。イノシシってこんなにでかいんだ。メニューを吟味しながら入り口のほうに来ると、常陸秋そば使用店証明書が他のごちゃごちゃに混じってぶら下げてありました。間違いありません。さて、出来る頃かな。

運ばれてきたざるそば。さすが盛りがいい。仔細に見ると、蕎麦はやや幅広な長方形断面で美しい姿を見せてます。すぱっと切られた断面のエッジが見ているだけで食欲をそそります。殻を練りこんで打たれた田舎風の蕎麦はたくさんの小さな星を含み、町で食べる蕎麦とは一線を画していて、蕎麦専門店のような手打ちにうれしくなっちゃいました。添えてある薬味は、豪快に斜め切りした葱とわさび。猪そばなどの強いそばには、このくらいの強い葱が必要で、これは仕方ないです。ま、葱はいつも蕎麦湯をいただくときしか使いませんが。

漬物が添えられてました。発酵が進んでやや酸味のある高菜の古漬けの味でなかなかうまい。ただ高菜じゃないですね。茎がうまい。

蕎麦をたぐっていただきます。蕎麦の穀物の風味はやや弱いですが、これはあとで変わっていきます。食感はややゆるめで、自分の好みはあと３０秒早くあげてほしい感じですが、地元の方はこのくらいが好みかもしれません。つゆが思ったよりもずっと力があって、甘みは少なくきりっとしていながら、すっと出汁が追いかけてくるいいつゆだと思いました。熟成時間を入れて落ち着かせているような印象のつゆでした。

たぐった蕎麦の先につゆをつけて、一気にＺＺＺＺＺ。うまい！このお店の外観を見たときの印象とは違って、田舎風ではありますが、何か凛とした味が魅力的な蕎麦です。田舎の方は器用ですね。普通にだされるざる蕎麦がこのレベルですか。蕎麦の風味なんですが、食べ進めるうちに何かどんどん強くなってくる感じがするんです。おそらくは蕎麦がつゆを得て風味が変わったようですが、これがとてもおいしく感じるのです。いい蕎麦でした。

自然薯など変化を楽しむのもいいでしょうが、蕎麦そのものが好きな人にはざるがおすすめでしょう。

とってもおいしかったです。蕎麦はおかあさんが打つのですか？

いいえ、おとうさんですよ。

おとうさんは所要で外に出ているというお話でした。果樹園、ハンティング、蕎麦打ちに留まらず何でも自身でやってしまうおとうさんに是非お会いしたい。そう思いながら家路につきました。