圧巻の品揃えの地酒の数々を、地元ならではの料理とともにいただける郷土居酒屋さん。 : あらし

しばらく前に広島の夜の繁華街流川界隈をフラフラと飲み歩いていたときに、3軒目あたりで偶然飛び込みでふらっとお邪魔させていただいたことのある「あらし」さん。
思いのほか素晴らしいお店でしたので、今回1軒目のお店としてあらためて再訪させていただくことにいたしました。

こちら「あらし」さんの凄さはなんといっても用意されている日本酒の種類の多さですね。
広島県内の地酒だけでも20種類以上。
他県のものも含めるとなんと60種類以上。
「十四代」「田酒」「飛露喜」「寫楽」「黒龍」「而今」「鍋島」「醸し人九平次」などの名酒もしっかり揃っており、しかもこれら以外にもメニューに載っていない売切れ御免の隠し酒も相当あるとのことで、もう日本酒バーかそれ以上ともいえるほどの見事な充実ぶりとなっています。

お店は古民家の雰囲気を活かしたちょっとレトロな昭和時代の大衆酒場風。
通りからも店内の様子を窺いやすく、とても入りやすい雰囲気ですね。
深夜遅くまで営業されていますが、早い時間帯、遅い時間帯関係なく賑わっており、地元の方を中心に人気を集められているのがよくわかります。
この日も結構混んではいましたが、無事カウンターの一席に座ることができました。

「あらし」さんは料理のメニューのほうも非常に豊富です。
一般的以上ともいえる居酒屋メニューの中に、地元広島ならではの地物素材や郷土料理もきちんとラインアップされているのが嬉しいですね。

まず広島ではとりあえずつまみの定番中の定番である「がんす」からいただきましょう。
練り物にパン粉をつけてカツにする料理は他県にもありますが、地魚のすり身に唐辛子を練り込んでややピリ辛に仕上げるのが広島流の「がんす」。
「あらし」さんでは生姜醤油と一味マヨネーズの両方を用意してくださいますが、やはり「がんす」には一味マヨネーズが合いますね。
これはビールに合い過ぎです。
生のジョッキがあっという間に空になってしまい、早くも日本酒にバトンタッチとなってしまいます。

そして広島で造りの定番といえばやはり「小イワシ」でしょう、ということで続いて「小イワシの刺身」をいただきます。
こちらはもちろん定番の生姜醤油と刻みネギで。
生臭さはもちろんありませんが、やはり生姜に合いますね。
日本酒もクイクイと進みます。

次にいただくのは、こちらも広島では定番の居酒屋メニュー「ウニホーレン」を。
ソテーされたほうれん草のバター風味とウニがとてもよく合います。
パンに乗るスタイルは初めてですね。
それでもカリっと焼かれたパンの香ばしさが不思議にマッチしています。
付け合わせの生野菜もたっぷりで、サラダ感覚でもいただける「ウニホーレン」です。

メニューでちょっと気になった「ホルモンの天ぷら」もいただいてみることにします。
広島市西区福島町界隈を中心に食べられている局地的郷土料理ですね。
専門店以外でいただくのは初めてです。
こちらは比較的柔らかめの白肉で、塩をつけていただくスタイルでした。
個人的には酢醤油にたっぷりの粉末唐辛子をかけていただく専門店スタイルがやはり好みですが、さすがにそこまでは望み過ぎでしょうね。

さて、ビールに続く日本酒ですが、さすがにここまで種類が多いと迷います。
店員さんからのアドバイスもいただきながら、気になるものから順番にいただいていくことにしましょう。
まず最初の1杯目は、広島県竹原市の「藤井酒造」さんから「龍勢」の特別純米酒「和みの辛口」をいただきます。
こちらは広島県の酒米「八反錦」を原料として造られたお酒とのことですね。
しっかりした飲み口と旨みを持ちつつもスイスイと喉を通る軽快さも感じらる美味しいお酒です。

続いていただく2杯目は、広島県竹原市の「中尾醸造」さんより「誠鏡」の「純米辛口番外品」をいただきます。
こちらも竹原のお酒らしいしっかりとした飲みごたえとスッキリ感のバランスの良いお酒。
ほんのり華やかな香りも心地よいですね。
海鮮系の食材との相性もとてもいいです。

3杯目は、広島県三次市の「美和桜酒造」さんから「美和桜」の生酛純米生原酒「御結」を。
しっかりとした旨味といいますか、厚みのあるお酒ですね。
淡麗辛口とはまた異なるどっしりとした辛口で、キレもあるのに飲みごたえと旨みのあるお酒です。

4杯目は、広島県呉市仁方の「宝剣酒造」さんより「寳劒」の純米吟醸「愛山」を。
こちらは吟醸酒らしい上品な香りと味わいが特徴的ですね。
ぐっとくる旨みとスッキリとした後味がクセになりそうな美味しいお酒です。

最後の5杯目は、広島県神石高原町の「三輪酒造」さんから「神雷」の無濾過生酒「RISING SUN」をいただきます。
こちらはスッキリキレキレの味わいが特徴的ですが、しっかりとした飲みごたえもあるお酒です。

さすがに広島のお酒は奥が深いですね。
次回はまた違った銘柄のお酒も試したくなります。
ここに来ればそれもまた可能ですからね。

地酒の揃えといい、大衆的なな雰囲気といい、今回再訪してあらためて「あらし」さんの魅力を再認識させていただけました。
そしてもうひとつ、店員さん達との良い意味での距離の近さも魅力ですね。
グラスが空けばすぐに「何かお持ちしましょうか？」とか、空いたお皿もこまめに片づけてくださいます。
それらのひとつひとつが決して押しつけがましいものではないところも非常に好感持てます。
みなさん比較的お若い感じでいらっしゃるのに、日本酒の知識もしっかり勉強されていらっしゃるのも素晴らしいですね。
サクッと飲んで帰るのにも、じっくり腰を据えて飲むのにも、しっかりと対応してくださるお店。
明け方まで長く営業されていらっしゃるのも嬉しいところです。
今後もいろんなシーンで重宝しそうですね。