ジロリアンへの道　最終回　－また喰う日まで～♪喰える時まで～♪さよなら二郎－ : ラーメン二郎 仙台店

泣いても笑っても、これでラスト二郎。昨日、雪の会津若松では、二郎一杯喰っただけでそのまま仙台へとんぼ返り。何とも勿体無いのだが、事情により会津には長居せぬほうが良いかな、とヘタレ思考が働いた次第。いや、そもそも京都生まれ、広島育ちの私が気にする必要も無くて、単に寒かっただけなのだが。で明けて仙台の朝、ビビる事無く元気ハツラツ初冬の広瀬通に踏み出してみれば、うひゃ～やっぱり寒いし。ガタガタ。

2014年12月14日

さっき口開き1時間前に通りかかった店頭は、シャッター全閉で人っ子一人いなかったのに、30分前の今は10数人の行列に。熱缶コーヒーを仕入れる間も無く、慌てて列に加わった。そして口開き。もうこの時点では、信じられない40人を超える長蛇の列。な～んじゃコレは!!需要と供給のバランスが崩れている一部の地方二郎では、時としてトンデモ行列になるとは聞いてたが、正にソレである。コッチは寒くて仕方ないのに、北国の皆さんは長蛇の列でも何気に談笑。この時点で既に私は負けているのだ。

【 小豚ラーメン（ヤサイマシ、ニンニクマシマシ）】790円
ヤサイはモヤ8キャべ2で量は多め。マシコールでも十分立派な丼ドームを形成する。うっかりマシマシコールしてしまった、ピリピリ爆量ニンニクを豪快に混ぜ込みつつ、机上のカネシの追いかけで、バリバリ、バリバリ、ひたすらバリバリ喰らわないと無くならない。こりゃ中々男気満点のボリウムだ。豚は、極厚バラ4枚と、小振りの塊1個。出汁を取った後、サクッと炊き込んだだけの様子で、結構歯応えのある繊維感が残る。一方で、脂も容赦なくガッチリ貼り付いてて、ヤサイドームに続いてコイツもかなりな破壊力の男気豚。ここら辺りが、どうにも抗えぬ二郎の魅力、いや魔力である。

麺は標準的な平打ち、麺径はちょい細めのズル二郎である。麺量は割合に多めで、小ラーで茹で前350g弱って感じ。ただ、ちょっと麺味や風味が薄めで、後半ちょっと単調に感じてしまう辺りは少し残念。また、恐らく今日がたまたまなのだろうが、豚出汁から転写されたと思われる、微妙に鼻に付く獣臭さもちょっと気になるところ。その獣臭さの根源だろう豚汁は、律儀に仕上げられたハイレベル乳二郎に、カネシをドカンと効かせたマッタリショッパーズ系。かなり塩気が立つ、東北流硬派二郎豚汁である。前報、会津二郎の新世代スムースさからはかなり距離のある、やはり妙に男っぽい仕上がり。結局、何から何まで男気二郎。最終回に相応しい、誠に頼もしいヤツである。

【総まとめ】
ミニミニ大作戦「ジロリアンへの道」は、2012年10月3日、二郎総本山である三田二郎から始まった。それから長きに渡った2年2ヶ月後、本物二郎の残り1軒である仙台二郎で最終回を迎えた。全100軒のうち、本物二郎は全店制覇の35軒、残りが累々たる真似二郎、触発二郎、冗談二郎の中から、成行きと、少しばかりの思案の結果チョイスした65件である。ところで二郎100杯って一体どれほどの熱量なのか?もちろん、麺や豚の多少などバラツキはあるけれど、完汁で平均1杯1400kcalと少な目に見積もっても、100杯で実に140Mcal（140メガカロリー）。これを単純に脂肪換算すれば約17.5kgに相当するし、あるいは時速4kmで延々歩き続けた場合、日本最北端の宗谷岬から日本最南端の佐多岬まで、日本列島約3000kmを踏破できる熱量。恐るべし二郎。だがしかし、日本縦断をせずとも、月平均体重が全く変動しなかったのは綿密なカロリーコントロールの勝利であった。二郎を喰うために、この2年間レコーディングダイエットをして来たようなものである。

そこまで二郎に入れ込むのは何で?と、作戦途中で三回くらい自問した。もちろん、一気大喰いしてドパミンがドバ～ってのは麻薬的な快感である。でもそれだけじゃないと思うのだ。二郎傾倒嗜好のコアにあるのは、作り手と喰い手の真剣対峙が心地良いから。話は少し反れるけれど、今は料理人の腰の低さが料理の出来判断の前提条件らしい。コッチは金払ってる客なんだから料理人は謙って当然、味は作り手の謙虚さに付いて来るモノだから。そんな価値基準の多い事よ。実に嘆かわしい。だって、商売人が本気で金儲けしたいと思ったら、どんな客にでも謙れるものでしょ?あなただって、自分の仕事世界だったら、そんな経験少しはあるでしょう?

二郎部屋の空気には、そんな思考ロジックはほぼ介在し得ない。今やそれは少数派かも知れない。二郎の作り手は、何だかんだ必死である。稼ぎもそれほど多くはなかろうに、ほぼ一日中絶え間無く出丼に追われている。立ちっ放しの力仕事じゃ腰もヤラれるし、仕込みもあってまともに眠れないなら、そのうち鬱にもなろうってものだ。一方、二郎の喰い手も、何気に必死である。後ろの客に気を使いつつ、残さぬように丼と格闘せんとイカンから。だから、作り手は、いちいち喰い手に謙ってる余裕は無いし、喰い手も、いちいち作り手の謙虚さに満悦してる余裕は無いのだ。ソコにこそ、二郎固有の空気感が生まれる。作り手と喰い手が、互いに半歩ずつ歩み寄って、同じ目線で対峙して作り、喰う。この瞬間、両者のスピリットは融合し、ジロリアンにしか分からぬ機微が生まれた。

誰が言い始めたか知らないが、「二郎はただのラーメンじゃない。二郎と言う喰いモノである」と言われて久しい。誠に僭越ながら、更にもう一段、高みに昇華させて貰えるならば、「二郎はただの喰いモノじゃない。二郎と言う食思想である」

しかしね･･･たかだか二郎100杯喰っただけでココまで薀蓄れる私って、やっぱり元来のハッタリ屋ですな。って事でジロリアンへの道、これにてミッションコンプリート。