夏と秋と 行きかふ空の通い路は かたへ涼しき 風や吹くらむ : 蓬左茶寮

公式

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移転前の店舗情報です。新しい店舗は蓬左茶寮をご参照ください。

この口コミは、blueboyさんが訪問した当時の主観的なご意見・ご感想です。

最新の情報とは異なる可能性がありますので、お店の方にご確認ください。 詳しくはこちら

4.6

¥20,000~¥29,9991人
  • 料理・味4.6
  • サービス3.6
  • 雰囲気3.2
  • CP3.0
  • 酒・ドリンク3.8

4.6

¥8,000~¥9,9991人
  • 料理・味4.6
  • サービス3.6
  • 雰囲気3.2
  • CP3.4
  • 酒・ドリンク3.8
2020/08訪問11回目

4.6

  • 料理・味4.6
  • サービス3.6
  • 雰囲気3.2
  • CP3.0
  • 酒・ドリンク3.8
¥20,000~¥29,9991人

夏と秋と 行きかふ空の通い路は かたへ涼しき 風や吹くらむ

高校生の長男に以前からリクエストされていたが、まだまだこどもが行くところではないと往なしてきた蓬左茶寮。
高校の合格祝いだとか何だかと、敵もあれこれ交渉材料を引っ張りだしてくる。
コロナ禍のお陰で随分伸びてしまったが、高校の合格祝いに連れていった。
至らぬ身なりに理解に努め、随所で感動していた。
まあ、これもまた勉強だ。

◎新いかの手鞠
関東では墨烏賊、関西では針烏賊とも呼ばれる甲烏賊の子烏賊。
下足を寒天で固め鞠状にし、手鞠寿司のように身で包まれている。
烏賊特有の食感に続き、寒天から下足が出てきて、異なる食感を楽しめる。

◎イチミダイ(目一鯛) 自家製柚子胡椒添え
「この時期、唯一旬を迎える白身」と店主。
愛知では地方名の"イチミダイ"と呼ばれる目一鯛。
淡白ながら、夏場に最も脂がのる。
この日、蓬左茶寮の膳に刺身がなかった。
自家製の柚子胡椒は生柚子から拵え、塩麹などで調和させる。
赤い皿の中央に大葉、その上に薄い二切れ、手前に柚子胡椒。
折り畳むように箸で身を持ち上げ、柚子胡椒につけて口に入れる。
白身の出来映えより、食感と香りと味わいが愉しい。

◎イシガキガイ(蝦夷石蔭貝)のしゃぶしゃぶ
貝好きしては、以前はかなり貴重な食材だった気がする。
そもそも名古屋で食べた記憶があまりない。
黄色い色目と独特の弾力は、鳥貝以上と言われる所以だ。
イシガキダイを殻に盛り、その下に敷かれた小さな貝殻達が囃し立てているかのようだ。
見た目にも楽しい。
タケノコシドロがいるということは、純国産ではない。
こうした観賞用、デコレーション用の小道具らしい。
「この貝も食えます?」
タケノコシドロを箸で摘まみながら冗談をいう。
「いいけど、貝中毒になるよ」
「どんなよ、貝中毒て」
鳥貝も出汁はでないが、貝殻に残った汁を飲んでみたところ、こちらも同様。
その代わり、身の甘味と歯応えはたまらないものがある。

◎アノリアジ(安乗鰺)
的矢牡蠣で知られる三重県的矢湾の南にある阿児町安乗。
宝彩海老、河豚、鯖で知られる安乗漁港だが、鰺もいい。
黄金、瀬付き、根付きなどと称される非回遊性の鰺が上がる。
まな板の上にでんと置かれた鰺の色味がそそる。
これは一本釣りか定置網かなんて聞いたら叱られそうだ。
これみよがしの鮮度で口の中で踊るような鰺を美味いとは思えない。
まあ、実際、そういう鰺を美味いと語る人は、脳疾患を心配したくなるような勢いで醤油をベタベタつけている。
折角美味い鰺なのに、味がないから醤油をガンガンってのは味気ない。
さて、こちらはどうか。
臭みはなく、程良い歯応えがあって鰺そのものの旨味がいい。
決して過ぎない程度に打たれた塩も程良い。
夏場にもかかわらず、しっかりと辛味の立った山葵がいい仕事をする。
 
◎ワタリガニの天ぷら 内子添え
思わずスマホのカレンダーを見直した。
板場には何ともご立派な外子をもったガザミが調理場にいる。
時期を考えると浜名湖産か。
脚を天ぷらというより素揚げといった方が正しい。
内子がいい。
本当に今日は八月八日かと、もう一度確認してしまう。
育ちがバレるが、脚は殻ごとバリバリといただく。
美味い。

◎蒸しアワビ 肝醤油と翡翠銀杏
蒸しアワビは一口食べて、思わず、「おー、お上手」と。
店主のまんざらでもない表情が自信を裏付ける。
肝醤油なんて美味いに決まっている。
熊本県産の翡翠銀杏。
収穫後、時間が経つと黄色に変わるので、その時にしか味わえない。
「その時にしか味わえないものを味わうってのもね」
手を動かしたままで店主が添える。
肝醤油に絡めて食べる。
もちもち感が売りというだけあって、なるほどもちっとしている。

◎油のないオイルサーディン
いい大きさの鰯を串焼きにしていたので、どうするのだろうと思っていた。
プルトップがついた楕円形の缶がだされる。
プルトップがついてはいるが、フタはされておらず、そのままずらす。
「油のないオイルサーディンです」
「油がないって…だったら、普通に出せばいいのに」
笑いながら憎まれ口を叩き、ずらして置かれたフタを退ける。
脂がのった鰯、大根おろし、そして土佐酢のジュレ。
店主らしい遊び心だ。
この時期の鰯は下りと呼ばれ、脂がのっている。
うーん、美味い。

◎天然車海老の海老フライ 自家製タルタルソース
ここの海老フライはパン粉が非常に細かい。
そして、必要最低限の熱を通す。
必要最低限というのは、レアでもダメだし、尻尾がカリカリでなくてもダメとなかなか難しいわけだが、サラッと造作もなくやってのけてくれる。
自家製のタルタルソースは、細かく潰されたゆで玉子と自家製のマヨネーズを皿の上で客が自ら仕上げる仕組みだ。
自家製マヨネーズは、いわゆる無添加、自然食のマヨネーズを思わせる。
油と卵が良い証左。
いい塩梅に揚がった車海老を、これまた自分好みのタルタルソースで。
このマヨネーズが淡すぎるとか味がないなんて言う輩は、食べてはいけない。

◎雲丹のう巻き
鰻を芯にして卵焼きで巻いてある「鰻の卵巻き」を略して"う巻き"というんだと思っていた。
いや、それはそれで間違いなく正しいとは思うが、鰻の代わりに焼き雲丹を巻いても、雲丹だからう巻きってことになるってことを目前で知らされた。
「う巻きです」
「雲丹の?」
「う巻きです」
ああ、そうですかと言うしかない。
本家のう巻き(そういう区別もどうかと思うが)の方は、蒲焼きの鰻を芯にしているため、当然甘口だが、焼き雲丹に甘くなる要素はない。
しかし、雲丹と卵というのはなかなかどうして相性がいい。
若い頃、寿司屋でも、雲丹と鶉卵を軍艦にしてもらって食べたものだ。
雲丹の風味と黄身の風味がない交ぜになって、邪道との誹りを受けるかも知れないが好きだった。
もちろん、黄身の風味ではないが、これまたよく合う。
 
◎黒胡麻素麺
イクラとずんだかと思ったら、黒胡麻素麺が隠れていた。
オイルはEVOか。
なんじゃこりゃっていう味わいが面白い。
不条理の調和という言葉が哲学でも何でもいいけど、あるのかないのか知らないが、そんな言葉がふと浮かぶ。
雲丹のう巻きの後だけに、さっぱりとした味わいがいい。

◎椀盛 桑名蛤、翡翠冬瓜、白胡麻豆腐、早松茸
和歌の世界では八月といえば、すでに秋。
浮世の俗物にはまだまだ夏真っ盛り。
風流などという高尚な世界とは無縁のようだ。
相変わらず透明感のある出汁は早すぎる秋の香りの下。
蛤の出汁と調和…というより、引き立たせてくれる。
味わいだけでなく、食感でも楽しませてくれる冬瓜に豆腐。
季節が季節なら、はあ~という気分になるところだが、季節は真逆。
重たくなく、すっきりとした味わいになっている。
本来、和食の華とされる椀盛だが、この日はセットアッパーの役割を見事に果たす。

◎焼き鱧 胡椒油かけ
目の前で鱧の骨切りを披露してくれていた。
蓬左茶寮の夏といえば鱧…というのが個人的なイメージ。
そして、今宵の鱧は笑えるくらい美味かった。
皮も身も、外側はパリパリに、中はレア。
おそらく、店主も思っているように、鱧の調理法としては秀逸だと思う。
湯引きも汁も一面的な味わいしか引き立たせないが、この拵え方は鱧の魅力を完全に引き出している。
鱧の内子が乗せられているのも珍味。
隣で食べていた長男は、後刻、「今日イチ」と言っていた。

◎鰻丼 赤出汁
"串打ち三年、裂き八年、焼き一生"と言われる鰻の世界。
こと名古屋では専門店で感心させられることは少ないが、毎年、(ほお…)と思わされる鰻料理は専門店ではない。
まあ、食べる方も、身が厚かったか、安かったかどうかという評価ばかり。
料理人を育てるのも客の大切な役割だが、よく味もわからないくせに贔屓の職人を盲目的に褒め称えるだけの奇特な人が多い地域。
行列だの、何カ月も先の予約だので喜んでいるのは田舎者の証しと先輩に教えられた言葉に、この年齢になって納得している。
閑話休題。
白飯の炊き具合からたれ、そして鰻…香りから食感、味わいまでが見事に調和していて美味かった。
ああ、肝心の鰻の感想が一行になってしまったが、まあ、それで十分。

◎口子茶漬け
まだ酒も飲めない長男に、女将が口子の有難味を語っていた。
「こいつ、昔俺が買ってきた口子を、うまいうまいって、気づかないうちに全部食べちゃった過去があるから、有難味はともかく、味わいと高価だってことは知ってると思う」
「あら」
細切りにした口子を散らし、刻み海苔。
味わいは、まさに一興。

◎水菓子 桃
◎抹茶

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2019/07訪問10回目

4.6

  • 料理・味4.6
  • サービス3.6
  • 雰囲気3.2
  • CP3.4
  • 酒・ドリンク3.8
¥8,000~¥9,9991人

思えば午餐での利用は初めてな蓬左茶寮 でも、やはり満足♡

午餐で利用するのは初となる蓬左茶寮。

他府県からのゲストからリクエストされて予約を入れたのは前夜のこと。
ミシュランガイド東海版という傍迷惑な企画のお陰で予約が取りにくくなっていることは聞いていたので、内心(無理だろうなあ)と思っていたが、
「二名様でしたら…」
前日の予約ということを考えれば二名だけでも了とされたのは幸いだけれど、生憎こちらは三名様。
無理を承知で拝み倒して三名にしてもらう。

日差しに照らされた風景は見たことがない階段を上る。
入り口前に置かれた屋号が認めた行灯も、趣が違って見えるのだから不思議なものだ。
前述の理由もあったのでカウンター席に通されたのは予想外だったけれど、文句などあろうはずがない。

この日は、まだそこまで暑さ厳しいというわけではなかったが、まずはSAPPORO 白穂乃香
決して白ビールは好みでもないが、これは良い。


●錦玉羹
和菓子の手法として用いられる錦玉羹。
和食で用いる場合、出汁の色味が入ることもあって琥珀羹と別称を付されることも多いが、水色の皿と梶の葉蓋の間に隠れるように、透き通る寒天が涼味をそそるこの一品は、確かに錦玉羹の方がしっくりくる。
透き通る寒天の中には玉蜀黍、秋葵、葦海老。
寄せ具合も過ぎることなく程良い感じで、その解れ具合がまた涼味をそそる。

●赤万願寺唐辛子のムース 雲丹出汁ジュレ
カクテルグラスに盛られたムースは赤万願寺唐辛子。
平素、赤万願寺唐辛子といえばパレルモを思い出したりもするのだが、店主の手にかかると完全に和テイストになってしまう。
もっとも、赤万願寺唐辛子の甘さより雲丹出汁の方が押し出しが強く、むしろムースが調和を司っているかのような味わい。
かといって重たいわけはない。
これもまた涼味。

●卵焼き 雲丹のせ
関東と関西では卵焼きの味付けが異なるのは有名な話し。
関東は甘め、関西は辛め。
今日の蓬左茶寮はやや甘め。
これはこれでいいのだが、問題はその上に添えられた雲丹だ。
由良の赤雲丹と…もう一つは説明を聞いたが忘れてしまった。
それにしても雲丹と卵焼き。
考えてみれば食べたことのない組み合わせだ。
雲丹入りの卵焼きなどと御為ごかしな物は食べたことがあるが、卵焼きに引けを取らないボリュームで雲丹が鎮座している。
味わいはといえば、調和というより雲丹は雲丹、卵焼きは卵焼き。
そもそも、どちらも単体で十分美味いのだから美味くないわけがない。

●和良鮎の塩焼きとリエット
全国清流めぐり利き鮎会において三度のグランプリに輝いた和良鮎。
縄張りを荒らした鮎に怒っているかのような焼き上がり。
この時期の鮎は峻烈という言葉がフィットする。
添えられたリエットも、その爽快な味わいを邪魔しない。
一言でリエットと言っても、定番のレシピがあるわけではない。
その時々に応じた作り方があるという点では日本料理向きかも知れない。
シンプルであればあるほど野趣と広がりがあり、本格的な保存食として用いられるとなれば奔放さを制限されてしまう。
このリエットは前者だ。
いずれにしても、今日も美味かった。
 
●椀盛
自慢の出汁の中には葦海老饅頭、枝豆の葛寄せ、そして松茸。
山口の早松でもない限り、この時期に国産ということはないだろうと尋ねてみると中国産。
随分久しぶりに中国産と対峙したが、数十年前に食したそれとはかなり異なった印象。
それなりにクオリティーも向上しているということか。
それはともかく、こちらで遭遇したことは正直なところ驚きだ。
良し悪しではなく、意外。
葦海老饅頭、枝豆の葛寄せは以前にも賞味したことがあるけれど、こちらは安定。
純米酒にもよく合う。

●造り
白身三種は鯛、鯒、鮃。
昆布締めされた鮃は、上品というより厚切りでなかなかの迫力。
旬という意味では鯒だが、もともと旬知らずの異名がある魚。
鯛と鮃は百歩譲っても旬とは言い難い。
いずれも悪くはなかったけれど、これまた意外だった。

●炙り鮪
赤身はインドマグロ、つまりはミナミマグロとのこと。
気楽に愉しめる寿司屋では重宝がられている種類のマグロだが、赤身の色味が本マグロとはやや異なる。
一般的にミナミマグロは赤色の彩度が高いとされているが、上物の本マグロと比較すると、彩度が高いというより、色目が軽薄な気がする。
ともあれ、その性質からしても、炙りには適しているかも知れない。
十分に高級マグロの部類に入るけれど、やはり本マグロには譲る。
しかし、午餐ということで、こういうところで尽力してくれているのは好感度アップだ。
付け添えはかくや、それに子持ち土佐酢のジュレ
このジュレが、まさにいい塩梅。
色目だけでなく、味わいもややライトなミナミマグロを引き立たせていた。
 
●焼き鱧
この焼き鱧も蓬左茶寮の定番。
皮側から炭火でじっくりと焼き上げ、中心部分はいわゆるレア状態。
外側のカリッとした食感と風味、そして内側のモチッとした味わいは堪らない。
まさか午餐で遭遇することができるとは思わなかった。
ああ、今年も夏がきたなって実感する。
 
●煮端
蓬左茶寮といえば煮端、そして味噌汁。
二杯目は特製ゆかりにおろし山葵を散らして。
これがなかなかいけた。

純米酒の用意は相変わらず豊富で、午餐とは思えない贅沢な時間を過ごさせてもらう。

しかし、店主の松本さんは、カウンター越しに話しをしていると、とてもこんな繊細な料理を拵えているとは思えないほどユニークで変な人だ。
そのことを後刻SNSで伝えると、ご本人曰く、
「料理をしている時だけうけもちのかみが宿るので、料理が終わって素に戻ると記憶がないのだ」
なんて馬鹿なことを言っていた。
ちなみに、てっきり、受け持ちの神かと思ったら、保食神と書いて“うけもちのかみ”と読むそうだ。

午餐で評価することはないけれど、それは初訪問の店に限った話し。
すでに晩餐で何度も利用していることを踏まえれば、この店のスペックはわかっている。
そして、午餐には午餐なりの店の取り組み方がわかって、逆に感心することも多い。
いや、今回も大満足。

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2018/09訪問9回目

4.5

  • 料理・味4.5
  • サービス3.6
  • 雰囲気3.2
  • CP3.4
  • 酒・ドリンク3.8
¥20,000~¥29,9991人

第三回なごやめしフェス 変態的感性の店主による名古屋料理の可能性追求

三回目となる“なごやめしフェス”
 
公式FBによると“現代的名古屋料理の可能性とそのバリエーションを可能な限り試すフェスティバル”
いわゆる“なごやめし”と呼ばれる料理を店主である松本氏の変態的感性によってアレンジし、真っ当な料理にするという企画。
変態的感性というのは、女将が付した名前であることを申し添えておく。
 
蓬左茶寮では、こうしたフェス、つまりは祭りを定期的に開催する。
旬の食材を使った“○○三昧フェス”が多いけれど、“和食ベースのイタリアン”など、いわゆるイノベーティブフュージョンのような企画も、ふと思い立ったように開催される。
前二回で、かなりの“なごやめし”は踏襲されたはずで、今回はどんな切口でマジックを披露してもらえるのか楽しみだ。
 
普段は18時開店だが、今日から4日間のフェス期間中は19時開店。
最初は3日間と聞いていたが、金曜日は1秒で満席になったらしく、1日延長したようだ。
開店10分前に到着すると、店の前に男性が一人。
ドアは施錠されているようで、まだ開店していない。
レインボー池下は、やや変則な構造となっている。
路面からビル左手に設けられた階段は一直線に4階まで続いて、エレベーターはない。
つまり、各フロアのエントランスがなく、階段の踊り場に各階店舗の入口がある。
上階へ数段登ったところに座り込んで開店を待つ。
程なく来客は四、五人となり、踊り場では間に合わず、階段に並ぶ。
極めて行儀のいい行列となったが、ラーメン屋じゃあるまいし、この手の店で行列が出来ているという状況に失笑を禁じ得ない。
ほどなく、「お待たせしました」と女将が引戸を解錠し、ゾロゾロと店内に流れ込む。
 
今回はカウンター席は使用せず、入口左手、つまりはカウンター手前のスペースにあるテーブル席のみ。
指定された席に着くと、女将から簡単な口上(主として店主の変態性に関する説明)があり、ファーストドリンクオーダーで祭りの幕が上がる。
これまでは品書きが用意されていたが、今回は初日に間に合わなかったようで、女将が口頭で品書きを告げる。


●手羽先のジオラマ
という説明はなかったが、名古屋城の金鯱をモチーフにしたかのようなポーション。
ポテトサラダの土台に手羽先が二本、そそり立っている。
名古屋コーチン三河赤鶏の手羽先。
塩麹に漬けた鶏肉の中骨を抜き、松茸を入れて二度揚げ。
たれは醤油、味醂、酒、生姜を煮詰めたものを揚げ立ての手羽先に絡めて、胡椒を散らす。
いわゆる名古屋風の手羽先だが、当たり前だけれど味わいは全然違う。
一口食べた瞬間、「うまっ!」と声を出したのは、今回同行した若い仕事関係者。
三河赤鶏はジューシーで柔らかく、名古屋コーチンは弾力があり、深い味わい。
もちろん、松茸の存在はわかるけれど、これが意外なまでに違和感なく馴染んでいる。
調和という意味でバランスが取れていることに、つい笑みがこぼれる。
挨拶に出てきた店主曰く、「ポテトサラダはあくまでも土台で、青海苔の味しかしません。青海苔とはいえ、いわゆるブーケガルニで色目を作っています。なごやめしフェアはボリュームがすごいので、ここでポテトサラダを食べるとしんどくなると思います。それでも大丈夫という方だけどうぞ。」

●小倉トースト
前回はエスプレッソで小豆を炊くことで甘味を抑える手法だったが、今回は限界まで砂糖を減らして炊いた餡に濃茶のソースを合わせる。
利休以前、抹茶といえば濃茶(泡立てず、練るように点てた抹茶)のことで、こちらを御茶とし、泡立てた抹茶のことを薄茶としたようだ。
濃厚な抹茶は香りも高いが苦みも強く、これが甘味と相俟って良い。
店主曰く、「本日は甘味が苦手な方が約一名いらっしゃるので…」という約一名としても納得の出来映えだった。
小豆餡を中心に濃茶のソース。
一本堂で買い求めたという小さくカットされたトースト、その上に自家製バター。
高脂質の生乳を攪拌し、バターとバターミルクに分離して…と丁寧な説明がつく。

●スガキヤラーメン
和風豚骨を標榜しているスガキヤラーメン
いわゆるコンソメの材料(玉ねぎ、ニンジン、セロリ)などの香味野菜と豚のミンチで淡い色合いの豚のコンソメを作り、昆布、あご、いりこの和風出汁に無脂肪乳、そして薄口醤油で
満州豚を母体として“富士のセレ豚(ぶー)”のバラ肉ををローストしてから煮豚に。
メンマは麻竹を輸入しようかと思ったそうだが、どうしても術がなく、真空パックの麻竹を買い求め、添加物を抜き取るために一晩かけて塩抜きの要領で何回も水を足しながら茹で零し、最後に出汁と塩で炊き直したらしい。
トリュフは「どうして豚肉にトリュフを使うのか」「トリュフは誰が獲ると思っている?」という小話を引用して店主が説明。
ポークとトリュフが合うことはわかるけれど、スガキヤラーメンとは合わないと思う。
もちろん、スガキヤラーメンのようなチープな味わいでないので、これがよく合う。
そこまで手間暇をかけて調理された“真っ当な調理法によるスガキヤラーメン”って。
店主の説明を聞いた後、「そこまでしてスガキヤラーメンを作ってどうする?」と突っ込むと、女将がすかさず、「変態ですから。本当に料理についてはこどもみたいなので」と笑いながら返してくる。
本家のスガキヤラーメンは、最後に食べたのがいつだった記憶にすらないけれど、店主には申し訳ないが、この“美味しい食べ物”に“スガキヤラーメン”というタイトルをつけるのは気の毒に過ぎる。
少なくとも本家は、大の大人が食べる物じゃない。

●守口漬 刺身(鯛、鮪赤身、鮪トロ、イクラ)、椎茸
もともと大阪府守口市の特産品である守口大根。
元祖守口漬は、守口村(当時)界隈で収穫される地物の野菜を粕漬けにしたものだったが、食文化としては伝承されず、奈良漬けと称されるようになっていったらしい。
明治期になり、名古屋市中区の“きた福”(現 喜多福総本家)が現在と同じ製法で守口漬(守口大根味醂漬)を販売したところ、評判を得て、守口漬の名で親しまれるようになったそうだ。
ただ、名古屋の食卓に馴染んでいるかと聞かれれば、即座に首肯するわけにはいかない。
俗に名古屋名物と称されるものの殆どは、名古屋人の生活に根ざしていない物が多く、守口漬に至っては、若い世代は名古屋名物であることすら知らないのではないだろうか。
それが“なごやめし”に該当するかと指摘されれば、これは微妙としか応えられない。
シンプルな白い皿の上には刺身と椎茸。
刻んだ守口漬とクリームチーズを和え、球状にして添えられ、その横におろし山葵。
刺身、椎茸をクリームチーズと合わせて食べる。
まずはクリームチーズを一口。
クリームチーズは秋田名産のいぶりがっこと相性がいい。
バーや居酒屋のメニューにも登場し、殊に日本酒とは実に相性がいい。
いぶりがっこの場合、特有の薫香と甘味、甘味に隠されるが相当の塩分が特徴で、クリームチーズと相俟つというよりは相対的だ。
これが守口漬だと趣が変わる。
薫香ほど立たない酒粕の香りと甘味は、クリームチーズと相対するというより、一体化すると言われた方がピンとくる。
蓬左茶寮といえば泡醤油だが、今回は守口漬とクリームチーズ。
鯛の刺身と合うのだろうかと思いつつ、て適当と思しき分量を乗せて食べてみる。
白身の淡い味わいとクリームチーズが合うだろうかとは思ったが、これが面白い。
「鯛の刺身は鯛の刺身だけで食べたい!」という意見に抗するつもりは毛頭ないが、これは皿の上で最後の調理をする料理だ。
 
●守口漬(箸休め)
次の料理まで時間が空くので酒肴に…と守口漬のクリームチーズだけ出してくれた。
これが本当に酒肴として成立する。

●えびふりゃあ/エビフライ
河村たかし名古屋市長(投稿当時)が好んで使うタイプの名古屋弁口調で“えびふりゃあ”と銘打たれたのは車海老の海老フライ。
先立って舞茸がお披露目された。
一辺が八寸はあろうと思しき木器におかれた野生の舞茸。
これほどの大きさの目にすることは滅多にない。
焦茶の角皿の角にタルタルソースが半切りされたかぼすの皮を容器にして置かれ、中央には海老煎餅と車海老、その横に素揚げの舞茸。
店主自身、「海老フライに一番合っているのは車海老」と言うだけあって、相変わらず美味い。
極細挽きのパン粉で出来た薄衣をまとった車海老は、箸で口元に運ぶまでの僅かな距離でも海老特有の香りを十分に愉しませてくれ、カリッと…かといって過ぎぬ程度の絶妙な揚げ具合が食感の心地良さを奏でる。
刺身で食べられる車海老の中心部はレアになっていて、カリッとした食感とモチッとした海老独特の食感の両方を愉しませてくれる。
海老は加熱した方が風味が増す…というのは常道だが、プリプリ&モチッは尚良い(好き好きだとうおもうけど)。
こちらの自家製タルタルソースは海老そのものの味わいを引き立てることはあっても、出しゃばることはない。
ただ、こうした差異も、真っ当な海老フライを食べていれば感じられることで、還元剤入りの食用油で揚げられた防寒着のような衣をまとった海老に、ほぼマヨネーズの味しかしないタルタルをたっぷりとつけて食べるのを是とする向きには上品(薄味)としか感じられないかも知れない。
冒頭、まだ鳴き声を上げている伊勢海老の頭が披露された。
感嘆、憐憫、高揚、期待の言葉が細波のように漏れるが、つまりは美味しくいただくのだからが、仏教的にとらえれば、やはり人間の業は深い。
「追い海老、いきま-す」
女将の言葉で片仮名表記の“エビフライ”が運ばれてきた。
車海老を食べ終えた器に伊勢海老の海老フライが乗せられる。
半身が丸ごとフライになっている。
前述の通り、車海老が一番という店主だが、ある人から「伊勢海老の海老フライはどうだろう」と言われたらしい。
だからといって作る必要性はないと思うのだが、そこは変態料理人を自覚しているだけあって、やはり作ってしまうのだ。
こちらは打って変わって大迫力。
よく海老の食感をプリプリというが、これはブリンブリンと言った方が正しい。
香りや旨味は、なるほど車海老の方が繊細で豊かだけれど、こちらは精神的に美味い。
何せ「大振りの伊勢海老をフライにして食べている」というなかなか経験できない満足感。
小振りの伊勢海老のフライは食べたことがあるが、ここまでご立派な伊勢海老を刺身でも蒸しでもなくフライで食べた経験はさすがにない。
大振りな伊勢海老をガブリとやってモグモグ噛みしめ、全身で海老を味わう。
ああ、なんて贅沢なんだ。

●味噌カツ
前回も登場した“なごやめし”の代表格である味噌カツ。
前回は“肉を味わう”、“衣を味わう”、“味噌を味わう”と構成要素別に特化した食材を用いての三種六切の味噌カツが出てきて、さすがに満腹中枢が悲鳴を上げた。
今回も、まさに「この期に及んで」というタイミングで登場してきたが、今回は随分とポーションが異なる。
どて煮が入った容器に大振りの串カツ
なるほど、どて煮を味噌に見立てた串カツで味噌カツというわけか。
この串カツが野趣溢れる豪快さ。
どて煮も、それぞれの味わいが過ぎず、足らずというところで、これもまた面白い。
が、何せここにきて串カツというところが、なごやめしフェアなのだ。
 
●天むす
何やら物騒なものが添えられている。
おもちゃかと思ったら、これがかなり本格的な注射器。
中には薬液ではなく、出汁が入っている。
前回の天むすではスポイトに出汁を入れていたが、微調整が難しかったようだ。
何せ再度に器の上で味を調えるわけで、それは当然客がやることなので、微妙なコントロールが効かなかったら台無しだ。
そこで、今回は注射器にしたらしい。
なるほど、これだと親指の微妙な調整で抽出量をコントロールできる。
もっとも、個人的には出汁は不要だが。
今回の天むすは飯が煮え端っぽくなっていた。
海苔で包まれて、ギリギリのところでむすびになっている。
これまた、ここでないと食べられない特徴の一つとして面白い。

●ひつまぶし
天然鰻を使ったひつまぶしと最初に聞いたが、この天然鰻というのが曲者だ。
なんでも天然を有り難がる傾向にはあるが、鰻は難しい。
あちこちで天然鰻を食べた経験からいっても、天然であれば美味いというものではない。
鮃や鰤などで「養殖物の方がいい場合もある」などと言われるのは耳障りだが、鰻は納得。
店主の目利きと腕の見せ所だと思っていたら、さすがの肉厚。
焼きも十分及第点だが、さすがにたれは若干の不調和を感じる。
それでも、巷間の鰻専門店と比べても遜色ないどころか、こちらの方が良いくらいだ。
出汁の中には、これでもかと言わんばかりに国産松茸。
あっさりとした出汁に芳香をもたらして、出汁だけでも飲みたい気分になる。
 
●珈琲ぜんざい
これも徹底的に甘さ控えめながら、甘味について語るほどのスペックを持ち合わせていない。

  • 蓬左茶寮 - テーブルセット

    テーブルセット

  • 蓬左茶寮 - 手羽先(名古屋コーチン、三河赤鶏)

    手羽先(名古屋コーチン、三河赤鶏)

  • 蓬左茶寮 - 小倉トースト(濃茶添え)

    小倉トースト(濃茶添え)

  • 蓬左茶寮 - 小倉トースト(濃茶添え)

    小倉トースト(濃茶添え)

  • 蓬左茶寮 - 方茶寮版スガキヤラーメン

    方茶寮版スガキヤラーメン

  • 蓬左茶寮 - 蓬左茶寮版スガキヤラーメン

    蓬左茶寮版スガキヤラーメン

  • 蓬左茶寮 - 蓬左茶寮版スガキヤラーメン

    蓬左茶寮版スガキヤラーメン

  • 蓬左茶寮 - 奈良萬 純米 冷やおろし 生詰 

    奈良萬 純米 冷やおろし 生詰 

  • 蓬左茶寮 - 守口漬とクリームチーズ、刺身、椎茸

    守口漬とクリームチーズ、刺身、椎茸

  • 蓬左茶寮 - 守口漬とクリームチーズ、刺身、椎茸

    守口漬とクリームチーズ、刺身、椎茸

  • 蓬左茶寮 - 野生の舞茸

    野生の舞茸

  • 蓬左茶寮 - 守口漬とクリームチーズ

    守口漬とクリームチーズ

  • 蓬左茶寮 - えびふりゃあ(車海老)

    えびふりゃあ(車海老)

  • 蓬左茶寮 - えびふりゃあ(車海老)

    えびふりゃあ(車海老)

  • 蓬左茶寮 - えびふりゃあ(車海老)

    えびふりゃあ(車海老)

  • 蓬左茶寮 - 伊勢海老の頭

    伊勢海老の頭

  • 蓬左茶寮 - エビフライ(伊勢海老)

    エビフライ(伊勢海老)

  • 蓬左茶寮 - エビフライ(伊勢海老)

    エビフライ(伊勢海老)

  • 蓬左茶寮 - 味噌カツ(串カツ、どて味噌)

    味噌カツ(串カツ、どて味噌)

  • 蓬左茶寮 - 味噌カツ(串カツ、どて味噌)

    味噌カツ(串カツ、どて味噌)

  • 蓬左茶寮 - 天むす(出汁入り注射添え)

    天むす(出汁入り注射添え)

  • 蓬左茶寮 - 天然鰻のひつまぶし

    天然鰻のひつまぶし

  • 蓬左茶寮 - 天然鰻のひつまぶし(出汁)

    天然鰻のひつまぶし(出汁)

  • 蓬左茶寮 - 珈琲ぜんざい

    珈琲ぜんざい

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2018/07訪問8回目

4.5

  • 料理・味4.4
  • サービス3.4
  • 雰囲気3.2
  • CP3.1
  • 酒・ドリンク3.8
¥15,000~¥19,9991人

コスモスとカオス

梅雨明け直後の猛烈な日差しに灼かれた身体を引きずって辿り着いたのは開店時間の18時。
待ち合わせ相手も程なくやってきてカウンター席に陣取る。

上昇した体温をクールダウンするため、まずはSAPPORO 白穂乃香
Hoegaarden Wheatもヱビスの華みやびも好みではないが、白穂乃香はいい。
珍しく立て続けに二杯というのは暑さのせいばかりでもない。
 
●甲蠃雲丹と海苔のジュレ
日本は世界の漁獲量の80%以上の雲丹を消費しているが、国内海洋資源の枯渇が指摘される昨今、流通量の90%近くを輸入に頼っている事実を知る人は少ない。
知多半島の南端に位置する師崎は伊勢湾と三河湾に接し、愛知三島(日間賀島、佐久島、篠島)を臨み、文月解禁ともなれば思いがけず良質な海胆が揚がる。
棘皮から外したばかりの師﨑産紫雲丹に海苔のジュレ。
微かな食感だけ残し、口の中でサッと消え、特有の風味とほのかな甘み。
そんな本物の味わいを知らない人も多いだろう。
磯臭さはもちろん、明礬も加えられていないので苦みも雑味もない。
海苔のジュレも主張は少なく、ふわりとした風味のみ。
もともと雲丹と海苔の相性はいいのだが、これは新鮮な味わいだ。
 
●桑名産煮蛤磯辺寿司
江戸の昔から蛤といえば伊勢桑名の名物。
往時は2,000㌧以上あった水揚げも干潟の減少や護岸工事などの影響で1970年代から劇的に減少し、絶滅危惧種となった現在では150㌧程度の漁獲量でしかない。
木曽三川と伊勢湾が織りなす汽水域で育まれる内湾性の蛤は、地元では“地蛤”と呼ばれた。
桑名産に限らず、蛤の漁獲高の減少は全国的な傾向で、90%以上が中国などからの輸入となっている。
国産でも茨城や千葉など関東で水揚げされる蛤は外洋に面した浜に生息するチョウセンハマグリで、内湾で獲れる桑名の地蛤とは別物とされてきたのだが、蛤の減少に伴い、幅を利かせている。
居酒屋にいけば白蛤や大蛤などと怪しげな名前で書かれることもあるホンビノス貝。
雲丹同様、本物の味を知っている人がどれだけいるか。

そうした事情を踏まえれば、何ともご立派な蛤だ。
地産地消を掲げているだけあって堂々の桑名産。
凌ぎということでやや重ためのシャリの上に鎮座ましましている。
柔らかく煮付けられ、色目も淡い。
海苔を巻きつけ、どうしようかなと躊躇させるサイズだったが一口で。
パリッとした食感の中から蛤の風味とシャリが飛び出し、相まっていく。
咀嚼するたびに味わいが移り変わり、まるでよくできた短編小説のように起承転結を構成する。


暑さに負けて珍しく2杯目の白穂乃香に手を出したので、まだ残っている。
いつもならとっくに純米酒に移っている頃だ。
すると目の前に2本の一升瓶が置かれる。

石鎚 純米 土用酒(石鎚酒造/愛媛県)
開春 山田錦 超辛純米 袋吊り 生酛(若林酒造/島根県)

店主曰く「今日の品書きは、この二本だけでもいけると思います」とのこと。
残ったビールを飲み干しすと、間合い良く石鎚 純米 土用酒が温燗で供され、追いすがるように霧吹きされた椀が運ばれる。


●椀盛 茶豆葛寄せ、万願寺唐辛子、青柚子
澄んだ出汁の中に粗く刻まれた茶豆の葛寄せ。
葛寄せの上に赤万願寺唐辛子、吸口に青柚子の薄切り。
左手で腕を持ち上げ、箸で青柚子を摘まんで椀の端に寄せ、出汁を吸う。
口の中に出汁を残したまま、猪口の温燗を少量流し込み、舌の上で合わせる。
出汁も酒も膨らみ、ふくよかな味わいになる。
日本酒に一番合う肴は出汁だというのが店主の持論だが、然もありなん。
粗く刻まれた茶豆は甘く香ばしい。


ここからが本日のお題。
同じ食材でも調理法を変えることでどんな表情を見せるか。
素材は、そして伊佐木


●真鰺たたき ねぎ塩
●レアな鰺フライ

●鱧と秋葵のたたき 柚子胡椒
●焼鱧 青梅肉添え

●伊佐木 御造
●伊佐木 藁燻し マイヤーレモンおろし


鰺たたきは程良い食感を残ししつつ、香りもいい。
これだけ何とかの一つ覚えみたいに熟成だのエイジングだのと声高に言われると、何でいまさらと思うと同時に、日本の食文化の素晴らしさに対する無理解の多さに驚く。
鮮度さえよければいいわけでも、熟成させればいいわけでもない。
春夏秋冬、その折々に供される日々移り変わる食材の最も良い状態を見極める。
そのための努力を惜しまないことが大事だ。
それは作り手はもちろん、食べ手も同様。
 
鰺はコスモスからコスモス、鱧はカオスからコスモス、伊佐木はコスモスからカオス。
その中でも鱧と秋葵のたたきはまさにカオス。
自家製と思しき柚子胡椒はド派手な見た目に反して繊細ながら、鱧とオクラを刻む方のたたきにしてしまう発想が面白い。
料理が渾然一体を奏でるのではなく、食べ手が渾然一体を見いださなくてはならない。
何だか挑戦的な一皿だった。
前述の通り、存在感十分な柚子胡椒が鍵だ。
 
伊佐木 藁燻しは、そのままであればカオスには至らないが、マイヤーレモンおろしが高める。
マイヤーレモンは中国原産ながら国内、殊に隣接する三重県では自然農法で栽培されている。
まだメジャーとはいえなかった頃、三重県内のSAでたまたま見かけて買い求めたことがある。
特に説明はなかったが、おそらくそういった食材を用いているのだろう。
 
三つの食材をモチーフに、調理法を変えることでどんな表情になるのかというテーマは興味深かった。
そこで感心していたら、最後に完全なるカオスが待ち構えていた。
 
●姉川産小鮎 塩焼き 水茄子とパクチーサラダ、紅芯大根、うるか添え
蓬左茶寮の鮎といえば木曽川水系は和良川の鮎だが、今宵は淀川水系の姉川。
「稚鮎ではないのか」と聞いてみると、珍しくやや歯切れ悪く「小鮎」と答える店主。
姉川の鮎はどうか知らないが、琵琶湖の鮎は天然物を小鮎、養殖物を大鮎と称する。
琵琶湖水域の天然鮎は大振りにならないため、“小鮎の稚鮎“なんて意味不明な言葉も交わされる。
その辺が歯切れを悪くしたのかも知れない。
塩焼きの小鮎に添えられてきたのが、パクチーサラダ水茄子紅芯大根うるかだ。
取り合わせや順番次第という変幻自在さで混沌を深めたり、秩序を感じさせたり忙しい。

●夏野菜白和え 西京味噌漬け豆腐、茹零し大蒜のピュレ
西京味噌に漬けられた豆腐だけでも存在感十分なのだが、茹零しの大蒜がさらに後押しする。
濃厚な一皿。
クセが強い豚骨やモツ、野菜では牛蒡や里芋のような根野菜で用いられることは承知しているが大蒜を茹零すというのは初耳だ。

●煮端 縮緬雑魚、四つ葉胡瓜
蓬左茶寮といえば煮端。
縮緬雑魚は茶碗に移すより、別々に愉しんだ方が煮端の滋味深さを実感できる。

この二本で十分と言っていた日本酒も、若い同伴者が「折角お二人がいるんですから日本酒の勉強もさせてください」なんて上手をいうので中高年二人がその気になった。
 
覚えているだけでも、

“鍋島 裏鍋島 隠し酒”(富久千代酒造/佐賀県)
“酔鯨 なつくじら 純米吟醸 生原酒”(酔鯨酒造/高知県)
宮城県内7酒蔵がコラボした“DATE SEVEN”
“常山 夏 純米吟醸 超辛”(常山酒蔵/福井県)
“酒屋八兵衛 山廃純米酒 伊勢錦”(元坂酒蔵/三重県)
“磯自慢 純米大吟醸”(磯自慢酒蔵/静岡県)

普段アル添は一切口にしないが、「ちょっと面白いのがある」と出された沢の鶴
そもそも、普段は口にしない蔵…蔵と呼ぶことにすら抵抗を感じる超大手だ。
堂々のアル添だが、1973年醸造の古酒
これはちょっと飲んでみたい誘惑に駆られる。
正直なところ、味は想像した通りのものだったが、これはこれで話しのタネだ。

  • 蓬左茶寮 - 甲蠃雲丹と海苔のジュレ

    甲蠃雲丹と海苔のジュレ

  • 蓬左茶寮 - 桑名産煮蛤磯辺寿司

    桑名産煮蛤磯辺寿司

  • 蓬左茶寮 - 椀盛 茶豆葛寄せ、万願寺唐辛子、青柚子

    椀盛 茶豆葛寄せ、万願寺唐辛子、青柚子

  • 蓬左茶寮 - 真鰺たたき ねぎ塩

    真鰺たたき ねぎ塩

  • 蓬左茶寮 - レアな鰺フライ

    レアな鰺フライ

  • 蓬左茶寮 - 鱧と秋葵のたたき 柚子胡椒

    鱧と秋葵のたたき 柚子胡椒

  • 蓬左茶寮 - 焼鱧 青梅肉添え

    焼鱧 青梅肉添え

  • 蓬左茶寮 - 伊佐木 御造

    伊佐木 御造

  • 蓬左茶寮 - 伊佐木 藁燻し マイヤーレモンおろし

    伊佐木 藁燻し マイヤーレモンおろし

  • 蓬左茶寮 - 姉川産小鮎 塩焼き 水茄子とパクチーサラダ、紅芯大根、うるか添え

    姉川産小鮎 塩焼き 水茄子とパクチーサラダ、紅芯大根、うるか添え

  • 蓬左茶寮 - 夏野菜白和え 西京味噌漬け豆腐、茹零し大蒜のピュレ

    夏野菜白和え 西京味噌漬け豆腐、茹零し大蒜のピュレ

  • 蓬左茶寮 - 煮端 縮緬雑魚、四つ葉胡瓜

    煮端 縮緬雑魚、四つ葉胡瓜

  • 蓬左茶寮 - 煮端 縮緬雑魚、四つ葉胡瓜

    煮端 縮緬雑魚、四つ葉胡瓜

  • 蓬左茶寮 -
  • 蓬左茶寮 - 白穂乃香

    白穂乃香

  • 蓬左茶寮 -
  • 蓬左茶寮 -
  • 蓬左茶寮 -
  • 蓬左茶寮 -
  • 蓬左茶寮 -
  • 蓬左茶寮 -
  • 蓬左茶寮 -
  • 蓬左茶寮 -
  • 蓬左茶寮 -
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2018/06訪問7回目

4.4

  • 料理・味4.4
  • サービス3.4
  • 雰囲気3.2
  • CP3.0
  • 酒・ドリンク3.8
¥15,000~¥19,9991人

第二回 名古屋めしフェア 超リッチな名古屋めし三昧

昨秋以来、二度目の“名古屋めし”特集。
 
今回は遅がけの二十時開演。

まずはサッポロ白穂乃香
原材料は大麦、小麦の麦芽とホップのみ。
味わいは柔らかいものの、真っ当なビールだ。
きちんと洗浄されたサーバーということがわかる。
温度も過度に冷えすぎず、ビールとしての味わいを堪能できる。
 
●モーニングセット

今回の名古屋めし筆頭を飾るのは、名古屋名物「モーニングセット」

・アイスコーヒー
といってもドリンクではなくゼリーというかジュレ。
・ベーコンエッグ
この自家製ベーコンが絶品。
美味い自家製ベーコンなんて珍しくもないが、これは五指に入る出来映え。
「ベーコン、美味い」
と独りごちる。
ゆで卵の卵黄には卵白のエスプーマ。
・小倉トースト
自家製餡子は甘さ控えめで、何ともいえない味わい。
・ヨーグルトとフルーツ
丸ごと入れられた葡萄の酸味がヨーグルトの酸味を中和し、それぞれの味わい深さを引き立てる感じだ。
・ポテトサラダ
パリパリのポテトが刺さっているのは、インカのめざめのような小振りなジャガイモかと思ったら、マッシュドポテトをそれっぽく見えるように成形されたものだった。
個人的に変態料理家と店主を絶賛しているが、こういうところが面目躍如、真骨頂。
・コールスローサラダ
これまた、コールスローサラダを巻物にするなんて、なかなかできない発想だ。
ところが、食べてみれば「コールスローサラダ」としか答えられない。

●あさくまのコーンスープ
ある程度の年齢になった名古屋人だったら誰でも知っているステーキのあさくま
創業者である故・近藤誠司氏に乞われ、外資に買収されるまで総料理長を務めていた店主。
ある時、近藤氏から「もうそういう時代じゃない。化学調味料とかを使わずに同じ味わいにしてくれ」と依頼され、これまた名古屋人なら一度は見かけたことがあるであろうレトルト食品“あさくま コーンスープ”をリメイクしたそうだ。
「えっ?そうなの?」と言いつつ、ネットで検索してみれば、確かに化学調味料、保存料、着色料無添加。
もちろん、コーンスープがそのまま出てくるわけではない。
ブルターニュ産ブルーオマール焼き鱧焼き帆立貝柱

ヨーロッパでは「青い宝石」と呼ばれ、海老の最高峰ともされているフランス産ブルーオマールが、あさくまのコーンスープの中で泳いでいる。
いいのか?と思いながら食べてみると、これが予想に反してマッチする。
鱧にしても、帆立貝柱にしても、最高の食材は何に入れてもいけるのかと誤解しそうになる。
高級広東で供されるスープのいずれかに似ている気もするが、やはり違う。
これはこれで新しい味わい。

●鉄板イタリアン
小振りな鉄鍋に鎮座ましまして登場したイタリアン。
名古屋人はナポリタン風のパスタのことをイタリアンスパゲティーと呼ぶ。
そもそも、パスタなんて全てイタリアンに決まっているだが、何故かそう呼んでいる。
前回は、これまた名古屋めしの代表格“あんかけスパゲティー”だったので、今回は趣向を変えてということか。
カリカリに焼かれたチーズが乗せられているので、いかにもといったご存じグリーンボトルに入ったKRAFTのパルメザンチーズ、いわゆる粉チーズのボトルを片手に微笑む店主から、「いる?」と聞かれたが、「結構です」と断る。
すると、何だか寂しげな表情をするので、少しかけてみようかと見慣れた容器の蓋を開けてみたら、見慣れない物が入っていた。
普通、クラフトの粉チーズといえば、ドライな感じのパウダー。
ところが、「湿気った?」と聞きたくなるほどゴロゴロした物が入っている。
そのことを指摘すると、パルメザンチーズを自ら叩いて準備したという。
だったら、早く言ってよ。
カウンター席、全員に「いらない」って言われちゃってたじゃない。
それを聞いた他の客も、
「あ、だったらいただきます」
そんな手の込んだチーズなら、小さなガラス容器にでも入れておけばいいのに。
そういうところが変態。
しかも、いる?って聞いて、全員からいらないって言われても、こちらが気づいて聞かないと本当のことを言わないところが、なお変態。

●手羽先唐揚げ
前回は手羽先ではなく、手羽元に松茸を入れて揚げられていたが、今回は手羽先。
ただ、黒トリュフが、「これでもかっ!」と振られている。
名古屋らしい甘辛濃厚なたれで仕上げられた手羽先にトリュフ。
やはり変態。

●海老フライ
女将によると、「今日、本当に活きのいい車海老が手に入らなかったら、メニューから外す」と店主が言っていたそうだ。
その「本当に活きのいい車海老」はカウンターの上に置かれた水槽で待機していた。
それを店主が取り出そうとすると大暴れ。
命をかけた攻防なのだから、海老が必死になるのもわかる。
それにしても、これだけの勢いで暴れる海老というもの初めて見た。
水槽が比較的小型ということもあってか、まさに暴動状態。
真ん前の席に座っていた客に、予め防水シートが渡されていたことにも納得。
中には勢い余って飛び出すものいて、店主が慌てて追いかける
それを腹部から下が目隠しになるカウンター席で見ていると、まるで安来節だ。
ようやく全員拘束されたと思ったら、店主が一言
「一匹、逃げられた」
薄い衣で揚げられた海老フライは、当然ながら美味い。
そのギュッと濃縮されたような身のプリプリとした食感が猛烈。
なんといっても、たったいま、目前で大暴動の様子を見せつけられたこともあり、尚一層、身の引き締まり具合を痛烈に実感。
絶品のタルタルソースも、もちろん、変態…いや、店主のお手製だ。

●味噌カツ(三種)
テーマは、肉を味わう味噌カツ衣を味わう味噌カツ味噌を味わう味噌カツ
だから三種。
最早、カツとしても十分一級。
若干趣は異なるが、あさくらのカツを思い出す程度にはご立派な出来映え。
肉を味わうカツでは、下に味噌だれ。
その上にカツが一枚、その上に重ねるようにもう一枚。
何もついていないカツから食べ、味噌だれがついたカツ。
衣を味わうカツは、やや厚手になった衣のカツ。
味噌はパウダーで添えられる。
衣だけを純粋に味わうためだ。
最後は味噌を味わう味噌カツ。
納豆?と思うような一部の豆が原型で残った味噌が登場。
ところが、これが何とも不思議な味噌で、いままで味わったことがない。
濃厚ではあるが、塩辛さはなく、豆そのもの味わいも十分楽しめる。
それにしても、なぜ味噌カツの構成要素をデフォルメしようと思い立ったのだろう。

●台湾ラーメン
調理過程で、まさかと思っていたのだが、何の躊躇もなく、そのまま台湾ラーメン。
が、完全に和風だし。
それも腕物に供される一級の出汁がベースだ。
肉のカットの仕方も含め、肉味噌も凝っている。
何より、圧倒的に美味くて驚いた。
これ一本でラーメン屋をやっても行列必至だろう。
味仙が美味いの不味いのなんて言っている場合ではない。
最早次元が違う。
腕のいい本格的な板前が本気でラーメンを作るという機会に、これまで数度出くわしたが、いずれも驚かされた。
圧巻の実力差というのは、こういうことをいうのだろうとしみじみ。

●天むす
食材にこだわるだけあって、そもそも米が良い。
その米で炊かれた飯が美味くないわけがない。
揚げたての海老天、炊きたてのごはん、それに板海苔と塩。
大丈夫か?と思うような熱々のごはんを素手で。
天つゆがスポイトに添えられてきたけれど、十分美味しい。

●抹茶ムース


普段は懐石だが、時折開催される特集は、まるでテーマパークのようだ。
ジェットコースターにメリーゴーランド-例えは古いが、あれよあれよという間に引き込まれ、翻弄される。
気がつけば日付も変わり、定番のお代わりタイム
 
もっと食べたいというリクエストに応えて店主が鰻を捌きだした。
一体どうなるんだ?

  • 蓬左茶寮 -
  • 蓬左茶寮 -
  • 蓬左茶寮 -
  • 蓬左茶寮 -
  • 蓬左茶寮 -
  • 蓬左茶寮 -
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  • 蓬左茶寮 -
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2018/01訪問6回目

4.3

  • 料理・味4.3
  • サービス3.4
  • 雰囲気3.2
  • CP3.0
  • 酒・ドリンク3.8
¥15,000~¥19,9991人

天晴れ、謹賀新年の美酒佳肴

行きつけの店が人気を博することは嬉しいことだ。
殊に、飲食大不況前夜等と言われている昨今、真っ当な店が評価を高めていくのは頼もしい限り。
とはいえ、予約が取りにくくなるのは何とも切ない。
こうして敷居を跨がなくなっていった店は数多ある。

生来、どうにも天邪鬼な気質のようで、他人様が群がってくると興醒めしてしまう質のようだ。
古くは、若い頃、マイキューも買い求める程にのめり込んだビリヤード。
当時は施設も少なく、名古屋市内の殆どのビリヤード場は制したものだ。
ところが、映画ハスラーのヒットで猫も杓子もビリヤードとなり、プールバーなどと呼ばれる店があちこちに出来てくるともうだめだ。
すっかり興醒めして、以降、一度もキューを握っていない。

ブームと呼ばれる現象には終焉が訪れる。
それも、比較的短いスパンであることが多いのだが、如何せん、飲食店の場合はそうはいかない。
いい店であればあるほど、事実上常連ではない常連客(頻繁に通えないと言う意味で)が増えるだけのことで、なかなか古き良き時代に戻ることは難しい。

さて、蓬左茶寮だ。
常連と言える程の者ではないが、ここのところタイミングが合わず、気がつけば9月のイベント(なごやめし)以来の無沙汰。
若衆が不在となり、若干の入場規制をしているという噂も聞いてはいたが、1月の29日か30日のいずれかで二席、空いていないか電話を入れると、30日は満席だが、29日であれば、
「不本意ながらサービス面で多少のことは納得していただければご用意できます。」
とのこと。
二人連れなのだから、カウンター席でのんびり愉しませてもらえれば十分だ。
こうして4ヶ月ぶりに出向くこととなった。

過去最大級と言われる寒波に見舞われた日本列島。
当日の名古屋は最高気温7℃、最低気温は氷点下という厳しい寒さ。
地下鉄今池②出口を出て、すぐのすいどうみち緑道を右折して仲田二丁目交差点を目指す。
予約時間は19時だったが、今池到着は19時03分。
少し遅れる旨は伝えてあったけれど、それでも気が急くというものだ。
 
仲田二丁目交差点を渡り、レインボービルに辿り着くと10分の遅刻。
細い階段を昇り、店内に入ると空気が膨らむ。
同伴者は既に到着しているようだった。
遅刻を詫びつつ、一番奥の席で待っていてくれた同伴者の隣の席に座る。

かなり明けまくった感もあり、いまさらという気はしたが、一応新年の挨拶のような口上を述べると薄い笑いが起こる。
まずはビール。

これまでは女将が、
「エビスですね?」
と確認するのが通例だったのだが、この日は、
「ビールですね。」
と言って調理場の横へ消えていった。
4ヶ月ぶりという負い目もあって、やや不安が過る。
生ビールはスーパーマ●イなので、瓶のエビスにしてもらっているのだが、意に反してビアグラスが運ばれてきた。
しかし色目がスーパーマ●イではない。
この特徴的な淡い白濁色が混ざったような色目はSAPPORO白穂乃香だ。
なるほど、そういうことかと一安心。
白穂乃香であれば文句はない。


●紀州うすいの擂り流し 生雲丹
「ウスイエンドウっていっても薄い豌豆じゃないですからね。豌豆のブランドなんですよ。」
と女将が教えてくれた。
和歌山の名産ということだったので、てっきり和歌山に碓井という地区でもあるのかと思ったら、少し事情は複雑らしい。
明治時代中期、アメリカから導入された品種が大阪府羽曳野市にある碓井地区で栽培された。
水はけのよい砂地という土壌が栽培に適していたようで、小振りながら甘みが強いことから、現在でも豌豆のブランド品種として知られている。
サヤごと食べるキヌサヤエンドウやオランダエンドウとは異なり、碓井豌豆は若い子実を食べのだが、立地条件が適していたこともあって、和歌山県でも栽培され、“紀州うすい”として認証されている。
雲丹は明礬(ミョウバン)を使用していない無添加の北海道産生雲丹と店主が自慢気に語っていた。
碓井豌豆にしても、生雲丹にしても、味わいとしてクッキリと押し出しが強いわけではない。
その自然な味わいが肩の力を抜いてくれる。


●加藤農園の特選トマト、帆立貝柱の最中
加藤農園のトマトは飲食店でも争奪戦で、なかなか一般には出回らないんですよ。」
と女将が教えてくれた。
確かに加藤農園の“きわめ”は希少だ。
最後に食べたのは、もう数年前、栄にあるイタリアンだった。
まだ時期が早いらしく、きわめまでいかない特選らしいが、食材にこだわっている店主らしい。
「トマトに切り目が入れてありますから、まずは何もつけずにトマトをそのまま味わってください。」
店主の言葉に従って、1/8サイズのトマトを一口。
「最中の皮ではさんでいただいて、ハンバーガーの要領でどうぞ。和食の特徴は器を持てるところですから、受けていただきながらお召し上がりください。」
この女将のフレーズに既視感を感じた。
それが既視感ではなく、ちょうど一年前、蓬左茶寮のカウンター席で松葉蟹とトマトの最中を食べた時に聞いたのだと思い出すのに時間はかからなかった。
前回の最中も美味しかったが、今回はまさに和製ハンバーガーといった感じだ。
帆立貝柱が炙られていて、その香ばしさにトマトの甘みと酸味、クリームチーズの濃厚さが調和して、とても美味しいハンバーガーを食べている感じだ。
「とてもいい表現だと思います。」
女将にも褒められた。


◎農口尚彦研究所 本醸造酒(農口尚彦研究所/石川県)
「農口杜氏のお酒があるので、是非飲んでください。」
最初、野口と聞こえたので誰のことかと思ったが、農口尚彦杜氏が復活したらしい。
一口飲んで本醸造だと思ったが、そこは大人の対応。
美味い酒を飲むと饒舌に語る嫌いがあるのだが、何とも中途半端な評価になったので、もしかしたら女将にはばれているかも知れない。
純米至上主義というわけではないが、やはり本醸造は苦手だ。
美味いとか美味くないといった価値観以外の何かが存在するといってもいい。


●椀盛 若松葉蟹
一月中旬から漁期を迎える若松葉蟹は、地元では水蟹とも呼ばれるらしい。
脱皮したばかりの松葉蟹で、実入りは然程ではないものの、水分が多く含まれているためみずみずしく柔らかいのが特徴だ。
その若松葉蟹の椀盛は、出汁に蟹身がよく馴染んで、出汁ごと蟹身を食べる感じで面白い。
紅津和井ほど淡泊ではないが、堅まで成長した松葉蟹とはやはり違う。
風味と味わいがやや淡いというのも興味深い。
茄子もいい仕事をしていた。


●刺身 赤貝、鯛、墨烏賊
ここ数日、日本各地に多大な影響を及ぼした南岸低気圧がドーンと頑張っているのだから漁師も苦労しただろう。
赤貝、鯛、墨烏賊の刺身はほどほどの出来映え。
そういえば、今回は初めて泡醤油が登場してこなかった。


◎十八盛 山廃純米雄町 青螺姫(十八盛酒造/岡山県)


●車海老のフライ、椎茸の天麩羅
前回のなごやめしでも登場した車海老のフライ。
衣というのであれば、極寒の時期には到底そぐわない薄着だ。
海老本来の甘みを存分に味わうことが出来る海老フライは蓬左茶寮ならでは。
肉厚で濃厚な味わいと香りを放つ椎茸は、傘の表側の先の方だけに衣をつけて揚げてある。
軸の側は、ひだも含めて生のままだ。
これが何とも言えない。
愛知県知多市にある“ひらまつ椎茸”。
櫟(くぬぎ)の原木を用いた露地栽培で、農薬はもちろん、殺菌、殺虫処理も施さない無農薬。
径はもちろん、肉厚さにも驚くほど立派な椎茸だ。


●白子焼、焼筍
玉蜀黍の香ばしさを彷彿とさせる濃厚な筍。
しかも、通常口にする筍より香ばしさが強い。
白子も、かなり上物の虎河豚だ。
どちらも濃厚にして芳醇。


●焼き鰤
若布の上にこんがりと焼かれた鰤、そして鬼おろし。
ややしっかりした出汁との調和が楽しい。


◎日高見 吟醸うすにごり(平孝酒造/宮城県)


●飯 煮え端
蓬左茶寮といえば煮え端だ。
これを食べると、ああ、蓬左茶寮に来たなという気持ちになる。
普段、あまり漬物は好んで食べないが、美味しくいただいた。


●水菓子
苺ゼリーと勝手に命名しても許されそうな気がする。
小さくカットした苺と透明のジュレ、最後に抹茶。


今回も楽しい時間を過ごすことができた。

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2017/05訪問5回目

4.2

  • 料理・味4.2
  • サービス3.4
  • 雰囲気3.0
  • CP3.0
  • 酒・ドリンク3.8
¥10,000~¥14,9991人

板前割烹という新境地

通常はコース料理なのだが、先週に引き続き、板前割烹スタイル第二弾な蓬左茶寮。
直前予約になったが、その際に板前割烹スタイルと聞いていた。

19時過ぎに訪問。
カウンター席に座ると店主が、
「お腹の具合はどうですか?」
と聞いてくる。
実はランチを食べ損ねたので、極めて空きっ腹だと応えると、最初に“早寿司”が出てきた。

●早寿司 雲丹握り、鰺握り
雲丹は軍艦巻きではなく握り。
もちろん、雲丹も美味しかったが、鰺が雲丹と拮抗するくらい良い。


今回も酒類のラインナップが愉しい。
 
とりあえずビールとはいえ、やはり真っ当なビールが嬉しい。
スーパーツライでは辛い。
 
いつものことだが、最初はズラリと一升瓶を並べてくれる。
本醸造は好みでないと知ってくれているが礒自慢は本醸造。
ちょっと試しに飲ってみようか?という気まぐれを誘っているわけではないだろうが、多少なりとも酒のことをわかっていると評してくれているらしく、いつも主立ったラインナップを最初に見せてくれる。
つまり、わざわざカウンターまで酒瓶を運んでくれるわけだ。
銘柄はもちろん、残量までわかって、こちらとしては大いに助かる。
こんなサービスをしてくれる店を他に知らない。
わかっている者にはわかっている者の気持ちがわかるものだ。
何気なくやってくれるけれど、このホスピタリティがいい。 
 
自己満足な蘊蓄でも、的外れな知識でもなく、真っ当な見識を真っ当な形で表現する女将には感服。
 
少しばかり囓ったからといって、自分の好みを押しつけるだけならまだしも、人の時間を奪ってまで恥知らずな蘊蓄を披露する輩には、大いに学んでもらいたいものだ。


●渡り蟹、旬野菜の煮凍り
これから夏に向けて旬を迎える渡り蟹の解し身が美味くないわけがない。
貧乏性で蟹好きの呑兵衛としては、蟹身を名残惜しそうに箸でチビチビと摘みながら、純米酒をチビチビと飲る。
夏野菜の煮凍りはよかった。
焼き茄子の香ばしい風味とパプリカやズッキーニの甘味が渾然一体となって、まったく予期せぬ方向からパンチを受けたような感覚。

●鱧の銀串焼き
骨切りされた鱧を串に刺して炭火で炙る。
表面に軽く焦げ目が付く程度で焼き上げられた鱧は、当然ベリーレア。
土佐酢と思しきつけだれもついてきたが、この淡い風味を台無しにしてはなるものか。
何もつけずに頂けば、思った通り、いや、思った以上の至福。
例年、ある程度のサイズになるまで鱧は登場しないそうだが、今回はこの時期にしては珍しく店主の眼鏡に適う鱧が出ていたらしい。
季節が徐々に前倒しになっている気配に若干以上の不気味さを感じながら、でも、やはり美味いものは美味い。

●とうもろこし
品書きには“とうもろこし”としか書かれていない。
「これ、玉蜀黍はどんな感じで出てくるの?」
「それは応相談。お客さんと話し合って決めようかと。」
それでは出てくる前に調理方法がわかってしまって面白くない。
当たり前と思われる書き方をされた品書きでも、必ず一工夫して、食べたことないスタイルで出すと言うので、お任せにしてみた。
すると、卓上コンロと固形燃料、それに鉄板が運ばれてきた。
同時に五色胡麻を散らしたバターと何やら謎の物体。
聞けば、玉蜀黍をペースト状にして、出汁で煮たものだという。
続いて両端を切っただけの玉蜀黍が登場。
鉄板の上に奥と、芯と身は切り離されていて、巻物のように外れる。

まずは、軽く焦げ目がついた玉蜀黍をそのまま。
次にバターを鉄板で溶かして醤油を散らしてコーンバターに。
最後は玉蜀黍ペーストが入った出汁を鉄板の上にダーッとかけて。
文句なく美味い。
確かに調理方法がわかったら面白くないと文句を言ったが、まさか自分で作らされるとは思わなかったけれど、美味し。

●じゃこおろし
何を頼んでも普通ではないスタイルでという言葉に対抗して“じゃこおろし”。
鬼おろしに挟まれたちりめんじゃこ。
その上には置かれた大葉には生山椒。
鬼おろしをバンズに見立てたバーガーのようなポーション。
かなり粗めの鬼おろしは程良い加減の酢醤油と相まって、これが面白い。
ちりめん山椒なのに、生山椒が非常に爽快な風味をまき散らして、これがまたいい。

●造り盛り合わせ
蒸し鮑、墨烏賊、天然鮃、天然車海老、胡麻鯖。
蝸牛を模した大根のカービングの中には鯛の明太子。
墨烏賊は、身の部分と裾の部分、食感が異なる部位に分けられている。
そして、蓬左茶寮といえば泡醤油。
おろし山葵とともに添えられている。

蒸し鮑は絶妙の柔らかさ。
車海老は敢えて生ではなく湯通しをしてあるのだが、これがまた絶妙。
程良いという言葉ほど、料理に欠かせない言葉もないが、まさに程良いだ。
西日本では鮃を厚めに切って供されることがままある。
何だかんだという人もいるけれど、これはこれで面白い。

●蘇
文献には登場するものの製法が伝わっていない蘇。
日本で最初に作られたチーズ、この場合は乾酪と書いた方が雰囲気か。
製法が伝わっていないので、これが蘇であるかどうかは定かではないが、これまで数多の料理人が古文書等を基に再現を試みてきた。
というわけで、これが蓬左茶寮における蘇。
あっさりとしたクリームチーズといったところか。
臭気はなく、合わせてほしいといわれたはなたれとよく合う。

●ハモ椀物 清汁仕立て
「椀盛がほしい」とリクエストすると、敢えて二度目の鱧。
てっきり、品書きにある“吸物”でくるかと思っていたら肩透かし。
椀の蓋を開ければ、まるで湯引きのようなポーションで、一番上には梅肉。
あっさりとした蓬左茶寮の出汁に鱧が合う。
女将によれば、鱧によって味わいが変わるのが愉しいとのこと。
少なくとも、今宵の鱧は上出来だ。

●ワタリガニカツ
「これだけは食べておかないとっていうのはどれ?」
と女将と若衆に聞いてみると、
「ワタリガニカツ」
と声を揃えるので注文。

ほぼつなぎなし、99%渡り蟹身だからこそ、コロッケではなくカツにしたそうだ。
カリッと揚げられた衣の中は、まさに蟹身。
“蟹身たっぷりのカニクリームコロッケ”とやらが恥じ入りそうなほどの蟹身。
おまけに、カツの上にまで蟹身がのっているのだから、最早蟹三昧。
これは美味い。
ガッツリと蟹で、先刻までのチビチビはなんだったんだという気分になる。
自家製タルタルも、究極のマイルドさ。
これ以上マイルドにしたらタルタルでなくなってしまうのではないか?というところまで突き詰められている。
何気なく添えられているかくやらしき一品も面白い。

●牛肉しゃぶしゃぶ
そろそろかな?と思い、〆の飯にするか、もう一杯くらい純米酒をもらって、合わせた酒肴も一品もらうか、どちらにする?と声をかけると、女将が、
「もう何か作ってるみたいですよ」
というので、店主に何を作っているのか聞いてみる。
すると、もう一品、酒肴だというので、女将に合う純米酒を出してくれるよう頼む。
最後の一品はどんな物が出てくるのかと思っていたら、すき焼き。
店主が手ずからしゃぶしゃぶにしてくれる。
最初は泡立てた溶き卵であっさり。
焼きネギがいい仕事をしてくれる。
「食べ終わったら、器をお戻しください。」
言われるまま、カウンターの上に器を戻すと、第二弾。
カリカリのガーリックとブラックペッパーが散らされてくる。
「ペペロンチーノは唐辛子ですが、唐辛子は入っていないのでアーリオオーリオですね」
和洋折衷ではなく、和洋対抗のしゃぶしゃぶ。
これまた文句なし。

●鰯麹
〆は蓬左茶寮と言えば“煮え端”。
というわけで注文すると、
「炊きあげるまでの間、こちらをどうぞ。」
と大根と人参スティックの従え、何やら塩辛のようなものが出てきた。
聞けば、鰯の麹漬けらしい。
数カ月間、塩麹に漬けられた鰯。
アンチョビーとはまた異なった柔らかい味わいで、何せ臭みが皆無。
ここでこんなものを出されたら、また杯が進んでしまうではないか。
などといいつつ、こっそりと半分は残しておく。
だって、次に出てくるのは炊き立てのご飯だ。

●煮え端
炊きあがる直前のご飯を供する“煮え端”。
10秒間で炊きあがる直前のご飯が、炊きあがった直後のご飯に移り変わる。
まさに刹那の料理。
香の物とちりめん山椒が添えられてくるが、ここはご飯だけでいきたい。
アルデンティシモからアルデンテ、そして炊き立てへと変化する。
これだけでも、つまりは何もなくても美味いのだが、ここでこっそりと先程の鰯麹を登場させる。
美味くないわけがない。

「もう一膳分あります」
店主がこういう言い方をする時は何かあるのだが、敢えて、
「卵黄をのせてもらおうかな」
と言ってみる。
すると案の定、
「手製ハンバーグにサニーサイドアップを考えているけど」
もちろん、反対する理由などない。
この際、マナーとやらには目を瞑ってもらって、スプーンで卵とご飯、それにハンバーグをグチャグチャに混ぜ合わせて食べる。
「さすが、美味しい食べ方をご存知ですね。」
という女将の言葉を聞きながらかき込む。
美味い。
最後は添えられたトマトケチャップを散らして。
どう見ても、ケチャップというよりピューレな色目だし、味わいなのだが、店主は頑なにケチャップだという。
この際、ケチャップだろうとピューレだろうと美味ければいい。
そして、美味い。

今回は酒器や食器にも話題がおよんだ。
殆どの器を作家に依頼しているそうだが、この朱塗りの器がとてもいい。
「陶器の趣味だけは気をつけろ」
と心ある先輩に言われて以来、陶器にはふれないようにしてきたが、そんな素人にも官能的であることがわかる。
これもまた味わいの一つであることは間違いない。

今回も大いに堪能。

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2017/01訪問4回目

4.2

  • 料理・味3.7
  • サービス3.0
  • 雰囲気3.0
  • CP3.0
  • 酒・ドリンク3.0
¥15,000~¥19,9991人

松葉蟹とトマトの和風調和 今年最初の蓬左茶寮

今年最初の蓬左茶寮。
大将と女将に遅ればせながら新年の挨拶。
カウンター席の一番奥には待ち合わせた仕事関係者が先に座っていた。

【食前酒】
エビスビール(中瓶)

【前菜】
・赤飯
・加減豆腐
 豆乳と出汁で拵えた豆腐。
・原木椎茸
 小振りながら、椎茸としての味わいが濃厚。
・花菜の辛子和え
 京野菜の花菜(はなな)は寒咲き菜種の蕾。
 あまり馴染みのある野菜ではないが、ほのかな苦味が面白い春菜。
・金玉
 店主が金玉というから金玉としたが、つまりは鶉の煮玉子。
 金粉があるから金玉ということなんだろうが、
 予想に反して塩玉子といってもいいほど塩が強く、
 黄身の熱通りも程良い感じで酒肴として逸品。
・ささみの胡桃和え みぞれ人参

【椀盛】
・海老真薯と生胡麻麩の薄氷仕立て
 椀の蓋を開くと薄く切られた大根。
 凍りかかった水を表現しているとのこと。
 その上には紅白の梅、そして銀箔は雪。
 季節感を見事に表現した椀の中、薄氷をめくると海老真薯、
 多彩な胡麻をあしらった生胡麻麩、そして小松菜。
 淡いが腰がしっかりとした出汁の出来映えもいい。

【向】
・墨烏賊の手鞠造り
 手鞠をモチーフにした造りは目にも愉しい。
 三河産墨烏賊の刺身は、出汁醤油に「浸してください」と店主。
 淡泊と思われる墨烏賊(甲烏賊)だが、初夏から秋にかけては新烏賊と呼ばれ、
 寿司通の間で知られるネタでもあり、旬を迎える冬場、
 濃厚な味わいは出汁醤油としっかり相まみえる。
・真鯛
 三色大根の短冊と泡醤油が添えられた真鯛の刺身。
 鯛は愛知県産とのことだったので豊浜か。
 旬の真鯛は程良く熟成され、味わいと食感の微妙なバランスはまずまず。
・赤貝
 愛知県は三河産の赤貝。
 旬の地場物の赤貝は、一切の臭気なく、肝まで淡泊に感じる。

【強肴】
・松葉蟹とトマトの最中
 松葉蟹のむき身とトマト、そして最中の中にはほぐされた松葉蟹とトマト。
 まず、単品での味わいを楽しみ、最後に最中を。
 「トマト果汁が垂れるので、上を向いて召し上がってください」と店主は言うが、
 なかなかバーガーショップでも見かけない大胆な食べ方だ。
 賽の目にして焼かれた和牛を最中の皮で食べたこともあるが、これは新しい食感と味わい。
 蟹好きの身としては蟹身が緩衝材の役目になっているのは忍びないが、これはどう見てもトマトを主役だ。

【小鍋】
・生若布
 生若布をサッと湯通しして食べる。
 若布の色合いが緑色になるのを目出ながら。
・伊勢海老
 蒸された伊勢海老の身、味噌と和えた伊勢海老の味噌を好みの食べ方で。
 鍋で湯がいてもいいし、そのまま食べてもいい。
 出汁が適当な量になった頃合いで、味噌を溶き入れ、匙でちまちまやるのも酒肴には面白い。
 もちろん、そうした。

【焼物】
・あいち鴨の炭焼き
 聞き慣れないあいち鴨は、愛知県豊橋市で飼育されるチェリーバレー種の合鴨。
 高齢化による廃業の危機に追い込まれたが、
 豊橋市内の精肉店の後継者が「なくすにはもったいないクオリティー」と
 引き継ぐこととなり、ブランド化を目指して奮闘している。
 東京や京都、名古屋などの料理店で使用されるようになり、東京では専門店もオープン。
 柔らかくジューシーで、合鴨特有の臭気もない。
 炭火でじっくり焼き上げられた合鴨を楽しむ。
 付け添えは芽キャベツの天ぷら、新玉葱の炭焼き、そこに霙大根。
 霙大根にサッと湯通しした霰大根を合わせ、食感も面白い。
 口直しに煎った塩昆布。

【飯】
・煮え端
 蓬左茶寮の飯といえば煮え端
 炊きあがる直前のご飯は、微妙な芯とまったりとした重湯を纏い、これが美味い。
 数十秒で食感、味わいが変わっていく。
 米飯という食文化をもと国に生まれた幸せを実感できる。
・ちりめん山椒
・自家製漬物

名古屋ハヤシ
 今回、カモシヤのオーナーとご一緒したのだが、
 彼が運営している"名古屋ハヤシ倶楽部"について、予め店主に伝えておいたところ、
 同倶楽部の主旨に基づいてオリジナルハヤシライスを作ってくれた。
 やはりというか、かなり高級な出来映え。

【水菓子】
・苺と自家製小豆の寒天寄せ
 店主による名は、"苺に雪降る"。
 二十四気の一つ、大寒を迎え、来る立春を待ちわびる思いを表現したとのこと。
・抹茶

【純米酒】
・巻機 純米吟醸(高千代酒造/新潟県)]
 ずらりと並んだ酒瓶の中から、食中酒として選んだのが巻機。
・一念不動 限定醸造酒(関谷酒造/愛知県)
 六年ものの一念不動。珍しいので是非と女将に薦められて。
 淡い琥珀色の甘露は、一念不動独特の香りや味わいを濃厚にした感じ。
・七本槍 純米 80%精米 火入れ(冨田酒造/滋賀県)
 こちらも、椀盛のマリアージュにと女将の推奨。
 精米歩合80%と標榜されると食指を動かしにくいので、
 こういう機会でもなければ味わうことはなかっただろう。
 純米酒とは思えない重さで、最後の甘みがなければ本醸造並の味わい。

  • 蓬左茶寮 - エビスビール(中瓶)

    エビスビール(中瓶)

  • 蓬左茶寮 - 【前菜】赤飯、加減豆腐、原木椎茸、花菜の辛子和え、金玉、ささみの胡桃和え みぞれ人参

    【前菜】赤飯、加減豆腐、原木椎茸、花菜の辛子和え、金玉、ささみの胡桃和え みぞれ人参

  • 蓬左茶寮 - 【前菜】赤飯、加減豆腐、原木椎茸、花菜の辛子和え、金玉、ささみの胡桃和え みぞれ人参

    【前菜】赤飯、加減豆腐、原木椎茸、花菜の辛子和え、金玉、ささみの胡桃和え みぞれ人参

  • 蓬左茶寮 - 【椀盛】海老真薯と生胡麻麩の薄氷仕立て

    【椀盛】海老真薯と生胡麻麩の薄氷仕立て

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  • 蓬左茶寮 - 【向】墨烏賊の手鞠造り

    【向】墨烏賊の手鞠造り

  • 蓬左茶寮 - 【向】真鯛

    【向】真鯛

  • 蓬左茶寮 - 【向】赤貝

    【向】赤貝

  • 蓬左茶寮 - 【強肴】松葉蟹とトマトの最中

    【強肴】松葉蟹とトマトの最中

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  • 蓬左茶寮 - 【小鍋】生若布

    【小鍋】生若布

  • 蓬左茶寮 - 【小鍋】生若布

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  • 蓬左茶寮 - 【小鍋】伊勢海老

    【小鍋】伊勢海老

  • 蓬左茶寮 - 【小鍋】伊勢海老

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  • 蓬左茶寮 - 【小鍋】伊勢海老

    【小鍋】伊勢海老

  • 蓬左茶寮 - 【焼物】あいち鴨の炭焼き

    【焼物】あいち鴨の炭焼き

  • 蓬左茶寮 - 【飯】煮え端

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  • 蓬左茶寮 - 【飯】ちりめん山椒、自家製漬物

    【飯】ちりめん山椒、自家製漬物

  • 蓬左茶寮 - 【飯】名古屋ハヤシ

    【飯】名古屋ハヤシ

  • 蓬左茶寮 - 【水菓子】苺と小豆の寒天寄せ

    【水菓子】苺と小豆の寒天寄せ

  • 蓬左茶寮 - 【水菓子】抹茶

    【水菓子】抹茶

  • 蓬左茶寮 - 純米酒

    純米酒

  • 蓬左茶寮 - 伝統工芸品・箱根寄木細工

    伝統工芸品・箱根寄木細工

  • 蓬左茶寮 - 一念不動 限定醸造酒(関谷酒造/愛知県)

    一念不動 限定醸造酒(関谷酒造/愛知県)

  • 蓬左茶寮 - 一念不動 限定醸造酒(関谷酒造/愛知県)

    一念不動 限定醸造酒(関谷酒造/愛知県)

  • 蓬左茶寮 - 外観(ビル1階)

    外観(ビル1階)

  • 蓬左茶寮 - 小さく書かれている

    小さく書かれている

  • 蓬左茶寮 - ビル入口から階段を見上げると灯籠が

    ビル入口から階段を見上げると灯籠が

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2016/09訪問3回目

4.2

  • 料理・味3.7
  • サービス3.0
  • 雰囲気3.0
  • CP3.0
  • 酒・ドリンク3.0
¥10,000~¥14,9991人

創作とは異なる独創的な料理

東京からのゲストと食事をすることになったが、日曜日の栄界隈となれば、真っ当な店は多くない。
野郎二人で一献やりつつ、半年ぶりの時間を埋めるためには、やはり和食。
というわけで、今月二度目の蓬左茶寮。

17時過ぎに電話を入れ、18時頃には到着という速攻だったにも関わらず、ゲストも大満足の時間を提供してくれた。
殊にフォアグラの八丁味噌漬けは、名物というのも納得の出来映え。
宮崎牛のローストビーフは贅沢の極み。

●渡り蟹と豆乳豆腐 煎り栗粉
茹でた渡り蟹の身をほぐしたものを豆乳豆腐の上に乗せ、煎った栗粉が振られている。
栗粉の甘味と香ばしさがいいアクセントにる。
豆腐と蟹身と相まって、何ともいえない味わいを醸し出す。

●蜂の子
東濃地方ではへぼの名で親しまれている蜂の子。
生食では何とも形容し難い独特の風味が、沸き上がるように後から漂ってくる。
食感も味わいも特筆することはないのだが、この独特の香味は苦手な人には辛いものがあるだろう。
蛋白質をはじめ、ビタミンやミネラル、必須アミノ酸を含む健康食だと思えば、それもまた趣の一つか。

●蜂と蜂の子 醤油牛酪炒め
黄色雀蜂の成虫と幼虫(蜂の子)は炒めるとがらりと違う顔を見せる。
成虫は、いわば海老の殻のような食感と風味。
蜂の子も、生食よりははるかに食べやすくなる。
食べやすくなるというより、風味と甘味が相まって美味。
ただ、個体差で独特の香味が残るものがあり、思わず苦笑。

●喉黒真子の唐墨
「喉黒ってことは赤ムツだよね?」と思わず店主に聞く。
喉黒を捌いたところ、大振りの真子が出てきたので唐墨にしてみたらしい。
となると、これはかなりの珍味。
色目は鯔の唐墨と似ているが、味わいはあっさりと淡泊。

●フォアグラの八丁味噌漬け
「お召し上がりになったお客様から、あれが食べたいとご所望いただくのですが、一カ月はお持ちいただかなくてはなりません。」
"卵黄の味噌漬け"の調理法に似た方法で作られるため、下拵えまで含めると一カ月以上はかかるそうだ。
フォアグラとは思えないほど、あっさりとしているが、味わいは深い。
添えられた甘めの味噌だれをつけると、さらに濃厚さを感じることができていい。
名物料理と言われるだけのことはある。

●渡り蟹
渡り蟹の部位の中で一番美味しいとされるのは鋏脚と第五歩脚。
そこだけを食べるという贅沢を愉しませてくれる。
添えられた蟹酢も淡泊で主張し過ぎず、相まって良い。

●宮崎牛のローストビーフ
ローストビーフの周囲を削り取り、芯部分のみがカットされている。
牛刺しのように見えるが、ちゃんと熱が通っていて、加熱された牛肉特有の甘味も美味い。
牛肉とおろし山葵の相性がいかに良いか、再確認させられる。

●【椀盛】海老団子、零余子真薯、南京白玉、松茸
海老そのものを丸めた団子は、独特の食感と旨味、風味が相まって実に深い。
零余子真薯、南京白玉も出汁との相性がよく、それを彩る松茸の風味も絶妙。

●【凌ぎ】銀杏御飯 柿葉蒸し
大粒の銀杏と絶妙の塩梅の飯がホッとさせてくれる。
これぞ凌ぎといいたくなる。

●鰹のたたき、真鯛
ちょうど店に着いた時、藁で鰹を炙っているところだった。
きっちりと冷まされた鰹のたたきに天然真鯛。

●太刀魚の炭焼き
年中獲れるが、夏から秋にかけて一番脂がのる旬を迎える太刀魚を炭で炙って、生姜醤油で。

●喉黒の塩焼き
冬瓜、小松菜、茄子。
季節感のある野菜の上に塩を打って串焼きされた喉黒(赤ムツ)。
喉黒の濃厚な味わいを旬の野菜が支えて食べ飽きない。

●炙り新烏賊
甲烏賊(墨烏賊)のこどもを軽く炙って。

●煮え端
炊きあがる直前の御飯。
蓬左茶寮の定番ともいえる煮え端は安定の味わい。
日本人にとって米食がいかに重要な食文化であるか痛感する。

●老茸、紫舞茸の炭炙り
独特の苦味が特徴で、店主曰く、「茸好きが一番美味しいという茸」とのこと。
クロカワの別名で、松茸が終わる頃に獲れる。
そのまま焼いて食べられるが、重曹で灰汁抜きをして酢味噌で和えて食べると、独特の苦味が旨味となっていいらしい。
今回は島崎藤村風ということはないが、そのまま炭焼きにして。
この苦味は、確かに癖になるかも知れない。
時期ともなれば、松茸以上の値段で取引されることもある珍味。
天然物の紫舞茸は、食感、風味はもちろん、その味わいは独特。

●自家製無添加ラーメン
店主は"無加ラーメン"と言うが、麺はパスタ。
自家製鶏がらスープをベースに鰹や昆布の出汁のみ。
塩も何も加えていないので、無化調でもなく"無加ラーメン"とのこと。
パスタだから、厳密にはラーメンですらないが、それだと"和風無加パスタ"ということになり、ややこしいので"無加ラーメン"。
ポーションは確かにラーメン。
この淡さを面白いと思えるかどうかが肝心だ。

●宮崎牛の焼き飯
ローストビーフでカットされた周囲の肉を使った焼き飯。
これが美味い。
贅沢なラードの甘味に和風テイストが合う不思議。

●トリュフ入りカマンベールとチェダー
このカマンベールが白ワインとよく合う。

●自家製カレーの海苔巻き
前回、煮え端のお代わりに供された自家製カレーを海苔巻きにして。
これが何とも面白い味わい。

●炙り海藤華
小振りの海藤華を茹で置きしたものを炭で炙って供される。
真子とも異なる食感と、天然のグルタミン産ナトリウムを愉しむ。

純米酒にうるさいことは理解してもらっているので、最初に「冷やおろしの時期になりましたね」と一言だけ。
それで雨後の月 純米吟醸 ひやおろしが出てくるのが嬉しい。
一緒に得月も出されたが、こちらも季節限定で、ひさびさに。
朝日酒造の純米大吟醸といえば洗心が追随を許さないが、得月も悪くない。
あとはお任せ。

・雨後の月 純米吟醸 ひやおろし(相原酒造/広島県)
・得月 純米大吟醸(朝日酒造/新潟県)
・ラジオ正宗(志太泉酒造/静岡県)
・礒自慢 大吟醸純米(礒自慢酒造/静岡県)
・越乃寒梅 純米吟醸 灑(石本酒造/新潟県)
・Chateau de Chamirey 2009

その他、お試しが数種登場。
越乃寒梅は「なんだこりゃ」の一言につきるが。
大手メーカーが純米ブームに慌てて作った酒のようだ。
純米酒ラブの女将のお陰で楽しいひととき。

  • 蓬左茶寮 - エビスビール(中瓶)

    エビスビール(中瓶)

  • 蓬左茶寮 - 渡り蟹と豆乳豆腐 煎り栗粉

    渡り蟹と豆乳豆腐 煎り栗粉

  • 蓬左茶寮 - 渡り蟹と豆乳豆腐 煎り栗粉

    渡り蟹と豆乳豆腐 煎り栗粉

  • 蓬左茶寮 - 渡り蟹と豆乳豆腐 煎り栗粉

    渡り蟹と豆乳豆腐 煎り栗粉

  • 蓬左茶寮 - 蜂の巣調理中

    蜂の巣調理中

  • 蓬左茶寮 - 蜂の子

    蜂の子

  • 蓬左茶寮 - 蜂と蜂の子炒め

    蜂と蜂の子炒め

  • 蓬左茶寮 - 喉黒子の唐墨

    喉黒子の唐墨

  • 蓬左茶寮 - フォアグラの八丁味噌漬け

    フォアグラの八丁味噌漬け

  • 蓬左茶寮 - 渡り蟹 歩脚とはさみ足

    渡り蟹 歩脚とはさみ足

  • 蓬左茶寮 - 渡り蟹 歩脚とはさみ足

    渡り蟹 歩脚とはさみ足

  • 蓬左茶寮 - 蓬左茶寮 - 宮崎牛のローストビーフ

    蓬左茶寮 - 宮崎牛のローストビーフ

  • 蓬左茶寮 - 椀盛~海老団子、零余子真薯、南京白子、松茸

    椀盛~海老団子、零余子真薯、南京白子、松茸

  • 蓬左茶寮 - 椀盛~海老団子、零余子真薯、南京白子、松茸

    椀盛~海老団子、零余子真薯、南京白子、松茸

  • 蓬左茶寮 - 銀杏ご飯 柿の葉蒸し

    銀杏ご飯 柿の葉蒸し

  • 蓬左茶寮 - 銀杏ご飯 柿の葉蒸し

    銀杏ご飯 柿の葉蒸し

  • 蓬左茶寮 - 造り~鰹のたたき、真鯛

    造り~鰹のたたき、真鯛

  • 蓬左茶寮 - ラジオ正宗(志太泉酒造/静岡県)、礒自慢 大吟醸純米(礒自慢酒造/静岡県)、越乃寒梅 純米吟醸 灑(石本酒造/新潟県)

    ラジオ正宗(志太泉酒造/静岡県)、礒自慢 大吟醸純米(礒自慢酒造/静岡県)、越乃寒梅 純米吟醸 灑(石本酒造/新潟県)

  • 蓬左茶寮 - 焼物~太刀魚

    焼物~太刀魚

  • 蓬左茶寮 - 喉黒の塩焼き

    喉黒の塩焼き

  • 蓬左茶寮 - 炙り新烏賊

    炙り新烏賊

  • 蓬左茶寮 - 老茸、紫舞茸

    老茸、紫舞茸

  • 蓬左茶寮 - 老茸、紫舞茸の炙り

    老茸、紫舞茸の炙り

  • 蓬左茶寮 - 無添加ラーメン 調理中

    無添加ラーメン 調理中

  • 蓬左茶寮 - 無添加ラーメン

    無添加ラーメン

  • 蓬左茶寮 - 宮崎牛の焼き飯

    宮崎牛の焼き飯

  • 蓬左茶寮 - トリュフ入りカマンベールとチェダー

    トリュフ入りカマンベールとチェダー

  • 蓬左茶寮 - Chateau de Chamirey 2009

    Chateau de Chamirey 2009

  • 蓬左茶寮 - 自家製カレーの海苔巻き

    自家製カレーの海苔巻き

  • 蓬左茶寮 - 炙り海藤華

    炙り海藤華

  • 蓬左茶寮 - 煎茶

    煎茶

  • 蓬左茶寮 - 内観

    内観

  • 蓬左茶寮 - 内観

    内観

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2016/09訪問2回目

4.2

  • 料理・味4.2
  • サービス3.0
  • 雰囲気3.0
  • CP3.0
  • 酒・ドリンク3.0
¥10,000~¥14,9991人

“ノーマルコース”から“マニアックコース”まで

予約は先月末に入れておいたのだが、確認を兼ねてSNSを通じて挨拶したところ、「ノーマルコースとマニアックコースのどちらがいいか」と聞かれる。
どう違うのか聞いてみると、季節感のある美味しい料理がノーマルコース、ありきたりな美食に飽きた紳士淑女のためのアブノーマルな夜会の料理と酒の会というのがあって、そちらはマニアックコースとのこと。
いまいち要領を得ないが、どうせならマニアックな方が愉しそうなので、マニアックコースをリクエスト。

前回はビールに選択の余地がないのが残念と書いたが、早速改善され、ビールは各種用意されているとのこと。

カウンター席に陣取り、まずはエビスビール(中瓶)。
日本で一番有名な銘柄のビール、「とりあえず」を楽しめるのは嬉しい。

【先付】豆腐のしぼり汁、青豆
最初に出されたのは、ガラス容器に豆乳にしては色目が薄い豆腐しぼり汁、その中に湯葉と袋から取り出されて枝豆が置かれている。
これから登場してくる料理を前に、口の中を清めてくれるような味わい。
さらに、青豆(枝豆)の香ばしい風味が鼻腔をもフラットにしてくれる。
行儀はともかく、器に口をつけ、しぼり汁までいただく。
さあ、かかってこいってなものだ。

【凌ぎ】蜂むすび
煮え端の上には、炒られた蜂の幼虫と成虫が乗っていて、小さめに切られた板海苔が添えられている。
"蜂の子"は食べたことがあるが、炒った成虫となると記憶にない。
いわゆる下手物と称される食材も、若い頃は果敢に挑戦したものだが、炒った蜂の成虫はないような気がする。
板海苔でくるみ、煮え端と一緒に食べる。
香ばしさと同時に感じる甘味は面白い。
普通に美味しいと思えるのが不思議なくらいだ。

【酒菜】はも子昆布〆
8月に産卵期を迎える鱧卵の塩辛。
これは酒が進む。
次は10月以降の落ち鱧か。

【盛椀】岩魚炭あぶり ぬく酒 やわらぎ清汁
椀が二つ運ばれてくる。
片方には炭焼きにした岩魚を燗酒の中に泳がせている。
もう一つの椀には出汁のみ。
岩魚の入った椀は、骨酒というよりはヒレ酒といった濃厚な味わい。
論が盛んなことは承知しているが、岩魚は食材としてはなかなか難しい。
癖は長所にも短所にもなり得るので、好きな人には堪らないだろうが。
そう思えば、丸ごと燗酒の中に入れるという発想は面白い。
岩魚と共に、しっかりと歯応えを残した炒られた大振りの銀杏も入っている。
色合いとしてだけではなく、良い箸休めになる
「純米酒にとって最高のマリアージュは出汁」という店主の考えを反映し、燗酒にマリアージュするための出汁。
椀が二つ並ぶというのは、なかなか珍しいポーション。
燗酒をすすり、岩魚を囓り、出汁で追いかける。
いずれもそれなりの大きさの椀であるため、なかなか忙しいが、前回のような椀盛りに純米酒という組み合わせであればわかりやすいマリアージュも、これはなかなか高等技術を要するマリアージュで、さすがマニアックコース。

【向付】造り~あじ、つらみ鯛、鱧の片面揚げ
それぞれに仕事が施されている刺身は、さすがのそつなさ。
実は、献立は最後に拝見したのだが、白身はつらみ鯛と書かれていた。
てっきり、目一鯛だと思い、さすがマニアックと独りごちたが、"つらみ鯛"は知らない。
まさか、頬肉の"つらみ"ではないと思うし、見目からもてっきり目一鯛と思った不勉強さを恥じる。

【煮物】本がに甘酢餡
献立には"本がに"としか書かれていないが、明らかにガザミなので、つまりは"豊前本がに"のことと勝手に理解しておいた。
ガザミの短所を補い、長所を活かす調理法はさすが大人の夜会。
何より感心したのは、身の火の通し方。
これは生意気ながら、思わず「火の通し方が最高」と言葉に出した。

【揚物】××××の唐揚げ
いわゆる絶滅危惧種で、食文化伝承のため、産地のみで食用ということになっているらしい食材はいくつかあるが、そういう類なのかどうかもシークレット。
いずれにしても、食材の名称も画像もオープンにしないでほしいということなので、詳しいことはノーコメント。
ざっくりしたコメントとしては、特別美味しいわけでも、驚くほどの美味というわけでもなかったが、普通に美味しい。

【焼物】和良鮎 炭あぶり
郡上市和良町を源流とする木曽川水系の和良川で釣れる鮎のことを和良鮎といい、香魚という別名の通り、上質な藻類を食べた鮎は何ともいえない豊かな香りと、濃厚な鮎独特の味わいで高い評価を得ている。
木曽、長良川水系の鮎は、上質とされるものを食べてきたが、和良は別格といわれるのも理解できる。

【八寸】秋刀魚 菊花おろし
画像では写っていないが、すすきが立てられている。
秋刀魚にススキ。
季節感を感じさせる一皿は、骨をとった秋刀魚と菊花おろしを同時に箸でとって食す。
たっぷりの大根おろしと秋刀魚を食べて、美味いと思わない日本人は少ないのではないかと思うが、秋刀魚も大根おろしも一手間、二手間と手をかけて拵えてあるのだから、文句のつけようがない。
ある意味で酒盗だ。

【強肴】むなぎ印籠煮 新栗コニャック煮
鰻が"むなぎ"と書かれているところが、らしいといえばらしい。
鰻の印籠煮、蛸の柔らか煮、新栗のコニャック煮と煮物三昧ながら、それぞれ異なる食感がいい。
久しぶりに食べた鰻の印籠には、名古屋の飲食店ではありがちな甘味に頼りすぎず、飽きがこない上に、酒に合う。

【御飯】松茸飯、香物、留椀
煮え端に手で縦に裂いた松茸を生のまま加える。
煮え端の余熱が松茸に通り、香り立つ。
そして、何ともいえない食感を楽しめ、少しも主張しない御飯がいい感じで共鳴する。
どこまでも、食べ手に官能を意識させる。
「お代わりは、自家製のカレーがあります」ということだったので所望する。
出てきたカレーは、本格派な感じだが、食べると和テイスト。
だからといってソフトかと聞かれれば、十分スパイシー。
お代わりで供されても、立ちすぎないというところも計算ずくか。

【水物】焙じ茶のソルベ
甘味は遠慮するのだが、ソルベだし、あっさりだから食べてみてと言われて口にする。
焙じ茶のソルベだけあって、本当にあっさり。
香りを愉しむといった感じだった。

最後に煎茶。]
それも、きっちりと小振りの茶器に一番茶、二番茶と、和装が似合う女将が注いでくれる。

マニアックコースは、まず、マニアックであることを理解できる紳士淑女であることが条件になる気がした。
いや、楽しい時間だった。

  • 蓬左茶寮 - 【先付】豆腐のしぼり汁、青豆

    【先付】豆腐のしぼり汁、青豆

  • 蓬左茶寮 - 【凌ぎ】蜂むすび

    【凌ぎ】蜂むすび

  • 蓬左茶寮 - 【酒菜】はも子昆布〆

    【酒菜】はも子昆布〆

  • 蓬左茶寮 - 【盛椀】岩魚炭あぶり ぬく酒 やわらぎ清汁

    【盛椀】岩魚炭あぶり ぬく酒 やわらぎ清汁

  • 蓬左茶寮 - 【盛椀】岩魚炭あぶり ぬく酒 やわらぎ清汁

    【盛椀】岩魚炭あぶり ぬく酒 やわらぎ清汁

  • 蓬左茶寮 - 【煮物】本がに甘酢餡

    【煮物】本がに甘酢餡

  • 蓬左茶寮 - 【焼物】和良鮎炭あぶり

    【焼物】和良鮎炭あぶり

  • 蓬左茶寮 - 【鉢肴】秋刀魚 菊花おろし

    【鉢肴】秋刀魚 菊花おろし

  • 蓬左茶寮 - 【強肴】むなぎ印籠煮 新栗コニャック煮

    【強肴】むなぎ印籠煮 新栗コニャック煮

  • 蓬左茶寮 - 【向付】造り~あじ、つらみ鯛、鱧の片面揚げ

    【向付】造り~あじ、つらみ鯛、鱧の片面揚げ

  • 蓬左茶寮 - 【御飯】松茸飯、香物、留椀

    【御飯】松茸飯、香物、留椀

  • 蓬左茶寮 - 【御飯】松茸飯、香物、留椀

    【御飯】松茸飯、香物、留椀

  • 蓬左茶寮 - 【御飯】自家製カレー

    【御飯】自家製カレー

  • 蓬左茶寮 - 【水物】焙じ茶のソルベ

    【水物】焙じ茶のソルベ

  • 蓬左茶寮 - 煎茶

    煎茶

  • 蓬左茶寮 - 内観

    内観

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2016/06訪問1回目

4.2

  • 料理・味3.7
  • サービス3.0
  • 雰囲気3.0
  • CP3.0
  • 酒・ドリンク3.0
¥10,000~¥14,9991人

蓬左茶寮=名古屋の数寄屋 ネーミング同様、複雑なこだわり

その起源を蓬莱宮(はらみのみや)の再建と伝えられる熱田神宮は、かつて蓬莱宮と呼ばれていた。
当時の熱田は海に突き出した岬のような地形になっていて、蓬莱宮は海に面して建てられていた。
このため、海側から見ると蓬莱宮の左側に名古屋城と城下町が位置していたことから、名古屋は、"蓬莱宮の左"、略して"蓬左"と呼ばれた。

茶寮は、茶の湯のための建物であり、茶室、数寄屋を意味する。
数寄屋とは、茶室や勝手、水屋などが一棟にそなわった茶道のための建物のこと。
聞き慣れない言葉の羅列という感を受ける"蓬左茶寮"だが、つまりは"名古屋の数寄屋"ということになる。

その伝に沿うのであれば、かつて星崎一帯にあった塩田で造られた塩を運んだことに由来する塩付街道は仲田二丁目信号交差点の東。
レインボー池下の2階に"蓬左茶寮"はある。
以前は、すぐ北東、現在"たか乃"というカフェになっている場所で営業していたが、2013年10月に現在の場所に移転したらしい。

屋号の由来は古式床しいが、移転先は近代的なビルの2階。
道路に面したビル1階左手の階段を上るとこぢんまりとした和風の佇まいと、蓬左茶寮と認められた行燈が出迎えてくれる。

初訪問は、移転後に設けられたというカウンター席で。

残念ながら、ビールはスーパー●ズイしか用意がないことはわかっていた。
スーパー●ズイしか用意がない店は利用しないことにしているが、今回は特別措置として事前に今池交差点西にある"チキンボーイ"で一杯やってきた。
クラフトビールが豊富な焼き鳥屋だが、顔見知りの若い店主に事情を話し、焼き鳥はなしでエールを一杯だけ。
先日の"馳走庵ひじり"のように、いきなり純米酒という轍は踏みたくない。

「吟醸でも大吟醸でもなく、純米でお薦めのものを」とリクエスト。
初見の店では、ほぼ毎度同じセリフでオーダーする。
すると、"山形正宗夏ノ純米"(水戸部酒造/山形県)、"八兵衛 山廃純米"(元坂酒造/三重県)、"而今 純米吟醸"(木屋正酒造/三重県)が一升瓶で運ばれてきた。
そういえば、前述の"馳走庵ひじり"でも、同じようにオーダーしたにもかかわらず、"而今 純米吟醸"が出されてきたことを思い出す。
「吟醸ではなく…」というオーダーなのに、またまた而今の純吟が出てきたことに密かにうけながら、"山形正宗"をチョイス。
夏季限定の花火ラベルも、見かけるようになってどれくらい経つだろうか。
辛口と案内されたが、酒度はさして高くなく、スッキリとした味わいを求める。

【先付】玉蜀黍のデクリネゾン
昨日までは他県産だったらしいが、今日からは愛知県産とのこと。
醤油を振って焦げ目をつけた玉蜀黍を、唐黍豆腐の上に置き、出汁と合わせた玉蜀黍のすり流しを加え、玉蜀黍が浮かんでいるように見える。
ガラス容器も趣向があって、初夏の目に涼しげで良い。
食材そのものがもつ味を引き立たせようとしている覚悟がわかる一品。
玉蜀黍がもつ甘味、風味を舌と鼻腔で愉しむことを求められる。
すり流しの出汁も、意外なまでに主張しない。

【凌ぎ】穴子寿司
県内産は三河湾の穴子。
「愛知は穴子のことをメジロと呼ぶ」と説明があったが、三河湾の沿岸地域では、"真穴子"のことを"メジロ"、"銀穴子"のことを"穴子"と呼び分ける風習があることは承知している。
そういえば、穴子の名産地といえば、対で牡蛎も名産というのはよく知られたことだけれど、三河産の牡蛎というのはあまり聞かないなとふと思う。
赤酢を用い、僅かに糠を含ませているという舎利は、米の炊き具合とも相まって面白い食感になっている。
ここでも、食材のもつ味わいを損ねないことに注力していることがわかる。
「関東の握りでも、関西の押しでもなく、中間なので巻きというよりは穴子で包む感じで」という説明も、先行なのか、後付けなのかわからないが愉しい。

【椀盛】小豆豆腐と真薯
出汁は店の看板、椀盛といえば和食の華。
蓋を開け、開放された芳香を愉しんでいると、猪口が運ばれてくる。
前述の"八兵衛 山廃純米"(元坂酒造/三重県)。
「出汁を口に含んでいただいて、ほんの少し、お酒も含んでマリアージュしてみてください。日本酒に一番合う酒肴は出汁だと思うんですよね。」
素直に応じてみる。
意外だったのは、名古屋の和食屋といえば、比較的重い出汁の店が多い。
平易に言うなら、わかりやすい味の出汁を供する店が多い。
こちらのような出汁を供する店も数軒は知っているが、出汁についていえば、関西、京風仕立てという印象。
和食の真髄は"淡さ"というのは、これまでも書いてきたことだが、舌と鼻腔を使って探る。
誰にでもわかりやすい答えを出すのは容易だけれど、複雑さを備えてこそ調理の妙だ。
この出汁であれば、純米酒とのマリアージュも確かにわかりやすい。
舌の上で転がす味わいはもちろん、破裂するような芳醇な香りも愉しい。
小豆豆腐も真薯も出汁と合わせることで調和し、高め合う。
彩りの芋茎さえも、思えば名古屋では珍しい部類に入る食材かも知れない。

【向付】お造り
刺身は、真鯛、障泥烏賊、真鰹。
程良く熟成が進んだ真鯛は厚めに切られ、食感も楽しめる。
旬を過ぎたこの時期、鯛といえば養殖も上手く調理すれば問題ない。
一年を通して楽しめるが、それでも障泥烏賊の旬といえば、春から初夏。
モチモチとした食感が代名詞のようになっている障泥烏賊も、この時期は微妙な食感が相まって面白い。
鰹といえば土佐・高知が有名だけれど、鰹そのものでいえば三陸の方が良質。
高知が鰹のイメージとして知られるのは、たたきに代表される調理法。
刺身のまま藁燻しされ、青葱を散らした土佐酢のジュレがかけられている。
ただ、藁燻しの香りを愉しむには、ややもするとジュレが強いかも知れない。
皮も炙って添えられている。
口直しの大根は、彩りも愉しめるように赤大根。
その上に、胡瓜で造られたカッパが鎮座している。
こういうのもカービングの範疇になるのだろうか。
右上に添えられた泡醤油は、かなり濃厚。
これもなかなか名古屋では珍しい
いっしん以来ということは、数年はお目にかかっていないことになる。
肉料理に泡醤油というのも驚いたが、名古屋で刺身に添えられてくることにも驚いた。
「次の料理まで、それを酒肴にされるお客様も多いんですよ」という言葉にも納得の出来映え。

【箸洗い】蓴菜
「秋田県産の最高級蓴菜」として登場してきた蓴菜は、初夏から夏の花期に備え、赤い花芽がついている。
通常、花芽は苦みがあるので取り除かれることが多いが、若芽同様、花芽も湯通しすると緑色になる。
寒天質の大きさは、蓴菜の品質の基準でもあるが、なるほど、十分大きな寒天質に包まれていて、独特の食感が楽しい。
軽めの土佐酢と生姜も、蓴菜の味わいを損ねない。

【焼物】鱧の片面揚げ
席に着いた時、ちょうど鱧を捌いているところで、随分と立派な鱧だった。
この時期、メスとはいえ、ここまで大きな鱧となるとなかなか希少
京都の夏の風物詩といえば鱧。
美しい色合いの猪口グラスを傾けながら、骨切りの音を聞いていた。
鱧は骨切りの音で金をとる-といわれるだけあって、シャリシャリとリズミカルな音は耳でも料理を愉しませてくれる。
その鱧は、皮だけ揚げ焼きにして供されてきた。
鯛や鱚、梭子魚といった白身は真ん中がレアなくらいが美味い。
もちろん、鱧や太刀魚も同様だが、これは謂わばベリーレア以上。
関西や京料理では、皮は供されないことが多く、実際、鱧皮を使った料理や寿司などが知られている。
揚げ焼きにされた皮が香ばしさと食感、さらには独特の味わいを深めてくれる。

【箸休め】水茄子
泉州特産として知られる水茄子。
皮をむき、縦切りにされた水茄子の翡翠色が美しい。
添えられた梅肉は、調味としてよりは色目としていい。
洋梨を思い出させる味わいと瑞々しさは、これからの季節に涼しげ。
もともと、夏場の農作業中の水分補給に用いられていただけのことはある。

【小鍋】鳥貝
卓上コンロとステンレス鍋が用意され、昆布が一切れ。
殻を外された鳥貝が3個。
「刺身のままでも、さっと湯を通してでも、お好みのようにどうぞ。」
まずは、身の部分を刺身で。
磯の香が苦手という人は湯通しして、貝類特有の濃厚さを引き立たせた方がいいだろうが、この磯の香が好きな身には、ブリッとした食感の大振りな鳥貝はたまらない。
肝はサッと湯通して食べた方が美味いと思うが、3つあるので、身の方も、2つは刺身で、最後の1つはさっと湯を通して味わう。
まさに食材のもつ味わいだけを存分に引き出している。
春は太平洋側、初夏から梅雨明けまでは日本海側が美味しいと言われているが、食べ比べたことがないのでわからない。
いずれにしても、この日の鳥貝は美味しかった。

【旬菜】焼き鮑
思ったよりしっかりと焼き上げられた鮑は、肝だれと山椒だれで。
麻辣を彷彿とさせる山椒だれは、舌が痺れるような辛味が強く、「辛いので気をつけてください」と言われるだけのことはある。
ほんの少し鮑につけると、これがなかなか面白いアクセントとなる。
これから旬を迎える鮑を一足早く。
食材の状態にもよるだろうが、鳥貝を堪能した後だけに、もう少しレアな方が味わいは深くなるような気がした。

【御飯】煮え端
店主曰く、「うちで一番のご馳走です。」
懐石などで米からご飯に変わる直前の状態を煮え端、または煮え花いう。
いわばお米のアルデンティシモ。
京では、竈のことを"おくどさん"と呼び、おくどさんで炊いた煮え端が最高のご飯の食べ方とされる。
どこかにあるのかも知れないが、名古屋で煮え端を供してくれる店は知らない。
京都では、懐石の流儀に則り、最初にでてくることも多い。
記憶にある限り、未在で食べたのが最後だと思うが、その時も最初に供された。
未在で予定された客が揃うまで料理を供さない理由はこれかと納得したものだ。
「10秒ごとに味わいも食感も変わってしまいますから」と店主が言うように、まさに刹那の味わい。
お代わりには、炊き立てのご飯の熱で溶かして食べるよう、煮凍りがのせられてきた。

"山形正宗夏ノ純米"(水戸部酒造/山形県)で始まった純米酒は、記憶が確かであれば、"八兵衛 山廃純米"(元坂酒造/三重県)、"久保田 碧寿"(朝日酒造/新潟県)、再度"八兵衛 山廃純米"(元坂酒造/三重県)。


食材のあり方や調理のあり方をストイックなまでに追求する姿勢は好感。
そうした料理人は、ともすると先鋭化に過ぎる嫌いはありがちだが、そこは上手くバランスをとっているように見受けられる。
もてなしも過ぎず足らずといい塩梅。
闊達な印象を受ける女将の接客もいい。
一つ一つの料理に対する説明も丁寧でわかりやすく、食材や調理に対する店主の姿勢や気構えが伝わってくる。

ただ、そうした調理に対する姿勢を真っ当に解する客がどれほどいるだろうか…殊に名古屋という地域性を鑑みると一抹の不安は残る。
少なくとも、好き嫌いなどという狭量な物差しでしか食文化を語れない人には難しい。
金を払えば客などという寂しい了見は問題外として、食材そのものと調味の妙を理解するには鍛錬が必要だ。
物事の分別を多少なりともわかっているのであれば、何ごとにつけ、真摯に取り組んでいる人に対しては謙虚さをもって接するのが礼節というもので、それは食を語る以前の話し。
謙虚さとは、つまり学びであり、その姿勢だ。
「味の好みは人それぞれ」などと当たり前に過ぎる言葉を、まるで伝家の宝刀でもあるかの如く、したり顔で息まかれても閉口する。
そんな話をしているのではないということくらいは、せめて理解してほしいものだ。

個人的には、是非ビールに選択の余地を与えてもらいたい。
スーパー●ズイのみという時点で、料理に対する真摯な態度の理解までたどり着かない人もいると思う。
少なくとも、自分を含め、周囲には、「スーパー●ズイしか用意のない飲食店は利用しない」という向きは多い。
その他の酒類は豊富に用意されているのに、日本人の定番といってもいい「とりあえずビール」に選択肢がないというのではつまらない。

  • 蓬左茶寮 - 【先付】玉蜀黍のデクリネゾン.06.09.)

    【先付】玉蜀黍のデクリネゾン.06.09.)

  • 蓬左茶寮 - 【先付】玉蜀黍のデクリネゾン2016.06.09.)

    【先付】玉蜀黍のデクリネゾン2016.06.09.)

  • 蓬左茶寮 - 【凌ぎ】穴子寿司

    【凌ぎ】穴子寿司

  • 蓬左茶寮 - 【椀盛】小豆豆腐と真薯

    【椀盛】小豆豆腐と真薯

  • 蓬左茶寮 - 【椀盛】小豆豆腐と真薯

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  • 蓬左茶寮 - 【向付】お造り

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  • 蓬左茶寮 - 蓴菜(調理前)

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  • 蓬左茶寮 - 【箸洗い】蓴菜

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  • 蓬左茶寮 - 【焼物】鱧の片面揚げ

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  • 蓬左茶寮 - 【箸休め】水茄子

    【箸休め】水茄子

  • 蓬左茶寮 - 【小鍋】鳥貝

    【小鍋】鳥貝

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  • 蓬左茶寮 - 【旬菜】焼き鮑

    【旬菜】焼き鮑

  • 蓬左茶寮 - 【旬菜】焼き鮑

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  • 蓬左茶寮 - 【御飯】煮え端

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  • 蓬左茶寮 - 希少種ワインのおこぼれ

    希少種ワインのおこぼれ

  • 蓬左茶寮 - 【外観】蓬左茶寮

    【外観】蓬左茶寮

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店舗情報(詳細)

店舗基本情報

店名
移転 蓬左茶寮

移転前の店舗情報です。新しい店舗は蓬左茶寮をご参照ください。

受賞・選出歴
日本料理 百名店 2021 選出店

食べログ 日本料理 EAST 百名店 2021 選出店

ジャンル 日本料理、海鮮
住所

愛知県名古屋市千種区仲田2-12-4 レインボー池下 2F

交通手段

地下鉄東山線 池下駅 1番出口より徒歩6分
(看板がありませんので大変見つけづらくなっております。お近くからお電話をいただければお迎えにあがります)

池下駅から428m

営業時間
  • ■営業時間
    11:30~13:30(L.O)
    18:00~21:30(L.O)

    ■定休日
    水曜
予算

¥15,000~¥19,999

¥8,000~¥9,999

予算(口コミ集計)
支払い方法

カード可

電子マネー不可

サービス料・
チャージ

サービス料10%

席・設備

席数

23席

(カウンター6席、テーブル4席、個室6席)

最大予約可能人数

着席時 6人

個室

(4人可、6人可)

完全個室3名様〜6名様まで 

貸切

(20人以下可)

禁煙・喫煙

全席禁煙

駐車場

近隣にコインパーキング有り 

空間・設備

落ち着いた空間、カウンター席あり

メニュー

ドリンク

日本酒あり、焼酎あり、ワインあり、日本酒にこだわる、ワインにこだわる

料理

野菜料理にこだわる、魚料理にこだわる

特徴・関連情報

利用シーン

知人・友人と

こんな時によく使われます。

ロケーション

隠れ家レストラン

サービス

2時間半以上の宴会可、お祝い・サプライズ可

お子様連れ

20歳以上とさせていただいております

ドレスコード

ありません

公式アカウント
オープン日

2012年7月8日

お店のPR

季節を味わうおもてなしをどうぞ

日本ならではの季節のもの、その地ならではの地産のもの そして現代ならではの感性を。 どうぞご賞味ください。

初投稿者

ボンパパボンパパ(2814)

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