蕎麦打ちの思い : 蕎亭 大黒屋

　子供の頃は、お蕎麦などは、からきし興味が
なかったのですが、最近は、お蕎麦屋さんを良
く巡るようになり、有名なお店もいくつか知る事
ができるようになりました。行ったことがないお
みせを訪ねるのも楽しみとなり、こちらも、いつ
かは行ってみたいおみせのひとつとなり、つい
に訪問できてうれしかったものです。

　浅草浅草寺の北北西あたりに位置するこちら
大黒屋さん。浅草寺から、花やしきを横目に、
ひさご通り商店街をぬけて、言問通りを渡って
あさくさ千束通りをまっすぐ行くと、左手にダイ
マスのスーパーがある交差点を東に曲がって
80ｍくらいの所におみせがあります。

　以前伺った時は、お昼も営業されていたの
ですが、最近は、お昼の営業がなくなってし
まったそうで、週末の予約はむつかしそうだ
ろうと思い、平日の代休を使っていってきまし
たよ。

　18：00に予約でしたが、10分前に到着。外は
すごい寒い。しかし、開店が遅くなるときびしい
なと思ったのは杞憂に終わり、3分前にご主人
がお店を開け、通してくれましたよ。
　始めから良い出だしとなりました。

　暖簾を潜ると、風除室にベンチがあり、ピーポ
君が出迎えてくれます。
　まっすぐ土間の通路があり、右手に掘りごた
つのお座敷が4席、左手に小さいテーブル席が
2つ、奥側にお酒の冷蔵庫、さらに奥が厨房と
なっています。
　掘りごたつの中と、通路には電気ストーブが
あり、なんか冬だなあという心地がします。

　予習しておいた、いただきたいものを思い出
します。まずはビール中瓶600えん。エビス
です。扇子の品書もいただいて確認。
そばやきみそ600えん、そばがきの粗挽き1750えん、
せいろ天もり2250えん、おせいろ1250えんと、
ビールが終わったら日本酒をいただきたい旨
を伝える。ふう。予習どおり。

　他にもお客さんがいたので、ささっと注文を
済ます。着物で下駄をはいているおかみさん。
いろいろ時間かかっちゃってすみませんと言わ
れるのだけど、そんなに慌てないでいいですよ
と返す。初めから、時間はかかっても良いつ
もりでお伺いしたしね。一生懸命やってくれて
いるのは伝わる。人によってはお店に来てる
のに論外というかもだが、手を貸してあげたく
なる心情。他のお客さんも、なんかそんな感じ
でした。
　
　ほかのお客さんの注文もだいたい終わった
ようで、ビールを開けてもらう。座って30分く
らいかしら。鰻でも待つつもりでいればよいね
と、今日の出来事などを妻と話す。ビールを飲
み初めて、ほどなくして、そばやきみそが登場。
ほんのり甘みも感じる味噌に、ネギの風味も
程良く感じられておいしい。
　それから、5分くらい経って、そばがき登場。
これは、ご主人がもってきてくれましたよ。
妙高のお蕎麦だそう。全国で3か所くらい
しか使ってないお蕎麦との説明をもらいました。
とても丁寧な説明で、一生懸命作ってくれた
感じも伝わってきます。とてもねっとりした蕎麦
がき。あつあつのうちにいただく。漆器のへらが
お湯の入った陶器カップに入っているもので
いただきます。味付け用の醤油は出汁の効い
たもので、蕎麦がきを口に入れた後の余韻も広
がり、とてもおいしい。今までいただいた蕎麦
がきの中でも一番おいしかった。

　そして、蕎麦掻をつまむ頃に、ビールから
お酒に移ります。お酒は半セルフな形でいた
だく方式。
ちょこっと探すと、見たことのあるお酒発見。
「田酒　山廃仕込特別純米酒」700えんを二合。
おいしいおさけ。純米だけどすっきりした味わい。
　お酒のもらいかたを以下に記します。

・お酒をいただく旨をおかみさんに伝えます。
・冷蔵庫に一升瓶が入っていまるので、選びます。
・一升瓶には値札が付いています。
　　　（600えんくらいからあるらしい？）
・その値段は、一合分の値段です。
・冷蔵庫の横に計量カップがあるので、それ
　　で計ります。
・カップの真ん中へんくらいが一合。上の線が二合。
・カップで計ったら、一升瓶と同じ値札を下の
　　箱から探して、冷蔵庫横の自分の席番に掛ける
・二合の場合は、2こ掛ける。
・冷蔵庫にお酒を戻します。
・ビールの場合は王冠を席番のマグネットにつけます。
・お酒の呑み方で、入れ物が変わるので、
　　カップから適した入れ物をもらって注ぎます。
　こんなかんじ。

　蕎麦がきをつまみ終えて、田酒でしっぽり。
少しの間、お酒を楽しみ、そして天ぷらから、
出汁、お蕎麦と登場。あいかわらず、おかみさ
んは、遅くなってすみませんとおっしゃるが、こ
ちら的には、丁度食べ終えて、お酒を少しいた
だいてという、とても良い塩梅で提供されてい
ます。

　まず天ぷらは、茄子、かぼちゃ、ししとう、海老、
ふきのとう、しそ、舞茸。上品な色。外側はかり
っと揚がり、中はみずみずしい。海老は、とても
甘いおいしい品。つけ汁は、味は薄めだけど
出汁が効いています。

　そしてお蕎麦。出汁は、甘口濃口で鰹出汁も
強め。ねぎと大根おろしが薬味。大根が辛くて
良い薬味。
　細めの十割で蕎麦色。コシは一般的くらい。
丁度良い堅めなおそばで、喉越しも良い。
冷やし締めの温度差を良く感じれてます。
　長さも程よい長さで、短いのはないです。
量は少なめだけど、蕎麦がきは一人だと多い
ので、蕎麦がきを頼んで正解だったかしら。
蕎麦湯はあっさりめだけど、これだけいただ
いたので丁度良い感じ。

　厨房では、怒鳴り声がけっこうすごいご主人。
でも、お客にはとても温厚で親切なお人。
仕事が終わればおかみさんにも優しいのかしら。
　文句も言わず、おかみさんは丁寧に対応して
くれます。
　バックミュージック的なものは無く、おかみさ
んの下駄の音と、厨房でご主人のべらんめえ
な声が聞こえる。初めて来ると、たしかに「えっ」
と思う。ただ、云十年もこの形でやってこられた
ようで、その上でご主人の体調を労わる言葉を
説明から聞こえるような気がする。
　何より、提供される品と、対応はとても良い
ので、ここは、おかみさんを讃えることで、応援
してあげたいと思いましたよ。

またお伺いしたいです。

ごちそうさまでした～