酔狂老人卍さんが投稿したと村（東京/虎ノ門）の口コミ詳細

『此世をハ　と里（り）や　お暇尓（に）　せん古（こ）う能（の）　煙りと供尓（に）　者（は）ひ　左樣なら』 （十返舎一九）

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と村虎ノ門、虎ノ門ヒルズ、内幸町/日本料理

1回

  • 夜の点数：3.0

      • 料理・味 3.6
      • |サービス 3.0
      • |雰囲気 -
      • |CP 1.5
      • |酒・ドリンク -
1回目

2015/08 訪問

  • 夜の点数：3.0

    • ［ 料理・味3.6
    • | サービス3.0
    • | 雰囲気-
    • | CP1.5
    • | 酒・ドリンク- ］

『と村』さんの　秋毫（つゆ）もまだ見ぬ　大鰒（おほあはび）　肚膓（はら）煮（に）え返（かへ）る　夏（なつ）の夕暮（ゆふ）れ　

■【この日（ひ）の獻立（こんだて）】：
倩（つらつら）この日（ひ）の皿（さら）を惟（おもんみ）るに、
"八寸（はつすん）"に相當（あた）るものなし。
"懐石（くわいせき）"の作法（やりかた）と云ふより、"割烹（かつぱう）"のそれ。
故（ゆゑ）に、口（くち）にせしものを記（しる）す。

すなはち、
"眞鰺（あぢ）爽煮椀（さはにわん）"、"海膽（うに）ゝ茄子田樂（なすでんがく）"、
"唐墨餠（からすみもち）"、"指身（さしみ）"、"椀（わん）"、"燒（や）き香魚（あゆ）"、
"茄子（なす）煮滲（にびた）し"、"素麪（さうめん）"、"蕨餠（わらびもち）"。

"指身（さしみ）"、すなはち、京坂（けいはん）で云ふ"つくり"は、眞鯛（まだひ）。
鹽（しほ）は土州（とさ）の海鹽（うみじほ）。
陸奧（むつ）赤石川（あかいしがは）にて漁獵（すなど）りし"香魚（あゆ）"、
阿州（あは）半田（はんだ）の"素麪（そうめん）"。

■【素材（そざい）】：
音（おと）に聞（き）こえし、
"赤座蝦（あかざえび）"、"鰻（むなぎ）"、"鰒（あはび）"、"海鰻（はむ）"はなし。
纔（わづ）かに、陸奧（むつ）赤石川（あかいしがは）の"香魚（あゆ）"のみ。
價格（ね）の張（は）るものは、海膽（うに）、眞鯛（まだひ）くらゐ。

その"眞鯛（まだひ）"はと檢（あらた）むるに、
「白身（しろみ）にかけては無雙（ならぶものなし）」との榮譽（ほまれ）も高（たか）き、
魚河岸（うをがし）K水産（なかおろし）よりの仕入（しいれ）。
身（み）が活（い）きてをり、この日（ひ）の朝〆（あさじめ）なるは明白（あきらか）。

最後（いやはて）の"蕨餠（わらびもち）"には大（おほ）いに落膽（きもをおとす）。
明白（あきらか）に、蕨粉（わらびこ）とは異質（ことな）る色合（いろあ）ひ。
然（さ）るを、東道（あるじ）、
「これぞ當家（うち）の流儀（やりかた）」と胸（むね）を張（は）る。

■【技藝（わざ）と味（あぢ）】：
庖丁技（はうちやうわざ）はなかなかのもの。
青柚子（あをゆず）の皮（かは）の剝（む）き方（かた）、　
淺葱（あさつき）の小口切（こぐちぎ）り、眞鯛（まだひ）の切附（きりつけ）に、
技倆（うで）の冴（さ）えを窺（うかゞ）ひ知（し）る。

意（おも）ふに、假令（たとひ）、いかほど食材原價（もとね）が低（ひく）ゝとも、
味（あぢ）、すなはち、
板前（いたまへ）の技倆（わざ）と才覺（ちゑ）に依（よ）りては、容赦（ゆる）せるもの。
これ、人倫（ひと）の尋常（つね）なり。

然（しか）るに、
押竝（おしなめ）て甜（あま）きに過（す）ぐる傾向（うらみ）あり。
就中（わきても）、"茄子（なす）煮滲（にびた）し"、"素麪（さうめん）"の汁（つゆ）は、
もはやとても堪忍（かんにん）ならぬほどの甘（あま）さ。

つぶさに他評（たへう）を瞻（み）るに、
筆（ふで）を懲（こ）らし舌（した）を盡（つ）くして襃（ほ）むる者（もの）ゝ中（なか）、
『と村』の甜（あま）さに指摘（ふ）るゝ評者（かた）もニ三（ちらほら）。
魚市場（つきぢ）に、「これを無不知者（しらざるものなし）」との噂（うわさ）あり。

一度（ひとたび）、皮（かは）を削（けづ）り、火（ひ）を通（とほ）さば、
その個性（もちあぢ）を失（うしな）ふが"蕪（かぶら）"と云ふ菜蔬（あをもの）。
能（よ）く"蕪（かぶ）"の活用法（いかしかた）を智識（し）らで、
椀（わん）の吸地（すひぢ）も陳腐（ありきたり）。

"山葵（わさび）も劈頭（はじめ）に擂（す）りしをその儘（まゝ）放置（うちやる）。
そも、山葵（わさび）と云ふは、時間（とき）を經過（ふ）るほどに、
色（いろ）と芳香（かぐはしきかをり）は衰（おとろ）へ、
辛味（からみ）を喪失（うしな）ふ。

僕（やつかれ）大（おほ）いに嗜（この）む"唐墨餠（からすみもち）"：
勿驚（おどろくなかれ）、
只顧（ひたすら）鹹（から）さ・鹽氣（しほけ）ばかりが顯著（きはだつ）。
行附（ゆきつ）けの舖（みせ）とは雲壤（うんじやう）の相違（たがひ）。

"素麪（さうめん）"また然（しか）り。
およそ"素麪（さうめん）"なるもの、細（ほそ）きを理想（むね）とす。
然（さ）れど、"半田素麪（たんださうめん）"と喚做（よびな）す貨物（しろもの）、
徒（いたづら）に太（ふと）く、臼齒（おくば）に頼哩（あらが）ふ。

"眞鰺（あぢ）爽煮椀（さはにわん）"なるもの：
ゆるりその姿（すがた）を眺（なが）め、舌上（したのうへ）に轉（まろ）ばせど、
俗（よ）に謂（ゆ）ふ、鰯（いはし）・鰺（あぢ）の"摘入（つみいれ）"に、
寸毫（つゆ）異（こと）なるところなし。

唯一（たゞひとつ）、"年魚（あゆ）"は魂（たましひ）を失（うしな）ふ美味（よきあぢ）。
太（ふと）く肥（こ）え、柔（やは）らかにして、滋味（いつくしみ）溢（あふ）る。
徐（おもぶる）に頭（かぶと）より啖（くら）ひつき、
小骨（こぼね）一本（ひとつ）殘（のこ）すことなくこれを堪能（あぢはふ）。

蓼酢（たでず）の色（いろ）も翡翠（ひすい）と見紛（みまが）ふ鮮（あざ）やかさ。
「直前（すぐまへ）に擂（す）りたるものならん」と確信（おも）ひ、
東道（あるじ）にこれを質問（たづぬ）るに、應答（いらへ）て曰（いへら）く、
「擂（す）りて間不容髮（すぐ）に冷凍（こほら）せたるものにてござる。」

■【管待（もてなし）ぶり】：
東道（あるじ）、
小部屋（こべや）の常連（なじみ）との応對（やりとり）の追（お）はれ、
板場（いたば）に在（あ）りては、殆（ほとん）ど口（くち）を利（き）かず。
萬事（よろづ）、若（わか）く拙（つたな）き仲居（なかゐ）任（まか）せ。

そもそも、小人（それがし）、
一見客（いちげん）と常連客（なじみ）を差別（わけへだ）て、
一々（ひとつひとつ）皿（さら）の中身（なかみ）を説明（と）かぬも道理（ことわり）、
といふ立場（かんがへ）。

であるにもかゝはらず、どうにも
"上（うは）の空（そら）"、"意（こゝろ）爰（こゝ）にあらず"と云ふ風情（おもむき）。
これには、首（くび）を傾（かし）ぐる外（ほか）術（てだて）なし。
食欲（くひけ）も失（う）せ、箸（はし）自（おの）づと滯（とゞこほ）る。

支拂（しはら）ひも、
電子式卓上計算機液晶畫面（そろばん）が價格（ね）を示（しめ）すのみ。
向歸（かへりなん）とするに、
件（くだん）の仲居（なかゐ）が家苞（いへつと）を手渡（てわた）しての見送（みおく）り。

■【什器（うつはのたぐひ）に設（しつら）へ】：
椀（わん）から盆（ぼん）に至（いた）るまで本物（ほんもの）ゝ漆塗（うるしぬり）。
網代編（あじろあ）みに、舊式（ふる）き蛇口（じやぐち）などの設（しつら）へも、、。
照明（あかり）は尤（いと）明（あか）るく、
檜（ひのき）が柔（やは）らかに照（て）り返（かへ）すぞあはれなり。

楊枝（やうじ）は竹（たけ）なれど、
一本利休（いつぽんりきう）の箸（はし）に、
檜（ひのき）一枚板（いちまいゝた）の櫃臺（かうんた）。
鎭坐（ちんざ）まします俎（まないた）もおそらくは上質（よ）き檜（ひのき）。

悉（ことごと）く手入（てい）れが行（ゆ）き屆（とゞ）き、
滲（し）み一（ひと）つなし。
沽（か）ひてより纔（わづ）かに四年（よとせ）と云ふ柳刄（やなぎば）は、
研（と）ぎ込（こ）まれ、小刀（こがたな）かと錯誤（あやまつ）。

■【綜合的滿足度（くひをはりてのこゝちよさ）】：
辭別（いとまごひ）まで一時間二十分（いちじかんにじッぷん）。
この日の食材（しよくざい）なれば、高々（たかだか）一萬五千圓（いちまんごせんゑん）。
味（あぢ）の巧拙（よしあし）、管待（もてなし）ぶりを鑑（かんがみ）るに、
一萬圓（いちまんゑん）が妥當（よきところ）。

然（さ）るによつて、
金（きん）三萬圓也（さんまんゑんなり）はあまりに高價（たかし）。
友人（とも）知己（しりあひ）に絶賛（てばなしにほ）むる者（もの）多（おほ）しと云へど、
僕（やつかれ）、漫（みだり）にこれに同意（うなづ）く不能（あたはず）。

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【照相機】：旭光學賓得士K-三數碼單鏡反光照相機
【鏡頭】　：蔡司（Carl Zeiss) Distagon T* 2.0/35 ZK @F2.0

  • と村 - 水道（すいだう）の蛇口（じやぐち）

    水道（すいだう）の蛇口（じやぐち）

  • と村 - 山葵（わさび）

    山葵（わさび）

  • と村 - 麥酒（びいる）

    麥酒（びいる）

  • と村 - 眞鰺（あぢ）、爽煮椀（さはにわん）

    眞鰺（あぢ）、爽煮椀（さはにわん）

  • と村 - 山中塗（やまなかぬり）の椀（わん）

    山中塗（やまなかぬり）の椀（わん）

  • と村 - 海膽（うに）に茄子田樂（なすでんがく）

    海膽（うに）に茄子田樂（なすでんがく）

  • と村 - 板場（いたば）

    板場（いたば）

  • と村 - 唐墨餅（からすみもち）

    唐墨餅（からすみもち）

  • と村 - 眞鯛（まだひ）、指身（さしみ）

    眞鯛（まだひ）、指身（さしみ）

  • と村 - 眞鯛（まだひ）、指身（さしみ）

    眞鯛（まだひ）、指身（さしみ）

  • と村 - 輪島塗（わじまぬり）の椀（わん）

    輪島塗（わじまぬり）の椀（わん）

  • と村 - 穴子（あなご）と蕪（かぶ）の椀（わん）

    穴子（あなご）と蕪（かぶ）の椀（わん）

  • と村 - 蕪（かぶ）

    蕪（かぶ）

  • と村 - 蓼酢（たでず）

    蓼酢（たでず）

  • と村 - 陸奥（むつ）赤石川（あかいしがは）の香魚（あゆ）

    陸奥（むつ）赤石川（あかいしがは）の香魚（あゆ）

  • と村 - 茄子（なす）、煮浸（にびた）し

    茄子（なす）、煮浸（にびた）し

  • と村 - 香（かう）の物（もの）

    香（かう）の物（もの）

  • と村 - 藥味（やくみ）

    藥味（やくみ）

  • と村 - 麪汁（めんつゆ）

    麪汁（めんつゆ）

  • と村 - 半田素麪（はんだそうめん）

    半田素麪（はんだそうめん）

  • と村 - 蕨餅（わらびもち）

    蕨餅（わらびもち）

  • と村 - 黄粉（きなこ）

    黄粉（きなこ）

  • と村 - 蕨餅（わらびもち）に黑蜜（くろみつ）黄粉（きなこ）

    蕨餅（わらびもち）に黑蜜（くろみつ）黄粉（きなこ）

  • と村 - 暖簾（のれん）

    暖簾（のれん）

2015/09/22 更新

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