日本屈指の正宗川菜！ : 四川料理 巴蜀

中国料理フリークの方から強く推薦され、長らく訪問したかったお店。
福岡市街地からは行きにくい場所にあり、
お店に到着すると、まさか！？と感じる住宅地です。

こちらのシェフ・荻野亮平氏の凄いところは、
中国現地でも頂きにくい伝統的な四川料理を復活させておられるところ。
特に、【80年前の麻婆豆腐】などは、「牛肉使用、豆板醤不使用」を謳っており、
豆豉、牛肉の旨味、塩気、唐辛子の辣、花椒の麻で味を構築されており面白い。
しかも、敢えて味精(ウェイジン、味の素)を用いておられ、
その理由は「味精が普及したのは1930年頃で、その当時の味わいを復元する為に」との事。
その他の料理についても圧倒的な個性を誇り、
その味わいたるや中国人の手による四川料理を凌駕しております。
少なくとも、日本人向けに作る事に慣れてしまった中国人シェフでは、
足元にも及ばない料理を作っておられます。
そして、シェフの料理の特徴は、伝統的である事に加えて、
四川の一般的な人々が食べていた(食べている)料理であるところ。
美食の都として名高い四川。
一般的な四川料理にこそ、四川の魅力が詰まっていると感じます。
いわば、趙楊さんの料理が少数のVIP向けである事に対して、
荻野さんの料理は圧倒的多数の人民向けの料理と言った印象です。

なお、こちらは8月7日に、JR博多駅から約1.5km離れた美野島辺りに移転されます。
我々が訪問したのは旧店舗で前述の通りアクセスがし辛いエリアでしたが、
今後は旅行者にとってアクセスしやすくなるかと思います。

頂いた料理は下記の通りです。
【巴蜀口水鶏】
【巴蜀回鍋肉】
【水煮肉片】
【麻婆豆腐三種花椒食べ比べセット】
【北京人民大会堂(迎賓館)式鶏香り揚げ】
【ベーコンと青唐辛子の炒飯】

【巴蜀口水鶏】
意外に辛味が控えめで、花椒の香りが上品に漂い、鶏の旨味をしっかりと感じられる。
鶏はしっとりと仕上げており、とろりとした皮目の旨味を落としていない。
花椒以外のスパイスも複雑に絡まり、とにかく心地良い香りに包まれながら頂ける。
辣油自体は辛く、付けて頂くと自身で辛味を調整出来る。

【巴蜀回鍋肉】
这是正宗的！これはマジもんの現地仕様の回锅肉！
都内で頂けるお店は限られており、個人的には赤坂の陳麻婆豆腐、新宿の天府舫が好み。
豚肉はバラブロックからそぎ切りにしており、非常に薄切り。
そして、油通しを行い脂身をトロトロに、身をカリッと仕上げており、豚肉を別の次元で楽しませてくれる。
味わいの主体はシンプルで、辣油、豆豉、ニンニク、葱。
葱はトロリと、ニンニクはパリッと炒めており、メリハリの利いた味わい。
前述の都内の二店を超える味わいで、実質的に日本で最も美味しい回锅肉なのではないかと私見。

【水煮肉片】
これまた届いた時の香りが良く、スープは旨味が強く、圧倒的な麻が魅力的。
とにかく痺れ、気持ちが良い。
しかし、旨いので止まらない。
辛味の構成要素は辣油に加えて辣椒粉と辣椒面。
特に辣椒面が多めに使用されている印象。
野菜はゴーヤ、枝豆、フクロタケ、舞茸なども用いており個性的。
これまた絶品の水煮だった。

【麻婆豆腐三種花椒食べ比べセット】
茂汶、青渓、漢源の花椒を用いた三種類の麻婆豆腐を食べ比べ！
漢源は非常にポピュラーなブランドだが、他の二種類は初めて頂く。
茂汶は奥の楕円の皿、青渓は右奥葱無しの丸皿、漢源は手前の丸皿。
香り、痺れが異なる花椒を食べ比べ出来るのは本当に面白く、勉強になる。
札幌のdenoさんと言い、日本人シェフの変態っぷりに感服です(笑)
麻婆豆腐自体は肉が粗めで旨味が強く、そこに豆豉の塩気と風味を合わせて構築。
豆腐は柔らかめの木綿大豆で、大豆の風味も良好。
全体的にトロミが強めなところも特徴で、一口一口にしっかりとした味わいがある。

【北京人民大会堂(迎賓館)式鶏香り揚げ】
低温調理の後に揚げており、食感の二重奏が食欲を進める。
スパイスの香りが良く、丁寧で上質な調理。

【ベーコンと青唐辛子の炒飯】
チャーシューの代わりにベーコンを用いた面白い炒飯。
スモーキーなフレイバーと、青唐辛子の辛味が相性抜群。
中国の辣椒とは異なる辛味を用いる点が興味深く、
辛味は極めて鋭い。
今回、一番辛かったかも(笑)
個性をバッチリ感じさせてくれる秀逸な炒飯だった。

これは再訪し、末永く応援したいと思います。
移転前で常連さんが多く、シェフとお話し出来なかった点が残念。
調理や素材のバックグラウンドについて諸々と聞いてみたかった。
尚、それとは別に、サービスが悪い点は改善が必要かも。
サービスに全くうるさくない僕でも気になってしまいました。
現地の食堂でも流石にこれは無いなぁ…