博多の宝 : 鮨 かんび

◆2016年10月

二日目の博多の夜です。
五ヶ月ぶりにかんびさんにお伺いします。

6時前にお店に入ります。既に妙齢のお嬢様が、といっても私の母親くらいのご年齢ですが、寛斎のシャツを着たちょっとファンキーな出で立ちで、ビールを口にされています。

会話の内容も、親方やお弟子さんへの対応も、ちょっと上から目線を感じます。お手伝いさんだと勘違いされてるようです。それが普通になっているんでしょうね。悪気がないのは分かりますが、まぁ人生の大先輩ですからね。

小さいグラスのビールで唇を湿らします。目の前に広がるネタケースの中身に期待が膨らみます。

いただいたものは以下の通りです。

〈つまみ〉

●揚げ銀杏：熊本産。昨日のお店はエメラルドグリーンでしたが、こちらは黄色かったです。ちょっとだけ揚げ過ぎかな。
●鰻ざく：蒸し無しの焼き鰻。囓る魅力を楽しみます。
●毛ガニ：熊本さんの長茄子添え。生姜の絞り汁と炒りごま、細いアサツキのアクセントが効いていました。
●土瓶蒸し：
鱧とスッポンでひいたお出汁に癒されます。
酢橘が付いていませんでした。左隣のアッパーなお母様のお一人が『酢橘をいただけるかしら』と呟きます。圧を感じます。『はい。ただいまお切りいたします』と応じる親方。
お出汁をお猪口で一口いただいた後、土瓶の中で酢橘を絞って具材をいただく、これが作法だよなぁ、と食べる前に頭で反芻していた小デブも納得です。でもお母様方は食が細いせいか、中の具材には手を付けません。まあっ、出し殻と言えば出し殻ですからね。でも蒸し方によっては、ちゃんと具材の味が残るものなんですけどね。
●平目としめ鯖のお造り：
平目は博多湾内の相島産。塩昆布とお塩でいただきました。
鯖は済州島。脂が甘く悶絶しました。親方によれば、今の時期は済州島産がベストとのこと。
●赤ムツの西京焼き：
ふっくらと焼きあがっています。日本酒が進みます。
●唐津の煮鮑、肝ソース添え：
この時期には珍しく大ぶりです。柔らかく炊かれています。肝ソースは緩く有りません。敢えて粒粒が残されて居ます。好みの舌触りです。バゲットに塗って、ピノグリで一杯いただけば、パラディーソの世界が広がります。

〈握り〉

●小肌
●蝦夷馬糞ウニ：昆布森産。今月から解禁です。しっとり感から塩水かなぁ？
●ヤリイカ：
●白皮加治木：長崎産。鮪の剥がしと見間違えました。これは美味しかった
●環八：天然
●大トロ：戸井産の蛇腹。見た目の美しさに写真を撮ることも忘れ、置かれた瞬間、直ぐに食べてしまいました。
●真鯛：
●鯵：
●新イクラ：丸山のこん飛びに包んで手渡しでいただきます
●煮ハマグリ：
●しめ鯖：
●車海老：唐津の天然。でっかい。シャリと身の間に味噌を挟みます
●穴子：
●卵：カステイラ
●ネギトロ細巻き：

〈お酒〉
生ビールのグラス
鍋島の純米吟醸
日高見の純米吟醸
田酒の純米吟醸の計三合

堪能しました。
赤酢が苦手な私ですが、此方はネタとのバランスが良く、全く気になりませんでした。

ご馳走様でした。


◆2016年5月

博多の夜です。

評判のかんびさんにお伺いします。前夜の熊本の仙八の若旦那も、先週勉強のために訪れたそうです。

繁華街をちょっと外れたところにひっそりと構えています。ロケーションとしては日本橋の裏通りのようなイメージかも。

6時前にお伺いしたところ、既にご常連と思しき老夫婦が着座されています。

井手らっきょ、似（失礼しました）のご主人が笑顔で迎えてくれます。表は可愛いくて気の利く女性がさばかれています。

直感で、当たり！と思えます。
引き戸を開けてからカウンターに座るまでのアプローチにも打ち水がしてあり、まさに働き盛りの凛とした正義感（仕事に嘘をつかない）と清潔感が漲っています。

生ビールで唇を湿らし、日本酒に進みます。鍋島から入ります。その後、田酒、伯楽星、東鶴だったかな、酔いが回って記憶が怪しいですけど、都合四合をいただきました。

つまみですが、随所に炒りごまがアクセントに使われています。お聞きしたら『香りが好きなんですよぉ』とのこと。私も大好きです。

今回は、忘れないように写真を撮らせていただきましたので、よろしければご覧ください。百の駄文より一枚の写真の方が雄弁ですもんね。

はじめに、蒸し鮑と唐津の赤ウニのトウモロコシソース。言葉にすると、何やらフレンチっぽいですね。

続いて、焼き鰻。油が堪りません。赤貝とサザエとクレソンの酢の物。炒りごまの香りが効いています。

そしてアラと虎魚のお造り。虎魚の胃袋と肝つきです。塩昆布と一緒に食します。スダチも好みでさっとひと振り。香りが計算されています。

大羽鰯のおろしポン酢、鰹のタタキのラッキョウ添え。筋肉質の青年鰹です。

箸休めに、じゅんさいと車海老のお椀。胃が歓声をあげています。

赤むつの幽庵焼き。お皿に残ったムツ油を舐めたい衝動を我慢します。

沖縄の海ソーメンという、ちょっと太めのモズク酢。酔いつつある頭が冴え渡ります。

そして握りへ。

順不同ですが、ヤリイカ、小肌、カマスジの大トロ、金目、アジ、アナゴ、玄界灘の鯛、毛ガニのチャンク、唐津の赤ウニ、丸山のコントビで巻いたトロ巻き、スフレのたまご焼きでコースは終了です。

まだお酒が残っていたので、ヤリイカとウニを小鉢に入れてワサビタップリ、とお願いしたつもりが、私の呂律が怪しかったのか、ほか8名様を裁くのにいっぱいいっぱいだったのか、恐らく両方でしょうが、それぞれ握りで出されました。

まぁ美味しいから良いんですけどね。バラバラにやってくるお客を待たせず、順番にサーブしていく戦場を目の当たりにしていると、目線も優しくなります。

帰る際にはご主人自ら外までお見送りです。まさに油がのった仕事っぷりでした。

ご馳走様でした。
再訪必至です。