理想の鮨屋@広島 : 鮨処ひと志

金曜日の夜です。

予約の六時まで時間があるので、平和記念資料館に足を運びます。その際の感慨は追伸のところに記載しますので、ご興味がお有りの方は、お読みください。

さて、資料館を後にし、西日を背中に浴びながら、此方に向かいます。

繁華街から少し離れた住宅地の中に佇んでいます。

親方は対馬のお寿司屋さんのご長男とのこと。京都の料亭の住み込み、福岡の寿司屋修行を経て、何故か七年前に広島でお店を持たれました。

訳は簡単に推察できました。

ドラミちゃんにそっくりな奥様の地元が広島なんですね。

着物姿のドラミちゃんにそれとなく訊くと、まん丸な眼を大きく見開いて『そうなんですよぉ〜、グフフ』とバスケットボールのような笑顔で、はにかみます。

仲良しだなぁ。
こんなお店に間違いは有りません。

京都の料亭での修練を感じさせるつまみの数々に、深く溜息をつきます。器にも造詣が深く、柿右衛門や明治の九谷、有田に触れることができました。

こだわりは他にも。

外壁とカウンター正面の壁は、NHKのザ・プロフェッショナルで有名になった、左官の挟土さんの作品です。

テレビで取り上げられ、丁度有名になりかけの頃、ドラミちゃん、失礼、奥様のお父様が直接挟土さんに電話し、破格のお値段、といっても車一台相当ですが、注文を引き受けていただいたとのこと。

さすが、ドラミ父。押しが強そう。

お店の雰囲気と会話、陶磁器好きな小デブは感無量です。
自然とお酒も進みます。

お酒も広島に拘らず、入手困難な銘酒が目白押し。食べ過ぎ飲み過ぎなので、単価は久し振りに三枚を超えましたが、帰省しない限り再訪できないので、良しとします。

いただいたものは以下の通り。

そしてご馳走様でした。


＜おつまみ＞
●小鰯とトマトの南蛮漬け：
文句無し。甘酢も全て飲み干します

●真鯒：
地物。瀬戸内塩とスダチ梅肉で。弾力が違う

●真鯛：
呉港で上がった天然4kgもの。明石の鯛に匹敵

●大トロ：
地中海の天然本鮪

●穴子の肝煮：
素材が良いので薄味。木の芽の香りがアクセント

●平目のなめろう：
ねっとり。ネギと味噌の旨味が口中で爆発

●マグロのネギ間：
蛇腹の大トロ部分では？ 健全な脂に乾杯

●赤ムツの焚き物：
京都風に言えば、たいたん。つけ添えの野菜も滋味深い。お出汁の効いた薄口は京料亭の修練の賜物。カマからは小さな喉黒が。写真をご覧ください

●クチコ：
ナマコの卵巣。干しクチコと半ナマ。痛風なんて怖くない

●クルミ柚餅子：
寿司屋で柚餅子は初めて。でも酒に合う

●酥：
飛鳥時代のチーズの一種。醍醐味の醍醐と同じかな？
例えれば、柔らか目のチーズケーキ

●燻製三種：
ホタテ、チーズ、蒲鉾のクリーンナップ

●茄子の煮凝り：
焼き茄子のこんがり焼けた香りがアクセント。茄子がこんなに甘いなんて・・・

●豆腐の赤味噌漬け：
お酒のために生まれてきた味

●干しナマコ：
コリコリではなく、ムニュッとした食感。唐辛子の辛味が珍味を引き立てます

●麹漬けキュウリの味噌乗せ：
普通のモロキュウではつまらないんだそうです

●卵焼き：
焼き立て。名古屋からゴルフにやって来た隣のオヤジ四人組に、無理やりご相伴させられました（笑）

●獅子唐と海老真薯の揚げ物：
隣のオヤジが『当たったー』と涙目で喜んでいます。偶に有るんですよね、当たりが

●サツマイモの蜜煮レモン：
甘酸っぱい少年少女の味

●太刀魚幽庵焼き：
旨味の塊

●昆布巻き：
中の魚は鰹

●自家製カラスミの大根挟み：
対馬のボラ。1mを超えるそう。
器は有田の柿右衛門。百年前とのことなので、十三代、十四代作？

●ミズイカゲソの炙り：
中はレア

＜握り＞

●ミズイカ：柚子塩。飾り寿司のお点前は福岡での修行がなせる技
●混ぜご飯：赤ウニ長崎産、対馬産の生青海苔とイクラ
●赤ムツ：対馬産
●中トロ：炙り柚子胡椒掛け。器が百年ものの有田？
●穴子：瀬戸内産200gの大穴子
●カイワレ大根：カイワレ誕生の地、能古島産。昆布締め
●山芋の広島菜巻き：
●新子：静岡産の四枚付け。だいたい築地に流れるのでようやく入手できたとのこと。コノシロ文化の広島で新子を求める人が居るのかお聞きしたら、ちょっと哀しそうに『置いておきたいんです』との答え。きっとご常連様用なんでしょうね
●赤味噌椀：イカと太刀魚のツミレとアオサ入り。表面に浮かぶ細かな脂は手間をかけた証拠。アラを炊いて潰して漉して澄ますこと数日間（ここらあたりは記憶が怪しい）

＜デザート＞
自家製クルミ入りのアイス

＜お酒＞
●キリンラガー：小瓶
●亀齢：純米、広島
●日高見：純米大吟醸のブルー、宮城
●幻：純米大吟醸生原酒、別名黒幻、呉
●裏鍋島：純米吟醸隠し酒、佐賀
●天狗舞：純米大吟醸古古酒、古酒の最上級、石川
●菊理姫：菊姫の最上級、純米大吟醸の10年古酒、石川
各半合として計三合


＜追伸＞
記念館は改装中ですが、逆にコンパクトにまとめられていました。

八割方、YOU達です。
広島はヒロシマでは無くHIROSHIMAでした。

子供YOUを含め、騒ぐ者はいません。真摯に真剣な眼差しで、悲惨な写真や長文の説明を見つめています。

特に被曝者の方のインタビューが流れるモニターの前では、三十人弱のYOU達が、まるで神父様の説法を聴くかのごとく、静かに英訳テロップを見つめていました。

日本人は誰も居ません。聞いて欲しかったなぁ、と広島出身の小デブは呟きます。

被曝中心の直下の小学校の写真が有りました。
YOU達が涙ぐみます。小デブも例外では有りません。

合掌