『浮世絵 六大絵師の競演:①ブロガー内覧会 プロローグ 藤澤紫先生 登場!』コロコロさんの日記

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50周年を迎える山種美術館では、第2弾の特別展として、
「浮世絵 六大絵師の競演―春信・清長・歌麿・写楽・北斎・広重―」が開催されています。
それに伴い、いつものようにブロガー内覧会が企画されていました。

今回は、藤澤紫氏が特別ゲストという案内があり、
これは、絶対に参加せねば・・・・と思い参加しました。

以下は、直接、今回の内覧会とは関係がない話なのですが、
藤澤先生との出会いと、これまで浮世絵を目にしてきて、抱いていたいろいろな疑問。
その疑問の解決の陰に、藤澤先生の存在がありましたというプロローグです。

今回の内覧会でもまた、新たに以前から抱えていた疑問が、
藤澤先生によって解決しました!



■國學院大學にユニークな先生
浮世絵に関する講座を受けた時の講師が藤澤紫先生でした。
國學院大學にはとても素敵な先生が、いらっしゃるのだなぁ・・・と思っていました。
まるで講座がエンターテイメントでも見ているかのような構成
この先生、何者?(笑) って思ってしまうくらい・・・・

そして先日、そごう美術館で行われた「国吉康雄展」の企画者、
才士真司氏も、岡山大学の准教授と聞いて、そのキャラクター性に、
ビックリしてしまいました。

また、山種美術財団 評議員・山種美術館 顧問・明治学院大学 教授の
山下祐二先生もしかり・・・

最近の学者、研究者、教授という方たちは、
個性豊かでビジュアル的にも楽しませていただける方が
多くなりつつあるのかなぁ・・・なんて思っていたのでした。


すると、今回、またもや藤澤紫先生が、山種美術館で解説をなさるという朗報。
これは、期待もふくらみ、赤い糸で結ばれている! 
と勝手に思ってしまったのでした(笑)


ちなみに、藤澤紫先生の講座を知るきっかけとなったのが、下記の講座でした。

  ○江戸文学の世界 ―江戸戯作と庶民文化―國學院大學学びへの誘い (2016/07/24)


江戸時代の浮世絵を見ていたら、
とても小さく細い文字が描かれているものを目にしました。
その文字はどうやって彫っていたんだろう・・・・という素朴な疑問。
調べてみたりするのですが、イマイチ、よくわからないのです。


この講座は、江戸文学に関する講座だったので、
製本した本は、版を作っていたはず。
細い文字の彫り方が、この講座を通して何かわかるかも・・・・
と思って参加したのでした。


以下、簡略に説明すると
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「草稿」といわれる、ラフに書かれた下書きのようなものがあり、
それをもとにして、印刷のための絵と文字を、
絵師と字を清書する人(筆耕)が、清書(浄書)したものが「版下絵」です。
この「版下絵」を裏にして「版木」にのりで直接張り付けると逆さ文字となり、
その状態で、上から彫っていくということがわかりました。
ーーーーーーーーーーーーー

版下絵は、版木に糊付けされて、一緒に彫られてしまうため残りません。
版木に彫られずに残った和紙も、取り除かれてしまいます。

そのため絵や文字が描かれた下書き状態のものが一切、何も残りません。
そのため、版木に直接、版木に逆さ文字の下書きをして彫っていたのかな?
と思ってしまったのでした。



■多色ずりの位置合わせ  版木の彫りを合わせるのは?
細い文字の彫り方はわかりました。
しかし、多色刷りとなると、違う色の板を何版も重ねます。
擦る時の位置合わせは、どうやっているのか・・・・それも疑問でした。

そして、問題は彫り師です。多色刷りの版木を、色の数の枚数
寸分の狂いもなく彫らないと、重ねた時にずれてしまいます。
どんなテクニックを駆使したら、そんな芸当ができるのか?
いくら想像してもしきれないのでした。


國學院大学のHPを見ていたら・・・・・

  「体感!浮世絵摺り実演・体験会」 を発見!

この講座に参加したら、擦り方、彫り方の謎がきっと解けるはず。
実演を見れば長年の謎がわかるだろう・・・・・と期待し、
摺り実演の見学だけをさせていただいたのでした。


この講座の冒頭で藤澤先生がご挨拶をされていたのですが、
山種美術館のブロガー内覧会で、
財団法人アダチ伝統木版画技術保存財団評議員をされていることがわかりました。
この時のデモンストレーションは、アダチ版画の方たちがいらしていたので、
その関係もあったのだとあとになってわかりました。

  写真は、アダチ伝統木版画技術保存財団の摺り師による
  葛飾北斎「冨嶽三十六景 神奈川沖浪裏」摺り実演の模様です。

  版木には「見当」と言われる直角のガイドがあり、
  それに合わせてすることでずれをなくていました。
  ネットで調べるとそれはわかるのですが、あんな程度のガイドで、
  ずれることなくすることができるものなのか不思議でした。

  さりげなく見える作業でしたが、和紙のもち方、おろし方に始まり、
  その日の天候湿度によって、紙や版木の収縮なども考慮しながら、
  刷っていくという熟練の技術が集結しています。

  (今は、空調が効いた部屋で行うので、昔ほど湿度などに左右されなく
   なっているそうですが、出張デモンストレーションの時などは、
   経験と勘が必要とのこと。)
 
  また絵具の量も、多すぎず、少なすぎず、彫った溝には
  入り込まない絶妙な量をたらして広げているのだそうです。
  最初、ブラシは、広げる役目と、溝に入り込んだ絵具を吸収するという
  両方の役割を担っているのだと思っていたのですが、
  溝に絵具は、入り込んでいませんでした
  ブラシの毛の固さによって、広がり方が変化するようです。


  (摺りの写真掲載については、取材日記に準じる形であればOKと
   藤澤先生のご了解をとりました)


 大学の取材日記でも、様子が紹介されています。
   ○体感!浮世絵摺り実演・体験会



■講座三昧の一日
さらに、その日は、ミュージアム連携事業で
「夕涼み浮世絵講座 怖い浮世絵 涼しい浮世絵」
同日に行われていました。せっかくなので引き続き参加しました。

午前中は、山種美術館の
「江戸絵画への視線―岩佐又兵衛から江戸琳派へ―」のギャラリートークに参加し、
午後から「体感!浮世絵摺り実演・体験会」、そして
夕方から「夕涼み浮世絵講座」とちょっとつめこみ状態。
最後の講座の前半では、キャパオーバー状態で、
情報はオーバーフローしていき、コックリコックリ状態。


ところが、後半の講師の美声に目が覚まされ、頭がパッとクリアになって、
すんなりと講座の内容が入ってきました。

その講座が「夕涼み浮世絵講座」の「涼しい浮世絵」の講師で、
藤澤紫先生だったのでした。

「体感!浮世絵摺り実演・体験会」体験の冒頭でもご挨拶されており、
藤澤紫先生のお声は、それはそれは美しい声で、
鶯の鳴くようなといえばいいのか、ナレーター、あるいはアナウンサー、
いやそれ以上の心地よい美声が耳に届き、
この方は、大学の先生ではなくタレントさん? あるいは役者さん? 
と思ってしまうような新鮮な印象でした。

「涼しい浮世絵」の講座では、「赤」が入ったワンピ―スをお召になり、
講座のテーマの一つ「怖い浮世絵」の「血」とからめて紹介されたりと、
一種のショーを見ているかのようでした。


詳細はこちらで紹介されていますが、
  ○夕涼み浮世絵講座 怖い浮世絵 涼しい浮世絵 (國學院大學取材日誌)


わかりやすくポントを押さえた内容で、
浮世絵はそういう見方あるのか、そういうまとめ方があるのか・・・・と
興味深く拝聴することができました。



終わってから、「藤澤紫先生」って何者なんだろう・・・と、気にかかっていました。
きっと、ただの大学教授ではないはず・・・(笑)
もともとは役者志望だったとか?(笑)
メディアにいろいろご出演されていらっしゃるとか・・・・
そんなことを思っていたら・・・



■山種美術館での再会
山種美術館のブロガー内覧会で解説をされるというめぐり合わせに遭遇。
これもきっと何かのご縁なんだと思いました。

講座を受講後、どこか気になっていた藤澤紫先生が、
今度は、これまで参加していた山種美術館のブロガー内覧会でご説明をされる・・・・



■呼び戻し
長い前置きとなっておりますが、まだ続きます(笑)
前回の山種美術館の企画は、「江戸絵画への視線―岩佐又兵衛から江戸琳派へ―」でした。
ずっと内覧会は参加していたのですが、都合がつかず、
この時だけ、参加できなくなってしまいました。

ところが、一般向けにもギャラリートークが行われていて、
一部ですが写真撮影もOKの対応となりました。

  ○江戸絵画への視線―岩佐又兵衛から江戸琳派へ―
     ①《秋草鶉図》酒井抱一(ギャラリートーク) (2016/08/19)


実はこの時に思ったのが、ブロガー向けの内覧会に参加しなくても、
ギャラリートークの日でも、充分、楽しめるということでした。
一部の写真撮影もOKになったので、
次回からは、無理にブロガー内覧会でなくてもいいかな・・・と思っていました。
内覧会は時間が限られてしまうので、見たいところを充分見ることができません。
しかしギャラリートークのある別の日なら、じっくり時間をかけたいところは、
時間をかけることができます。

プロガー内覧会の様子については、たくさんのレポートが上がるので、
そこから様子を伺い知ることができます。
ギャラリートークで、違う学芸員さんの解説も聞くと、
別のお話しが聞けたり、ちょっとしたニュアンスの違いなども読み取れるので、
理解の幅が広がります。

 (そして本当の理由は、他にあってコメント覧に・・・笑)(*1)


ところが、今回の募集要項を見ると、
「特別ゲスト 藤澤 紫氏」とあり、
17:40~18:00 藤澤氏による見どころワンポイント解説(展示室内)(20分間)
18:30~19:00 藤澤氏によるスライドレクチャー(ロビー)(30分間)

藤澤先生による、見どころ解説にスライドレクチャーが行われているのを
目にしました。
これは、絶対に期待以上の内容になるはず。
ぜひとも参加せねば・・・・と思わされたのでした。

一度は、ブロガー内覧会から、遠ざかっていた気持ちを、
藤澤紫先生によって呼び戻された感じがしました。 
山種美術館のギャラリートークの日と、國學院の講座が
同日にあったというのも何かのめぐり合わせだったのでしょう。



何か一つ「知」の扉を開けると、その先には、また
新しい「知」の扉がいろいろと待っていて、
どの扉を開けるかは、その時の興味にゆだねられるわけですが、
そこには「知」の連鎖があるととともに
「人」の連鎖というのもあるものなのだと思わされました。



■受験界のマドンナ?
ブロガー内覧会当日、藤澤紫先生は、
國學院のオープンキャンパスで授業を行われていたそうです。

その授業は、応募者多数で、なんと500人の抽選が行われたとのこと。
私が存じ上げなかっただけで、受験高校生、父兄の間では人気の先生なのでしょう。
500人の人を集めることができる講演者というのはなかなかいません。
しかも抽選になるなんて・・・・

そんなオープンキャンパスとの掛け持ちで、
スライドショーのデータは、徹夜で仕上げたとおっしゃっていました。
バイタリティーあふれる先生のレクチャーを受けることができたというのは、
貴重な体験だったと思います。



■「この一枚」探し
スライドレクチャーで、「この一枚をみつけて下さい」という言葉で、閉められました。
当初は、「雨」シリーズにしようと思っていたのですが、
再度、会場に戻って、これだ! と思った一枚が・・・

  歌川広重(初代) 「阿波鳴門之風景 (雪月花之内 花)」でした。

最初に見た時には気づかなかったのですが、
この絵は、左右方向に、透視遠近法が使われているという解説を目にしました。



■浮世絵の遠近法
江戸時代、浮世絵における遠近法の表現
というのも、数年前から、気になっていたことで、
日本の遠近法は、西洋を参考にして広がったのか
それとも、日本独自の技法として発達したものなのか

技法というのは、自然発生的に場所を飛び火して生まれることも
あるのではと思っていました。
だったら、日本独自で考えたっておかしくはないはず。

それは、絵画におけるオリジナル性の問題ともからめて、
兼ねてから気になっていたことでした。


  【関連】⑤改めて、着眼点にこだわる理由 (2015/11/16)


日本の浮世絵が海外で、ゴッホやモネに模写されていたことは、
日本人として、とてもプライドをくすぐられます。

では、西洋で広まっていた遠近法を取り入れていた浮世絵は、
西洋の何かを参考にしていたのか、
もしかしたら、日本人、独自の発想でたどりついた構図なのかもしれない・・・
日本人って、やっぱりすごいよね・・・って自画自賛したい(笑)
という希望的な観測があって、実際はどうだったのかということを、
探ってきました。
今回、藤澤先生のお話しによってかなりの部分が解決しました。

藤澤先生に、伺ったお話しも含めながら、こちらは追ってレポートの予定です。



■マドンナのトーク
山種美術館で、もう一度、藤澤紫先生のギャラリートークがあるようです。

ギャラリートーク開催のお知らせ
   ●9月16日(金)夜間開館日 
    特別ゲストを招いたギャラリートーク実施

美声をぜひお聞きになってみて下さい。
ブロガー内覧会では、ほんのちょっとでしたが歌声も耳にできました。



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【関連】山種美術館 ブロガー内覧会 レポート
浮世絵 六大絵師の競演:④ブロガー内覧会 浮世絵とは? 浮世絵の源流岩佐又兵衛との関係(2016/08/31)
浮世絵 六大絵師の競演:③ブロガー内覧会 《名所江戸百景 大はしあたけの夕立》の雨表現 (2016/08/31)
浮世絵 六大絵師の競演:②ブロガー内覧会 《阿波鳴門之風景》の遠近表現 (2016/08/31) ←次
浮世絵 六大絵師の競演:①ブロガー内覧会 プロローグ 藤澤紫先生 登場! (2016/08/30)
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