やはり山羊乳のバヴァロアは珠玉の逸品 : カンテサンス

奇しくもビストロ・ダルブル改めそば・だるぶるから僅か５０m〜
白金台にお店があった時から予約がとれない名店として名を馳せて
いましたが２０１３年８月に御殿山に移転してからもそれは変わら
ず・・白金台オープン２年後の２００８年から毎年ミシュラン東京
で三ッ星を取り続けて今日に至ります。最初に星を獲得した時なん
と岸田シェフは若干３３歳でいらしたという驚嘆に値する事実〜♬
ウエイティング・エリアには黒の L字革ソファー、枯れ木のオブジ
ェが載ったロー・テーブルの上にドイツ人照明デザイナー、インゴ
・マウラー氏の手に依るツェッツルが下がります。傘のようなイメ
ージで各国の言葉が書かれた短冊・・氏の作品はその名も ’紙切れ’
〜細長い廊下の左右に個室がふたつ、平日 ＠６：１５pm の先客は
お隣にカップル一組で新幹線で品川に着かれたばかりのようです。
７pm を過ぎるとお客様続々ご来店で７：３０pm には個室も含め
て満席となりました。全３０席〜スタッフは全員若者で６名ほどい
らしたでしょうか・・白いテーブル・クロスの上に御影石のプレー
トが置かれていて其処にメニューが載りましたが、中にあるのは〜
なぜメニューに何も書かれていないのかについてのシェフの見解〜
ムニュ・カルト・ブランシュ（白いメニュー）でございました！！

お任せ料理１３品のコースのみ（予約は２ヶ月前から〜順次受付）
予約日の一週間ほど前に電話が入り食材の手配に入る為、人数の変
更や時間の変更が生じた場合、前日までにご連絡いただけないとキ
ャンセル料が発生する旨が伝えられ食物アレルギーの有無と苦手な
食材があるかを聞かれました。予約の時点でも同じ質問があり、ど
ちらもないことを告げておりましたのに又ここで同じ質問をされ此
の期に及んで！もしあるとお答えになるお客様がいらっしゃったら
どうされるのかしら・・と思いながら前以て２回確認しているわけ
ですから３回目は不必要な、或る意味で準備不足故のやりとりのよ
うな気も致しました。基本的には丁寧ですがギクシャクした部分や
敬語の使い方に間違いが散見され洗練された接客には程遠い！！と
感じながら周囲を見渡しますと、お隣のカップルも含めて３０代が
圧倒的でサービス・スタッフも同年代、大声で話す若い男の子だけ
の３人組もいて個室A には６０代男性一名に２０代女性５名でスマ
ホ撮影大会、B には若い女性 x３〜店内はダーク・ブラウンを基調
にしたモノ・トーンでグレーの壁に絵画や写真はなく、ウォール・
ランプのような照明器具も一切なし、徹底したこだわりで ”お料理
だけに集中、専念してください” という無言のメッセージ・・それ
はそれでカンテサンスのスタイルですから尊重致しますが、BGM
もありませんので必然的に人の話し声が BGM になってしまうこと
と、お料理の合間に目に入るのが人間の服装やお食事マナーで〜そ
の日の客層がレストランのイメージを大きく左右することになりか
ねないリスクは回避のしようがないと（ワタクシは）感じました。

されど ’泣く子も黙る’ カンテサンスですから一品目の原木しいたけ
とセップ茸のビスキュイ〜ポルチーニのパウダー掛けの美しいフォ
ルムと繊細な塩の使い方に思わず溜息〜♬ ワインはポムロールの
シャトー・ラ・フルール・ガザン２００７年（￥１７２００）を選
択〜マダム・デルフール・ボルドゥリーと女性醸造家の名前が載る
エレガントなメルローは熟成感溢れるブーケと長い余韻で至福のデ
ィナーの始まり、始まり〜♬ 二品目は小さなグラスに入った高坂
鶏の皮と身が入ったスープにイタリアのグリーンピース！！ 春の
息吹を感じる逸品〜♬ 酸味が強いライ麦パンも非常に美味でクラ
ストが香ばしくクラムはしっとり〜メゾンカイザーでカンテサンス
用に焼かれるそう・・♡ 三品目がカンテサンスのシグネチャー、
京都の山羊のチーズに４種類のオリーブ・オイルをブレンドして作
る山羊乳のバヴァロア〜♬ 丸い器の中央に真っ白なクリーム、そ
の上に花びらのように散らされた百合根〜回りを鮮やかなオイルの
黄色が縁取り〜塩が振られています。岸田シェフはお塩にこだわり
のある方なのですネ！ トスカーナのオリーブ・オイルをかけて愉し
む塩味のジェラートを思い出しました。上から掬うとしょっぱいの
で下から掬ってください、とアドバイスがありましたが、どちらで
も全く問題なし。なめらかでクリーミーな絶品でございました！！

続く、ケーク・サレは温められた溶岩に載って登場〜♬ マッシュ
ルームと雲丹で飾られた華麗なビジュアルに改めて写真を撮れない
ことがとても悲しく・・ロワールのフレッシュ・アスパラの上に薄
いキクイモのスライスと黒トリュフが載った一品も美しく、重ねて
あるチーズは香ばしく、キクイモのなめらかさもハンパなく、どれ
だけの手間をかければこのような逸品になるのか・・フォアグラが
載ったブーダン・ノアールはソーセージになる前の段階のようなレ
アーさと仄かな甘みがあり、端正なビジュアルも含めてオリジナル
ティーが光る逸品の数々。お魚は赤ムツ、お肉は蝦夷鹿〜どちらも
絶妙な火入れで岸田シェフのプロデュイ（素材）キュイソン（火入
れ）アセゾネ（味付け）三要素の醍醐味を目の当たりに致しました。
志摩観光ホテルでフレンチの世界に入り２０００年に渡仏〜パリの
アストランスでスー・シェフを勤めて帰国した彼の信条は低温長時
間ローストだそうですが、蝦夷鹿の鞍下肉（牛肉ではフィレにあた
る部位）は３時間かけてローストしたもの〜スパイシーなチョコレ
ート・ソースで〜♬ 付け合わせのプティ・オニオンの甘いこと、
甘いこと、赤ムツの付け合わせは芽キャベツでしたが芽キャベツを
単にポンと置くのではなく、小さな葉っぱを一枚ずつ散らす絵画的
なアピールにまた溜息〜〜♬

デセールの前にチーズが１種類〜ロックフォールは羊乳で作られる
青カビのチーズですが牛乳のゴルゴンゾーラで。続くは中国福建省
の岩茶のソルベ〜♬ これが実に美味〜奥行きのある味わいで、続
くマスカルポーネのムースは香ばしく焼かれたカダイフにスコッチ
・ウイスキーを使ったソース、ウイスキー・ボンボンのような楽し
さがありました。そして熱々で供される丸いベイクド・チーズケー
キはアプリコットの香り〜♬ 有田焼のグレーが素敵ですネッ！ ベ
イクドと言っても中は半生で質感のあるチーズケーキではない岸田
ワールド、彼の名を不動のものにしたメレンゲのアイスクリームは
メレンゲを乾燥させて細かく粉末にしたものに牛乳と砂糖を加えて
アイスクリームにし、能登の海水を煮詰めたものをかけ冷凍庫に入
れずに作るものでもので最後までキーワードはお塩でございました。
なめらかでコチコチではない作り置きのできない ’岸田アイス’ 〜♬　
シャンパーニュ（ノーブル）で始まった今宵のディナーは奥の L字
ソファーで１３品〜♬ カプチーノで幕を閉じました。お会計は約
８万〜岸田シェフがお見送りに出てきてくださいましたがシャイな
方で終始無言・・若いとは聞いていたけれど、とご招待主。私も余
りにもお若い方で驚きました。フレンチの小さな巨人が巨匠と呼ば
れる日が来た時、彼のスペシアリテにはどのような逸品が加わって
いることでしょう〜〜♬