シェフはパリ帰り、スタッフは全員東京からやってきました : Installation Table ENSO L'asymetrie du calme

新規オープン店舗の開拓シリーズ。
誰かに書かれる前に書いてやるのさ。


天ぷらの小泉さんの隣にあるフレンチのお店です。
店名のENSOは塩のENに素材のSOから。混ぜるな危険の塩素ではないですよ。
元々パリ帰りのシェフが和食のお店で働いていた頃に小泉さんが同僚で、
その縁で金沢に出店する事になったそうです。
お店のスタッフ全員が銀座のお店にいた時の同僚で一緒に金沢にやって来たそう。
こちらはシェフ、ソムリエ、パティシエと皆さん揃っています。
洋裁学校をリノベーションしたお店ですが結構分かりにくいため、
とりあえず小泉さんを目指して行くのが一番分かりやすいです。
店内は木をベースにしてした落ち着いた雰囲気で、
内装だけでなく器も渋い色の構成で統一感を出しています。
キッチンは完全なるオープンスタイル。
ちょっとしたLDK的な（超失礼）。カウンター席や個室もあります。
でも個室よりはライブ感を楽しめるテーブルの方が良いと思う。
ドレスコードに要注意。金沢ではそういうのは少ないので案外油断しがち。


お昼のコースは6,000円のコースのみ。これにサービス料が10％つきます。
お昼でも中々高めの金額。和食系ならこれくらいよくあるんですけどね。

アミューズはイカスミをスティック状にした生地に白海老を挟み込んだフィンガーフード。
これをボルシチでお馴染みビーツのソースで。
さくっと軽く磯の香りのするイカスミスティックに
白海老のねっとり感と旨味が加わっていきます。
甘味はそんなに無かったです、白海老自体そんなに甘味が強いわけでもないですけどね。

続いて桐の箱に入ったのは、石の上に乗った、ええと…要は鶏皮せんべいが2枚。
その上にチョコが乗っています。
器にはカカオの身が敷き詰められており、香りをプラス。
片方はレバー入りのブラックチョコ、もう片方はガーリック入りのホワイトチョコです。
ガーリックの風味、レバーのコク共に鶏皮せんべいに馴染みますが、
甘いのが嫌って方もいるのかなあ。

蟹の椀物を意識したスープ。
ズワイガニの洋風しんじょうの入った毛ガニで取ったコンソメベースのスープ、更に蟹味噌、蟹のオイル。
これは分かりやすい美味しさ。蟹×蟹×蟹という感じの濃厚さ。
でも臭みとか嫌な感じは無いです。
毛蟹の風味溢れるスープにフワフワとした洋風しんじょう、こちらはズワイガニ感たっぷり。
バジルの葉も浮かせて香りのアクセント。

お次は桜チップのスモークをガラスの器に閉じ込めた料理で、象徴的な料理でした。
トリュフと菊芋のスライス、下にも菊芋のピューレが敷かれています。
これを焼き葱の香りのソースで。
シャクシャクとした食感にトリュフの香り、さらに菊芋のペースト。
これにスモークの香りが強めに効いています。

ここで小さめのパン。多分自家製でふっくらとしたパンです。出しゃばらず、邪魔にもならず。

鰆のポワレに春菊のソース、温野菜を付け合わせ。
脂の乗った鰆が香り強めの春菊のソースにも負けない味わい。
皮目もパリッと仕上げてあり、身はふっくら。

茨城の梅山豚（メイシャントン）のロース、これがこの日一番美味しかった。
シンプルなローストにグレービーソースで。ソースにはマスタードも少し加えてあります。
ごろっと大きめのブロックに焼き目を付けてからじっくりと火を通してあります。
あれはオーブンってことで良いのか？
上下から熱を加える、ザイグル的な調理器具でした。
レアに見えても火は通っているから大丈夫。柔らかく、脂身の旨味、甘味が凄い。
ちなみに梅山豚は中国原産の希少種で国内で100頭程しか飼育されていない幻の豚だそう。
パンダと同じ時期に入ってきたけどすぐに禁止されたのだとか。
猪八戒のモデルだとか多産だとか中国の民家では◯◯(自粛)を餌にしてるとか。

デザートにはトンカ豆のアイス、下にはガナッシュが敷いてあります。
滑らかな舌触りで、杏仁豆腐とか桜餅っぽい香りと書けば分かりやすいか。
爽やかな酸味の効いたフランボワーズやバジルのソースで。
見た目、味共に流石は専門のパティシエだけある。

締めはコーヒーと紅茶の選択制。
お茶菓子も小洒落た箱に入っています。
フィナンシェ、タルト、カヌレ、レモンのギモーヴ、オリーブのグミと多彩。
一口サイズのお茶菓子でもどれもしっかり作り込んであります。
これがまたコーヒーとよく合うんです。


現代的なフレンチを金沢の食材で表現した、センスの光る料理の数々でした。
まあメインの豚は地元じゃ無いけど(^^;
そこはほら、美味しいから良いじゃない。
料理内容には満足、接客も一流。後はランチといえど量がもう少しあると嬉しいかな。
そういえば輪島の某店なんかでも、
「開店当時は地元のお客さんに量が少ないと言われた」
と伺いました。
基本的に石川県民は食いしん坊が多いのかもしれない。
人気は放っておいても出そうな気がする。その前に来れて良かった。
西洋料理の良いお店って増えてきたけど輪島のあの店やあの店とか小松のあの店とか、
遠方が多いんですよね。こちらは金沢市内で良かった。