若きご主人のポリシーが、鮪に頼らぬ寿司を生み出したよ。アハハハハッ！ : 鮨 久保田

◼︎ 基本情報
□ 地域：福岡県＞福岡市
□ ジャンル：寿司
□ 食べログでの評価
(2016/08/04)★3.63/22口コミ［12位/466軒］

◼︎ ディテール
2012年開業。
福岡市西中洲にある寿司屋だよ。

どこかは教えてくれなかったが、福岡出身のご主人が東京で修行した後に、こちらに戻って開業したそう。
東京で勝負する職人さんも好きだが、東京で得た技術と地元の食材を組み合わせて、より良いものを作ろうという職人さんがより好きな兵庫にとっては、好ましい店だね。

2014年のミシュランガイド福岡・佐賀特別版で★1つを獲得するほど、世間の評価を受けている店だが、手頃な価格帯と22時以降も営業している点が嬉しいポイントだよ。

◼︎ 訪問時の状況

□ 訪問時間：平日22時
□ 予約有無：事前電話予約済
□ 混雑状況：他1組2名［待ち時間なし］

◼︎ 西島兵庫の感想

□ 料理・味：★3.5/ 鮪はなくても寿司は成立する
□ サービス：★3.5/ いささかシャイなご主人
□ 雰囲気　：★4.0/ 靴を脱ぎ、寛げる店内
□ コスパ　：★4.0/ この価格はたいしたもん
□ 総合　　：★3.9/ 若き職人の挑戦を応援したい
(3.65)

□ オススメ：(夜はおまかせのみ)

各項目の詳細は、下記に記載したので、お時間のある方、興味のある方はどうぞ。

◼︎ 料理・味

［2016/07］
□ おまかせ
酒肴① 糸島産あわび
酒肴② いわしの海苔巻き わけぎ ごま
酒肴③ 天草産太刀魚 オリーブオイル焼き
酒肴④ 対馬産真鯖の棒寿司
酒肴⑤ あわびの肝を発酵させたもの
酒肴⑥ ホタテの味噌焼き 柑橘

寿司① やりいかの握り
寿司② きすの握り
寿司③ かすごの握り
寿司④ しんこの握り
寿司⑤ あじの握り
寿司⑥ 車海老の握り
寿司⑦ 赤ウニの握り
寿司⑧ あなごの握り

玉子
白味噌を使った味噌汁

【飲み物】
御酒① 石鎚(愛媛県西条市/石鎚酒造)
御酒② 能古見(佐賀県鹿島市/馬場酒造場)

つまみ6品・寿司8貫・玉子・白出汁というコースだね。
もう1品くらいつまみがあってもいいが、個人的には日本酒2合と合わせるには、ちょうど良い範疇の量だよ。

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⚫︎ つまみ全般
柔らかな弾力のある糸島産あわびからはじまったコースは、総じて満足のいく内容でしたよ。

すし匠系を中心によく見かけるいわしの海苔巻きの脂乗りも申し分ないし、天草産太刀魚に至っては、オリーブオイルのせいもあってか、トロトロと蕩けていくね。
あわびの肝を発酵させたものは、これ一つで日本酒1合はいける出来だったよ。

なかなか、手の込んだつまみたちだったね。

⚫︎ 寿司全般
前にも書いたが、兵庫は寿司を口に入れる際、ネタが下側に来るように食べるので、寿司を横にして箸でつまむんだよ。
握りが弱すぎると、この際に崩れてしまうのだが、赤酢を用いたこちらの寿司は、見た目にやや難はあるものの、この「兵庫流ストレスチェック」も無事通過し、気持ちよくいただけましたね。

さて、他の方も書かれている通り、こちらはまぐろは出さないんだけど、ご主人曰く…

「東京で見たまぐろと同じものは、こちらではなかなかご用意できない。
自分が食べたいと思えるもの以外は出したくないんですよ。」

なるほど。
ご自身の満足のいかぬまぐろをだすよりは、せっかく九州へ来てるのだから、自信を持って出せる九州の魚を食べてくださいよということだろう。
佐賀の鮨多門のようにアイルランドから直接持ってくるという方法もあろうが、全国共通のネタであるまぐろより、地方毎のネタをより多く食べられる方が嬉しいね。
こうしたスタンスは歓迎したいよ。

現に今回のネタは満足のいくものだったしね。
あとは握りの仕上げが上がってくれば、非の打ち所のないものになるよ。

◼︎ サービス
お客さん3人に対して、ご主人・お弟子さん・女性の3人体制だから、完全に目は行き届いているよ。

さほど言葉数の多いご主人ではなさそうだが、色々な話が出来たのも良かったね。

◼︎ 雰囲気
入り口で靴を脱いで上がるタイプだね。
靴とともに靴下も脱げてしまったハプニングはあったものの、普通のカウンターよりも落ち着けたよ。

◼︎ CP
西中洲という場所で、この内容の寿司をいただいて、この金額というのは、大したものではないだろうか。

◼︎ 総合
対馬から戻ってきたその足で伺ったが、行って良かったよ。

何より感心したのは、まぐろの件にも見られるように、若いのに、なかなかのポリシーを持って、やっておられる点だね。

「うちはこんな感じでやっております」

こんなご主人の口癖からも、そのことがヒシヒシと伝わってきたよ。

ポリシーを持っている人間がすべからく新しいものを生み出せるわけではないが、新しいものを生み出した人間はすべからくポリシーを持っている…
このご主人の目指す形が世間に受け入れられるかどうかはわからないけど、まぐろにこだわらないなら、一度行かれてみてはどうかと思いますよ。アハハハハッ！

さて、兵庫はまぐろにこだわらずに旨い寿司にありつけた一方、700年前に蒙古・高麗連合軍を迎え撃つこととなった鎮西奉行・少弐資能は、中洲の北東に位置する息の浜での決戦にこだわったそうだよ。

よく教科書では、鎌倉武士は「やあやあ、我こそは…」と名乗りを上げて、昔ながらの一騎打ちを仕掛け、集団戦法を採用する蒙古軍に苦戦したものの、神風が吹いて、何とか撃退したなどと書かれている。
だが、あれは真っ赤な嘘だね。

確かに名乗りを上げた者もいたろうが、鎌倉武士の主戦法は、集団による騎射(馬上から弓を射る)だったそう。
そのため、どうせヤマを張るなら、自軍に有利な、機動力が発揮しやすく、見通しの良い息の浜にヤマを張ったのだろう。

ところが蒙古・高麗連合軍は、息の浜から博多を挟んだ反対側、今の福岡タワーの辺りに着岸し、上陸を開始する…
資能のこだわりが裏目に出たわけだね。

なるほど、こだわりは時として視野を狭めることもある…
まぐろへのこだわりは一旦忘れ、一度は行ってみるのが吉ではないかな。アハハハハッ！