食堂車初体験 : レストラン・キハ

レストラン・キハの利用方法については、いすみ鉄道公式ウェブサイト
http://www.isumirail.co.jp/
を参照ください。

自分が訪ねたときは、羽田空港⇔デンタルサポート大多喜駅の送迎バスがセットされたプランでしたのでとても快適に直行できました。が、2016年３月現在、このサービスは停止されているようですね。レストラン･キハのイタリアンコースでは、スパークリングと赤白ワインがフリードリンクでしたので、せっかくですから自家用車ではなく公共交通機関を使って足を運ぶことをおすすめします。そこでこんなプランはどうでしょう(2016/03現在のダイヤによる)？…

東京08:48発(総武快速・上総一ノ宮ゆき)→上総一ノ宮10:11着/乗り換え10:15発(安房鴨川ゆき)→大原10:34着/乗り換え10:46発(いすみ鉄道・DS大多喜ゆき)→デンタルサポート大多喜11:13着

これならDS大多喜11:38発のレストラン列車に間に合います。自分ならここはグリーン車(￥780)に乗車するでしょう。上総一ノ宮までは１時間強の乗車ですから、確実に着席して旅情を味わいたいものです。運賃はきっぷが￥1660、ICでは￥1663です。なぜICのほうが高いのかは謎です。大原まで乗り換え無しで行かれるのでしたら、特急わかしお３号・安房鴨川ゆき、東京09:00発→大原10:13着はいかがでしょうか。自由席は￥930です。参考までに大原駅前に観光するような施設ありません。漁港へも１km強あるので徒歩15分くらいでしょうか。朝市へ行かれるのでしたら、特急新宿わかしお安房鴨川ゆき・秋葉原０７:３２発→大原０８:５４着はいかがでしょうか。急ぎ足になってしまいますが市場で小一時間は物色できるかと思います。

いすみ鉄道の案内によると、レストラン列車に乗車する際の集合地はデンタルサポート大多喜駅と案内されています。もしJR大原乗り換えでしたら、レストラン・キハにはいすみ鉄道の一日乗車券が付いていますので、事前に連絡をすればいすみ鉄道大原駅売店で先に乗車券を受け取れると公式ウェブサイトに記載がありました。

ではどうぞ良い旅を。


◇レストラン・キハ　イタリアンコース

キハ28 2346形はもともと国鉄～JRで活躍した気動車で、そもそも食堂車ではありません。それが外装は国鉄色に化粧直しされてノスタルジックな艶を帯びていました。愛称板には"食堂車キハシ28 2346指定席"と書かれていたのが鉄ゴコロをくすぐります。車内もすっかり食堂車仕様になっていました。４人掛け向かい合わせボックスシートの大原方に奥行きのあるテーブルを設えて、さらに卓上にはマルチグラスホルダーが固定されていました。特にワイングラスやフルートグラスはちょっとした揺れでも倒れてしまうので、ステムと台座をホールドするこういった器具は安全のために必要な装備です。ゲストに悪夢を見せない粋な設えなのです。元木原線はカーブの多い線形ですし、運行列車もまばらなローカル線ですから、高速列車を運行できるほどには軌道整備されていないのです。故に結構揺れるのです。そんな揺れによってワインが心地よい酔いをもたらします。車窓の風景も田園あり渓谷ありと、料理にさらなる美味しさをもたらしてくれます。そうそう、テーブルにはパンが用意されていました。思わずバスケットを鼻に寄せて小麦の薫りを思い切り吸い込んでしまいました。期待に胸がふくらみます。

国鉄車両によくあるキンキンとした音のスピーカーから発車の案内がありました。
まずはいすみ鉄道の終点・上総中野に向けて動き出しました。ほぼ同時にシェフの挨拶があり、いよいよダイニングが始まりました。

・前菜１　手作りピクルスとオリーブ
黒オリーブとピクルスとチェリートマトがココットに入った小さな品です。スターターとしては無難な提供です。合わせて提供されるのはスパークリングワインです。この一杯だけだと思っていたら、その後何度も注いでもらえました。

・前菜２　魚介のマリネ
トコブシとサザエと海老の前菜です。房総半島の内陸を進む列車ながら、房総の海の幸が軽やかに並びました。イタリアンはやはり、素材の持ち味をいたずらにいじらないのが良いですね。魚介は完全に加熱されたのち冷やされていますが、こわばった食感ではなくしっとりとしていました。海の香りを残した料理にスパークリングも進んでしまいました。

・ズッパ　地魚とハマグリとスープ
汁が美味しいです。これもやはり海の香り。魚はグリルしたものでしょうか、水気が抜けて旨味が凝縮されていました。説明があったのかも覚えていませんが、黒鯛のような魚でした。

ここで折り返し地点の上総中野に停車。キハ28の先頭を撮影するべく車外に出ました。

・プリモ　大原産アワビとイクラの冷製スパゲッティーニ
スパゲッティーニは茹で置きなので、糊化した面が固着してくっついてしまいます。それを助けるように、野菜の繊維と水分が調和したほんのりトマト風味のソースが、スパゲッティーニに絡んで食べやすくしていました。ソースの水分だけがスパゲッティーニの隙間を抜けてゆくことも無い、見た目も味わいもとても良い皿でした。いろいろ検証されてたどり着いたレシピなのでしょうね。

・セコンド　大原産伊勢海老と魚介のブローデット
伊勢海老は一尾150～200ｇありそうなものの半身です。食べるところはあまりありません。とはいえプリッとした食感でしたし、あさりとムール貝を添えたトマトベースのたくさんのソースの旨味に心満たされました。

・ドルチェ　自家製かぼちゃのプリンとジェラートの盛り合わせ
特に印象に残らなかったのは特に旬を意識した皿ではなかったからでしょうか。アメリカンな菓子などに用いられるものに似た線状のチョコレートソースがチープな風合いでした。


総合☆２．８
調理設備の無い車両において火は使えません。よってほぼすべての料理が冷製なのです。シェフのキッチンで調理したものを冷蔵あるいは温蔵して車内で盛り付けることも驚きですが、その盛り付けをする空間を用意できたことにも驚きです。さらに食品衛生管理の許可を得るのも難儀したはずです。いすみ鉄道とシェフの熱意には賞賛したいと思います。高速列車全盛の日本にあって、レトロな車両を食堂車にリメイクして、低速運転でスローフードを提供することはとて素晴らしいと思います。けっして最良の調理ではないかもしれませんが、車窓を流れる景色の移ろいとともに、楽しいひとときを過ごしてもらえたらと思い投稿しました。