Rabiogurafi（Ｌａ　Ｂｉｏｇｒａｐｈｉｅ…） - 乌丸御池(法式)

厨师滝本将博氏（タキモトマサヒロ）─自然へ敬意を表した火入れ

レストランのパティシエを経験後、ホテルのメインダイニングでの修行を経て、スイスのホテル・レストランで修業。その後フランスへ渡り、三つ星レストランにて「肉の魔術師」との異名を持つオーナーシェフに師事。ここで継承した”火入れ”の技術が、現在の滝本氏の料理の骨格となっている。帰国後は京都の一流ホテルでの料理長を務め、2011年に「ラ・ビオグラフィ」で独立を果たした。

料理師から受け継いだ技を、次世代へと繋ぐ珠玉の逸品

コースの序盤で心躍らされるのは、滝本氏のシグネチャー『卵ショー・フロワー小宇宙1999』だ。半熟の卵黄のコクとメープルシロップの風味、シェリービネガーの酸味やエピスの香り。そのすべてが絡み合ったこの一品は、あまりに印象深いプレリュードとなるはずだ。素材本来の性質をいかに活かすか――培われた技術、鍛えられた精神、研ぎ澄まされた美的感覚から導いた答えは、生産者への温かな敬意を感じさせる味わいだ。

空间白いノートに物語を描くように、静かに紡ぐガストロノミーの時間

衣棚通を南へ下ると、観光客は次第にまばらになり、地元住民が日常を送る街並みへと移り変わる。【ラ・ビオグラフィ】はその中でも控えめで、気付かずに通り過ぎてしまいそうな一軒家だ。だが小さなエントランスの先へと進めば、想像を超えた別世界が広がる。眩しい緑の中庭、その庭を囲むように配されたコの字型のダイニング。内装は白を基調としたシンプルな設えで、料理の色彩にじっくりと集中できるようなされた配慮が心憎い。