ラグメンは都内でも有数な美味い麺料理 : シルクロード・タリムウイグルレストラン

絶品のラグメンがここにあるとのことで、麺好きな当方としては確かめにゃ～ならんということで訪問。行き方としては新宿からの乗換えでは京王新線のホームがやけに離れており乗車するまで一苦労の上、初台駅からもそこそこ歩くので、新宿から歩いた方が交通費も浮くしさほど変わらないのでこちらをお勧めする。

店は2010年５月の開店なので昔ながらの地元に密着した店という訳ではないが、日本中においても新疆ウイグル料理を現地の味に近い形で食べれる。料理人は全てウイグル人と思われし面々。イスラム圏の香りがする。ウイグル独特の味を徹底して手作りしとあり、肉は羊、しかもマトンがメインのためそこそこクセや個性は大丈夫という方々でないと厳しいかもしれない。マトンの匂いやクセが堪らないという人にはウェルカムなお味であろう。

メニューをパタパタと見ていると、木耳卵炒めや水餃子等々中華料理のテリトリーにも足を踏み入れたラインナップもあり、馴染み易いのではないか。お目当のラグメンは店で職人が麺を打ち、手延べして作られている自家製麺。これだけでここに来た甲斐があるというもの。また、生ビールはジョッキも中身もキンキンに冷えていて、蒸したこの日のような陽気には大変良い冷え加減でよろしい！

ウイグル料理単体として初めて対峙した訳だが思ったより癖が少なくて馴染みの味もあり食べやすいなという印象である。基本的な味付けはトマトベースで料理により黒酢が加わる。ニンニクと唐辛子はさほど効かせない。なので突出した美味さと言うより円やかで優しい味わい。例えばマトンの串焼き(ズク・カワプ)などはクミンが効いたスパイシーな焼物だが、それ程赤唐辛子等調味料やスパイスを利かせている訳ではなくマトンが主役になるような風味の持ち上げ方なのだ。なので羊が苦手な人はちょいと食べるのは厳しいかも。旨味的に中華料理や先日行ったキャラバンサライのアフガン料理の方が日本人の口に合うかもしれないが、これはこれで中央アジアの古より伝わりし料理として味わおう。以下は当日食べた料理。

◉先付(枝豆、大豆、胡瓜、赤パプリカの辣油和え)
これはかなりどストライクな料理。これが一品料理でも十分に満足出来、毎回食べたいと思わせる味。

◉ゴシナン
マトンのウイグル風ミートパイ。ミートパイの源流のようなもの。この日の出来はイマイチで、テイクアウトで買って来たミートパイが萎れてレンジで温めたようなベシャッとした感じで脂切れも悪かった。結構マトン臭もする。生地がパリッとした食感であればマトンの風味や味わいも変わった見方も出来たかもしれない。重層的なリズムは奏でてくれなかった。

◉カザン トゥギリス(焼き餃子)
焼きというより揚げ焼き餃子。ウイグルのトルファン遺跡では餃子の化石が見つかったとかでルーツ的な物らしい。中の具はマトンと玉葱がメインでニラの辛味が味わいをアップさせており、癖のあるマトンとぶつかって別の味わいを醸し出していた。また、黒酢ベースの辣油ダレが餃子をさっぱり美味しく食べさせてくれる。他の料理にも応用が効いた付けダレである。

◉ズク カワプ(マトンの串焼き)
クミンと赤唐辛子が効いた切れのある一品。トルコ系の食文化のシシカバブにも似ている。しかし炭焼きでは無さそうで香りは今一歩か。

◉ムッチ コイゴシ コルミス(ラムとピーマンのトマトペス炒め物)
ラムと謳っているが、羊臭はマトン並み。後でメニューを見直して「ラムだったんだ？！」と声を上げてしまった。トマトペーストと羊の脂が柔らかい味を出している。輪切りのニンニクや唐辛子も入っていたが、あまりエッジを立たせていない。なので羊臭が気にならなければ普通に食べられる一品。他の具材はピーマン、赤パプリカ、玉ねぎ。

◉カザン カワプ(鍋カワプ)
わかりやすく言えば、ズク カワプの串焼きの味を鉄鍋で玉ねぎとニンニクで炒めた物。串焼きより味を立たせた味付けは当方は好きな味。中国某所で食べた東北部の哈爾寶料理のような羊の味わいと言おうか。

◉ベレンゲ コルミス(ジャガイモ細切り酢炒め物)
トマトベースに黒酢が加わり、羊料理の脂を切るのに最適な口直しの一品。ジャガイモはシャリっとサクっとして食感も良く。

◉タリム ラグメン(タリム特上あんかけ麺)
これこれ！これを食べたかったんだよぉ〜〜♪
現地の味を知っている友人曰く、限りなく現地に近い味だとのこと。歯応えが凄くゴワッとしているが、麺の表面は滑らか。薄力粉に油を混ぜて打たれているため口当たりも滑らかになるのだろうか。硬さはかなりあるが、同行者によると日によって硬さ具合が違うらしい。この硬さは讃岐を超え、名古屋の味噌煮込みうどんの名店山本屋本店のあのエッジの立った四角い極硬麺と肩を並べるぞ！それは嚙みしめる毎に小麦の風味が立ち、唾液と混ざり合うことにより甘味を感じていくこととなる。
上のあんかけは最初から掛かってはおらず、客のテーブルで直接掛けられる。味付けは上記の通りトマトベースのもの。麺が美味ければ、餡やスープは比較的優し目でも良いかもしれない。物足りないと思う人も少なからずいるとは思うが、味付けの好みだね。具材はピーマン、赤パプリカ、木耳、玉ねぎ、赤唐辛子、ニンニクと他の料理と同じようなラインナップ。

◉コルマ チョップ(切り麺炒め)
これはラグメンの麺を賽の目程度に切ったものを特製ソースで炒めた物。こちらにはニンニクの芽の賽の目切りが加わる。羊は極少量。黒酢も加わりさっぱりとした麺料理。こちらもかなり美味しい！

◉マロジニー(アイスクリーム)
バニラのアイスクリームで普通。イチゴジャムと干し葡萄(？)のような物が添えられている。

◉ダラキ ブジュリガン チャイ(キイイチゴの紅茶)
木苺の酸味が紅茶と交わり、食後感を良くする。量がかなり多目なのでシェアして飲むのが良い。

ここはラグメン、コルマチョップなど麺料理が突出して美味くて琴線をひいた。他の料理は思っていたより癖や臭気が無く難なく食べれたが、やや感動は薄い。それは味付けが先述している通り、どの料理にも共通しているので単調なため後半飽きてくるのもある。羊串焼きや鍋カワプを生ビールで一杯やって、麺料理を待つのが良いといのが正直な感想かなぁ(麺は4.5〜4.7、他料理は3.0〜3.3)。それでもウイグル料理という希少な食文化に触れるには価値のある店であることには違いない。