美味しいメニュー。 : 香る十割そば 蕎麦花 拓勇店

■鮭の中落ち丼ランチ

限定のランチ…今回の十割蕎麦は上々。機械とは言え打ちたて茹でたてが味わえるし、そのメリットを活かしている。

そして鮭の中落ちは適度に脂っ気があって実に美味しい！タレの味わいも良く…これは是非一度試してみて貰いたいメニューだ。

今回の十割はどうしたかな‥‥訴えかけが弱いのです。

人気の蕎麦花拓勇店に「月替わり・変わり蕎麦」が登場した。変わり蕎麦とは、更科蕎麦に季節の食材を練り込んで、風味と色を出す風流な蕎麦だ。


■合鴨丼定食　変わり蕎麦　白だし ￥1,300


蕎麦は鮮やかな桜色。加水高めの更科は弾力のコシ、つるつるとのど越しが良い。しかしながら蕎麦である以上、蕎麦を演出しなければならず、この辺りは今後急務な課題だろう。白だしも淡い更科にも良く合い面白い。

合鴨丼もバランス感があり良く出来たメニュー。甘辛で少し酸味のあるタレもマッチしているが、鴨が少々ハムチックなのは好みの問題か。

概ね満足。季節の変わり蕎麦はワクワクの設定。是非ブラッシュアップを続けながら通年メニューに仕上げて欲しい。


…梅は咲いたか、桜はまだかいな

■海老天そば　1,200円

選べる蕎麦は、この日は十割細切りの設定があったのでそれに即決。粗挽きも混じる並粉蕎麦はキリリと冷えて喉越し良く、風味甘味も演出される良い蕎麦ながらも、当日は少し柔らかかった。こちら拓勇店のメニュー体系には細切りの方が合っているような気がするも、更科の扱いもあるので、バランスと言う点では迷うところだ。

天ぷらも満足の内容。しっかりやってとした海老に香ばしいとうきび天、海老の頭も見栄え良く、尻尾を含めてバラバリと嬉しい。天つゆは付かないので、私は全て岩塩で頂いた。但しこの日の海老天は揚げ足りずクタっとしていた事が残念。最後は蕎麦湯で美味しくフィニッシュ。

価格に対するパフォーマンスとしては充分に満足。個人的にこのメニューはオススメ。そしてランチメニューを含めて利用しやすさが増して来た拓勇店にも要注目だ。

十割そばどら焼き（300円）に関しては、蕎麦の風味が活かされており楽しいお菓子ながら、生地が少しバサついていたので、それは今後の課題のように思う。

蕎麦花拓勇店に魅力的なランチ定食が登場したようだ。


■蕎麦花 鶏小天丼 定食　1,200円


この店限定の挽きぐるみの十割そばは、キュッと締まり太く強いタイプで、私としてはもう少し緩いと味香が開くような気もするが、存在感としては良く、この時期でもしっかりと甘味や風味が感じられた。噛んで美味しいタイプの蕎麦…出汁感豊かでマロヤカな返しで主張ある汁を含めて相変わらず良いじゃない。

鶏天丼、天ぷらはややゴリっと感はあるが上々の揚げ上がり。甘辛で粘りある塩だれは少し味が強いが、炊き上がりの良い蕎麦の実ゴハンを食べるにはOK、これも美味しく頂けた。漬物にも手を抜かず。しっかりと美味しいものをチョイスしていた。

基本に忠実でありながらも、蕎麦花のコンセプトらしい「遊び心」や「ワクワク」があって、実に良い存在感。これから益々期待。

令和2年11月25日（水）にグランドオープンする「蕎麦花拓勇店」のプレオープンにお声かけ頂き訪問した。


「蕎麦花って？」
苫小牧市に本社を置く「一休そば」が手掛ける本格蕎麦業態で、市内中心部に1号店を出店。そのクォリティの高さと多様な食べ方の提案、そして豊かな創作性で既に大人気店となっている。

「2号店は？」
苫小牧市東部の新興エリアに出店。蕎麦はその日の分を念頭に店で製麺し、この店独自の並粉・更科を惹きぐるみ（十割）で提供。そして1号店には無い天ぷらを提供、よって様々なメニューバリエーションを展開出来るようになった。


■蕎麦花 天せゐろ （上）1,600円（税込み）


前菜の漬物盛りは、麹漬けの白菜やかぼちゃ、アチャール（インドの漬物）。どれも出来栄え良く、特にアチャールは仄かにスパイスが効いていつつ和の要素もあり美味しい。

蕎麦は二色盛り。どちらの蕎麦も十割ながら良く繋がっている。力強い存在感のある並粉は、啜り抜ける風味と言うよりは噛みしめて甘い、蕎麦花らしいもの。個人的にはやや固さも感じたが、これはそれぞれ好みの範疇だろう。更科は加水高めの弾力豊かなタイプ、繊細で時間と共に刻々と変化していくので、くっつく前にサクッと手繰りたい。

特筆すべきは汁。通常はレギュラー+１種を選択なのだが、今回はプレオープンという事で3種を試してみる事に… オーソドックスな汁はしっかりしつつ繊細な出汁に、仄かに甘い返しがマロヤカに融合す。そして気に入ったのは変わり種2種の汁。

「トマトつゆ」はトマトの柔らかい風味と出汁がバランスよく融合。途中添えられたオリーブオイルを垂らせば楽しい味変。最初はザックリと和えて、そして私の推奨はパスタソースを作る時のようにしっかりと混ぜて乳化させる事。更科と合せれば和風冷製パスタのようなスッキリとした和洋折衷感。

「胡桃つゆ」もほんのりとした胡桃の甘さと香ばしさと和出汁の融合感が楽しい。途中特製ラー油を加えれば、最近地位を確立しつつある創作系ラー油蕎麦の出来上がり。本格並粉蕎麦と合せて引けをとらない存在感ながらも後味はスッキリだ。

共感が持てたのは、その加減。トマトや胡桃、どうしても「これでもか」という強い主張になりがちだが、しっかりとバランスがとれるように出汁を効かせて落ち着き馴染ませている…これは出汁ソムリエである早川賢氏が、出汁を「自分のもの」として操る事が出来る証拠であろう。

蕎麦花初となる天ぷらは、野菜ソムリエである早川耕平氏が都度厳選する季節野菜が中心。センスある構成でサクリと揚がった天ぷらはミネラル塩で頂きたい。頭も取り込んだ海老天も質が良くて美味い。

プレオープンとあって、その調理感には若干の力みや試行錯誤も感じたが、しっかりと計算された力強いメニュー。価格的にも味わい的にも十分に満足出来そうだ。

野菜を多くとり入れ、楽しくお洒落感のある汁も充実なので女性ウケしそう。勿論蕎麦はしっかりと本格派でセット物の他、もりそば等の求めやすい単品メニューも豊富であり、蕎麦前や居酒屋系メニューも置くので、老若男女幅広い層に使い勝手の良い店となりそうだ。お酒に関してもクラフトビールを含めて本格派ラインナップなので、夜利用などにも期待が持てる。

蕎麦花というブランドは認知度が高いので、この店にはいち早くお客が集まるだろうが、裏を返せばそれだけ期待値も高いと言う事。培ったノウハウとクォリティを維持昇華させ、市内外から訪れるであろう蕎麦ファンを唸らせて欲しい。北海道を代表する蕎麦レビュアーを自負する私の地元、苫小牧に、札幌圏でも通用するであろう蕎麦屋が頑張っている事自体が嬉しくて頼もしい。

食後、早川賢常務、耕平本部長の両氏とお話をさせて頂いたが、意気込みと理念はやはりしっかりとしており、若い勢いと強い探求心をひしひしと感じさせられた。

特に出汁ソムリエである賢氏の「創作で提案・遊ぶ事が出来るのは、しっかりとした本格派のベースがあってこそ。だから蕎麦もしっかりと、そして豊かな感性も持ち合わせていきたい」という言葉には、感銘と期待、そして共感を持つ事が出来た。

余談ではあるが、出汁ソムリエ、野菜ソムリエ、そして私が蕎麦ソムリエ、一定の意識と知識を持つ3名の語らいは、立ち話ではあったが有意義かつ実りあるものだったと思う。

今後のご活躍を期待すると共に、多くの蕎麦ファンの笑顔を獲得出来るように頑張って頂きたい…私もいちファンとして訪問し、その状況を正確公平にレビューしていこう。