憶い出は美しいままにしといた方が？ : BAUM

まったく個人的なことながら、東京に住んでた頃、下北沢は渋谷と共にまず馴染んだ街なんで、とかく思い入れがあります。

バーやライブハウス、レコード屋さんに古着屋さん、ましてや何はさておき小劇場が多く、その名の通りスズナリから閑古鳥まで、いろんな舞台を観ることが出来ました。

ですから現在の下北沢が数年前からの都市計画で、昔の面影がないほど激変することは分かってたんで、もし再び上京することがあってもまず行かないでしょう。

もし別の街のように感じたら、年甲斐もなく泣いちゃうでしょうから。

ってなわけで、おそらく死ぬ直前とかに正しく走馬灯のごとく色んな情景が思い浮かぶんでしょうが、そんな店々の一つがカレーパンの『アンゼリカ』さんです。

昔ならカレーパンと云えば東京広しと言えども真っ先に名があがるほど有名で、とはいえ、間口自体は狭いから、いつも待ちが出来てました。

待つのか嫌いなのは変わりませんが、さすがに東京に住んでた頃はやぶさかではなかったから、その列の数を見て並んだりしたもんです。

それだけ飛ぶように売れるから、結構な確率で揚げたてがあり、買ってすぐ食べるのが好きでした。

今でもボンビーですが、若かったから常日頃から極貧だったものの、だからこそ市販のとは違うカレーパン、揚げたてともなれば尚さら贅沢で、パン粉の一粒まで溢さないよう大切に頂いたもんです。

みそパンも美味かったなあ。

その下北沢の『アンゼリカ』さんは、残念ながら閉店されたようですが、お弟子さんが日本各地にいらっしゃり、そのお一人が同店『BAUM』のご主人らしい件は、前回のレビューでも記載しています。

ということで、ワタシにとっての同店『BAUM』さんのカレーパンは、もう20代でしたが、ある意味での『青春の味』ですから、なんとしてでも、もう一度味わいたい。

ある日、11時前に同店近く、徳力辺りにいたときに憶い出し、同.食べログを観ると10時オープンらしいから、まだカレーパンが有る可能性は高い。

「すいません、カレーパンは？」

「ああっ、ごめんなさい。さっき結構数が出て、」

「また焼かれないんですか？」

「少々お待ちください」

なんと、まだ１時間も経ってないのに完売状態とは、恐るべし！

「お待たせしました、12時過ぎに焼き上がります」

「12時ですかぁ」

まあ、暇人を絵に描いたようなワタシですが、さすがに年がら年中ではないから同日の正午にゃ予定がある。

「取り置きって出来ますか？」

「はい、大丈夫ですよ」

ってなわけでカレーパンは取り置き、14時近くに伺いましたが、こちらから言わずとも流石は客商売、奥様が顔を憶えられておられ、他のパンをレジに持っていくと既に用意されてました。

奥からご主人も挨拶され、最初の来店時から思ってましたが、アットホームな雰囲気で、感じのいいご夫婦です。

そんなこんなで、購入したのは以下の４点です。

① カレーパン（小） ￥97

② カレーパン（大） ￥216

③ 自家製カスタードクリームドーナツ ￥151
》 もちもち食感のドーナツ生地でやさしい甘さのクリームを包みました。ビートグラニュー糖をトッピング

④ 北海道産よつ葉バターの練乳フランス ￥194
》 北海道産よつ葉バターと練乳を合わせた自家製練乳クリームが甘すぎず、おいしいと大評判です。私もオススメです

①と②は小と大で、基本的に同じ内容なんでしょうが、両方買って良かったです。

というのも、小の方がたっぴりカレーが入ってるのに、お値段は90円と半額以下だから、これを２個買う方が大を１個買うより、断然お得だと思うから（って、コスかぁ〜）

もちもちした元々のパン生地に師匠格『アンゼリカ』さんの片鱗が垣間見れますが、やはり揚げたてじゃないし、残念ながらワタシ自身がもう若くないからでしょう、あのときの感動までは得られませんでした。

とはいえ、やはり皮はカリっとしてるし、後引く豊潤な辛みもあり、やはり何個でも食べられちゃう美味さです。

ちょっとルーに洋酒っぽい深みがあるのが隠し味なのかなあ？

③は①と②に通ずるようなモチっと感があり、中のカスタード・クリームは柔らかな甘みで、ふんわり包み込まれるでしょう。

少しだけ油っぽいのが玉に瑕ながら、個人的にはそのくらいは問題ないから①や②と同様、かなり止まらなくなる危ない食べ物でしょうね。

④は結構ハードめなバゲットで、練乳は控えめ、というか、全体的に甘さも控えめ。

よつ葉で落ち着いてるからか、バターの塩気は余り感じられません。

ただ、バゲット自体は美味しく、なにより香ばしい。

ですから、ちょっとマニアックすぎるのかも？

っていうか、個人的に甘いのに関しては、お子ちゃま口に戻っちゃうから、もっと分かりやすくハッキリした味の方が好きなだけなんでしょうけどね？

で、纏めますと、今回のカレーパン、皆様も同じような体験があるでしょうが、同窓会で青春時代に憧れてた異性と再会したら、さすがに他の雑魚よりは未だに輝いてるんだけど、記憶ほど美人や格好良くなかった幻滅感がしたのと似てるような気がしました。

ですから先に述べたように、もし再び上京することがあっても、渋谷や新宿はターミナルだから仕方ないにしろ、やはり下北沢には行かない方がいいなと痛感しましたね。

ってまあ、もっとも美味しかったのは美味しかったんで、その辺は誤解なきように。

他のパンにしても、中々でしたから。

すなわちカレーパンなど、いい憶い出は綺麗なまま取っといた方が賢明だということです。


● 個人的 食べログ 評価点・・・3.8

香春街道こと国道322号線『焼肉ウエスト 小倉南インター店』さんの隣り、写真のように『資さんうどん 徳吉店』さん近くに同店『BAUM（バーム）』さんはあります。

専用駐車場はお店の横２台、後ろの車の前に着けていいようです。

小ぢんまりとした街のパン屋さんで、会計の際でしたかお子さんがちょうど学校から帰ってきて、横を通って奥に消えてったりしました。

要はそんな時間、写真の時間を見ると16時過ぎに行っており、同店に行こうとは露ほども思っておらず、たまさか

〝パン買って帰ろ〟

と思って食べログ検索、近かったんで寄っただけなんです。

ただ、現在レビューを書く段になって同店のご主人、なんと東京は下北沢の『アンゼリカ』さんで修業されたとのこと。

〝うわっ、なのにカレーパン、買ってないやん？〟

ご存知の方も沢山いらっしゃるでしょう『アンゼリカ』のカレーパン、不肖ワタシにとっても憶い出の味であり、しかもググってみると数年前に暖簾を下されたとのこと。

となると、あのカレーパンを味わえるのは暖簾分けか、お弟子さんの各店になるわけで、それが同店だったとは。

不覚でした。

もっとも、いろんなパンたち撮ってる写真を大きくして観てみると、やはりどうやら売り切れてた模様。

ですから、同店はリベンジすることになりそうです。

で、そんな今回、購入したのは以下の３点です。

① もっちりジェノバ ￥248
》 もっちり食感の生地にバジル・ペーストを塗り、パルミジャーノ・レッジャーノ（粉チーズ）をふらかけ、焼きあげました。少し焼いて召し上がるとさらにフワフワ〜

② 国産きなこドーナツ ￥119
》 もちもち食感のドーナツ生地に国産きなこをたっぷりまぶしました。

③ 自家製塩バター粒あんぱん ￥184

①は味が濃く、その濃さがイタリアの種馬っぽい感じだから、記載のように改めて焼くと、油っぽいのも加わり、個人的にゃクドすぎるかな？

②は確かにモチっと感は下手なお餅？
おかしな話、厭な予感しかしない食べやすい危うさが漂います。

③は、これまた甘いのに和らげる絶妙な塩分があり、且つ、溢れ出たお焦げも香ばしくて愛おしい。

なんだか菓子パンや惣菜パン、決して今流行りのハードじゃない、要は冒頭述べた街のパン屋さん然としていて、なんとなく好感が持てます。

ましてや『アンゼリカ』直伝のカレーパンとなると、これはかなり期待できそうなんで、ぜひ早い時期に再訪し、あの憶い出の味に浸りたいもんです。


● 個人的 食べログ 評価点・・・3.5