四万十川の幸満載の温泉宿 : 柳瀬温泉

　２０１２年３月．
　ＪＲ予土線の列車撮影の際に宿泊しました．

　こちらの宿には，１０年くらい前，やはり予土線の列車撮影をした際に宿泊したことがあります．当時は，現在の女将さんのお母様が切り盛りされていました．予約の際に「１万円くらいでお願いします」と言ったところ，「１万円分も料理を準備できるかなぁ（笑）」と言われたことを覚えています．その時の印象がかなり良かったので，今回も宿泊を決めました．ちなみに，こちらはネットでは予約できないと思います．自分たちは，電話で予約しました．

　宿は，四万十川沿いにあります．とはいっても，川からは５０〜６０メートル離れた山の中にあるため，宿から直接川を見ることはできません．宿に行くには，国道３８１号（半家バイパス）の四万十トンネルの東側出口から川沿いの小道に入り，四万十川の上流方向に１キロくらい進んでください．ちょっとわかりづらいですが，小道沿いに味のある看板が出ています．宿の周囲は実に静かな環境で，季節感満点です．おじゃました時には，サクラやレンギョウが咲き始めており，十分に春を満喫できました．なお，クルマで５分くらいの場所には，「半家沈下橋」があります．
　宿の建物は，外観・内装ともシンプルで，スッキリとしています．壁を塗り替えたようで，以前に宿泊したときよりも明るい印象になっていました．客室が６席ほどの小さな宿で，１階には食事をする広間と浴室が２ヵ所あり，客室は２階にあります．２階への階段が急なので，注意が必要です．全体的に，古さは否めませんが，清潔に管理されています．
　ウィークデーに宿泊しましたが，当日の宿泊客は自分たちだけでした．でも，シーズンには，多くのアユ釣り客が利用するようです．
　自分たちが通された客室は，２人で宿泊するには十分な広さでした．客室には洗面やトイレは付いていませんが，スグ近くに清潔な共同トイレ（男女共用・水洗）があるので，問題はありません．ただ，隣室との壁が薄そうだったので，混雑時には隣室の音が気になるかもしれません．また，掛け布団がやや重く感じました．

　当日は，２ヵ所ある浴室のうち，奥の方だけが利用できました．宿の規模の割りには広めの浴室で，風情のある岩風呂になっています．５人くらいが入れる大きめの浴槽と，２人くらいしか入れない小さめの浴槽がありますが，前者にしか湯がたまっていませんでした．湯は鉱泉を沸かしたものですが，蛇口から出る湯は熱めでした．加水や循環はありません．ほのかにイオウ臭があり，肌がしっとり・スベスベするイイ湯でした．なお，シャワー付きのカランが２つ設置されていますが，そこから出る湯も鉱泉を沸かしたもののようでした．

　夕食は，１９時からいただきました．広間に入ると，座卓に多くの料理が並んでいました．川の幸・山の幸が満載で，ウレシクなります．「アユの塩焼き」，「アメゴの甘露煮」，「アメゴの刺身」，「川エビの唐揚げ」，「アメゴの骨煎餅」，「茹で川エビ」，「ウドのヌタ」，「イタドリと新タケノコの煮物」，「イノシシのすき焼き」，「シイタケのタタキ」，「アメゴ唐揚げの甘酢がけ」，「アユの唐揚げ」，「ツガニ汁」などなど（「アメゴ唐揚げの甘酢がけ」と「アユの唐揚げ」は追加した料理です）・・・大食いの自分でも食べきれないほどのボリュームでした．これで１泊２食付き１万円弱（追加料理を入れても）なので，満足度は高いですね．なお，自分たちはビールと日本酒をいただいたので，使った金額はこれよりも高くなっています．
　いずれの料理も，ハデではないものの，素材が生かされており，滋味深かったです．特に印象に残った料理を以下に示します．
　アユの塩焼き：アユの季節ではありませんでしたが，十分にウマかったです．大きめのアユだったのですが，上々の焼き加減で，頭も骨も食べられました．
　アメゴの刺身：色鮮やかで，非常に美しい刺身でした．サッパリとして，それでいて程よく脂がのっていました．
　川エビの唐揚げ：パリパリと香ばしく，エビの風味が満点！　ビールがススミました．
　イタドリと新タケノコの煮物：イタドリは，高知県ではよく食べられる山菜です．全国的に分布している野草ですが，高知県以外では山菜としてあまり一般的ではありません．塩漬けしたものを塩出しして，薄味で煮付けています．クセや酸味はほとんどありません．中空で，サクサクと驚くほどイイ歯ごたえです．これは気に入りました．
　イノシシのすき焼き：やや濃いめの甘辛味で，ほのかなニンニクの風味が感じられ，日本酒にもご飯にも良く合いました．イノシシ肉はクセが無く，ホロリと煮込まれていました．
　アメゴ唐揚げの甘酢がけ：開いたアメゴを唐揚げにして，アツアツのうちに甘酢をかけたものです．キュウリと新タマネギの薄切りがトッピングされていました．淡白な川魚と甘酢がベストマッチでした．
　シイタケのタタキ：大きめのシイタケを薄切りにして，唐揚げにし，濃いめの甘酢に漬けたもののようです．シイタケの風味が濃く，これも気に入りました．自宅でもつくってみようかな・・・
　ツガニ汁：料理は以前から知っていましたが，食べるのは（見るのも）初めてでした．ツガニ（モズクガニ）を殻ごとすり潰し，漉したあとに，醤油味の汁で煮込んだものです．すまし汁に，まるで雲のように，すり身状のツガニが浮かんでいます．ほかに，豆腐と青ネギが入っていました．すり身状のモノは，フワフワとした食感で，口の中でスッとなくなります．少しだけ残っている殻の食感も，良いアクセントになっていました．汁はツガニのダシが程よくきいており，全体的には上品な仕上がりでした．ちなみに，材料に使ったツガニは，朝まで生け簀で生きていたものだそうです．

　朝食は，朝の列車撮影をしたあと，８時２０分くらいにいただきました．夕食と同じ大広間です．シンプルで，おかずは多くはなかったものの，「アユの塩焼き」が出たのがウレシかったです．また，味噌汁には甘めの麦味噌が使われており，食文化の違いを感じました．

　こちらの宿では，四万十川の幸を十二分に満喫することができます．大自然に囲まれた静かな環境なので，のんびりと過ごすにはもってこいだと思います．現在の女将さんも，先代の女将さんと同様に，気さくで明るい方でした．
　次に予土線の列車撮影をする時にも（いつになるかわかりませんが），こちらの宿を利用したいと思います．