豆美味し、独酌もまた楽し : 独酌　三四郎

ここも大黒屋への道すがら、非常に興味を注がれる雰囲気の宿題店。
どうも宿題って後回しにしちゃうんだよねー。
当方の中では道北、道東への中継点としての位置付けなので夜を旭川で摂ること自体ほとんど無かったので致し方ないところだ。
今回は台風18号のおかげで美瑛岳登山が阻まれ、単なる食い倒れのドライブ旅となってしまったこともあり、旭川に３連泊することに…
となると宿題店を少し片付けるかとこちらにも寄ってみた。

お一人様は年季の入ったカウンターに通される。
平日のまだ６時前だと言うのにテーブルは満席で、カウンターも７分程席を埋め尽くす客入り。
この日は残念ながら大将がおみえにならなかったが、女将さんは居らしたのでお勧めを伺いながら少しお話させていただいた。
店は旭川で初代が戦後すぐの昭和21年創業で70年を超えてるそうで、かなりの年輪を感じさせる店の佇まい。
炭火焼き台や竃(かまど)は札幌軟石で造られたのだとか。
きめ細かく適度な硬度があるため切り出し易く、軽くて保温性に優れていたため厨房にはもってこいの素材だったそうだ。
孤独のグルメの正月バージョンで出演されたそうだが当方、正月スペシャルを見逃していた事が判明！
そうだったんだ…全く知らなかった。
なので注文したものが、上手い具合に五郎と全く被っていないのだった(笑)

女将さんに大好物のいずしはあるか伺ったが流石にまだ早い様で冬に登場すると。
ならば今時期のお勧めはとのことで、落葉おろし、〆さんまを教えてもらったのでそれをお願いした。

他には以下のものを注文。

◉煮豆(お通し)
んっ！？
何だこの酢っぱ美味い豆は？！
唯の煮豆かと思ったが、過度な味付けは一切無く、ほんのりとした酢加減が堪らなく良い！
大豆の炊き方が秀逸で、アグレッシブな硬め。
しかし当方が最も好む硬めの歯応え。
枝豆でもこれ位のアグレッシブな茹で加減だと小躍りする程嬉しくなる。
噛むとサクッと歯に弾力が返ってきて、更に咀嚼していくと酢が融合してきて大豆由来の眠っている甘味がじんわりと出て来て風味も増して来るのだ。

ある意味一番印象に残った逸品だ。

◉〆さんま
白眉！
これは美味い！！
少し甘目だが〆た酢がさんまの脂を最上の旨味に昇華させているのだ。
今年は不漁で漁獲量も少ないが、有るところには有るのだ。
これで酒一杯空いちゃうよ(笑)

◉落葉おろし(きのこ) 秋限定
何とも滋味深い味わい。
女将さんに伺ったところ、［和名］ハナイグチ(花猪口) ［通称］落葉という名のきのこだそうで、旭川では秋のこの時期だけカラマツの下で収穫が出来る天然のきのこなのだそうだ。
昨年は取れなかったことが多かったけど、今年は豊作よと。
雨が沢山降り続き、湿度が高めだと生育状況も良いのだとか。
収穫時期は大体短ければ２週間、長くて１月で終わってしまう、正に旭川での秋の味覚だ。

滑子の様な滑(ぬめ)りは有るのだが、茸の繊維質からシャキッとした食感が別物で、香りも旨味も似て非なる物だ。
大根おろしとも非常によく合う。
値段は量が少な目で800円とお安く無いが、食べる価値十分有り！


◉利尻産一夜塩うに
これ、今まで戴いてきたどの塩漬海胆の中でも一番美味い！
先ず嫌味な薬臭さがほとんど無いこと、塩加減が強過ぎ無いこと、馬糞海胆の風味=素材本来の持ち味をしっかり残して旨味をましていること。
これだけで酒一杯空いちゃう勢いだった(笑)

◉ししゃも
本物のししゃもとのことで注文してみた。
小さめな干しししゃもだが旨味抜群。
しかし夏に食べた稚内蝦夷の里の瑞々しい旨味は無く、噛み締めて滲み出た旨味を愉しむのだ。

◉西神楽のソーセージ
これ、メッチャ美味い！！
炭火でじっくりと火入れされ、香ばしいスモーキーフレイバーも食欲を唆る。
噛むとパキッとした皮の張りのある弾力に、粗挽き肉からジュっと溢れ出すジュースが熱々で危ない(笑)
正に迸る旨さだ。
女将さんもここのソーセージが大好きなので常時仕入れてメニューに載せているのだとか。

◉焼き茄子
旭川の北方に隣接した鷹栖産の茄子だとのこと。
炭火でじっくり火入れされ、余分な水分を飛ばし、瑞々しさを醸し出しながら旨味を閉じ込めている。
焼く事によって茄子の濃厚な旨味が溢れ出て堪らない。
生姜の辛味と踊る鰹節で食欲が増す。
ナスラーの人は必食よ！！

酒は旭川産で固めてみた。
一杯は１合は無さそうで、８勺(140ccちょい)
程か。

◎国士無双 烈 特別純米
昨日戴いた純米よりボディが一寸しっかりして味わい深い。
◎大雪の蔵 絹雪 純米吟醸
辛味が有り旨味はそこそこでサラリとした風味。

何気無い物でも丁寧に手間暇掛けて作られた品の数々に酒杯も進む。
夜はまだこれからなので、ここでの飲食はここまでとしてお会計。
カードも使えて有難し。
名物の焼き燗、新子焼き、いずしは次回冬にでも来て戴きたい。