『若冲展:①「池辺群虫図」~若冲ミラクルワールド~ より』コロコロさんの日記

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○NHK-BSプレミアム 「若冲ミラクルワールド」 4回 (2011年OA)

若冲生誕300年記念 若冲展い合わせて、再放送がされました。
それを見た時の感想を、下記より抜粋しました。

 ○若冲ミラクルワールド:再放送を見て (2016/04/26)


■動植綵絵 30幅
そこに施された極彩色の色とその色を操るテクニックの数々
描かれる動物植物は多彩。この世にある命のすべてを、
ここに描きだそうとしたのでは? と思えるくらい
当時としては、珍しい生き物が多数・・・

命への慈しみ、感謝、生命の多様性、博物学的な記録
動植物へのあくなき好奇心
生命の一瞬の輝き、その瞬間をとらえるためにかけた膨大な時間。
生きているとは? 生命とは? 
その根源的な命題に立ち向い、集めた情報の集積。

そこには嘘がなく、ただひたすら対象と向き合い、
キャンパスと向き合った結果が写し出されている。


■「池辺群虫図」
心をとらえたのは、これ。
やっぱり・・・・  若冲も、この世界を描いたのね・・・・


・毛虫に食い荒らされたヒョウタン。
・蝶やトンボ、蜂が蜘蛛の巣にとらわれる。
・その上空を飛んでいる鳥の羽根がひっかり・・・
・おびただしい数のオタマジャクシは蛙に成長。⇒自然淘汰?
・そのカエルを狙う蛇。 ⇒食物連鎖
・土壌生物食べ、分解しそれを排泄して土を豊かにするミミズ。
・そのミミズを運ぶアリ。トカゲ・・・・

高次捕食動物大型動物が生息する土地は豊か・・・・

生き抜くために、他の命を捕獲する行為は、
ある場面においては、自らも、他者の餌になってしまう。
背中合わせの生と死

食物連鎖森羅万象・・・・

トカゲがいる庭は、豊かな土壌がはぐくまれている。
さらにカエル、蛇、より大きな生き物が生息する庭は、
大型生物が生きていけるだけの小さな命がそこに存在し、
循環していることのあかし・・・

お互いが持ちつもたれつの世界。そこには上も下も存在しない。
全てが平等・・・・  そして循環サイクルの一部
人もその一部にすぎない。食物連鎖の頂点は、人間ではない。
朽ちることは、次の命への橋渡し。輪廻転生・・・

若冲先生も当然の成り行きで、この世界を描くことに・・・・



■アーティストの着地点
優れた画家、アーティストは、必ず、この世界に帰結しています。
私が興味を持つ画家は、最後にこの世界観を表現しています。

(たどり着いたから、興味を抱くのかもしれません。
 そして、「好き」になるポイントがここにあると思っています。)


ガレしかり、菱田春草しかり・・・

  ○エミールガレ:ヒトヨダケ文花瓶・・・自然の摂理と輪廻 (2016/02/10)
  ○菱田春草:③《落葉》木の回りに集まる落葉の謎 (福井県立美術館所蔵)(2016/03/01)


好きになるのは、たどり着いただけではなくて、
その先、さらに何かを投げかけてくれる人・・・・



■分子生物学者が若冲を解釈すると
「池辺群虫図」の解説は、分子生物学を研究されている方がされました。(福岡伸一氏)(*1)



動物も植物も命は等しい
生き物の生と死を分子レベルで研究されている方の言葉。


命は日々、移ろう
枯れ木に見えていても、そこには新たな芽が出ている。
若冲は命のうつろいを描いたのではないか・・・・と。
移ろいの中で生命の循環する一瞬、一瞬を切り取って、ここに封じ込めた。

「蓮池遊魚図」の蓮。そこに枯れ葉を描く
蓮の枯れる姿はふつう描かないそう。
しかし、朽ちていく葉もいとおしい。それは、再生の予兆。


生き物と日々、向き合っていたら、
死がそれで終わりではないことは、ある意味、常識の世界・・・・


■学者には2つのタイプがある
分子生物学といえばミクロの世界の研究。
やもすると、実験室内の研究、顕微鏡や試験管内の研究に終始する人。

自然の減少であることを見失ってしまって、
目の前に見えている現象だけで、全体を捉えてしまう人。


しかし、取材場所として選んでいたのが、冬の野山でした。
研究室ではなく、フィールドを選ばれたところにさすが!と思いました。

だから、反射的に、枯れた蓮にもスポットをあて、
その裏にある、再生の芽も、必然的に引き出せる。

フィールドワークをベースに、研究をされている方なのだと思いました。
(そうそう、ノーベル賞をとった大村先生みたいに・・・・)
生命の循環、連鎖というものを、当たり前に受け入れいる。
だから、枯れた蓮を見て、それが意味していることを
的確に捉えることができるのだと思いました。


ジャンルは違ったとしても同じ研究者。
でも、机上で論じる研究者と、外に出ている研究者との違い・・・・



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春草の絵を理解しようと思っていた時に、すごいもどかしさを感じていました。

春草が描いた「杉の枯葉」に着目する、美術家が見あたりませんでした。
「新たに芽吹いた杉の芽」に着目する人もいません。
象徴的に描かれた、杉やカシワは、「新たな芽吹き」
とらえる人もいませんでした。

美術界の研究者って、自然を知らない・・・・ 森を知らなさすぎない?
フィールドワークをしたことがない人たちでは?

研究の方向性が、描く技法が中心になっているような・・・・
我々は、生物界の一部であるという、根源的な意識に欠けてはいないか?
そんなことを感じさせられていました。

フィールドワークをしていれば、枯葉が何を意味するか
そんなことは、直観的にわかるもの。
現に、分子生物学者の方は、「池辺群虫図」を見た瞬間に、
それを読み解かれました。


ここに、美術家でなく、自然科学の研究者を据えた、
人選に意をえたりでした。

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「草木土悉皆成仏」 (そうもくこくどしっかいじょうぶつ)。
「一切衆生悉有仏性」(いっさいしゅじょうしつうぶっしょう)

生き物だけでなく、無生物である石や岩にも仏が宿っている

日本人は、大きな岩に「しめ縄」をはる。その瞬間、岩に神が宿ります。
大木だってそう・・・・
万物に神や仏が宿るという多神教の中で生きてきた歴史があります。


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◆若冲展:池辺群虫図
若冲展:⑦「池辺群虫図」 なぜそう感じるのか 直観の理由を考える (2016/05/06)
若冲展:⑥「池辺群虫図」 若冲が込めたメッセージは人間社会への示唆? (2016/05/05)
若冲展:⑤「池辺群虫図」 この絵の中で若冲はどれ? そして自分の姿はどれ? (2016/05/05)
若冲展:④「池辺群虫図」 ここで何を描こうとしたのか (2016/05/04)
若冲展:③「池辺群虫図」 何が描かれている? (2016/05/03)
若冲展:②「池辺群虫図」~若冲 いのちのミステリー~ より (2016/05/02) ←次
若冲展:①「池辺群虫図」~若冲 ミラクルワールド~ より (2016/05/01) ←ここ
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