本当に [玉、砕ける」 ・・・ 【喜幸】 : 喜幸

この口コミは、リチャード1958さんが訪問した当時の主観的なご意見・ご感想です。

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4.2

¥6,000~¥7,9991人
  • 料理・味4.0
  • サービス4.0
  • 雰囲気5.0
  • CP3.7
  • 酒・ドリンク4.0
2013/08訪問1回目

4.2

  • 料理・味4.0
  • サービス4.0
  • 雰囲気5.0
  • CP3.7
  • 酒・ドリンク4.0
¥6,000~¥7,9991人

本当に [玉、砕ける」 ・・・ 【喜幸】

8月17日の土曜日、京都へ晩飯を喰いに行った。

相棒はモチロン盟友・糖尿星人である。このお盆期間中、唯一の休日。その他3名も同行。

家族にまったく相手にされないオッサン二人、墓参りにも行かねばならんと思ったのであるが、

先に亡くなった友人達の霊を京都に呼んで一緒に飯を喰おう!という事になったのだ。

最初は京都生まれで京都育ちの糖尿星人が行きたいと思う店に行くはずだったのだけれど、

あのオヤジ、どうしてもその屋号が思い出せない。糖尿病の症状に「もの忘れ」もあるだろうか?

仕方がないのでマイレビュアーさんを追い掛ける。そして一軒目に選んだのがこの店だった。


私が食べログを知ってからズッと尊敬して已まないassyassy師匠が数年前に行かれた店である。

今や予約が取れなくてヒーヒー言わなくてはならない食堂 おがわさんの二軒隣に在る。

開店時間の5時に予約。場所はスグに分かった。立派な看板がかかっている。「湯豆腐もやってるんやな~」

引き戸を開けて「こんにちわ~」。既に常連さんが一人、盃を傾けている。「おいでやす~」

カウンターの端には「正一位稲荷大明神」が鎮座ましまし。その下には店内の様子が描かれた油絵が飾られる。

日本酒が並べられた棚、そして手書きの品書き。値段は書いていない。懐かしい酒燗器もカウンター下に。

カウンターの一番向こうには水槽。銀鱗を輝かせて泳ぐ小魚たち。「イワシ?」と思ったら違った。

「ハヤなんですよ、鴨川で獲れますねん」 なるほど水槽の近くに漁網が干してある。

そうしていると、その網がかけてある横の引き戸が開いてオッチャンが入って来た。

業者さんかいな?と思うが早いが、なんと水槽に何十匹ものハヤをぶち込むではないか!

「ちょうど来ましたなぁ~。鮎も居てるわぁ~」 予定外のパフォーマンスに度肝を抜かれた。


ビールは瓶しかない。キリン、アサヒ、サッポロから選ぶことが出来る。糖尿星人はアサヒのファン。

「どうぞ~」一杯目は注いでもらえる。カウンター内の女子は二人とも割烹着。懐かしいなぁ~。

水槽の向こうには調理スペース。そこにお店の娘さん。酒燗器や冷蔵庫のある此方側に従業員さん。

お通しは「おから」「てっぱい(ぬた)」のどちらかを選べる。ここは「おから」と「てっぱい」を分けてお願いする。

「てっぱい」が断然美味い。鼻にツーンと来るほどまで酸っぱくないからイイ。そして量が多い。

「おから」も上品に出来上がっている。「お通し」とは言えちゃんと作っているのが嬉しい。

昨日の残りもんとか刺身で残った魚を炊いたとかの「お通し」で金を取られるのは納得出来ないもの。


※おちこいも
里芋の子供。秋の味覚である。一足先にいただきま~す。上品に炊いてあって冷たく冷やしてあって美味い!

※露地ナスと唐辛子の炊いたん
親切に取り分けて呉れる。やはりこれも上品な薄味。あぁ~京都へ来たなぁ~♪

※立山
こうゆう和食を喰っていてビールなんて呑んでいられない。大好きな立山をヌル燗で行く!!

※冬瓜の炊いたん
冬瓜は大好きである。それだけに下手に出来ていると許せなくなるが、こちらのはもう満足である。

※ハヤの唐揚げ
確か関東ではウグイと呼ぶ。お嬢さんが水槽から捕獲したハヤ。整然と整列して登場。
はらわたの渋みが美味い!酒が進む!進む!

※ハヤ白焼き
唐揚げも良かったのだけれど、この白焼きの美味い事よ!
サッと焼いているからだろう、イイ意味で魚臭い!メチャクチャ美味い!!

※タコやわらか煮
写真がボケて恐縮である。タコが柔らかく煮上がっているのは当然なんだけど、それがレアなのである。
表面は煮上がっていて甘く、中身は刺身のようなのだ。
一緒に付いて来るオクラと山芋も秀逸。

※野菜の天ぷら
中でも南瓜の美味かったこと!!ホクホクで甘く、塩と天ぷらの衣に包まれて極上の娼妓の様である。
そして茗荷の天ぷらがキリッと口を引き締めてくれる。


例えば3人前を注文しようとすると「量が多いので2人前でエエのと違います?」と適切に教えてくれる。
天ぷらも人数に合わせて揚げてくれるし、他の料理も取り分けて出してくれたり親切である。


もうこの時点でお酒を何本呑んだかハッキリ覚えていない。

立山から酔鯨玉の光土佐鶴一本木桃の滴とガンガン呑み進む。

ただ唯一残念だったのはこの店、酒を変えても徳利やお猪口を交換してくれないのだ。誠に惜しい!!


※焼いたお揚げさん
焼いた薄揚げにネギやおろし生姜や大根おろしを巻いて、タレで喰う。酒のアテにイイ。

※鮎山椒煮
見た目は濃くて辛そうに見える。ところがどっこいだ。濃くない!辛くない!年季を感じざるを得ない山椒煮。

※生ゆば
暖かい「餡」の中に京の生ゆば。ゆばが少々固めである。
冷房で程よく冷えた身体に温い「餡」が有難い。


途中で女将の浅井鈴子さんが降りて来た。白髪が上品で笑顔が素敵な女将。年齢は。。。伏せておこう。

創業64年になると言われる。御主人の浅井喜三氏は今年で84歳。女将の年齢「推して知るべし」である。

御主人はお店には出たり出なかったりだそうだが、女将はまだまだ元気で働いておられる。

「え~、わざわざ大阪から来ておくれやしたんどすか?おおきに~」やて。。。(苦笑)

今どき、大阪からの客なんぞ珍しくもないとは思うが、その愛想が嬉しいではないか。

なのでここは満腔の敬意を表してデートに誘ったが、やんわり、はんなりと断られてしまった。

「なんや女将さんの割烹着姿を見さしてもろてたら死んだ婆ちゃん思い出します」と糖尿星人鼻を詰まらせる。

私の虐待ババアも割烹着だった。妾宅へ行ったまま帰って来ないジジイが和服が大好きだったのだ。

何があったも着物を脱がなかった。そして台所へ立つ時は必ず割烹着だった。健気な明治女であった。


店の入口に掛けられている著名人のサイン色紙。梅原猛、緒形拳、長嶋茂雄。そして出色は開高健。

「この店はいい雲古の出るものを食べさせてくれます 保証します」と書かれてある。

さすが!大阪人の開高健だなぁ~と思った。クスクス、クスクス笑えてしまう。

その開高健の短編に「玉、砕ける」という秀作があるのを思い出す。

この小説で言う玉というのは、垢の玉である。主人公が香港によるたびに会う知人、張が薦めてくれた

「天上澡堂」という風呂屋で、ごしごし垢をこすってもらい、それを集めて作った「垢の玉」。

それだけの垢をはぎ取られると、全身の皮膚が赤ん坊のように柔らかく澄明で新鮮になった気持ち

になるのだそうだ。そして擦り取った垢をうずら卵くらいの大きさに丸めた「玉」を渡される。

香港へ来て垢すりをしてもらい、美味いものを喰って、完全にリフレッシュした主人公。

帰りの飛行機の中でポケットの中の灰いろの玉はすっかり乾いて粉々に砕けてしまっていた、という話。

この灰色の垢とは人生の影、生活や仕事の疲れ、棄て切れない後悔を象徴している。


「糖尿星人オヤジ!!何処か垢すり行きましょか!?」

「アホけ!!そんなん行かへんわ!何言うとんねん!!女将さん御馳走さん!勘定して下さい」

一人当たり¥6500の支払いは決して高くない。「もうちょっと取られると思たけどなぁ~~」

但しこの店、ガッツリ喰いたい人には向かない。

須らく上品で薄味な料理は大食漢の腹を満たすのは不可能だろう。

若い観光客の人にも向かない。常連さんが多いし、話しが合わない。若い人向きのメニューもない。


外へ出たのは午後7時過ぎ。京都の街にはまだ充分明るさが残っている。

「垢すり」こそ行ってはないけど、全身の垢が落ちたような清々しさを感じる。我々の垢の玉も砕けた

「秋になったらハヤにもっと脂が乗りますしね、湯豆腐も美味しおすからね~」

わざわざ見送りに出て呉れはった女将さんの言葉に全員「わかりました!また来ます!」と最敬礼。

またもやエエ店と、エエ料理と、エエ人に出会ってしまったなぁ~。

「次行くど!次や!今日はハシゴで呑むどぉぉぉぉ~~~!!」


「地獄の釜も休む」盆も、もう終わりだ。

「あっち」から帰って来てた先輩や友人も久々の娑婆を楽しんで呉れていることだろう。

夜はまだまだ続く。もう少し付き合ってもらおう。「あっち」に帰るのは明日でいいじゃないか。


  • 喜幸 - 細い路地に。

    細い路地に。

  • 喜幸 - 静朴な入口

    静朴な入口

  • 喜幸 - 正一位稲荷大明神

    正一位稲荷大明神

  • 喜幸 - 向こう側が娘さん。手前は従業員さん。

    向こう側が娘さん。手前は従業員さん。

  • 喜幸 - 日本酒はこんな感じで。

    日本酒はこんな感じで。

  • 喜幸 - 最初の一杯は注いで頂けます。

    最初の一杯は注いで頂けます。

  • 喜幸 - おから

    おから

  • 喜幸 - てっぱい(ぬた)

    てっぱい(ぬた)

  • 喜幸 - おちこいも

    おちこいも

  • 喜幸 - 露地ナスと唐辛子の炊いたん(取り分け)

    露地ナスと唐辛子の炊いたん(取り分け)

  • 喜幸 - 冬瓜の炊いたん(取り分け)

    冬瓜の炊いたん(取り分け)

  • 喜幸 - 生簀から

    生簀から

  • 喜幸 - ハヤの唐揚げ

    ハヤの唐揚げ

  • 喜幸 - ハヤ白焼き

    ハヤ白焼き

  • 喜幸 - タコやわらか煮

    タコやわらか煮

  • 喜幸 - 野菜の天ぷら

    野菜の天ぷら

  • 喜幸 - 焼いたお揚げさん

    焼いたお揚げさん

  • 喜幸 - 鮎山椒煮

    鮎山椒煮

  • 喜幸 - 生ゆば

    生ゆば

  • 喜幸 - こんな人達が。。。

    こんな人達が。。。

  • 喜幸 - 開高 健

    開高 健

  • 喜幸 - 梅原 猛

    梅原 猛

  • 喜幸 - 長嶋茂雄讀賣巨人軍終身名誉監督

    長嶋茂雄讀賣巨人軍終身名誉監督

  • 喜幸 - 緒方拳

    緒方拳

  • 喜幸 - 女将さん

    女将さん

  • 喜幸 - 表札もありました。

    表札もありました。

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店舗基本情報

店名
喜幸(きこう)
ジャンル 日本料理、豆腐料理
予約・
お問い合わせ

075-351-7856

予約可否

予約可

住所

京都府京都市下京区西木屋町通四条下る船頭町202

交通手段

京阪線河原町4番出口を出て、通り向こうのマルイの方へ道を渡ります。
南へ直進、二つ目の角(ディリーヤマザキを通り越した角)を左折して細い道に入り少し歩いていった左側。

祇園四条駅から184m

営業時間
  • 水・木・金・土・日

    • 17:00 - 22:00
  • 月・火

    • 定休日

営業時間・定休日は変更となる場合がございますので、ご来店前に店舗にご確認ください。

予算(口コミ集計)
¥8,000~¥9,999

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支払い方法

カード可

(AMEX、JCB)

電子マネー不可

席・設備

個室

駐車場

空間・設備

落ち着いた空間、カウンター席あり

メニュー

ドリンク

日本酒にこだわる

料理

野菜料理にこだわる、魚料理にこだわる

特徴・関連情報

利用シーン

一人で入りやすい 知人・友人と

こんな時によく使われます。

オープン日

1950年

初投稿者

chiririchiriri(187)

最近の編集者

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