江戸前の伝統的な仕事を施したお寿司が頂けるお店 : 江戸心 山ぼうし

福岡市中央区西中洲の【江戸心 山ぼうし】さんに伺いました。

お店の場所は地下鉄天神南駅5番出口を出て歩いて5分ぐらいのビルの3階です。
地下鉄中洲川端駅1番出口からでは歩いて7分ぐらいです。

こちらは浅草の老舗寿司店で修業されたご主人が女将さんと2人で切り盛りされている江戸前寿司にこだわったお寿司屋さんです。

今回初めての訪問。

予約をして伺い、おまかせコースを頂きました。
コースはつまみとにぎりを織り交ぜながら提供されました。

◆この日頂いたコースの内容

①つぶ貝
　煮て、煮汁に漬け込んだつぶ貝。
　冷蔵していたので、冷たい状態で提供されました。
　しっかり味が染み込んでいました。
　弾力があって噛み応えのある身と、肝の美味しさが楽しめました。

②イカゲソ、イカの耳、ズワイガニの和え物
　ワサビ、オリーブオイル、マヨネーズなどで和えて、冷やした状態で提供されました。
　イカの食感と甘味、ズワイガニの甘味が楽しめました。
　ワサビ、オリーブオイルが甘味、旨味を引き立てていました。
　冷たい状態も甘味を引き立てている要素になっていて美味しく頂けました。

③のれそれ
　愛媛産。
　甘酢が合わせられ、ゴマと穂紫蘇がかけられていました。
　大きなのれそれでした。
　のど越し良く、優しい甘味がありました。
　旬の後半ののれそれの美味しさが楽しめました。

④フグの白子のポン酢のゼリー寄せ
　焼き白子にしたいところ、江戸前では焼くことがご法度ということうで、出汁を使って工夫して固めているとのことでした。
　ネギを乗せて冷たい状態で提供されました。
　クリーミーな白子の味わいとポン酢の風味で美味しく頂けました。
　冷たいフグの白子はあまり頂いたことがありませんでしたが、焼き白子などの温かい白子の料理に比べると本来のクリーミーさと旨味は出ていないように感じました。
　しかし、白子の美味しさを味わうことはできました。

⑤玉子焼き
　焼き上がって時間が経っていなかったようで、ほんのり温かい状態でした。
　シンプルな玉子焼きですが、甘くて出汁が効いたとても美味しい玉子焼きでした。

❶コハダのにぎり
　八代産。
　〆て70時間とのこと。
　三つ編みと思われる細工が施されて握られていました。
　めちゃくちゃ柔らかい食感でした。
　脂の乗ったコハダでした。
　〆具合が抜群に良く、バランスのいい酸味と脂の甘味が堪能できました。
　しっかりした仕事が施された素晴らしいコハダのにぎりでした。

❷ヒラメの昆布締めのにぎり
　平戸産。
　3日寝かせた後、昆布で〆して3日とのこと。
　しっかり脱水されていて、ねっとりした口当たりで噛み応えのある食感になっていました。
　昆布の旨味が浸透しヒラメの旨味が深まっていて美味しかった。
　
❸サヨリのにぎり
　岡山産
　塩水に昆布を3時間漬けて、昆布の旨味が入ったこの塩水にサヨリを１時間漬け込んで、塩水の浸透圧で昆布の旨味をサヨリに入れるという昆布塩〆という江戸前の古典的な〆方が施されています。
　大葉を忍ばせて、煮切り醬油とレモンで握られました。
　優しい昆布の旨味がサヨリから溢れました。
　大葉の風味とレモンの酸味が爽やかさを引き出していて美味しく頂けました。

⑥蛸
　壇ノ浦産。
　2切れ提供されました。
　１つはゴマとワサビを乗せて煮詰めが塗られ、１つはウユニ塩湖の塩にレモンをかけて提供されました。
　弾力があって適度に噛み応えがありました。
　関門海峡の荒波にもまれた蛸の旨味は濃厚で、それぞれの味付けで甘味が引き立っていてとても美味しかった。　

❹アオリイカのにぎり
　志賀島産。
　3日寝かせているとのこと。
　間にウニ(赤黒)忍ばせて握られました。
　煮切り醬油が塗られ、レモンを搾り、ゴマを乗せて提供されました。
　ねっとりして柔らかい食感。
　ウニとの相性がとても良く、美味しく頂けました。

❺アジのにぎり
　玄界灘相島産。
　サヨリと同じ塩昆布〆の仕込みが施されて握られています。
　薬味はネギと生姜でした。
　とても柔らかい食感でキレイな脂が乗っていました。
　脂の甘味に昆布の旨味が加わり抜群に美味しかった。

❼イワシのにぎり
　酢〆した青森産の金太郎イワシ。
　薬味はネギと生姜。
　脂の乗りが凄かった。
　味もあって驚きの美味しさでした。

〇トリ貝とカワハギには糸島産のワカメが添えられていました。
⑦トリ貝
　萩産。
　香り良く、甘味が濃かった。
　走りということでワタは少なかったが、甘味が楽しめる秀逸な味わいのトリ貝でした。
　
⑧カワハギ
　平戸産。
　肝を挟んで握られました。
　しっかりした歯触りで、弾力を強く感じる食感でした。
　淡白な身の美味しさとキレイで旨味が濃い肝の極上の味わいが楽しめました。

❼マグロの漬けのにぎり
　那智勝浦産の雌のマグロ。
　キメが細かくて上質な脂が乗った雌のみを仕入れているとのことでした。
　この日は雌の天身が握られました。
　冷たい状態でした。
　滑らかな口当たりで非常に柔らかい食感でした。
　適度な酸味に濃厚な旨味がありました。
　脂もあって衝撃的な美味しさでした。
　
❽中トロのにぎり
　漬け同様、冷たい状態で握られました。
　滑らかな口当たりでめちゃくちゃ柔らかい食感でした。
　脂の甘味が濃く、繊細な旨味があって格別の美味しさでした。
　冷たくなければ、さらに旨味が増していたと思いますが、美味しく頂けました。

⑨鮑
　塩蒸し鮑。
　6時間蒸した、塩蒸しという江戸前の伝統的な仕込みが施されています。
　56歳の鮑という説明がありましたが、切り付けていた鮑はあまり大きくなかったので、56歳の鮑ではないと私は思いました。
　煮詰めを塗って、摺りゴマをかけて、肝を添えて提供されました。
　ワサビを付けて頂きました。
　冷たい状態でした。
　とても柔らかい食感で旨味が濃かった。
　肝も旨味と心地良い磯の風味があってとても美味しかった。
　温かい状態であれば香りも楽しめたのではないかと思いましたが、江戸前の仕事を施した鮑の美味しさが堪能できました。

❾車海老のにぎり
　糸島産。
　しっかり茹でて冷やされた車海老。
　2つにカットして、尻尾側は煮切り醤油で、腹の方は塩とレモンで握られました。
　ブリっとした繊維を感じる食感でした。
　腹の方は甘味が濃かった。
　
⑩茶碗蒸し
　豆乳、薄口醬油、塩、みりんで仕込また茶碗蒸しです。
　茶碗蒸しの内容は金目鯛、海老、銀杏、ゆり根、むかご、胡桃、秋田のとんぶり。
　クリーミーな味わい。
　具だくさんの美味しい茶碗蒸しでした。

❿赤貝
　閖上産。
　閖上産とは思えない大きなサイズと上品な色合いの赤貝でした。
　醬油洗いされ、赤貝の臭みを取り除く下処理を施して握られました。
　サクサクの食感でした。
　閖上らしいパンチのある香りと旨味はありませんでしたが、適度な香りに上品な旨味がありました。
　甘味が濃く普通に美味しい赤貝でした。
　　
⓫赤黒ウニの手巻き
　唐津産。
　ウニの出回りが少ないことから唐津の漁師が頑張ってウニを出荷しているとのこと。　
　赤黒と説明されていましたが、伺った説明から黒ウニだと思いました。
　見た目の色があまり良くないことから、東京で仕入れているお寿司屋さんは日比谷の有名店ぐらいしか思い付きませんが、旨味の濃いウニです。
　この日頂いた赤黒も旨味が濃く絶品でした。

⓬ヒモキュウ手巻き
　キュウリ、大葉、ゴマが一緒に巻かれてました。
　巻かれる前に煮切り醬油が赤貝のヒモにかけられていました。
　ヒモの香りが良かった。
　キュウリの食感とさっぱりした味わいと海苔の風味がヒモの美味しさを引き立てていました。

⓭イクラの湯葉軍艦
　この軍艦は江戸前の仕事ではないにぎりです。(軍艦は久兵衛さんが考えたお寿司なので、伝統的な江戸前寿司にはないお寿司です)
　湯葉軍艦は女将さん考案のようです。
　イクラは皮目がとても柔らかく、塩味が濃いめの味付けでした。
　湯葉はクリーミーな味わいが強く、好みの分かれる味わいのように感じましたが、しっかり塩味のあるイクラとの相性は私は悪くないと思いました。

⓮穴子のにぎり
　煮詰めで握られました。
　柔らかい食感で、穴子の旨味が楽しめました。
　私的には温度を上げて握った方が美味しさが増すように感じました。

★デザート
　日向夏のジュレ
　優しい酸味と甘味で好きな味わいでした。

飲み物
□ビール
　ハートランド
■日本酒
　貴(山口）
　田中六五(福岡)
▣ハイボール
　白州


旬の魚介を使って伝統的な江戸前の仕事を施したお寿司が頂くことができましたが、しっかり素材の旨味が堪能できる美味しいお寿司でした。

基本的に九州近海の魚介が使われていました。
イワシや赤貝などは有名産地から仕入れられていて、旬のいいものであれば九州近海以外のものも使われているようです。

塩や酢で〆、煮る、蒸すなどの古典的な江戸前の仕事にこだわって仕込まれていましたが、素材の旨味が堪能できる美味しいにぎりに全て仕上げられていました。
この美味しさを引き出す、伝統的な江戸前の仕事の凄さに驚きました。

ただ、全て冷たい状態で握られていたのが少し残念でした。
貝類や光物は冷たい状態の方が美味しいと思いますが、マグロなどは常温ぐらいまで温度を戻した方がさらに美味しく頂けたように思いました。

シャリは3種類の赤酢をブレンドした酢で仕込まれたシャリでした。
米は硬めの食感に仕上げられていました。
まろやかな味わいのシャリで、全てのネタに相性良く仕込まれているように感じました。
ネタ同様、シャリも温かくなく、これも古い江戸前の仕事なのかなと思いました。

ご主人、女将さんともに気配りの行き届いた心温まる接客でした。
私はリタイアした年寄りなので、住んでいるところしか話しませんでしたが、ご主人が全てのお客さんの個人情報を聞くところが少し気になりました。
この点だけ気になりましたが、居心地は良いお店だと思いました。

今回、福岡市内で伝統的な江戸前の仕事を施したお寿司の美味しさに感動しました。
また、季節を変えて伺いたと思います。

ごちそうさまでした。