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シリーズ: "鍋焼きうどん" のアタマで一杯 Vol,1、多摩の名店「車家」
MSSBHNSさまの シリーズ〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇 】を並べて↓みたら再現なく続き、モノ・コト を深く掘り下げて考察し、軽妙な言い回しと豊富な語彙によって読者を魅了しつつ、"よけいなことをいってはならない ©︎MSSBHNSさま" 抑制の効いた心遣いに感心させられます。
・シリーズ #いつ誰が撮ってもおんなじシャシン 】エチゴ名物半羽揚げ!
・シリーズ#越年快樂(その5)滷味焼味臘味ドーピング。
・シリーズ ハードボイルド】まずはここから。
・シリーズ 蘇えるハードボイルド】全てはココから始まった。
・チョッとだけ帰ってきたシリーズ ハードボイルド】シルダクビンボー! #言いたいだけ」
・シリーズ 玉子とじを追え! 】ト・ツ・ゼ・ン☆クレイジーソルト
・シリーズ】#断面に着目する ないし #誰が撮ってもおんなじシャシン
・シリーズ】タンタン麺のタンは担であって坦ではなく、旧字では擔である #冷徹な事実
・繰り返されるシリーズ】タンタンメンのタンは担であって坦ではなく旧字では擔である #冷徹な事実!
・シリーズ 喜劇とんかつ一代】をぢさんになってからの方が居心地の良い場所がある。
・ひさびさにシリーズ 「喜劇とんかつ一代」温故知新。
・シリーズ紋切り型】北の酒場
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私も シリーズ:うな重、シリーズ:かつ丼、シリーズ:イタリア、シリーズ:食事パン etc. と、いくつか編纂できる (ような) 気がするのですが、今回、寒い季節に合わせた「シリーズ: "鍋焼きうどん" のアタマで一杯」を チョット やってみます。
この日、母(満94)の誕生日に合わせてスープが少し冷める距離に住む息子家族を含め、それぞれが都合をつけて母の好きな「手打そば 車家」現地集合となりました。イタリアだと誕生日当日までお祝いの言葉を掛けたりプレゼントを渡すのは縁起が悪いと言われ御法度なのですが、日本の行事は前倒しになることが多いです。(ヨーロッパでは傘を家の中で開くことも禁じられ、店の傘売り場で広げる時は、わざわざ外へ出て試します)
料理については、添付写真とキャプションをご覧いただければ嬉しいです。
最近、この店の割烹はおいしくなったと感じます。一時期、『あれ、蕎麦打ち職人・料理人が変わったのかなぁ』と、思うくらい味にキレがなくなったことがあります。現在は、七十八歳を迎えた小川 修 店主が丹精込めて蕎麦を打ち、美しいお嬢さんが店を仕切り、店員の所作の隅々まで気遣いができています。訪れた四十年前の感動が更に高まり蘇りました。
"鍋焼きうどん" は、ツユが沸騰するまで煮込まれた状態で供されるところに蕎麦屋のパフォーマンスというか演出というか矜持を感じます。運んできた気の利く男性店員が蓋を取ると、たくさんの湯気が立ち上り、鍋の中ではツユがグツグツ音を立てています。この絶妙なタイミングを見計らって配膳するというのは調理場との連携がピッタリ合っていないと出来ません。しかも最高の状態で味わうことができます。"鍋焼きうどん" のアタマを小丼に移して冷ましながらいただく至福の時は、ゆっくり過ぎていきました。
皆さんは、この鍋を前にした時、何から箸を付けるでしょうか?
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今年食べた蕎麦の中で一番おいしかった!
蕎麦食いレビュー三連荘のトリを飾るのは「手打そば 車家」です。
(写真は iPhone SEにて撮影。次回は、描写性能の優れた Leica Q を持っていこう)
このそば屋を初めて訪れたのは四十年前のことです。古い店舗で食べた蕎麦の香りと少し味噌部屋の匂いの残る蕎麦汁の味を未だ覚えています。栃木県足利市の「一茶庵」片倉康雄氏に師事した若かりし小川修氏(1943生まれ)が、お内儀さんと一緒に店を切り盛りしていた頃です。多摩ニュータウンが大きく拓ける前でしたから、そこには長閑かな南多摩の田園が残っていて、四季折々、草木の匂いが味の一つになっていました。
参考:http://www.soba-udongyoukai.com/soba-sanpo/sougyou/2010_1209_kurumaya/2010_1209kurumaya1.html
その後、たくさんの訪問を重ねましたが、多摩市に築窯されていた陶芸家 辻 清明 氏と訪れたこともあります。
辻 清明:https://www.bunka.go.jp/prmagazine/rensai/diary/diary_038.html
【今回いただいた物】
・前菜 (季節の炊き合わせ) 宮城県へそ大根の煮物
・天ぷらうどん(母)
・きのこ盛りつけそば、みぞれ別盛り(私)
・伊吹だんご(私)
料理については、添付写真とキャプションをご覧いただければ嬉しいです。
長く通っているとお店の変遷を知ることになり、同時に料理の変化、味の揺れもよく分かります。店の HP をお読みいただければ 私がここに記す必要はないのですが、「食材へのこだわり」http://www.soba-kurumaya.co.jp/policy/ 、「石臼挽き自家製粉」http://www.soba-kurumaya.co.jp/jikafun/ に総括されています。と、言いましてもモノ・コトにはバラツキがあり、これを楽しむこともそば食いの嗜みです。
「今日の蕎麦は、今年食べた "蕎麦名店" の中で一番おいしい!」
今年、七十八歳を迎えた小川 修 店主が丹精込めて打った蕎麦は、ご本人も納得されたに違いありません。
美しいお嬢さんが店を仕切り、隅々まで気遣いができています。四十年前のお母様がされているように。
【追加】宮城県へそ大根
https://www.maff.go.jp/j/keikaku/syokubunka/k_ryouri/search_menu/menu/heso_daikon_no_nishime_miyagi.html
正しく引いた出汁のつゆが沁みた優しい味付けのおいしい煮物。これは、いいね!
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ソーシャルディスタンス仕様のテーブル配置だと料理を照らす電灯の位置が微妙にズレる
或る日、突然、トリノに住む孫娘が、
「Il nonno è calvo.」
子供は正直というか残酷であります。
言われるまであまり気にしていなかったのですが、ここ数年、急に頭頂部が寂しくなった キガシマス (©︎KYTさん)。白髪は殆ど無いので年齢より若く見られ、孫と嫁(長男の連れ合い)と一緒にいると「お父さんと一緒に買い物でいいね。」と、声を掛けられるのですが、この時を境に天井から照らす光を避けるようになりました。(笑
何処の店でもソーシャルディスタンスの配慮がされていて、間を開けた椅子の配置や駐車禁止マークが付けられています。こちら「手打そば 車家」の厩だった小部屋ではテーブルが移動され、間隔を確保していました。同時に白熱球とガラス製のランプシェイドも移動していただければ、「インスタ映え (死語)」するのですが、微妙に影が料理に掛かってしまい上手に撮れませんでした。
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料理については、添付写真とキャプションをご覧いただければ嬉しいです。
日本蕎麦屋で酒が飲めないというのは、楽しみが1/10になったようで寂しいです。その分、余計に食べてしまいました。
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老舗蕎麦屋「手打そば 車家」で饂飩をたべる
子育て中であり、今年は "外食" を三回しかしていない嫁 (長男の連れ合い) が「手打そば 車家」へ行きたいと言うので混ぜてもらいました。
何十回となく訪れているこの店で饂飩を食べたのは過去に一回しかなく、それは冷たい "胡麻たれせいろうどん" で、とてもおいしかったのですが、ワンシーズン限りで品書きから消えてしまいました。麺は、稲庭うどんのような細うどんでコシがあり、つるっと喉越しの良い仕上がりでしたので提供されなくなったことは、とても残念です。
今回いただいた "峠の力餅うどん" は、麺の形状が変わりました。
http://www.soba-kurumaya.co.jp/greeting/
うどん好きの母も「あら、麺が変わったのね。」といいながら "かけうどん" を啜り始めたのですが、私もまず、上に載っている力餅を食べてから、いざ、うどんとなって驚きました。それは、"縒れ" のない "細めの平打ちうどん" でした。
ペナペナとした食感は頼りなく、箸で持ち上げると絡んでしまい食べ辛いです。良い点としては、ツユの跳ねが無いことです。腰の強いカレーうどんなどを食べた終いには、ワイシャツやネクタイに黄色いシミが跳ねていることがあり、熱々の丼を口元まで運びながら食べなくてはなりません。
世代交代と時の流れと共に少しずつ変化しているこの店を良いと思う方も大勢いらっしゃることでしょう。
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一年半ぶりの訪問、器が新調されていた。
この日は、母の診察のお供です。
この歳(66歳)になっても「今日の食事代は、私が持つからおいしいものを食べましょう。」と言われ、間もなく満92歳になる母から一万円札をいただき、「お釣りはガソリン代にしてちょうだい。」と、二人の昼食代としては過分な金額を預かりました。鳩山兄弟ではありませんが、いつまで経っても私は、母の "こども" です。
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銀座でも浅草でも贔屓の店はあるのですが、この日は「久しぶりに車家の ”かけそば” を食べたい。」と、言うので八王子市越野までゆっくり車を走らせてきました。正午前にも関わらず、駐車場には20台ほどが入っていて空き待ち状態でした。相変わらずの繁盛です。
1986年(昭和61年)に会津只見地方の曲り屋を移築して現在の建屋になる以前、先代の小川修氏がこの地で創業した店を訪れたのは1972年(昭和47年)のことです。もう、47年間も通い続けたことになりますが、業態が少し変わり足が遠のいていました。車でも建築でも文化でも古いものに惹かれる私は、新しいものを追いかけて時代を先取りすることが苦手です。
【いただいたもの】
・かけそば
・限定 さらしなの生一本
・だし巻き玉子
・野菜天ぷら(茄子、サツマイモ、茗荷、ヤングコーン、パプリカ)
・本日の小鉢(生麩と無花果の胡麻だれ掛け)
揚げ物の好きな母ですが、「私はサツマイモを二ついただくから、あとは食べてちょうだい。」「だし巻き玉子も生麩も 1/4 で結構。そば寿司も食べてちょうだい。」となり、メニューを見た時には、「あれも食べたい、これもいいわね。」と言ってたのですが、年齢相応の量しか食べません。「せっかくだから oggeti、あなたがたくさん食べなさい。」というのは、親心です。
診察時に「今日、先生に少し太りましたね と言われ、息子がおいしいものを作ってくれるから元気です。」と、返答したとのことです。高齢になると腹六分目ぐらいが良いと言われますが、この日、私は十二分に食べてしまいました。
「限定 さらしなの生一本」は、蕎麦の実の中心部分だけを挽いた "さらしな粉" を使い、白く美しく仕上げたそばです。歯応えが良く、上品な甘みと香りが口に広がります。細麺ですから喉越しも良く、おいしくいただきました。
ただ、そばつゆは他のそばと同じであり、"かえし" から「さらしなの生一本」に合わせたものを作るという工夫が必要だと思います。「出羽の田舎切り」と同じそばつゆでは、"長恨歌" に書かれた玉肌の楊貴妃を芋洗するようなものです。私は、楊貴妃の脚先だけをそばつゆに浸して更科そばを手繰りました。おいしい!!!
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飲食店のPOSシステムについて考える
1972年(昭和47年)、先代の小川修氏がこの地で創業した古い建屋を私は訪れています。
1986年(昭和61年)、会津只見地方の曲り屋を移築して、店は現在の建屋になりました。
多摩地区では群を抜く蕎麦の旨さと小川氏の美意識の高さに引き寄せられ、私は足繁く通いました。
ひとつ感心したことがあり、それは注文の際に客の頼む品のメモを取らなかったことです。全て記憶し、その場で復唱し、調理場へ伝えてから伝票を書いていました。
「田酒を一合冷やで、猪口はひとつ。だし巻き玉子一皿、それから、せいろを二枚を先に持ってきてもらって、その後、こちらに温かい鴨南蛮を蕎麦で、私にはかけそばをください。」
一般的には、このようなことを言う客の目の前で注文請書に走り書きし、これを調理場へ通し、順番に従って拵えていくのですが、以前の「車家」ではアルバイトの店員でさえメモを取りませんでした。
新しい建屋になり、日曜日の昼には大きな駐車場に入りきれない車が、道路まで順番待ちの列を作るようになり、店は繁盛しました。今でもこの状況は変わらないのですが、小川修氏の息子に代替わりし何年か経った頃、POSシステムが導入されました。
何十年も通っているので店の変化は具に分かるのですが、蕎麦の味も決して一定ではありません。商売が拡大するに従い、小川修氏が全てを賄うことは不可能です。蕎麦職人も何人か替わり、その度に『?』と感じることがあったのですが、一定のレベルを維持するように修正され、元の味に戻ることに安堵し、次の訪問に繋がってきたのですが、一旦導入したPOSシステムは店の運営上とても便利ですからこれが廃止されることはありませんでした。
私は古い人間なので飲食店のこのシステムが嫌いです。『マニュアル通りに働かされている店員のファミレスじゃあるまいに!』と思ってしまいます。このシステムの最大の欠点は、客の顔(様子)が調理場に伝わらないことです。客の目の前でハンディーカムに入力してボタンを押せば無線で調理場へ指示が飛びます。順番に従って料理が作られ、レジの会計に至るまで間違いはありませんが、どこか余所余所しいのです。
現代人は、これに慣れていますので「便利でイイいじゃないの。」と仰る方がマジョリティーですが、私はこれを導入したから「味が落ちた」とハッキリ書きます。
「神田まつや」「並木藪蕎麦」「室町砂場」などここよりたくさんの客の我が儘な注文をこなしているそば屋でさえ、昔ながらの注文形態を維持しています。店主と仲居の長が、正しく店員を教育することが大切だと思います。
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さて、長くお付き合いしているレビュアー(お会いしたことはありませんし、個人情報を詮索したこともありません)は、最近、「鴨南蛮うどん」にご執心です。
『ならば、私めも』と思い、いつもは蕎麦で注文する”鴨南蛮”を饂飩に変えて頼みました。
手打ちでありますが、武蔵野うどんとは異なる”稲庭うどん”のような滑らかな麺です。
冷たい麺を温かいツユに二筋三筋浸して食べるのですが、片口に似せた陶器に注がれたツユは微温く、多分、事前に器を温めずに注いだと思われます。ここに冷たい饂飩を浸けたら一発で冷めてしまいます。『なんだコレは?』と悲しくなりました。途中で塗りの湯桶に入った蕎麦湯が運ばれ、これを加えてツユを温めましたが、今度は饂飩がのびてしまい、箸で持ち上げると塊になっています。仕方がないのでそのまま器に押し込んで解しながら食べました。
銀座カネボウビル最上階にあった「ベル・フランス」で食べた青首が忘れられなくて
をきなもするなる鴨南喰いといふものを われもしてみんとするなり
敬愛して止まぬ大先輩を翁などと表して誠に気が咎めるばかりです。
此処 と 彼処 の"鴨汁蒸籠”を召し上がられ、『ならば、私も』と思い、母を誘い、庭の”ミズヒキ”を見に行くと称し、”鴨南そば” を食べてきました。
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「鴨はフレンチに限る」それもジビエの季節に食べる青首(真鴨)が一番美味しいと決めている私は、京都の此処と紀尾井町の彼処以外では、好んでまで鴨料理を食べませんが、八王子のこの店は、”名物” 鴨南そばが美味しいと評判です。
今から40年近く前、銀座カネボウビル(現シャネル)の最上階に「ベル・フランス」というフレンチ・レストランがあり、私は、第一次フランス料理ブームに乗り、毎回ワクワクしながら足繁く通いました。当時、京橋の「ドゥ・ロアンヌ」、銀座の「レカン」、「マキシム・ド・パリ」、日比谷の「アピシウス」等でも舌を鍛え、朧げながら日本のフレンチを理解したつもりになっていました。就中、印象に残っている料理が、「ベル・フランス」の石神和人シェフが作った青首であります。
散弾銃の弾が二個も出てきたこともあり、「幸運です。」と、メートル・ドテルに煽てられ、確かに運気は上向いていたような気がしないでもありません。
胸肉のグリエ、腿肉のロースト。
初めて味わう内臓肉やガラの部分を専用のプレス機でつぶして血液や旨味を絞り出して仕上げた濃厚な赤ワインベースのソースに脳が混乱し、ワインで酔っ払っているのか分からなくなり、「命いただきます。」と神に感謝しながら味わいました。
鉄分を含んだ鴨特有の風味が堪らなく美味しいのですが、火の通し方が難しい料理でもあります。私は、血の滴るぐらい柔らかいロゼの鴨肉を2.5mmぐらいの厚さに切ったものが好きです。
***
さて、「車屋」の合い鴨は如何に。
写真をご覧いただいてお判りのように三種類の鴨肉が用意されています。
一つ目は、2.5mmより少し厚めに切られたものを両面を網で炙って別の小皿に載せたもの。(丼に一枚、計三枚)
二つ目は、鴨南そばの汁で煮たもの。(二枚、これは、少し締まって丼に沈んでいる)
三つ目は、鴨のツミレ。(柔らかい二個)
三種類の味わいがあり、実に巧みです。美味しい!!!
それぞれ歯応えが変化し、伴って私の脳は明確にこれを記憶しました。どれが良いとか良くないというのではなく、この鴨そばの食べ方を考案した初代店主の思いが伝わってくるのです。”名物”と冠した意味が分かりました。
炙った鴨肉には、粒マスタード。
唐津焼の丼の鴨肉には、小筒に入った山椒。
この変化がまた楽しいです。
南蛮(長葱)は、焼いているのではなく、汁で煮込んであり、五、六本入っていましたが、これにも其々に火加減の変化があり、暖かい丼物に合うように太めに打たれた蕎麦と絡み、趣を深くしています。
初秋とはいえ残暑厳しいと言ったほうが似合う天候でしたが、もう少し爽やかになり紅葉が進んだ頃になれば、一層、滋味深い”鴨南そば”を食べることができるのでしょう。これから春にかけて楽しみが一つ増えました。
「天ぷらそば探訪」中締め
(二回目のコメント)2016OCT.
「天ぷらそば探訪」もそろそろ「まとめ」ようかと思った時、『そうだ、車家、行こう。此処の天ぷらそば、一度も食べていないぞ。』と気付きました。
三十数年前の古い店舗で食べた蕎麦の香りと少し味噌部屋の匂いの残る蕎麦汁の味を未だ覚えています。一茶庵の片倉康雄氏に師事した若かりし小川修氏が、お内儀さんと一緒に店を切り盛りしていた頃です。多摩ニュータウンが拓ける前でしたから、そこには長閑かな南多摩の田園が残っていて、四季折々、草木の匂いが味の一つになっていました。
今日食べた季節の料理「芋煮」(900円)は、そんな南多摩の郷土料理の味がします。二十数年前、多摩の地主(農家)の囲炉裏端で食べた素朴な鍋料理を思い出しました。そこには裏山で採ってきたキノコや畑の里芋と一緒に蒟蒻や葱が入っていました。肉はよく覚えていないのですが、多分、鶏肉が使われていたと思います。秋の静寂の中で囲炉裏の炭が爆ぜる音だけが印象的でした。今の車家は、洗練された日本の伝統文化を感じさせますが、ルーツはこんなところにあるのかもしれません。
さて、「天ぷらそば」(2,200円) は如何に。(写真をご覧ください)
天ぷらが別盛りになっています。
手一束半の活き車海老二本、茄子、獅子唐、いんげん豆、しめじ、薄く切った里芋、何れも美味しいです。
長い間には、そば職人も何人か代替わりして、都度、変化を感じますが、今の職人は、蕎麦打ちも天ぷらも上手です。若旦那(小川修氏のご子息)の目が行き届いているのでしょう。
「かけ」の丼には、蒲鉾(鈴廣)と紅葉の生麩、椎茸の煮〆、三つ葉、柚子が載っています。(チョット入り過ぎ)
まずは、汁を飲みます。そして太打ちの麺を啜りました。温かいそばには、僅かな歯応えと良い香りがあり、粉挽きされた蕎麦を感じさせます。一本の長さは18cmぐらいでしょうか。少し短いと感じますが、太さがあるので丁度良く、食べ易いです。出汁で伸ばした汁も塩っぱ過ぎず、甘過ぎず、蕎麦との相性の良い温かい汁に仕上がっています。これに海老天を一本としめじの天ぷらを載せてみました。海老の大きさは、手一束半ありますので、見た目のバランスも悪くありません。暫く天ぷらには手をつけず、そばを啜りました。体が温かくなってきます。
丼の縁に寄せた衣の柔らかくなった天ぷらをしめじから食べました。しめじの香りがより立って、とても美味しいです。海老天は、一般的な天ぷらそばに施されている指でしごいて伸ばす工程がされていない天ぷら屋の海老天です。しかも活き車海老が使われていますので、尻尾まで殻が薄くて香りが良く、身の火の通し方も甘みが引き出される上手な揚げ方です。温かいそば汁であっても調理が進んでしまうことはありませんから、プリッとした食感はそのまま残っています。子母澤 寛の言葉で言えば「一見洗練されているが、良い蕎麦屋が持っている下手味(げてみ)を感じさせる美味しい天ぷらそばである。」
秋咲きの蕎麦の花が生けられていました。寒くなるにつれて一層美味しくなることでしょう。ご馳走さまでした。
***
(一回目のコメント)2014OCT.
1986年(昭和61年)、会津只見地方の曲り屋を移築して現在のお店になりました。
それ以前の古い建屋の頃から通っています。
私は海外へ行く機会が多いので外から自分が生まれた国の良い部分悪い部分について考えることがあります。
戦後、私達は押し付けられた憲法、教育、経済、文化に慣らされました。そして経済や政治、教育の実験場となったのです。奇跡的な経済復興を為しえたというプラスの面もありますが、逆に失ったものも多く、功罪入り乱れていると言えます。
食文化においても経済合理性を追いかけ儲かれば何をしても良いという企業が増えています。最近は消費者の見方が厳しく、コンプライアンスが重視されるようになり改善努力をしていますが、それでも私は、マニュアル化されたファストフード店やフランチャイズ店が好きではありません。
ここ車家は、蕎麦を食すると同時に日本の文化を味わうことのできる店です。
入り口の引き戸を開けるとそこは土間でした。いわゆる三和土(たたき)という赤土や砂利などに消石灰とにがりを混ぜて敲(たたき)固めた土間です。以前は、農家で使っていた土の成分が多い土間でしたので、雨の日に客が持ち込む水分によって削られ凸凹していましたが、数年前に現在の耐久性のある素材に変更され凹むことはなくなり、今でも古い豪農の風情を伝えています。このように隅々まで気配りができている店は、料理の味も美味しいに決まっています。
メニューの詳細は、ホームページでご確認ください。
私の好みは、かけそば、せいろ、鴨南そばです。日本酒の品揃えも整っていて好みの酒を飲むことができます。その日のお通しが付きますが、出汁巻き玉子で一杯やるのが一番好きです。季節の盛り合わせは、如何にも昔の家庭で出てきたチョット手の込んだ料理です。今回は里芋を柔らかく煮た芋汁でした。見た目より薄味に仕上がっていて出汁も飲み干しました。
感心することは、使われている食器類が日本文化を伝承している本物であることです。
普通の店では、大勢の客に供する食器ですから、割れ難い丈夫な物を使うのが一般的ですが、ここでは唐津、萩、美濃、織部、備前、黄瀬戸など柔らかい陶器が多用されています。丈夫な磁器もありますが、型物の工業製品ではなく職人が作った手作り品です。これらを扱う店の職人や給仕の人たちには、余程、教育が行き届いているのでしょう。物の良し悪しと扱い方が分からなければ、それを使うことは出来ません。その他、塗り物、金物、木工、掛け花、書に至るまで本物が使われています。ご主人の日本文化に対する造詣の深さを感じます。
蕎麦だけ旨い店はいくらでもありますが、東京にあってここまで日本文化を感じさせる店は貴重です。これからも私達に日本の伝統文化を伝え続けて欲しいです。
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oggeti209
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店名 |
手打そば 車家(くるまや)
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受賞・選出歴 |
そば 百名店 2019 選出店
食べログ そば 百名店 2019 選出店
そば 百名店 2017 選出店
食べログ そば 百名店 2017 選出店 |
ジャンル | そば、日本料理 |
予約・ お問い合わせ |
0426-76-9505 |
予約可否 |
予約可 ■コース料理 |
住所 | |
交通手段 |
京王相模原線「京王堀之内駅/南大沢駅」から 京王堀之内駅から1,342m |
営業時間 |
営業時間・定休日は変更となる場合がございますので、ご来店前に店舗にご確認ください。 |
予算(口コミ集計) |
¥3,000~¥3,999
¥2,000~¥2,999
|
支払い方法 |
カード可 (VISA、Master、JCB、AMEX、Diners) 電子マネー可 |
席数 |
70席 |
---|---|
個室 |
有 (8人可) |
貸切 |
不可 |
禁煙・喫煙 |
全席禁煙 |
駐車場 |
有 16台 |
空間・設備 | オシャレな空間、落ち着いた空間、座敷あり、バリアフリー |
ドリンク | 日本酒あり、焼酎あり、日本酒にこだわる、焼酎にこだわる |
---|
利用シーン |
こんな時によく使われます。 |
---|---|
ロケーション | 一軒家レストラン |
サービス | テイクアウト |
お子様連れ |
子供可 |
ホームページ | |
オープン日 |
1986年 |
備考 | |
お店のPR |
古民家の持つ優しさあふれる空間で、身近な自然食であるそばをお楽しみ下さい。
様々な健康食がブームになり紙面に取り上げられている昨今にあって、蕎麦は江戸の昔から庶民の身近な自然食でありました。車家では「体に良いもの」を第一に考えて蕎麦は元より、そば前の酒肴から甘味に至るまで原材料を吟味し旬を尊び、一つ一つお作りしています。また店舗は築150年の古民家を福島より移築。今では貴重となりました日本建築の文化漂う空間で、ゆったりと至福の時をお過ごし下さいませ。 |
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鏡開きを終えた正月中旬「紀ノ国屋 国立店」で今年の "買初" (かいぞめ) を終え、 La macchina のトランクにショッピング・バッグ(紀ノ国屋製 蝋引き紙袋) を積み込み、自宅に戻ろうとすると嫁(長男の連れ合い) が、嬉しそうに言いました。
「お義父さん、今日から子供たちの給食が始まるので午後二時に戻れば良いです。」
「それでは、お昼を食べてから帰ろう。信川円の冬の鰻、Pizzeria CROCCHIO のミエーレ(gorgonzola e miele ) はどうかな?」
「私、昨年末に食べておいしかった 手打そば 車家 へ行きたいのですが・・・。」
「いいですよ、ちょっと遠回りになるけれど、最近、車家は以前よりおいしくなったね。」
嫁(長男の連れ合い) としては家族第一の生活なのですが、偶に、このように舅にも付き合ってくれます。
私も妻も同じなのですが、「嫁は〜〜ならねばならない」「そうするべき」「こうあるべき」という "べき論" が存在しません。親に対しても、子供にも、孫にも、増して、嫁に対しても、夫に対しても、妻に対しても 人として対等な関係を保っています。
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