名古屋ではダントツに美味しい銀座の鮨 : 鮨 土方

半年ぶりの訪問である。こちらは名古屋では私の一番のお気に入りのお寿司屋さんなのである。その理由は名古屋に居ながら銀座で鮨を食べている気にさせてくれるからなのだ。実際大将は長年銀座で修業をされ、生まれ故郷である名古屋にてご自身のお店をオープンされた。お店の前には「銀座　土方」と書いた看板があることからも、いかに銀座流にこだわって鮨を出しているかが分かるというものだ。
現在はこちらのお店は６時と８時半の二部制になっている。仕事のある私はさすがに６時スタートの１部には間に合わないのでいつも８時半からの２部でお願いすることにしているのだ。

今回もいつものように2部からスタートだ。早く店に入っても前のお客さんが座っている限りは別の席で待たないといけない。時間ちょうどに来るのが良いようである。

今回も事前には何のお願いもしていない。すべて大将に任せてある。このクラスのお店で鮨を頂くには最初から最後まで下手な要望を入れずにすべてお任せにするのが良いというものである。

今回も案内されたのは大将の真っ正面の席である。土方ではやはりこちらが特等席というものだ。大将の一挙一動を見ることができるからね。
握りの前にちょっとした前菜が数品出てきた。まずは青森産のモズクからだ。モズクというと９０％以上は沖縄産なのだが、今回珍しい青森の物であった。一本一本の筋が淵くて噛み応えがある。それでいて風味がとても良い。食べ慣れている沖縄産とは全く別物であった。

そして茄子のそうめんだ。ちょうど季節柄素麺は美味しく頂けるのだが、こちらの茄子の素麺は素晴らしく茄子の味にパンチがある。紫色の素敵な器との彩がとてもよかった。

そしてお造りにはビックリした。「あら」が出てきたのだ。「あら」とは九州ではクエのことであるがそうではない。今回出してくれたのは正真正銘ほとんど幻の魚「あら」なのだ。釣りをやる人なら知っていると思うが、あらはかなり深いところに住んでいるのと個体数が激減しているのでほとんど市場に出回らない魚なのだ。私もお寿司屋さんで食べたのは片手もないぐらいだろう。皆さん、たぶん出されても何の気無しにいただくと思うのだが、このあらはものすごい努力とラッキーで釣れた超高級魚なのである。スズキ科の魚なので淡白な味わいの中にも芳醇な香りがあり、奥深い味が感じられた。最近鮨屋のおつまみでここまで嬉しかったものはない。素材真っ向からの勝負ですがすがしい気にさせてくれる一品であった。

そして串が出てきた。ミル貝のキモ、ヒモ、貝柱である。肝の苦みが貝柱とヒモの味を引き立たせてとても美味しかった。

ココから握りがスタートだ。白エビの握り、シマアジ、小鯛の握りが最初であったがめちゃ美味しい。この絶妙なシャリの具合がやはり名古屋最高の鮨屋の味にしているのだろう。鮨とはネタとシャリの組み合わさったものである。バランスが大事だと思うのだ。もちろん食材が悪ければ美味しくなりようもないのだが、しかし高級食材を使ってもバランスが悪くて「いまいち」という寿司屋ものある。名古屋市のオフィス街にある某寿司屋はいつも奇をてらい、前菜には出来損ないのフレンチみたいなものを提供している。まあそれをありがたがって食う客も客なのだが・・・ネタは良いものを仕入れているにも関わらず寿司になるとまるでダメなのだ。しかしこちら土方は来るたびに「銀座で鮨を食った」という気にさせてくれるのだ。

仕入れの方はかなりの部分を築地から仕入れているようである。
素人の私にはあまり分からない世界なのだが、寿司屋と築地の魚屋さんの関係もやはり人と人との関係で、自分の贔屓している寿司屋には一番良いものを出そうとするようである。しかし常に良いものがあるわけでもないので、そういう問屋さんが困ったときにはあまり良くない物でも高値で買っているという。そういう持ちつ持たれつの関係が良いネタを仕入れる秘訣となっているらしい。こちら土方さんは特にマグロにはこだわっており、寿司では食べログ全国1位の「さいとう」と同じ「やま幸」（やまゆき）から仕入れているとのことであった。名古屋では他にはないだろうなあ～～

そしてここで土方の神髄、マグロの握りが登場した。中トロと大トロ2貫連続である。中トロと言ってもほとんど大トロの色をしている（笑）この日のマグロは鳥取県境港からの旋網の132キロのマグロである。口の中に放り込むと体温で脂が溶けるのが分かる素晴らしい大トロであった。シャリとの相性もバッチリ！！これぞ銀座の鮨　である。

そしていつも出してくれる日間賀の煮ダコは固過ぎず柔らか過ぎずで素晴らしい煮物であった。握りの間に出てくると嬉しい一品である。そしてマグロと並んでもう一つの名物が車エビである。こちらでは生きたままの車エビを串刺しにして半生状態に茹でて提供してくれる。またエビのミソをネタとシャリの間に挟むのでより潮の香りを楽しむことができるのだ。半生と言ってもほとんど茹であがった状態ではあるが、このギリギリの茹で具合がとても素晴らしい食感を出しているのだ。これも名古屋では他のお店では食べることのできないものである。
その他、みる貝、皮が薄く絶品の銚子の金目、九州産卵前のノドグロの握り、そして雲丹が紫雲丹と愛知県産の赤雲丹食べ比べ、最後にトロ鉄火で修了であった。

銀座の鮨ではあるが、銀座の鮨に慣れていない名古屋の方にも美味しく感じられる鮨だと思う。やはり名古屋ではここが一番の鮨屋だろう。

[2015/7再訪]
ちょっとご無沙汰して今年初めてになるが再訪。店の中に入ると心地良い緊張感がある。ここって店に入る前からとっても期待させてくれるんだよね。
今回も鮨中心のおまかせ。まあこの時期だから良いマグロがないと大将はおっしゃっていたが、私にとっては大将の握るお寿司は十分美味しい。今回の当たりネタはアワビとウニ。コハダも美味しかった。この日も大満足。
最近私の好みが変わってきたのかもう少し酸っぱめのシャリにしてくれたらもっと良いのになあ～と思う。
そして帰り際、いつもブログを愛読しているantonさんがいらっしゃったので大将に紹介してもらった。少ししかお話できなかったが思った通りの魅力的な人だった。いつか一緒に食事に行きたいなあ～。

（2014/11再訪）
いつも期待大で伺っている。今日は席に着くなり隣にオレンジ色の物体が…どうやら手作りのカラスミのようだ。ただしまだ仕込んだばかりで食べれるようになるのは2週間ぐらいあとになりそうとのこと。
軽くつまみを頂いてから握り開始！！食べると分かるがここのしゃりはサイコウ～～いい香りがする。
具体的には酢の香りなのだが私にとってはこれは銀座の香りである。
真鯛の昆布〆から始まり・・・鮭児の握りが出てきた。鮭児は人生3回目。1万分の1匹の鮭である。まずいわけがない。
とてもしっとりしていて美味しかった。次はいつ鮭児に巡り合えるのかなあ～～
対馬産のサバはかなり大きかったが、これはいまいち。まあしょうがないか…
でもそのほかは全部満足でした！！


（2014/09訪問）
旨いとは聞いていたがなかなか行く機会に恵まれず延び延びになっていた。錦の雰囲気はあまり好きではないし、錦で旨いという評判の店に行ってもあまり期待以上のことはなかったのでここ土方にも足がなかなか向かなかった。ある信頼できる友人のブログを見ていたら、かなり美味しいと書いてあったのでこれは行かねば！！と思い予約して初めて訪問したのが８月初め、入ってみると思ったより若い大将で内心は「大丈夫かな？？」と思ったがその心配はすぐに吹き飛んだ。
お酒はあまり頂かないので事前に握り中心でお願いしておいた。つまみが２～３品出てきた後、握り開始！！そして握りを数貫食べた後また間につまみが出るという感じであった。
ここの特徴はまずシャリが美味しい。場所柄お酒とつまみばかりで食べれたお寿司が５貫程度というのはいかにももったいない。
美味しい寿司屋ではやはり鮨を食べねば、と思うのは僕だけであろうか？
ほんのり温かくそして過度な甘みもない銀座で修行された大将の寿司はネタと良いコンビでとっても美味しい。
これだけのシャリを出すような店のネタはどれだけ気を使って仕入れておられるか言わずもがなであろう。
その後１か月も経たないうちに再訪した。また近いうちにお邪魔したいと思う。毎月１回は行きたいそんなお寿司屋さんである。