技術に立脚したきちんとした広東料理 : 中国料理 石本

●訪問回数１０回以上　改装後１回目
しばらく休業していた宗像の石本さんが改装し再開した。
連絡をもらった時にてっきり別なところでの営業再開かと勘違いしていたのだが、同じ場所での改装オープンとのことである。

今までの家庭的な雰囲気から少しシックな内装となっている。目を引くのは看板で、友人の書家に作ってもらったとのこと。

ランチは２０００円～　夜は４０００円～のコース設定である。今のところアラカルトは受け付けていない。事前予約の際に、食べたいものなどを言っておくことは可能である。

今回は、昼の利用だが、前日に予約して５５００円のコースを作ってもらった。

まずクルミとカシューナッツを煎ったものが出てくる。表面がコーティングされていて癖になる味だ。

前菜　手羽先の焼き物　ちょっと香港の焼鵞に似た味
　アボカドとスモークサーモンのロール、甘酢大根の巻物、エノキ茸と中華ハムの煮こごりが出てきた

スープはこちらのリクエストで、蒸しスープを出してもらった。今回はフカヒレの姿と衣笠茸の蒸しスープ
　出汁が素晴らしく、嫌味なところが一つもない。クリアーでかつゴージャスな味だ。

カナトフグとマコモダケの煎り焼きは、豆鼓をアクセントにしている。これも食感が良く美味

檸檬海老は私たち家族の思い出のメニュー。海老をレモン風味のとろみのあるソースでコーティングしたもの。
　餡の具合がちょうどよく美味しい

スペアリブの揚げ物と春巻　春巻はジューシーで美味　スペアリブは少し食感が硬かった。シンプルな塩味だ。
　香菜の素揚げが付け合せについてくる

鯛の蕪蒸し　中華風は今回ナンバーワンのメニューだった。ソースが二層構造になっていて、下の層は上湯ベース。上の層は酸辣湯風のソースで、次第に混ざっていくとより複雑になっていく。繊細でかつ複雑な味わいだ

ご飯ものは炒飯　中に入っているチャーシューの存在感が素晴らしい。卵コーティング具合も９０％以上の凄腕。
　素人では絶対にまねできない領域の炒飯である。

デザートは　子供たちはマンゴープリンにタピオカをかけたもの。私は杏仁豆腐だったがどちらも美味しかった。

今回は、日本のオーソドックスなホテルの中華というより、味付けにしろメニューにしろ少し広東料理よりの構成だったように思った。２月にまた特別な会で訪問する予定である。

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宗像の新興住宅地の中にある、地元では知られた中国料理の名店である。

シェフは大阪の辻調を卒業後、中国料理研究室に入り講師までされて、東京や神戸などでも腕を振るっていた。この店を開店してからも食材の仕入れと最新の広東料理の動向調査のため、年に数回は香港などに出かけている。

地方の郊外にある店としては珍しく、繊細な広東料理を作ることができる力量を持つ。

ただし、昼メニューや夜の安価なコースは日本仕様の中華が中心なので、わざわざ遠くから出向くのには８,４００円コースか、それ以上の特別料理が良いだろう。８,４００円コースでは、パパイアを半分に切ったものを器に見立て、その中に入ったフカヒレスープや、中国地鶏のパリパリ揚げなどの思わず食指の動くメニューが載っているし、予めシェフに相談して特別メニューを組んでもらうと、こちらが期待以上の料理が食べられること請け合いである。

例えば、「１人１２,０００円で、お祝いなのでおめでたい料理を薄味の広東風の味付けで」と注文した時は、ミル貝の湯引きから始まり、美しい鳳凰を象った前菜の盛り付け、活伊勢の上湯炒め、フカヒレ入り蒸しスープ、キヌガサタケと鮑の煮込み、乞食鳥、といった具合。

また「他では食べられない味の料理を８,０００円で」とお願いした時は、筍とマコモダケと海苔の炒め物、魚介類の辛子炒め、鶏の広東風焼き物、大正海老とクルミの紅糟炒め、合鴨とエビのすり身つけ変わり揚げ、スッポンの蒸しスープ、ナマコとキヌガサタケと鮑の海老子炒め、季節野菜の腐乳炒め、アスパラの海老ミソ味の炒飯、黒胡麻団子入りアーモンドのお汁粉。

といった具合だ。

勿論、普通のコースも水準以上の味で、味付けも東京の一流ホテルの広東料理レベル以上の味である。出張料理もやっていて、2009年4月に自宅で出張料理をやっていただいたが、レモン鶏はコーティング具合といい、味付けといい　完璧だったし、牛肉のＸＯ醤炒めもマコモダケや中国セロリのようなものも入っていて、油通しが上手く、牛肉がとろけるほど柔らかい。海老シュウマイは、皮もすべて自家製　具のプリップリ感も素晴らしいけど皮のもっちりした感触もすごい　脱帽です。仕込みに三日かけるそうだ。炒麺は広東の蒸し麺を使用、これも驚愕の旨さ。炒飯　写真見てもらえば分かりますが　卵コーティング率９９％　ジャポニカ米でこれだけの仕上げは他にありません。

子供のリクエスト中心だったのでメニューだけ見ると、「ふーん」っという感じでしょうが、実際の味は、同じメニューの他店とは比較にならぬほどのレベルでした。まさに別なメニューといってもいいくらい。

ここのシェフの後輩がミシュランで星をとった東京三田町「桃の木」のシェフだが、現時点では料理の完成度は格段にこちらの方が勝っていると思う。もちろん「桃の木」も水準以上のお店なのだが、この店のシェフはありきたりな料理を非のうちどころのない完璧なまでの完成度で出してくるという点で一枚も二枚も上手と感じている。

もし、この店が福岡の繁華街にあれば週末は２週間先まで予約が埋まるだろう。東京だと一か月先まで埋まるくらいか？

ちなみに、夜は完全予約制なので要注意。

追記
石本さんの料理を表現するならば、「プロ中のプロの料理」と言える。中華料理の王道である「調味」に関していうと、色々な調味料や食材を使って作られる複雑な味のソースは、石本さんの料理の特徴を最も表現している。紅糟や蝦子、腐乳などの中国独特な調味料を使ったものでもいいし、たとえ「豚バラ煮込み」などの一見平凡に思える皿にも、サンザシなどを使った複雑で重層的なソースに脱帽する。炒飯はジャポニカ米を使うが、卵が米粒にまんべんなくコーティングされていて文句なしに美味しい。予めシェフに相談して特別メニューを組んでもらうと、こちらの期待以上の料理が食べられること請け合いである。

福岡市内から車で1時間20分程度と店が遠いのが唯一の欠点だが、石本氏は出張料理をしていて、早めに予約すれば福岡市内であれば来てもらえる。料理総額7万円以上（5人以上）、別途出張代2万円と少々高いが、中華の業務用コンロまで持ち込んでお店で食べるのとほとんどそん色ない味を家庭で味わうことができる。