【人柄が反映される蕎麦】前向きな努力は今年の新そばを救う。 : 手打ち蕎麦 あかね

新そば訪問。今回はご主人の山田さんと少しだけ話す事が出来た。

今年は猛暑で蕎麦の生育状況は良くないものの、やはり産地や時期で異なるものだ。こちらでは昨年から導入した電動石臼を駆使して試行錯誤しながら最良点を探っているとの事。私はそんな前向きでプロフェッショナルな職人が好きだ。


■もり　830円　　令和5年秋新そば　沼田産キタワセ


今回は沼田産のキタワセ令和5年度新そば。青々しさや派手さは無いが、風のような香り、生命感のある味わいと甘味の追いはしっかりと感じられ、キタワセらしさもあり実に美味しかった。分量もしっかりで嬉しい。ちなみにこちらは蕎麦湯も美味しく、薬味も手抜き無し…山葵の状態も良し。


さあ、次は今季比較的良いとされる産地にシフトする事を楽しみに…


このような情報交換も大切で有意義。私のようなコアな蕎麦喰いは様々な店、様々な蕎麦の感想を…職人はリアルに感じる蕎麦の活きた情報を互いに交換…だからこそ蕎麦は楽しいし、より美味しい。

ちなみこちら、大盛は結構なボリューム感で器もダイナミック。生麺280gだから、ランチタイムサービスの俵おむすびと合わせればお腹も満足。

【蕎麦ゆく年くる年〜2022蕎麦シーンを振り返って①】


年末は再訪店からピックアップし、いつもとは異なる切り口でレビューしたいと思います。


●想いをカタチへの第一歩


ご主人の山田さんは研究熱心な努力家蕎麦職人です。今年からは、より良い状態で蕎麦を提供出来るよう「電動石臼機」を導入し、自家製粉を開始しました。

美味しい蕎麦をとことん追求して前に進む、いわゆる札幌ニューウェーブ職人らとの横の繋がりから刺激を受けつつ、元々札幌では珍しい信州粉、信濃1号を使用したり、現在では道内産を含めてその時に閃いた最良のブレンドを日々模索しながら奮闘中のよう。

音威子府キタワセと茨城常陸秋そばをブレンドした細切りは安定感のある乱切り気味の良く繋がった蕎麦。強めの弾力コシで噛み締める楽しみもあるタイプながら、キリリと冷たくて喉越しも良好。

つゆは出汁をドッシリと太く効かせた中濃中口。提供する蕎麦とのマッチングは最適です。

この日もその安定感には脱帽でしたが、蕎麦の味香に関しては、電動石臼ならば私的にはもっと！を期待します。

新メニューの親鳥の炊き込みご飯は、田舎風とは真逆で上品な現代派。粒感が生きて、ほんのり甘い優しい塩梅にコクのある親鳥が良いアクセントとなり美味しい。

そして多少の価格改定はありましたが、本格派でありながら全般的にリーズナブルまたは価格以上の内容で頑張っています。その辺りも人気の一つでしょう。

来年度も楽しみな店ですね。今年一年お疲れ様でした。


【⭐︎流れ星的蕎麦豆知識】

日本蕎麦には大きく分けて、改良種（在来種からの改良）、在来種、韃靼種があります（昔は野生種もあった）その改良種の中でも、信濃1号、常陸秋そば、キタワセは日本3大栽培種と言われています。ちなみにキタワセは蕎麦粉生産量日本一を誇る我が北海道発、富良野方面牡丹種の改良種ですね。

向上心旺盛なご主人はついに電動の石臼を導入、これにより製粉後のタイムラグを極力減らし、自身が表現したい蕎麦を打つためのアドバンテージを手に入れた。

更には最近の札幌ニューウェーブ職人達同様、本州産を積極導入しているが、選ぶ品種は他店とあまり被らず独自路線を行くところも興味津々だ。


■細打ち　茨城県小美玉産春のいぶき（新そば）


あかねらしい凛とした麺線で、弾力あるモッチリ食感。手繰れば夏新そばらしい、控えめながらも清涼感のある味香が口に広がり鼻に抜ける。特に噛んで甘いタイプだ。

つゆは返しの主張あり、荒めで太い出汁感が印象的な中濃辛口寄りで蕎麦との相性も良い。

一目置く蕎麦友のお気に入りで、つい気になっている店。札幌圏の中堅世代、ニューウェーブ注目店達がチラホラ取り入れ始めた本州産夏新そばをこちらでも使用。信濃一号は日本三大栽培種(信濃一号，常陸秋蕎麦，キタワセ）とされる実のひとつであり、道内での使用は珍しい。


■かき揚げせいろ　1,000円 そば小サイズ－150円 ＝ 850円


小サイズだとマイナス150円は随分な太っ腹で、その表現とは逆に割としっかりの分量だ。まずはギュッと詰まった感じで見た目ヘヴィ、大人の拳大以上のかき揚げ（牛蒡人参舞茸）に驚きつつ、小エビのアクセントに微笑む。食べられるかな？と不安になりつつも、油切れ良くてサクリハラハラと解ける軽さと、おろしタップリの天つゆで美味しく食べ進められる。

さて「細打ち」は、一般的には中細。実は東神楽産キタワセと島根県松江産信濃一号でいずれも石臼手挽きの新そば。以前に感じた粗挽き感は大人しいが、キュッと締まりモッチリとした食感、キリっと冷〆され適度なザラつきで汁絡み良し。香ばしい香り淡く、噛みしめた甘さの余韻が長い。際立った新そば感と言うよりも、新しい息吹がバランス良く感じられるタイプだ。


コスパに優れ、蕎麦も本格派で満足。かき揚げせいろ…おすすめだ。


但し、11月からは材料高騰にて止む無く値上げとの事…私としてはこれは仕方無いと思うし、値上げしても尚コスパに優れると感じている。むしろきちんとPOP等でアナウンスしている事に好感が持てた。

本格派でありながらも比較的大衆価格、ミニ丼の設定もあるので様々なシチュエーションで利用しやすい店。接客スタイルも熱心だ。

そして時期により全国各地の蕎麦粉を使用し、性質の異なる2種の蕎麦を提供。新そば前の空白期を埋めるかのようなセレクトとブレンドの妙は、多くの蕎麦喰いを魅了する。


【細打ち】沼田産キタワセ＋群馬県産みなかみ在来種（新そば）
【太打ち田舎】長野県木島平産信濃1号＋沼田産キタワセ＋群馬県産みなかみ在来種（新そば）

■もり（小サイズ・細打ち）580円
■おかわり（太打ち）400円


細打ちは緩い粗挽きの並粉スタイル。良く繋がっていて水切りも適度、手繰ればムッチリと程好い弾力の後に、淡麗な風味と淡い甘味の後追い。悪くないが少し大人しく纏まり過ぎの印象あり。

太打ちは「そばかすなんて気にしないわ♪」とメロディが聞こえてきそうな、外皮の黒い星を引き込んだ個性ある粗挽き。このタイプにありがちな固さとは一線を置き、モッチリ滑らかな食感が心地良く、日本三大栽培種の一つである信濃1号が良い仕事、噛みしめた際の甘味と心地良い苦みの縁取りを与えている。私としては今回、こちらが好みだ。

こちらは通う度に魅力が増すだろうタイプの地域密着型店。リーズナブルで個性派の「かき揚げせいろ」や、珍しい「はまぐりそば」の滋味溢れる汁にも期待したい。

嗚呼、やっぱり蕎麦って最高だ。

５年振りの訪問だ。理由は好みが近く精度の高い、蕎麦喰い仲間のInstagram画像と情報に興味を引かれたから。


◼️もり　670円


細切りの粗挽き蕎麦に変化している。キリリと冷やされ、しなやかでもっちりとしたコシが印象的、スルッとしたのど越しも心地好い。風味甘味も十分に感じられ、かなり出来映えの良い蕎麦に進化していた。

汁は５年前とおそらく変わらず、中濃やや辛口寄り。複数の節が太く効いているが、後味の淡い苦味もやはりあり…これは店側の狙いなのかも知れないが、私には合わない。


結論…　見直した本格派蕎麦。


３月末の訪問だったが、お昼は多くのお客で賑わっていた。きちんとお客の方を見たホスピタリティ、良い気の通う清潔な空間、そして美味しい蕎麦があるのだから、人気が出ない訳がない。

余談だが、メニューに、あさり蕎麦とはまぐり蕎麦が同時にある事が面白い。

訪問から二年半が経過してしまったので、現行の状態からは離れるレビューとなります。

■もり　610円

不揃いながら切り口美しい、典型的な並粉そば、食感はやや柔らかめで、ややもすればモソ感もあるが、蕎麦の魅力はしっかりと引き出された仕上がり。

汁（つゆ）は、やや辛口寄りで、華やかさよりも深い出汁感に振った感じで、ここの蕎麦との相性としてはそれなりと言ったところ。

薬味は丁寧で上等、総合的には満足。蕎麦屋全体としては上位だが、本格派手打ち蕎麦屋のくくりの中では、中堅と言った感じかな（2015年）

お酒と蕎麦前の種類が豊富で楽しい、300円～のミニ丼やいなりも嬉しい、釧路風かしわそば（親鶏使用？？）や、はまぐりそばが興味をそそる、そう、使い勝手良く、利用しやすいメニュー構成や、気軽な空気感の店内が中々良い。