銀座の鮨屋 : 銀座 鮨青木 銀座本店

7月。
文月。
折からの猛暑は一休みしたのか、この日東京の都心は拍子抜けするほど過ごしやすい1日となった。
私とツレの二人は銀座に来ていた。
2丁目にあるブティック。
南アフリカ共和国、ヨハネスブルクに本拠を構える資源メジャー。
地球上から産出される
化学式Cの元素鉱物資源を事実上支配する、この巨大企業に於ける販売部門の東京本店。
そこで、私はツレとの記念日の贈り物として「永遠の輝き」を買い求めた。
ツレのとびきりの笑顔。
何よりも素晴らしい事だ。
記念日を心に残る記念日として、完成させるための演出にはプレゼントはもちろんだが、
メシもまた大変重要である事は男なら周知の事実だ。
そこで私が選んだのは、ここ「鮨　青木」。
銀座に本店を構え、星を取った事のある鮨屋。
説明不要の高名な店。

エレベーターで2階へと上がる。
暖簾をくぐり、店の中へ。
左手に進むと美しく磨かれたカウンター席。
予約の名前を告げると、真ん中あたりの席へと促された。
一流の店らしい凛とした空気感を感じる。
店舗入口から一番奥のつけ場に、この店の主である青木利勝氏が包丁をふるう姿。
おしぼりがさっと用意される。
「お飲み物は何にしましょう?」とお弟子さん。
瓶ビール・エビスをお願いした。
お弟子さんがグラスへと注いでくれる。
二人とも、お昼のおきまりであるにぎり「松」8,400円をお願いした。
こちらは、にぎり１１貫と巻物、玉子からなるメニュー。
入口に近い方に立つ、この店の２番手さんが我々の対応をしていただけるようだ。

鮨の内容は写真をご参照ください。

おきまりの他にお好みで幾つかいただいた。
「美味しいね」
ツレもここを気に入ってくれたようで嬉しい。

銀座の鮨屋は、ホステスさんによからぬ妄想を抱いて打算的に食べる。
のも、もちろんありだと思うが、
やはり大切な人と一緒に来て、素晴らしい鮨を堪能するのが一番だと感じる。

さて、握る所作はさすがに名店。
２番手さんといえども、流れるような手つきでにぎりが完成する。
思わず見とれてしまう。
時にぽろっとする事もあるが、ご愛嬌、緊張しているのかもしれない。
私達のお隣に外国からのお客様。
この板前さんが英語で対応している。
なかなか大変だ。
カウンターとつけ場との境の仕切り板、(とでも言えばいいのか)が低いので
板前さんの手元がよく見える。
良く手入れされた包丁に銘が入っている。
その動きに見入れば、ちょっとしたライブショーだ。

ネタは東京で一番と言う訳ではないが、きちんと仕事をなされていることを実感できる。
江戸前寿司の基本の仕事をきっちり押さえながら
時に岩塩を使ってネタの味に変化を付けるなど、
時代の変化やここ銀座という土地柄にも対応しようとしているようにも見受けられる。
シャリは程良く酢が効いて、人肌。
好ましいと感じる、私好みの握り。
煮切り、ツメとも好みの味。

堅苦しさを感じさせない雰囲気、接客もなかなか気に入った。
お弟子さんたちがもう少し動いてくれるといいなと思うこともあるが。

ツレが「また来たいね」と言ってくれた。
今日の記念日は合格だ。
大満足で店を後にした。
エレベーターを降りながら、
何カ月か前、ネット上を賑わせた著名なハンディキャッパー氏と某イタリアンレストランのいさかいを思い出す。
この店なら、しっかりした対応をしてくれる事だろう。
ベビーカーは果たしてどうだろうか・・・

さて、これを読んでくれている一定年齢以上の読者の方なら、この後、
「ホテル西洋銀座で飲み直さないか、ドンペリを部屋で冷やしてあるんだ」とか
「帝国ホテルで美味しいデザート食べないか、ルームサービスで」とか
言った覚えのある方も多いだろう。
世の中がずっと明るく光り輝いていた時代、幸せな日々。
そういう時代もあったなと思いながら、私はタクシーを拾い家路に着いた。

★ランチタイムのにぎりは3,150円～8,400円まで。
他にちらしと鉄火丼。
写真をアップロードしている時に気付いたのだが、数が多い。
サービスしていただいたのかもしれない。

若干気になった点は、電話予約時の対応。
いささか名店とは言い難い。
この点はしっかり改善を希望したい。

最後に私はこちらのご主人に握ってもらえなかった事を残念だとは思わない。
一見客と常連客を区別することに批判はあるとは思うが、それは致し方ない事だと考えている。
商売の経験が有れば、それはごく普通の事だと受け止めるのではないだろうか。
とんでもなく潤沢な資金で回している店ならともかく、
今日どんな店であっても厳格に原価計算と適正利益を考えて経営しているはずだ。
であるのなら、いつも売上と利益に貢献している常連を優遇するのは自然なことではないだろうか。
特にその店の看板、主力商品が一人の料理人、一人の板前さんによるものであるのなら。
ご主人に握ってもらえるようになるまで、通って通ってそれなりの金額を店に落として
初めてその栄誉に浴する事が出来る。
そう思っている。