ミシェル・ブラス氏の世界を北海道の食材で : ミシェル・ブラス トーヤ ジャポン

ザ・ウインザーホテル洞爺リゾート＆スパにあるフレンチレストランです。
ここはフランス オーブラック地方ライヨール（ラギオール）村にある「ミシェル・ブラス」の日本店。
北海道の食材を使用し、ミシェル・ブラス氏の「料理哲学と世界観」を表現した料理を提供しています。
2002年開店。
現在料理を担当するのは2010年から4年間「ミシェル・ブラス（ライヨール）」で修業されたシモーネ・カンタフィオ氏。

夜訪問。
場所は11階（最上階）。
入口は鉄板焼の ウインザー アウト オブ アフリカを通り抜けた奥にあります。
通路には小さな小川が再現され、メインダイニングは左手洞爺湖側。
丸テーブルが間隔をあけて配置され、隣のテーブルの気配は全く気になりません。
ほぼ満席でした。

夜なので眺望は期待できず。
最上階なので昼は洞爺湖の雄大な姿が目の前に拡がるはずです。

着席後、メニューを検討。
メニューは以下の通り（サービス料8%別、税抜き）。
・Evason逃避と大地(19,000円）
・Decouverte発見と自然（27,000円）：スペシャリテの「ガルグイユ」と「クーラン」を含むコース。
・Iegumes（24,000円）（季節限定）：野菜尽くしのコース。
アラカルトの注文も可。
コースはテーブル毎の注文となります。

注文したのは以下の通り。
ドリンクはアルコールの他、ノンアルコールの種類も豊富です。
ノンアルコールのペアリングもあり。
・ヴァン・ド・ランジュ（オレンジとスパイスの香りをつけた白ワイン）（1,500円）
やや甘味がありますが、すっきりした後味。
・レモングラス（レモングラス、レモン、緑茶）フレーバーティー（1,200円）
すっきりした後味のお茶。
甘くないところが良いですね。
・ペリエ（1,300円）

□Decouverte（27,000円）
コースの開始にあたり、スタッフより2つの説明。
・食材
渡された紙には「北海道の豊かな食材を使っている」と「生産者への感謝」が書かれていました。
・ナイフ
テーブルにセッティングされた皮のケース入り「１本のナイフ」。
『ミシェル・ブラス氏の出身地であるライヨール村は、「１本のナイフを手入れしながら、生涯大切に使い続ける」という伝統があります。
（強制ではないが）その伝統にのっとり、本日の食事は最後まで同じナイフをお使いください。
ナイフについたソースはパンでぬぐえばきれいになります。』
とのこと。
という訳で、アミューズからチーズまで「１本のナイフ」で通しましたが気になることはなく、自然に使えました。
ナイフは１本でしたが、その他のカトラリーは一皿ごとに替えられました。

テーブルにセッティングされていたのは、ナイフ・ナプキン・グラスと、まるで昆布のような2種の「チップス」とナプキンに包まれた「何か」。

●トマトとブラックオリーブのチップス
まるで昆布のように幅広くて薄い形状。
オレンジ色はトマト、黒はブラックオリーブ。
料理が出るまでのおつまみ。
手でちぎるとパリパリと軽く、後引きます。

●アミューズ
・コックームイエット
ミシェル・ブラス氏の「子供時代の楽しい思い出」が書かれた紙が渡され、それと共にサービス。
それを読むと、コックームイエットはミシェル・ブラス氏の好物。
氏の世界の「はじまり、はじまり・・・」というところでしょうか。
卵の殻に詰められていたのは、卵黄と生クリームで作った「スクランブルエッグ」。
添えられたのは、（トーストしたパンではなく）蕎麦粉で作った胡麻入りクッキー。
とろりと滑らかなスクランブルエッグを芳ばしいクッキーで絡めながらいただきます。
素朴な料理なのだけれど、洗練された味わい。

●パン
テーブルに置いてあった、ナプキンに包まれた「何か」・・・それはパンでした。
パンの表面には（予約者の）名前が焼き込んであるという、細やかな演出。
パンは一度下げられ、1/4に切り分けた後サービス。
生地はライ麦系、密度があり噛みしめると旨いです。

●バター
十勝産の無塩バター。

●前菜
・茄子のスープ
・玉葱のチップスにズッキーニのムース
・黒ニンニクのチュイール、トマトと花
・トマトのチップスと貝割れ
・花の下にカリフラワーのムース

●野菜
“現在では《クラシック》：
若野菜で仕上げたガルグイユ、ハーブ＆発芽豆、
シモツケソウの香り（メニューより）”

スペシャリテの「ガルグイユ」。
30～40種類の若野菜・ハーブ・発芽豆・花・キノコを各素材に適した調理（生・茹で・揚げ）と下味を施し、ハムと共に盛り合わせたもの。
見た目はサラダですが、かなり手間がかけられた一品です。
添えられた3種類のソースを絡めながら、いただきましょう！
下ごしらえされた野菜（根菜・葉野菜）・ハーブ・キノコは皆違う味。
発芽豆は食感のアクセント、花は美しさ。
一つ一つに存在感があり、違った味が次々と口の中で広がりました。
今まで一度も食べたことのない野菜やハーブとの出会いもあったに違いないです。
おいしかったけれど、シモツケソウの香りはよくわからず。
コースの始めに野菜がたっぷり摂れるのが嬉しいですね。

●魚
“薄くスライスして：
モモのビネガーを塗ったヒラメ；
モルタデッラのエッセンスでマリネしたフェンネル；
朝の収穫よりインスピレーションを受けた芳香のあるサラダ（メニューより）”

『箸でお召し上がりください。』
きらきらと美しい一皿。
桃のビネガーでマリネした薄造りのヒラメには、赤と紫の花のトッピング。
周囲に散らされたのは「卵黄のカラスミ風」。
ヒラメを別の器で添えられたフェンネルのサラダを巻きながらいただきます。
ほんのり甘い香りがするヒラメとほろ苦いフェンネルが好相性。

●温製
“熱くもなく・冷たくもなく：
ゆっくりローストしたシャランドレー産フォアグラエスカロップ；
スターアニス風味のニンジン＆胡瓜のサラダ、
タイムの香りをつけた苺のジュ（メニューより）”

ローストしたシャラン鶏のフォアグラ，八角ニンジンのソテー、にんじんのピュレと薄切りきゅうり。
テーブルで、皿の中央にタイムの香りをつけたイチゴのソースが注がれました。
イチゴがフォアグラの味を引き立て、周囲の野菜はその引き立て役。

●温製
“トリュフのクルートをして“melanosporum”:
甘い玉葱を包み焼きにして；
グリーンピースのジュとラード；
キヌサヤのタコス、ユバ、エシャロット…（メニューより）”

新玉葱のソテーに黒トリフのクルート（薄焼き）、紫の花と豆苗のトッピング。
テーブルでグリーンピースのスープが注がれました。
緑と紫の美しいコントラスト。
新玉葱はこんがりソテーされ優しい甘味。
グリーンピースのソースはスープ状で爽やかです。
別皿で添えられたのは、キヌサヤのタコス、ユバ、エシャロット。
こちらは一口で。
ぱりっとしたタコスの中に絹さやの粒々とまったりした湯葉の食感。

●肉
“アヴェロンより：
ローストした仔羊；
炭焼きにした茄子；
赤パプリカのローブ＆庭でとれた新芽（メニューより）”

アヴェロン産の子羊のローストと炭焼きの茄子。
黒いソースは茄子のソース、赤いソースはパプリカのチャツネ。
羊は皮が芳ばしく、固すぎず柔らかすぎない火入れ。
ピリ辛なパプリカのチャツネが良く合いました。

付け合わせは「アリゴ」。
チーズとマッシュポテト、牛乳・バター・ニンニクを加えて練り、お餅やトルコアイスのように糸引く状態に仕上げたもの。
もったりしてお餅のような食感。
おいしいですが、お腹にたまるので私は半分だけ、連れは完食。

●フランス＆北海道産のチーズ
チーズワゴンが運ばれ、好きなだけ注文可。
フランス＆北海道産のハード、白カビ、ブルー、ウオッシュ、ヤギが揃い、珍しいチーズもいろいろ。
好みでジャムやフレーク、蜂蜜を添えてくれます。
全種類試したい気持ちでしたが、控えめに4種を選択。
少しずつ切ってくれたので、もう数種類頼めばよかったです。

ナイフが回収され、ここからはデザート。
スペシャリテの「クーラン」の主役であるビスキュイの焼き上がりを待ちます。
「クーラン」は1981年にミシェル・ブラス氏により創作されたスペシャリテ。
基本はナイフを入れたビスキュイから流れ出る温かいチョコレートと冷たいアイスクリームを一緒にいただくデザート。

●デセール①
“81年オリジナルクーランの解釈をもとに；
豊浦産イチゴの流れる暖かいビスキュイクーラン；
エルダーフラワーのソルベ＆リモンチェッロのクーリ（メニューより）”

オーブンから出した熱々な状態で供されるため、出てくるまでに30分ほど待ちました。
イチゴや花を盛った筒形のイチゴのピンクのビスキュイ。
添えられたのは白いニワトコのソルベ。
皿に描かれていたのは黄色のリモンチェロのソースとパウダー。
テーブルでココナツジュースのソースが注がれました。

ナイフでピンクのビスキュイを割ると真紅の苺ソースがとろりと流れ出て、トッピングの苺と一緒に。
ビスキュイはかなり甘く、苺のソースは酸味があるものの、温かいので甘みが勝っています。
だんだん満腹になってきた時期。
さっぱりした舌触りのニワトコのソルベとレモンチェロのクーリの酸味と共に、なんとか食べ切りました。
ここにコーヒーでもあれば、口の中でビスキュイの甘さを中和してくれ、違った印象になったかもしれません。

●デセール②
“北海道の：
赤肉メロンのパンナコッタ
ハマナスのソルベ；
スライス＆ローストしたアーモンドのテュイル（メニューより）”

器の半分を蓋のように覆っているのは、魚の鱗のようにアーモンドを張ったクッキー。
器の中身は赤肉メロンの角切りが入った黄赤色のメロンのムース、淡いピンク色のバラのソルベ、濃いピンク色の葉。
メロンの果肉が瑞々しく、バラのソルベは香りが良いです。

●小菓子①
ミルクジャムのテュイル
旗のように棒に巻き付けた状態でサービス。
薄くてぱりっとしているので、手でちぎっていただきます。
テュイルは卵白で作るお菓子なのだけれど、最初のコックームイエットで卵黄を使っているから、これで対でしょうか。
更に甘いものが続きます・・・。

ここでスタッフより「食後のお飲み物」のご案内。
『この後甘いお菓子が2品ほど続きますが、「食後のお飲み物」はどうしますか？』
メニューをよく見なかったのだけれど、「食後のお飲み物」は別料金。
コーヒーが欲しい時期を逸していたこと、ペリエが残っていたことから注文せず。

●小菓子②
スタッフがワッフルコーンを並べたワゴンを持参。
5種から選択。

選んだのはその中の3種（残りの2種は説明が聞き取れず）。
・マスカルポーネのムース
・ブラッドオレンジのソルベ（チョコレートのコーン）
・ニンジンのソルベ
ソルベは口の中がさっぱりしたけれど、ムースはやや重め。

●牛乳のリキュール
・ミルクのリキュールとリキュールのボンボン
・ミックスジュースとミント（ノンアルコール）
最後の小菓子。
アルコール入りは食後酒の意味合いがあるのかな？
（ノンアルコールはアルコールを飲まない人向けです。）

料理はチーズまではテンポよくいただきましたが、デセールの「クーラン」で一挙に満腹。
その後も続くデザート・小菓子はお腹に余裕があったら楽しめた内容なのに、ややうんざり。
お菓子でテーブルは華やかになりましたが、勿体なく感じました。
デザートの品数を減らして、替わりに「食後の飲み物」をつけて欲しかったです。

会計をお願いすると、入口近くのウエイティングルームへ案内されました。
壁にはライオールの刃物とカトラリーがずらり。
販売しているようです。
お土産にいただいたのは「ヘーゼルナッツのクッキー」。
壊さないよう、手荷物にして持ち帰り。
甘めでしたがヘーゼルナッツが芳ばしく、軽くておいしいクッキーでした。
会計後は部屋へ直行。
滞在時間は約2時間45分でした。

接客はフレンドリーで丁寧です。
テーブル担当のスタッフは礼儀正しく、細やかな配慮が行き届いていました。
料理の説明はやや早口で一部の説明は1回で聞き取れず。
スタッフに聞き返すと快く答えてくれましたが、私が何回も聞いたのでコースの終盤にはまたかと思われていたかもしれません。
料理の内容を理解したいので、手元にメニューがあった方がいいですね。

出されたお皿はどれも美しく、シンプルでわかりやすい構成。
コースで出された野菜の種類はかなり多いと思います。
甘いもの続きで一時的にかなり満腹となりましたが、野菜が多めで脂分少なめだったからか、もたれ感はありませんでした。
価格相応かという点では微妙。
全体としては良い経験になりました。

ここは座席が60席ありますが、早めの予約がお勧めです。
私が2ヵ月前に予約の電話を入れた時は満席、キャンセル待ちして1ヵ月前に予約が取れました。
海外からのお客様も多く、人気があるようです。
コースの量や最後のデザートの構成は日本人には多いのでは？と思いましたが、本店と同様であれば頷けますね。