『ネパール料理について知っていると便利なこと。』ジュリアス・スージーさんの日記

Eat for health,performance and esthetic

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ジュリアス・スージー (男性・東京都)

日記詳細

東京のインドレストランは900軒にものぼり、
推定ではその9割近くはネパール人によるもの。
インドとネパールはパスポートも要らないし、
インドはヒンドゥーが多数派の国だし、
ネパールもまた、水牛を食べるとはいえ、
ヒンドゥー教徒が多い。
われわれ外国人にとっては、
インド人もネパール人も見分けがつきません。
また、ネパール人もインド料理を学んできている人が多いゆえ、
まじめで上手な料理人はひじょうにレヴェルの高いインド料理を作り人もいます。
インド料理と言ってもさまざまな地域様式がありますが、
ネパール料理にはたしかに、スパイス料理として似たところも多いとはいえ、
まったく別の世界であることに気づきます。







ネパールは険しい山々に囲まれた高台の国。
長らく王様の国であり、首都はカトマンドゥー、
浅草みたいの気さくな京都、そんなイメージでしょうか。
ネパールはフランスや日本以上に首都と田舎の格差が大きい。
民族も多彩です。



さて、ネパール人はどんな料理を食べているでしょう。
インド各地には、盛り合わせ定食のワンディッシュプレイトがあって、
ターリとかターラとか呼んだり、あるいは南インドならば、ミールスと呼んだりします。
カレー数種、炒め物、揚げ物、チャパティあるいはごはん、チャトニ、ヨーグルトなどが並びます。
ネパールで、それに相当するのが、ダル・バートで、
ダル(豆のスパイシーポタージュ)とバート(ごはん)、
そしてタルカリ(野菜炒め、インドふうに言えば野菜のサブジ)、
アチャール(おつけもの)で構成されます。
ダルは、インドの家庭料理のダルとそれほど違いはないものの、
おだやかで、ふっくらした優しい味わいがあり、
仕上げに、クミンをローストして香りをつけた油で、香りをまとわせてあります。
(この仕上げをテンパーリングと呼びます)。
また、ごはんの炊き方ひとつとっても、
インドでは、スパゲッティのように茹でますが、
他方ネパールでは、日本と同じように、炊きます。
あるいはガーリックライスの場合は、炊いた後、
(黒く焦がした細かく刻んだガーリック片とともに)炒めます。



またネパール料理にはアチャールが欠かせず、しかもアチャールは多彩、
ひとことで言えば漬物が多いのですが、そうとも言い切れません。
アル・コ・アチャールは、じゃがいもを茹でて、
そして黒ゴマ、クミンパウダー、コリアンダーパウダー、ターメリック、チリパウダー、
山椒、塩に30分ほどマリネしたもの。



アル・カック・アチャールは、
茹でたじゃがいもに、キュウリを混ぜて、
アル・コ・アチャールと同様のスパイスで30分ほどマリネしたもの。


ミックス・アチャールは、
野菜はすべて拍子木切りで、塩、クミン、コリアンダー、チリパウダー、
ゴマ、そしてレモンジュースに、30分ほどマリネしてある。


ゴルベラ・コ・アチャールは、数あるアチャールのなかでも例外的な一品で、
モモ(=ネパール小籠包)のディップとして添えられる。
フライパンで、カットしたトマトを、ニンニク、生姜、クミンと一緒に炒めて、
ピュレ状に仕上げてある、スパイシー・ディップです。
酸味にゆたかな奥行き感が生まれて、まろやかにおいしい。


ピアズ・コ・アチャール(タマネギのチリソース和え) は、
湯島のデリーのタマネギのアチャールの系統、
ただし、こちらはもっとタマネギのカットが大きい。
レッドチリの辛味をまとった、タマネギがシャキシャキしておいしい。


ムラ・コ・アチャールは、なぜか、大根の糠漬けをおもわせるものの、
でも、じっさいは、拍子木切りの大根を、
ゴマ、クミン、ガラムマサラ、
コリアンダーパウダーのぬめりをともなったものに、マリネしてある。
ネパールのあずまやの、田舎くさいおいしさ。
(いくらか好き嫌いが分かれそうな味かもしれません)。








つづいて一品料理にはどんなものがあるでしょう。


マトン・チョエラ は、
肉を煮てから、スパイスにマリネしてある。


ブトゥワ、肉と野菜の炒めもの。


ネパールは冬に野菜が少なくなるゆえ、夏場に、野菜を干して、
2週間ほど壺につけ、乾燥保存野菜グンデュルックを作ります。
そしてこのグンデュルックを使ったスープも、グンデュルックと呼びます。
ダルバートのダルを、グンデュルックに差し替えて、いただいたりします。


パンケーキのウォー。


また、ネパールには、
もともとは中国料理由来ながら、長い歳月のなかで、
すっかりネパール化した料理も多い。
なにしろお隣は四川ですからね。



たとえばチリチキンあるいは、チキンチリは、
鶏肉をタマネギとチリソースで炒めたもの。



チョウメン炒麺は、チャーハンが炒飯であるのと同様、
中国語がそのままネパール語かしたもの、やきそばです。


トゥクパは、ネパール汁そば、汁はもちろんホットでスパイシーです。


そしてなんといってもモモ、ネパール小籠包です。
ネパールには、モモだけをふるまう軽食屋が星の数ほどあるとか。
蒸したモモを、トマトベースに辛味を効かせたディップ、
ゴルベラ・コ・アチャールをつけて食べるものが有名ですが、
ただし、他にも、
チリ系のホットなスープでいただくスープモモ、
はたまたフライモモまで多彩なヴァリエーションが揃っています。



まだまだきりがありませんが、
ざっとこのくらい知っておけば、メニューを読んで、
料理選びに苦労はありません。



そのインド料理屋のメニューに数品でもネパール料理があれば、
その店がネパール人経営であることはほぼまちがいありません。
ただし、興味深いことは、ネパールを代表するワンディッシュプレイトの、
ダルバートは家庭料理で、もともと主婦が作るものであり、
どちらかといえば、定食屋料理です。
他方、ネパール男の料理人は、おかあさんからではなく、
レストランで料理を覚えるゆえ、
インド料理は上手でも、ダルバートは作れない、
そんなネパール料理人も少なからずいます。




もっとも東京にネパール料理自慢の店も増えました、
東京を代表するネパールレストランは品川レッサムフィリリ、
他方、定食屋・家庭料理系では、
小岩&新宿サンサール、池袋 味家、千駄木ミルミレなど、
いずれも女性オウナー料理人の店です。
もっとも、渋谷ネパリコや、その他、いくつかの店では、
男の料理人がおいしいダルバートをはじめ、
多彩なネパール料理をふるまい、
だんだんそういう店も増えつつあります。



ネパール料理、おいしいですよ、
まだインド料理しかご存知ない人は、ぜひ。
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