ご兄弟の気持ちが隅々まで伝わっている佳店 : さ行

通常、新橋や高田馬場や新宿の飲み屋ばかりの私は、六本木などというところに行くことはめったにありません。
多分六本木駅に降り立ったのも２年ぶりぐらいかも。
そんな六本木でのオフ会にお招きをいただきました。
しかし、案の定店の場所がよく分からず、新国立美術館の前から路地に入ったところをうろうろしていると、同じ会にご参加のマイレビュアーさんに見つけていただき、なんとかたどり着くことができました。
お手数をおかけしましました。

引き戸を開けて予約の名前を告げると、「お待ちしておりましたこちらにどうぞ」と案内がありました。
この方がみなさんがレビューで紹介されている、接客担当の弟さんですね。
店内には、入口から４人掛けのテーブル席が２つに、奥にカウンター席が６席の計14席の小体な店。
花もきれいに活けてあって、隅々まで清潔感が行き届いているいる感じです。

全員そろってビールで乾杯。
料理は接客担当の弟さんが丁寧な説明とともに運んできてくれます。
説明がたいへん丁寧なので覚えきれないなあと思っていたところ、「メニューは後ほど印刷してお渡しします」とのこと。
この辺りもたいへん親切です。

本日の献立は、「弥生」という税別6,500円のコース料理。
この店は一つの席に一人の客しかとらず、料理もコース料理一種類のみとのこと。
「何時まででも結構ですのでごゆっくりなさってください」と、これまた温かいご対応です。

さて本日の献立は、先にレビューをアップされたご同席の方からその内容を拝借すると次のもの。

【八寸】
唐墨大根、鰤南蛮漬、生ハムの湯葉巻、まぐろ浅月のり巻、百合根チーズ、のし海老、鯛子らくがん、花びら空豆つや煮、穴子とホウボウの茶巾ずし、とり貝とこはだのメカブ三杯酢和え
蛤を模した器に盛られ、桜の一枝が添えられて季節感がいっぱい。
それぞれの料理もたいへん丁寧な仕事をしている様子がうかがえます。

【椀物】
桜蒸し、甘鯛道明寺巻、名残りとらふぐ白子湯葉巻
蓋を取ったとたんに桜の香りがワッと立ち昇ることが感動を演出します。

【造里】
鯛うす造り
ちょっと厚めに引かれた鯛は、からすみ塩・黄身醬油で食べるのですが、黄身醤油が未経験の美味さ。
残った黄身醤油のために、「ご飯ください」と頼みたくなったくらいです（笑）

【焼肴】
牛たん山椒焼のボリビア塩添え、　鯛かま酒盗焼のライム添え、銀鱈焼茄子包み
酒盗を塗って焼いた鯛かまの旨味が秀逸。
ライムを絞るとカボスやスダチよりも軽く爽やかな味わいとなる気がします。

【強肴】
のどくろと豆腐こしあぶら煎り出し、鰻けんちん巻香草カツレツ、ホタルいかと平貝の黄身酢かけうるい・せり・菜花添え
平貝がかなり立派なサイズ。
甘くて柔らか、黄身酢が甘さをさらに引き立てます。
のどくろと豆腐こしあぶら煎り出しは、のどくろと豆富とこしあぶらを揚げたものに醤油味の出汁餡。
この出汁餡がが素材をうまくまとめてます。

【煮物】
胡麻豆腐うぐいす仕立
表面がカリッとした胡麻豆腐に甘味のあるグリーンピースの餡がたっぷり。
胡麻よりもグリーンピースの勝ち(笑)

【食事】
白魚・竹の子・若布の柳川仕立、こんにゃくそば山形だしのせ、白御飯
白ご飯に柳川仕立てを好みで乗せながら食べます。
白魚はふっくら、竹の子はしゃっくり、薄味の上品な出汁を使った玉子とじになっていました。
もう少し食べられる方には、と出していただいたのは、ちりめん山椒ごはん。
このちりめん山椒も薄味で上品な炊き方。

【デザート】
かぼちゃプリン、いちごとカステラロールケーキ、四種のかんきつ白ワイン寄せ、桜のアイスクリーム、エスプレッソババロア
「最初は一種類を選んでいただいていたのですが、いろいろ食べたいという声にお応えして全部お出しすることにしました」とのこと。
これだけ出てくればどなたも満足でしょう。

酒は弟さんにもアドバイスしていただき、「澤屋まつもと純米」「黒龍吟醸いっちょらい」「ゆきの美人純米吟醸」「天狗舞純米」の４種を２合ずつ。
酒器も銘柄ごとに代えてくれるサービスぶり。

さらには、鯛の頭の身を使ったという鯛めしのおにぎりと、食事にだしていただいたちりめん山椒をお土産に頂きました。
この鯛めしのおにぎりにはうちの奥さん大喜び。
「美味しいねえ」といって４個中３個を平らげられてしまいました(笑)
薄味に炊かれたちりめん山椒は翌日のご飯のお供になったことは言うまでもありません。

料理はいずれもきちんと手をかけたものばかり、これはお兄さんの技。
その料理を美味しく食べさせるのが腰の低い丁寧な弟さんの接客。
最後はお二人でお見送りに出てきていただきました。
お土産までいただいて10,000円しないというCPにも大満足。

当然のことながら予約するのはたいへんだったそうです。
企画していただいた幹事さんには心より感謝申し上げます。
併せてご一緒いただいたレビュアーさんにもお礼申し上げます。
めったに来ない六本木でたいへん充実した夜を過ごさせていただきました。
ご兄弟の目が行き届く、このくらいの規模がいいですねえ。