広島の食文化に波紋を興す者 : ちそう そったくいと

まず最初に。

私はこのお店を評価する資格に値しない。

もう3年も通い続けているのに、未だ知らない事ばかり。
扉を開ける度に新しい発見があり、眼から鱗が落ちるのです。

最高の出汁を引き出すという広島の軟水。
身近過ぎてピンとこない。

湧水は山の形と地質だから、ミネラル含有で味わいが変わるというのは分かるけど、 細微な違いが明確に分かるのが凄い。


天然の羅臼昆布・利尻昆布・真昆布。

料理ごとに使い分けされ、美しく薫り、至福の出汁になる。

しかし、どの昆布の出汁なのか判別出来ない。

全然、分かってないけど、とんでもなく美味しいのは分かる。


釣り師として瀬戸内の魚を愛し、自分で釣った魚を美味しく食べるために、船上で〆て放血し、内臓を取り出し、ジップロックで封印し氷水で保存するスタイルで食して来ましたが、それらより鮮度が高いのです。(泣)

熟成って日数をかけてるのに、鮮度が落ちない。

なんの魔法なのか？

これらの組み合わせで、いつも驚きを与えられるのですが、どうやってこの複雑なバズルを組み立てているのでしょうか？

謎でしかない。

旅に出なくても、全国から選りすぐりの食材が集められ、交通費をかけずに楽しむ事が出来る。

広島の食文化に衝撃を与える存在なのは間違いないと思う。


さてこの日のメニューです。

先付
○馬糞うに(北海道産)利尻昆布のジュレがけ
まだ暑さが残る時期なだけに、爽やかな昆布出汁のジュレとフレッシュなうにの甘さが良く合っています。
ほんのり柚子の薫りがするのもまた良い。

酢の物
○渡り蟹の蟹味噌のせ・食用菊添え
40cmくらい渡り蟹を獲って食べてたから、旬の渡り蟹の素の美味しさは知っていますが、プロの技はその記憶すらぼやかすほどの美味しさを引き出すのだな。と打ちのめされる。
食用菊も苦味無く、地味な料理でも手間をかけている気がします。

焼き物
○金目鯛(駿河湾産12日間熟成) の柚香焼き(備長炭)
いつもはノドグロですが、落ち着いた金目鯛の上品な脂が堪能出来る焼き物も良いですね。
最初に薫りを嗅ぐと炭焼きの良い薫りがして、最初の一口に期待が高まります。

煮物
○ホッケ(北海道利尻の根付)の兜煮
私、兜煮は苦手なんですが、美味しく完食。
ホッケはアイナメに似ていますが、縄張りを持たず集団でゆっくりと回游します。
鯵と同様に回游する魚が根付のは環境と餌が良い一等地だけ。
自ずと力のある良い魚が集まります。

お造り
○金目鯛(駿河湾産12日間熟成)
薄い色の身が淡く輝いていて、口に入れると柔らかく上品な脂が拡がります。

○鰤トロ(函館産10日熟成)
自分で釣った1mの瀬戸内の鰤は、大きなハマチでしかなかった。
そう実感するほど、残酷な迄に美味しい。
釣り師のロマンを打ち砕く、恐ろしい鰤トロ。
脂のりが尋常ではありません。

○目一鯛(遠州灘10？熟成)
目一鯛は去年から状態の良いモノを頂く機会が他所で時々あるのですが、目一鯛の特徴のもちもちの身はそのまま、旨味だけが飛躍的に強くなっています。

○真鯛(山口県周防大島の根付き鯛５８時間熟成)
真鯛とあこうは食べ過ぎて飽きているはずなのに、美味しい！
ここ数年、お店で真鯛をたべて美味しいと思ったことは無いのですが、熟成って恐ろしいです。

○松川鰈 (北海道産10日熟成)
鮃の様に海底から泳ぎ上がって魚を捕らえるため筋肉質で、普通の鰈とは美味しさが違う。
よって、王鰈と呼ばれている。
小学校から知っている憧れの魚(釣り目的)ですが、食べるのは初めて。
美味しい！

・２７年継ぎ足しポン酢
・岩塩
・山葵

お椀
○愛媛県土居町の里芋と舞茸・えのき茸
(いりこ・鯖節・鰹節・あご・鮪節)
お出汁が複雑で深い味わい、薫りも極上。

焼き物
○鰤(函館産10日熟成)のカマ焼き
この鰤は本当にすごい！
細やかなさしが入ったカマを備長炭で焼くと芳ばしく薫りたち悶絶します。

揚げ物
○ 熊本県産黒毛和牛のカツレツ(3年熟成のデミグラスソース)に炒め香茸を添えて
当たり前ですが、肉も旨い！
香茸も凄い。

ご飯
○サマートリュフ(イタリア産)ご飯新イクラがけ(プレーン&生玉子入り)
トリュフの薫りでお店のグレードを図るほど、薫りに敏感になってしまった。
新いくらは噛もうとすると口の中で逃げ回る！
プリプリの弾力。
何回食べても、めちゃめちゃ美味しい！
震える！
((( ；ﾟДﾟ)))ｶﾞｸｶﾞｸﾌﾞﾙﾌﾞﾙ


デザート
○抹茶アイスと小豆アイスのコンビ。
最後にホッとする和アイスの二重奏、美味しいです♪


感想は全部、とんでもなく美味しい！

本当か？と思う方はご予約をどうぞ。(笑)

食べたらわかりますから。

最後に。
おまかせコースは旋律だと思う。

出される品々が抑揚や強弱を付けながら、感動を呼び起こす。

例えるならショパンよりもリストか。
超絶技巧でパリの貴婦人達を失神させたカリスマ。


いよいよ10月5日に流川から富士見町へ移転しました。

新しい場所で、波紋からうねりになって、広島の食文化を変えていくのか。

料理と共に楽しみであり、期待するところでもあります。