『北インド料理はおいしいけれどオイリーでくどい、その嘘、ほんと?』ジュリアス・スージーさんの日記

Eat for health,performance and esthetic

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ジュリアス・スージー (男性・東京都)

日記詳細

00年以降、東京のインド料理屋の充実と発展はすばらしく、
かつてのように、チキンカレー、マトンカレー、キーマカレーに、
ナンとタンドリーチキンをふるまう、
パンジャブ料理を簡略化した料理をふるまう店「しか」なかった時代が、
まるで嘘のようです。




なぜ、東京に、パンジャブ系のお店しかなかったの?
そこには1947年のインドパキスタン分離独立の悲劇があって。
ご存知のとおり、大英帝国による植民地から独立するため、
一方にガンディー、他方に武装闘争を辞さない過激派たちもいて、
さまざまな曲折を経て、1947年インドは独立を果たし、
独立と同時に、ムスリムの国としてパキスタンが誕生し、インドから独立。
しかも、パンジャブ州は両国の領土にまたがるがゆえふたつに切り離され、
パキスタン側とインド側に分かれてしまって、当時は大混乱、
このときインドを離れ、難民として海外に出た人が多く、
こうして、世界中のインド料理は、パンジャビ料理が大半になったのでした。






他方、00年代、店の数こそ少ないものの、南インド料理店がどんどん充実しています。
ミールス、そしてテイファン類、なるほどそれは北インド料理とはまったく違った魅惑の世界です。
武蔵新田南印度ダイニング ポンディバワン、
大森ケララの風2、
東陽勝田台 葉菜、  
武蔵小山インディアン チャイ ハウス、
そして、銀座アーンドラダイニング&御徒町アーンドラキッチン、
スパイスマジック カルカッタ 西葛西南口店。




00年代前半に、南インド料理のおいしさを体験した人たちは、
いくらか判官贔屓の傾向があって、
なにしろ、星の数ほどあるインドレストランのほぼすべては、
北インドパンジャブ料理の簡略版をふるまう店ばかりだったなかで、
数少ない南インドのミールス(盛り合わせワンディッシュプレイト)を愛するあまり、
星の数ほどある北インド料理店の料理はたしかにおいしい店もあるものの、
ただしそのおいしさはオイリーでくどい、
対照的に、南インド料理は、素朴で、かろやかな食べ心地、
野菜料理が中心ゆえ、健康的、ナンはなくともごはんがおいしい、
とアピールにつとめたもの。



では、果たしてほんとうに北部インド料理はおいしいけれどオイリーでくどいかしら?
なるほど、パンジャビレストラン料理にはいくらかそういう傾向がないこともない。
もっともそうはいっても、たとえばシターラ表参道本店をはじめ、
名店のパンジャビ料理は、すばらしくおいしく、仕上がりもけっして重過ぎはしない。
しかも、たとえばベンガル料理や、ムンバイ料理についてはどうだろう?
そうかんたんには答えられない。
いずれにせよ、答えに先立って、ひとつ言えることは、
実は、さきほどの比較にはいささか問題があって、
なぜって北部インド料理はレストラン料理をひきあいに出し、
他方、南部インド料理は、家庭料理をふるまう定食屋料理をひきあいに出していること。
そこが、いくらか不公平なんだ。





北部インド料理は、インド以外の世界中でいくらか誤解にさらされていて、
そもそもインド人は、チキンカレー、キーマカレー、マトンカレーといった料理名は、
簡略化した外国人向けの料理名で、インド人はけっしてそんな略称で料理を呼びません、
かれらはもっと細分化した料理名で呼びます、
たとえばチキンカレーで言えば、チキン・ド・ピアザ、チキン・カダイ、
チキン・バダミ、チキンティカマサラ、チキン・モグライ、チキンカストリ、チキンムルタニ、
チキンブナ、チキンハイデラバディ、チキンサグワラ・・・・きりがありません。
もっとも近年は、現地の北インド料理をふるまうお店も増えて、
たとえば表参道SITAARA本店のディナータイム、
スワガット インディアンタパスバー 六本木店、
ゴングル南青山店のア・ラ・カルト、
世界でいちばん炊き込みごはんビリヤニに特化した御茶ノ水小川町シャヒダワット、
はたまた北も南もふるまう、御徒町ヴェジハーブサーガ。
たしかにどこも、いくらかはオイリーだけれど、
けっして、くどくはなく、すばらしくおいしい。



他方、南インドの名店であってなお、
たとえば、銀座&御徒町のアーンドラダイニングとアーンドラキッチン、
スパイスマジックカルカッタ西葛西南口店のおいしさは、
けっして軽くなく、むしろリッチに重めのおいしさ。



さて、そんななか、リアル北部インド料理をふるまう、
西葛西で西インド家庭料理の定食屋のレカ、
そして、ベンガル料理をふるまう、町屋Pujaは、貴重です。
なぜって、パンジャブ系以外の北部インド料理をふるまうお店はほんとうに少ない。
両店の料理を召し上がった人はおもうでしょう、
あ、あああ、北部インド料理って、
けっしてオイリーでくどいばかりじゃなかったのね、って。





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