メインの魚料理と肉料理の調理技術が素晴らしい : レストラン オオツ

再訪。2回目。
水戸駅前にあるフランス料理店。

今回もランチで利用した。

前回利用時は最初から最後までとても素晴らしい料理が続いたが、
結論から言うと、今回は多少波があった印象。

また、今回、コース価格を上げた分(税サ込29,700円)、
トリュフやキャビアがふんだんに織り込まれたが、
それによって、逆にこちらのお店の魅力が半減してしまったように思う。

とはいえ、メインの魚料理と肉料理は、このお店ならではの素晴らしい出来栄え。

魚料理：メヌケ黒作り
肉料理：仔豚の骨付きロース

メヌケ黒作りは、深海魚のメヌケを自家製の麹で周りをコーティング。
メヌケの水分が綺麗に抜けて、また繊細な火の通しで旨みが身の中で漂うイメージ。
麹が適度な酸味や旨みを付加して、単調になりがちなメヌケの味わいにアクセント。
このバランスがとても見事。
これまで味わったことがない、新しい美味しさだった。

仔豚の骨付きロースは、見事な火の通し加減。
豚の香ばしさが綺麗に押さえ込まれて、
綺麗でサラサラして落ち着いた旨みを味わえる逸品に。
また、ロースは皮付きで、この皮の調理がとても素晴らしい。
皮付き豚肉料理というと、
東坡肉(トンポウロウ)などの煮込み料理でトロトロに仕上げたり、
脆皮燒肉などのロースト料理で皮をカリカリに仕上げたりするイメージが強いが、
今回の仔豚の骨付きロースの皮はそのどちらでもなく、
適度に脂分と水分が抜けて、強い弾力があるプルプルの仕上がり。
旨みも充分に閉じ込められていて最高の仕上がり。

いや～、美味しかった。

ここでしか味わえない味。

そういうお店は数多くあるが、
この「ゆるふわ」な味わいは、ここオオツさんでしか味わうことができない。
僕はそう断言する。

こんな「ゆるふわ」な味わいが存在するなんて今まで考えたこともなかったし、
しかもそれがコースを通して様々な食材で繰り出されるのも驚きだったし、
しかも各々の食材の良さが最大限に引き出されていて悶絶ものだった。

この「ゆるふわ」は、料理の写真では到底伝わらないし、
文章でも伝わらないと思うが、
それでも文章での表現にトライしてみるとこんな感じだ。

・素材の原型を留めながらも、中では壮大な組成変化。
・緩やかな舌触り。口腔で圧力を加えていくと、じわっと旨みが染み出してくる。
・その旨みはどこまでも優しく、どこまでも広がる。
・旨みの本質を求めようとしても、サイドから別の旨みが全包囲網で僕の味覚を包んでくれる。
・そうなると、僕の味覚はただその旨みの中に漂わせているだけで幸せになれる。

つまり、
ゆるっとしてフワッと香り、蕩け、広がり、包んでくれる。
そんな料理の数々。

「蛤と蕪のコンソメスープ」
蕪の味わいが素晴らしい。こんな蕪のコンソメは他にない。
蕪の細胞壁(糖質)が綺麗に糖化してその旨みで味に広がり。
主役の蛤よりも、この蕪のスープの方に悶絶。いつまでも飲んでいたい。

「サヨリ」
見た目は何の変哲もないサヨリだが、味も食感も昇華的に変化。
サヨリの生っぽさは皆無で、旨みだけが凝縮され、それをサイドから別の味がアシスト。
鮨などの日本料理で頂くサヨリの味わいそのままに、ここまでやれるとは。

「帆立出汁のフラン」
貝類の美味しさもさることながら、この帆立出汁の素晴らしさは特筆に価する。
帆立は出汁が強めに出てしまいがちな食材だけれど、控えめに深く抽出されているので、
他の貝類の味を阻害することなく、上手く全体を纏めながらも帆立の存在感。

「アスパラガス」
アスパラガスの繊維質が綺麗に糖化して旨み大爆発。
なにこれ、という味わい。
これまで多くのフランス料理店でアスパラガスの料理をいただいてきたけれど、
これは異次元の味わい。感動ものです。

「桜鱒のミキュイ」
桜鱒(さくらます)が、蕩ける味わい。油っこくないのに、綺麗に蕩けてくれる。
これも感動ものです。

「ラムチョップ」
これもまた、他店とは全く違う食感と味わいのラムチョップ。
ラムチョップは、どう調理しても繊維質が意識されてしまうものだけれど、
繊維質の存在感が消し去られ、更にそれが綺麗に旨みに変化。
これまでコースを通して魚介や野菜の繊維質を変化させていることに感動したが、
ここで肉までのその繊維質を変化させてこんな味わいを出していることに感動。

初めてだったこともあり、感動の連続だった。

明らかにここでしか味わえない味であり、
明らかにここでしか得られない幸福感がある。