とら系総本山。一番プレーンな中華そばであれば、日常食として十分リーズナブル : とら食堂

当店の二代目店主、竹井和之氏を取り上げたNHKのプロフェッショナルを見て以来、いつか訪問したいと思っていた課題店。偶々休暇を取ったので、突如思い立っての遠征。

今回は自分の無計画さに呆れる小旅行。10:40に新幹線の新白河駅で降り、在来線で久田野(くだの)に向かおうとしたところ、東北本線の次の列車の発車時刻は何と12:57。2時間17分待ち。東京にいると実感しにくかったが、改めて福島の台風被害の深刻さを知る。想定外の事態に頭は真っ白。仕方なく新白河駅から当店へはタクシーを利用。予想外の大出費。

ただ道すがらタクシーの運転手さんに色々お話を聞けたのはよかった。白河は元々はラーメンより蕎麦が名物で、白河ラーメンのご当地グルメとしての歴史は喜多方や佐野より新しく、街おこしのためラーメンに力を入れるようになったそう。今では市内に100軒程の白河ラーメンを出すお店があり、その一方、蕎麦店は10店程になってしまっているのだとか。

当店は白河ラーメンの礎を築いた全国区の有名店。特に土日はひどい混雑ぶりで、地元の方はなかなか足が向かないそう。開店直後の昼時は曜日に関わらず行列があるので、地元民はピークタイムを回避し、16時以降の夜営業を狙うそう。(遠征客の場合、遅めの時間の訪問での売切れ、空振りリスクは取れないので、マネをするのは困難。)

訪問した印象は、結論から書くと、かなり微妙。

まず二代目は不在。お目にかかれなかったので残念。

今回は二代目のお嬢さん、そのお婿さん達、女性陣の計7名体制。シフトは部厚いが、調理に関与している方は僅か。人が多い割にラーメンはなかなか出来上がらない。またなぜか席が空いても外待ちの客をなかなか店内に通さない。提供や店内への案内のオペレーションの改善余地は大きいと思う。

そして一番肝心のラーメンの味と価格のバランスも今1つと感じる。

再訪の機会はなかなかないだろうと欲張り、色々トッピングして全部のせ的にすると何と1,570円。プレーンな中華そば2杯分相当。もはやラーメンとは思えない価格。麺もスープも具材も大きなマイナスポイントこそないものの、価格に見合う程の上質感もない。交通アクセス、待ち時間まで考えると高いと感じざるを得ず。

商人でなく職人の店を標榜しているが、トッピングをした品の価格設定は、むしろ商売っ気満載。よそ者向けの観光地価格だと思う。(冷静に考えるとプレーンな中華そば＆チャーシューおにぎり90円という組合せが一番オトク。)

当店のラーメンは味わいの過剰感がなく、体への負担が少ないので、日常食として模範的で、かつ値段の面でも一番プレーンな中華そばであれば、日常食として十分リーズナブルだと思うので、近くに住んでいて、空いている時間帯を選び、車での訪問ができる方には、いいお店だと思う。ただ遠出客には訪問をおススメしない。当店のようなベクトルの昔ながらの醤油ラーメンを提供する良店は全国的にみれば数多あると思うので。

＜お店の歴史等＞
・初代寅次は農家の次男。市内の本町の「まるい食堂」
　で昭和30年代に修行の後、昭和48年(1973年7月)に
　双石(現在の駐車場のある場所)で開業。業歴46年超。
・1983年に初代が56歳で急逝。
・二代目は1955年生。19歳で修行開始。28歳で後継。
・当店での修行者が分店を出したり、自家製麺を継承。
・松戸(千葉県)や福岡の分店が有名だが、広義のとら系は
　全国21店舗。
・福島10、栃木3、埼玉2、東京、千葉、茨城、神奈川、
　山梨、福岡に各1店が所在。
・ほぼ福島県と関東地方に集中しているが、1店だけ福岡
　に分店あり。
　（一風堂の河原氏との出会いが大きかったそう。)

＜白河ラーメンの特徴＞
・コシのある自家製ちぢれ麺
・醤油ベースの澄んだスープ
・チャーシュー、メンマ、ほうれん草、海苔。
・ワンタンをウリにする店が多いのも特徴。

■注文の品～価格は税込表示
・焼豚ワンタン麺大盛＆半熟煮玉子(☆3.4)1,570円

■麺料理としての構成
・麺
　やや平打ち的な自家製麺。柔らかめの茹で加減。
　ツルツルと入るがコシは感じられず。手打ち独特
　の食感の楽しさはあまりない。

・具
　ワンタン、チャーシュー、メンマ、ナルト、海苔、
　葱、ほうれん草、煮玉子。
　チャーシューはバラ、もも等、複数の部位が入る。
　脂多めの部位の方が好み。　　
　煮玉子の黄身にはややケミカルな旨味を感じる。

・スープ
　醤油ベースの動物系のアッサリスープ。ケミカル
　な旨味は感じないので負担なく飲めるが、価格を
　考えると、もう少し芳醇さ、厚みが欲しい。

■卓上の調味料
　刻み玉葱、胡椒、七味、ラー油。
　刻み玉葱を入れるといいアクセント。
　その他は使用せず。

＜訪問記録＞
■日時・待ちの状況
・2019年10月25日11:03。初訪。
・到着時の先客50名超。
・11:43着席。入店待ち40分。
・提供待ち約20分。
・12:18退店時の店外の待ち客は約40名。
・食事時間計75分。

■場所
・公共交通機関での訪問難易度は極めて高い。
・行きは新白河駅からタクシーを利用。車で約15分。
・タクシー代3,040円。
・帰りはスマホでルート確認しながら、久田野駅まで
　歩いたが、土地勘が全くなく、しかも土砂降りの雨
　の悪天候だったこともあり、駅への到着まで、ゆうに
　1時間超。
・当店までの道路には歩道がなかったり、歩道が極端に
　狭い箇所が多いので、徒歩での訪問は回避すべし。
・駐車スペースは40台程あり。自家用車での訪問が吉。
・車のナンバーは実に多彩。確認できた範囲で福島、
　いわき、会津、庄内、宮城、仙台、那須、高崎、
　宇都宮、水戸、熊谷、大宮、川越、多摩、横浜、
　相模、浜松、なにわ。東北、関東地方から静岡や
　大阪まであり。県外ナンバーが過半。
・福島ナンバーの車は開店前に来ていて、開店後に
　来るのは遠征客ばかりとの印象。

■お店の状況
・店内に6名分、店外に10名分程の待ち客用のベンチあり。
・入口正面奥が製麺スペース。
・フロアに6人掛テーブル1卓と4人掛テーブル3卓。
　1人客用のカウンターが4×2列。
・小上がりに4名掛テーブル4卓。
・キャパ40名強。
・注文は口頭。退店時精算。
・回転は緩やか。家族連れや団体客は食べ終わっても
　のんびり会話しているし、お店も急かさない。
・提供や店内への案内のオペレーション効率化余地は
　大きいと思う。
・おしぼりは紙。
・お冷は1杯目はお店から提供。お替りは自分で注ぐ。
・トイレは店外。店の裏手に専用の建物あり。
・男女別。洋式。ハンドソープ(キレイキレイ)、ペーパー
　タオルが常備。
・壁に柏竹やぶの先代(阿部孝雄氏)の揮毫あり。
　「そばを打つ　自分を打つといいきかせ」
・店内のメニュー表は改定前の価格のままだったので
　早急な差替えを要望。

(2019年10月26日)
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