田んぼの中にあります : イナカフェ 豆

*****2016年4月再訪*****
ある日の夜、突然zinさんから電話がかかってきました。
それはこのカフェのオーナーが店をやめてしまったこと。そして常連さんが店を引き継いで営業しているということでした。
店主が店をやめることは、それなりの理由がある訳ですから、残念なのは確かです。しかしその店を引き継いでくれる方が現れるのは大変嬉しいことです。
さて、いったいどのような方が切り盛りしているのでしょうか。

店舗前の駐車場にバイクを停め、中に入ろうとすると、あのおしゃれなトラクターがなく、ちょっとさみしい気持ちになりました。
そして店内に入ると、

「あの、店の人間が代わりました！」

と、女性店長。
そこで、先日ここを訪れたツーリング仲間からその件は聞いていることを話すと。

「その男性はヒロユキ＠さんに紹介されたと言っていましたが」

「ああ、それ僕です。ということは、その男性はzinさんですね？」

こくりと肯く女性店長。
前オーナーが店を辞めた理由を尋ねると、健康上の理由だそうです。なんといっても立ち仕事ですから体に負担がかかるのでしょうね。
飲食業は初めてだという女性は、今年の１月から引き継いで営業しているのですが、とても緊張したそうです。
訪れる客は、前オーナーに会いに来る、もしくは前オーナーの味を求めて来る訳ですから、人も変わった、味も変わったと思われるのではと考えてしまうのは仕方がありません。
しかし、現在では提供するメニューも増えて、この女性ならではの味わいともてなしを提供しようとする姿が見て取れます。
注文したのはまん丸パンのポトフセットで、スープ好きの私にはもってこいのメニューです。
しかも女性もスープが大好きだということで、汁物がない食事は考えられないとスープの話で盛り上がってしまいました。
ポトフは薄味で穏やかな味わいで、素材の良さがよく分かります。万人向けにはっきりした味わいにした方が良いと言われた女性店長ですが、あえて薄味にしたのは、味が濃いと食べ始めは美味しいのですが、次第に口の中に塩味がたまって疲れてくるのです。
これが薄味ですと、最後まで美味しく頂くことができるのですが、この件についても女性と意見が一致しました。
まん丸パンもふっくらしていて美味しいです。

気が付けば１時間以上もおしゃべりをしてしまいました。
会話の内容から年齢が近いと考えたのでしょう、女性が私に生まれ年を聞いてきましたが、私よりひとつ年下ですから、どおりで話が合うはずです。
店内に掲げられた食品衛生責任者の札は前オーナーのものでしたし、今でも前オーナーは時折訪れるそうで、この店と完全に関係がなくなったわけではないようです。
店のスタッフが交代するという件は公表していないそうで、どおりでフェイスブックをさかのぼってもその件が書かれていないことを納得できました。

「すべて息子さんのせいです」

と笑って話してくれた女性店長です。
女性がこの店を引き継いでくれてとても嬉しいです。なんといっても家屋が素晴らしく、外から見ても、中を見ても、古い建物ですがコンディションは良く、建物自体に魅力があります。
そしてなんといっても女性店長です。
この店の良さをもっと知ってほしいという気持ちがよく分かります。
私は今後もこの女性に会うために訪れたいと思います。

*****2013年11月初訪問*****
この地区の新店情報として、食べログに掲載されていますが、いまいち詳細なことが分かりません。先日滝川市内のシルバーアクセサリー店のご主人からも教わりまして、気になっていたカフェです。
週末の天気予報は晴れのち曇りで、朝から気持ちの良い青空です。こんな日は家でじっとしているなんてもったいないですからそそくさとバイクを引っ張り出します。事前にカフェの場所をゼンリンオンライン地図ソフトで調べましたが、住所が登録されていません。これは新たに建造された建物という可能性もありますので電話での確認が必要と判断しました。そう、食べログの地図はすべて正確とは限らないのです。
国道12号線経由で滝川に行く途中、奈井江の道の駅で電話をしました。まずは営業するかどうか、次に道順です。道道432号線沿いではなく、ちょっと入った場所だということですから、国道275号線と道道432号線の交点を基点として尋ねました。まず道道を前進すると一時停止の標識があるということ。その標識から右折して約1.5km進むと「美沢入り口」という看板があるのでそこから左折。更に200mほど進んで左手にあるということでした。
これらの説明は、私が疑問を抱いたことを逐次確認しながら聞き出したことです。重要なのは、ポイントとなる目印だけではなく、それに至る間の距離なのです。概略の距離が分かれば目安になりますので。そして最後に復唱して相手に確認してもらうことです。

教わったとおりに走ると難なくたどり着きました。特に一時停止の標識から美沢入り口間の距離は、約1.5kmとどんぴしゃでさすがです。11:30に到着しましたがすでに引き上げる客もいましたから開店時刻から訪れていたのでしょう。オープンして僅か２ヶ月ながら驚きのCafeです。
店の外観は古い民家で、引き戸の玄関など懐かしい雰囲気です。玄関でブーツを脱いで中に入ると２組の客がいました。そのうち１組は還暦を過ぎた女性と思われますが、３人で訪れていましたので、若い方ばかりが訪れる店ではないということで、尚更驚いてしまいました。
カウンター席に座ると「豆電球」関連の飾り物がたくさんありましたので、そのことについて話すとお互いファンだと分かりましたので、一挙に打ち解けてしまいました。
店内の雰囲気が良かったので写真撮影の許可を得ましたが、２階に古いバイクがるとのことでしたので何があるのだろうと興味津々で階段を上ったのですが、あるのはなんとエバンスとコメット。古いどころかめちゃくちゃ古いバイク。こんなバイク博物館や○○ミュージアムでしか見ることはできないでしょう。私も初めて実物を見て驚きました。そして手回し式の脱水機がついた洗濯機や古いテレビ。そして店内に流れるジャズを流していたのは、真空管式のステレオ。まさに「豆電球」の出張所のようです（笑）

注文したのはナポリタンです。パスタの茹で方は、気持ち硬めで私好みです。具はベーコンで、私の好きな赤ウインナーやピーマンが使われていないのですが、パセリで緑の色合いをプラスするなど工夫もあります。そして味わいは、ケチャップの味が強すぎず美味しいものです。
家族で切り盛りしているこの店ですが、調理は息子さんが担当しています。私はイタリアンレストランのパスタも好きなのですが、喫茶店のスパゲティーもすきなのだと話すと、

「いや～、喫茶店というより屋敷家のスパゲティーですね。いまだ家庭料理の域を出ていません」

と笑いながら答えてくれた息子さん。
でも美味しい物を食べて欲しいという気持ちは十分伝わりましたし、家庭料理こそ料理の原点だと思います。それに実際に食べて美味しかったですから。
コーヒーを淹れてくれたのはお父様です。コーヒーは２種類ありましたが迷うことなくフレンチローストにしました。これが大きめのカップに入って出てきて、フレンチならではの味わいと量の多さで満足です。

現在は目を悪くされて降りたそうですが、お父様もバイクに乗っていたそうで、ショベルヘッドのハーレーダビッドソンサイドカーや、BMW　R100RSに乗っていたそうです。そしてメンテナンスを担当していたのは息子さん。もう同じバイク乗りですからより一層親近感を覚えました。BMWは特殊工具を必要とするバイクですから正規ディーラーに行かないとメンテナンスができないのですが、ない工具は作って整備をしたという息子さん、相当な腕前を持っているようです。
表にあるトラクターについて、

「あれを語らせると5分じゃ終わりませんよ！」

ということ。
やはり思い入れがあるのでしょうね。

「帰りも気を付けて帰って下さい。寒いときは新聞紙を束にして身に付けると温かいですよ。私も若い頃新聞でベストを作って着ていましたから」

と玄関で見送ってくれたお父様。
その気遣いが嬉しく、また来ようと思いました。
またひとつ好きなカフェができました。ありがとうございます。