予約必須の鰻屋さん : うな善

博多の鰻屋さんで名高い「うな善」さんにお伺いしました。

お店に到着したところ、「本日ご予約の方のみの営業となります」との貼紙。
人気の程が伺えて期待に胸が膨らみます。

電話予約の時に1人だとコース料理は不可だと聞いたので、特上(白焼・肝吸・丼重・漬物)11,000円を事前にお願いしました。
わざわざ博多に来たのですから、お店が一番自信のあるメニューを頼む方が後悔しないですしね。

2018年3月までは8,500円でしたが、2018年4月に2,500円値上げの11,000円になったみたいですね。

それでも予約満席なんだ！と感心。
暖簾を潜り店内に入ります。

こあがりに2組のお座敷席、テーブル席が1組と合計3組のみ、これは予約必須ですね。

こちらの鰻は鹿児島県産の養殖鰻。
脂のりの良さが自慢だそうです。

当日、生肝の蒲焼き1串(600円)を追加しました。
本当はう巻きも食べたかったのですが1人ではこれ以上は無理。(泣)

まず最初にやって来たのは

①生肝の蒲焼き
肝のほろ苦さと甘みのあるタレが焦げて芳ばしく、1本では物足りなく感じます。

②鰻の白焼き
焼き方は蒸さず直焼き、炭火でじっくり。
皮はカリカリ、身は程好くしっとり。
噛んでみると中からジュワッと脂が溢れ出てます。
白焼きは4切れとほぼ1匹分くらい。

白焼きが出てからうな重まで、結構時間が掛かりました。
時間に余裕を持って訪問したいですね。

③特上うな重
基本的に焼き方は白焼きと同じ？
焼き方は蒸さず直焼き、炭火でじっくり。
皮はカリカリ、身は程好くしっとり。
タレを浸けて2度焼きして芳ばしい。
皮下の脂のりが凄い！
大きなうなぎの切り身が６つ。
1匹+αですね。
タレと脂が混ざって食欲が増します。
タレは甘さが強過ぎず、上品な味わい。

④肝吸い
上品で優しい味わいの肝吸。
少し濃い味をリセットするのにちょうど良い。

特上は鰻の脂のりもしっかりな上に、ボリュームもあるので、ちょっと多かった。(汗)

特上だと約2匹分ですもの。

自らの胃袋の限界を知らない愚か者ですね。


さて、ここからは土用の丑の日に向けた駄文スペシャルです。

鰻ですが日本鰻という正式名称。
産卵期は明確には不明ですが初夏～晩秋と言われています。マリアナ海嶺付近で産卵しているそうです。
幼生から稚魚に変体するのはフィリピン沖で黒潮に乗って日本近海に戻って来るのだそう。
旬は秋～晩秋。
鰻は5年~15年掛けて成熟し、産卵に適した時期に川を下ります。

◯川や沼に居付きの天然鰻は黄色い体色で餌が限られているため成長が遅く、産卵出来る様になるまで年月が掛かり長生きします。その味わいは濃く癖が強いらしい。泥抜きも大変みたいです。
◯渓流に生息する鰻は緑黒い体色で夏は鮎を食べて太り、冬になると冬眠します。
これを極上鰻とする説も多いですね。
◯川を上ったり下ったりする鰻は青黒い体色でその行動はまさに鮎のストーカー。(笑)
稚鮎の遡上に合わせて河口に集まり、少しずつ大きくなる鮎を追い5月~6月に満ち潮に会わせて川を上り始めます。
岩にピッタリくっついて泳ぐ鮎は鰻にとって絶好の獲物です。
それ意外にも夏の川は手長海老などの好物もたくさんいます。
やがて秋になると落ち鮎に合わせる様に川を下ります。
鰻に限らず、鱸なども河口にやって来て落ち鮎をお腹一杯食べて脂がのります。
◯また河口付近に定着したりする鰻も青黒い体色だったりします。
こちらはハゼや手長海老を食べています。
もちろん産卵後に河口に流されてきた落ち鮎もご馳走です。
◯そして中には川を遡上せずにずっと海で過ごす鰻もいて真穴子のような茶色の体色の鰻も居るそうです。

同じ日本鰻でありながら、ライフスタイルは千差万別で自由奔放な魚と言えます。

すっかり成熟して産卵のために外洋に出ると銀色の体色となり、銀うなぎと呼ばれます。
そうなると全く餌を取らなくなり消化器官が退化します。
不思議なもので、鰻の性別は生まれながらに決まるのではなく、環境によって性転換します。
鰻口密度が高い環境ではほとんどの鰻が雄になります。
ですから、養殖鰻を食べたら雄の鰻だと思ってまず間違いありません 。
天然では、川を遡上する頃は全てが雄、すっかり成熟して産卵準備が完了して外洋に出る前に、鰻の密度に応じて雌へと性転換する個体が出てくるそうです。
また鰻は粘膜を通して皮膚呼吸しますので、雨が降った時には普段枯れている小川でさえ遡上することがあります。

鰻の適水温は20℃~28℃で水温が10℃以下になると餌を食べなくなり、８℃以下では冬眠します。
そう考えると晩秋～春に掛けて海または河口に住み、春～秋に鮎と共に川を上るのが一般的な鰻のライフスタイルなのかもしれません。

鰻釣りと言えば釣り餌はミミズ。
それは鰻の嗅覚が犬並で誘い易いからなのです。
河口で釣りをする場合、日没から2時間後くらいまで満ち潮の時が釣り易いです。

子供の頃は川で鉛筆みたいな鰻の稚魚を偶然捕まえたり、川や溜め池で黄色い鰻を偶然釣ったり、梅雨入りの頃に地元の河で満ち潮に合わせてミミズを餌に狙って釣ったりしてました。
懐かしい。

さて養殖鰻はボイラーで最も活発に餌を食べるとされる28℃の水温でぬくぬくと育てられ、半年～1年で出荷されるそうです。
天然と比べて一気に成長するんですね。

一方で養殖するには稚魚のシラス鰻を捕まえないといけません。
卵からの完全養殖技術はまだ無いのです。
特に難しいのは鰻を雄→雌に性転換させる条件をどう揃えるかという事だそうです。

だから養殖サイクルの始まりは、黒潮に乗って日本近海に戻って来て、１０月初旬から５月下旬に河口から遡上を開始するシラス鰻を捕まえてるところから。
捕まえたシラス鰻を養殖池に放して育てます。
シラス鰻の遡上が最盛期となるのは、沿岸水と河川水の水温差が小さくなる、２～３月頃です。

このシラス鰻が捕れなくなり、鰻価格の高騰に繋がっています。

うな善さんの値上げ自体も止むに止まれぬ事情なんでしょうね。(泣)